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4社統合におけるマスタデータ管理に立ち向かう 株式会社CARTA MARKETING FIRM プロダクト管轄開発局データ部 データエンジニア 上田哲太朗(@_scizorman) SF2UGオンサイトミーティング #2 2025.05.20

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株式会社CARTA MARKETING FIRM データエンジニア 上田 哲太朗 @_scizorman 略歴 2020年に株式会社VOYAGE GROUP(現CARTA HOLDINGS)に新卒入 社し、株式会社Zucks(現CARTA MARKETING FIRM)でSEO領域プロ ジェクトを担当。2023年6月に同社アドネットワーク事業部でデータ 基盤改善に従事し、2024年2月からは同社データ部で組織横断的な データ基盤開発を推進している。 役割/領域 #スキー #バイク #Street Fighter 6 management engineering Front Server Data Cloud Infra

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前提知識

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう CARTA MARKETING FIRMとは CARTA HOLDINGSの事業戦略に基づき、4つの子会社を統合して誕生 私がいたのはここ

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう CARTA MARKETING FIRMとは 「広告代理事業」と「広告プラットフォーム事業」を展開している

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう Zucksとは 3つの広告プロダクトを組み合わせた効果的な広告配信を提供

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テーマ

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⼀つの組織 (Zucks) のデータ課題 ↓ 組織全体 (CARTA MARKETING FIRM) のデータ課題

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 対象(Zucks) この組織の話

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 対象(CARTA MARKETING FIRM) 組織全体の話

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この登壇で伝えたいこと マスターデータ管理とは 結局はビジネスと”真摯に向き合う”ことに尽きる

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● スコープを広げ、組織全体の課題を見据える ● スコープを狭め、解決可能な課題に落とし込む ● 腹をくくって泥をさらう “真摯に向き合う”とは?

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AGENDA 01 一つの組織 (Zucks) のデータの課題 02 組織全体 (CARTA MARKETING FIRM) のデータの課題

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AGENDA 01 一つの組織 (Zucks) のデータの課題 02 組織全体 (CARTA MARKETING FIRM) のデータの課題

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 対象(Zucks) この組織の話

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各プロダクトでデータがサイロ化していて、 「Zucks」という単位でデータが見ることができなかった

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プロダクトを横断したマスタデータを定義・運用し、 「Zucks」という単位でデータを見られるようにした

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう データのサイロ化とは *引用:データ総研 ; 伊藤 洋一. DXを成功に導くマスターデータマネジメント データ資産を管理する実践的な知識とプロセス 43 (Japanese Edition) (p. 81). 株式会社 翔泳社.

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう Zucksにおけるデータのサイロ化 プロダクト単位でマスタデータが個別に管理されている

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 「案件」単位でのデータ可視化の問題 営業担当者が必要とする「案件」データの取得が困難 ● 営業は複数のプロダクトを組み合わせた「Zucks」という組織単位で「案 件」を受注 ● 営業は「案件」単位でのデータの確認がしたい 元々どうやっていた? 1. 各プロダクトの管理画面からレポートをダウンロード 2. 営業各人のスプレッドシート上でデータ突合・集計

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「案件」ってなんだろう?

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● Aさん:営業が受注してくる単位 ● Bさん:各プロダクトで管理される配信単位

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人によって解釈が異なる、 まさにデータのサイロ化の典型

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複数プロダクトを横断した、 「Zucks」単位で受注した「案件」を マスタデータとして管理する

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案件 (⼈によって解釈が異なるもの) ↓ Zucks広告案件 (明確な共通⾔語)

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう Zucks広告案件を管理する仕組み Zucks広告案件をスプレッドシートで管理し、SnowflakeへELT

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう データドリブンな組織への転換 作業効率化 → データドリブンな組織への転換 時間の創出と活用 ● レポーティング作業の自動化 ● データ分析・仮説構築・施策実行へのシフト 共通言語の確立 ● 統一された集計ロジックによる一貫したデータ ● Zucksという組織単位で、同じ数値に基づく議論が可能に

