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カテゴリーで多様さを認知し、 認知バイアスに気づき、 カテゴリーでの認知をやめることで 多様さの中に生きる Women in Agile Tokyo 2024からの1年の学び 4th Feb. 2025 Akira Ohno

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特記事項 ● 本発表は多様性に関する表現がありますが、私自身は学者や研究者ではあり ません。また、所属組織での活動とは関係のないものです。 ● 私は性別・人種・国籍・宗教にかかわらず多様性が認められる社会である ことを望んでいますが、私の考えを押し付けるような意図はありません。 自らの学びを共有することで、他者の学びになることを意図しています。 ● 本発表には性別について言及する表現が含まれますが、 説明のための表現であることをご理解ください。

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大野 英(おーのA) アジャイルコーチ @ohnoeight / X Akira Ohno 新卒入社の会社でスクラムに出会ってから、自律的な組織での開発に 魅了され、一念発起しスタートアップへ転職 スタートアップ複数社を経