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「事業の正のレバレッジ」となる データ基盤の理想の状態ができつつある

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しかし問題はある

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう Zucks広告案件管理する仕組みの問題 スプレッドシート上のマスタデータ管理は一時しのぎ スプレッドシートによるマスタデータ管理の限界 ● unique制約 ● テーブル間のリレーション管理 (できないことはないけど、あくまで表計算ツールだからね。。。) スプレッドシートでの仕組みはあくまでPoCとして用意したもの マスタデータの品質を担保できる仕組みへの移行が必要

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ここで疑問がよぎる

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Zucksだけの課題ではないのでは?🤔

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう CARTA MARKETING FIRMにおける問題 全社視点での横断的なデータ活用が実現できない ● CARTA MARKETING FIRMとして、各組織のデータを横断的に見たい ● Zucks単独の仕組みでは全社的な価値創出に限界がある 全社視点でのデータ統合と活用が必要

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次の課題 「CARTA MARKETING FIRM」という単位で、 組織横断的にデータを活用できるようにする

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AGENDA 01 一つの組織 (Zucks) のデータの課題 02 組織全体 (CARTA MARKETING FIRM) のデータの課題

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 対象(CARTA MARKETING FIRM) 組織全体の話

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問題の本質は変わらない

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しかし、解くべき対象組織・人数がぐっと増える

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう CARTA MARKETING FIRMにおけるデータのサイロ化 各組織でマスタデータが個別に管理されている

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう CARTA MARKETING FIRMにおけるデータのサイロ化 各組織でマスタデータが個別に管理されている Zucks以外の組織はエンジニアがいない つまり、データリテラシーは相対的に低い

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 目指す世界 データドリブンな組織文化の醸成 実現したい組織の姿 ● データドリブンな意思決定によるビジネス推進 必要条件 ● データ加工作業からの解放と組織内共通言語の醸成 技術実現手段 ● SQLで一発でほしいデータが取得できる環境

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 目指す世界 データドリブンな組織文化の醸成 実現したい組織の姿 ● データドリブンな意思決定によるビジネス推進 必要条件 ● データ加工作業からの解放と組織内共通言語の醸成 技術実現手段 ● SQLで一発でほしいデータが取得できる環境 Zucksでやったことと同じ

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何を用いて解く?

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Salesforce x Snowflake

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう Salesforce x Snowflake アーキテクチャ概要 Salesforceから始まる Snowflakeを用いたデータ基盤

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう Zucks広告案件を管理する仕組み(再掲) Zucks広告案件をスプレッドシートで管理し、 SnowflakeへELT

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう Salesforce x Snowflake アーキテクチャ概要 Salesforceから始まるSnowflakeを用いたデータ基盤 スプシから 置換

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう Salesforceの選定理由 業務プロセスの最上流でのデータ整備が効率的 ● マスタデータは営業活動から生まれる ● 入口段階での業務整理とモデリングが重要 ● 新規管理画面を開発・運用するのもコストがかかる ● 活発なコミュニティとエコシステムも判断材料 正直ベストだとは思っていないが、現状を鑑みてマシだと判断

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まずはモデリングをする

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モデリングをするために、ビジネスを理解する

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう ビジネスに詳しくなる データモデリングの前提はビジネス理解 Zucksの業務は把握していたが、統合後の各組織の業務には詳しくない 近道はなく、地道にビジネス理解をするしかない ● 「あなた達のビジネスは何ですか?」 ● 「それを達成するためにどんな業務がありますか?」 ● 「スプレッドシートはどんなものがある?」 ○ スプレッドシートの把握は意外と大事 ○ ここにラストワンマイルが詰まっている

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見えてくる山積みの問題

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 見えてくる山積みの問題 データと業務の両面に問題がある データの問題 ● データの品質が低い(e.g. 重複データ) ● データの構造が悪い(様々な用途で使われる肥大化したモデル) ● データがそもそもない 業務プロセスの問題 ● 営業管理の非効率性 ● 売上・原価計上プロセスの不統一

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 見えてくる山積みの問題 ロールごとに問題に対する温度感は異なる ● 営業管理:営業部長層 が最重視 ● 日々のレポーティング:営業担当者 の切実な課題 ● 財務会計:ファイナンス担当者 が問題視

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全ての問題を一度に解くことはできない

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 問題の抽象化 複雑な問題は抽象化と優先順位付けで攻略する 問題の抽象化 ● 各組織固有の要件と共通要件を切り分け、必要十分な要素を抽出 優先順位付け ● 段階的に解決していく戦略 ○ 最も価値を生む領域から着手 ○ 成功事例の創出と水平展開

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問題はある程度整理できた

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次はモデリング

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう データモデリング 曖昧な概念を明確に定義し直す 具体例:取引先の再定義 Before:曖昧で混在した「取引先」概念 ● 「取引先」に直接取引関係あるものとないものが混在 ● 請求先なのか支払先なのかの区別もない After:関係性に基づく明確な区分け ● 「取引先」を「請求先」と「支払先」に明確に分離 ● 「広告主」を独立した概念として定義

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モデルを定義しただけでは終わらない

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 既存のデータの整理 既存のデータの整理は地道にやるしかない 避けられない現実 ● 仕組みが整っていない状況で蓄積されたデータは乱雑 ● 自動化やAIで解決できる範囲は限定的 具体例:2000件以上の取引先データの整備 ● 名寄せをしてAIを活用して自動化できる部分は対応 ● それでも半数以上は手作業での整理が必要だった

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 人々の業務を変える データ品質は日常業務の変革から生まれる ● 日々新たなデータが蓄積される ● 個々人の解釈によって粒度や品質が異なる 解決策は一つ、共通言語の定義と人々への浸透以外にやることはない ● ドキュメントの整備 ● オンボーディングの強化

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持続可能なデータ品質は 人々の行動変容からしか生まれない

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう マスタデータ課題の認識共有の難しさ 見えづらい問題を認識させる ● データの課題を課題として認識させることが最も困難 ● 特にマスタデータの整理は即効性がなく効果が見えづらい それでもやるしかない 認識しやすい、具体的な業務改善と紐づけて地道に進めるしかない。

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まとめ

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう スコープを広げ、組織全体の課題を見据える 局所最適から全体最適へ ● 自分が関与している範囲の問題しか見えなくなりがち ● 視野の狭さによって局所最適な解決策に陥る ● データの問題は個々の部門だけのものではない 視野を広げて組織全体を見渡すことで、真に解決すべき本質的な課題が 見えてくる。

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう スコープを狭め、解決可能な課題に落とし込む 理想を見据えながら現実的な一歩を踏み出す ● 問題を抱えていない組織は存在しない ● すべての問題に同時対処しようとすると何も解決できない ● 完璧を求めて前進できないリスク 抽象度を上げて全体の方向性を定めた後は、解決可能な具体的課題に落 とし込む必要がある。

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう 腹をくくって泥をさらう 問題と向き合い切る覚悟 ● 目を覆いたくなるような現実から逃げない ● オーナーシップを持ち、最後までやり切る決意 根性論と思われるかもしれないが、自らが責任を持って問題解決に取り組 む覚悟なくして真の改革は実現しない。

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4社統合のマスタデータ管理に立ち向かう ビジネスと真摯に向き合う 結局はビジネスと真摯に向き合うことに尽きる マスタデータの品質なくして真のデータ活用は実現しない データの問題解決に向けて、 ● 共通言語を組織に根付かせること ● 人々の日常業務を変革していくこと 大変だけどやるしかない 地道な泥さらいが、データドリブンな組織文化を実現する。

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No day but TODAY CARTA HOLDINGSについて 約 53% 電 通 (株) VOYAGE GROUP 約 47% 既存株主 事業例 CARTA HOLDINGSについて 採⽤求⼈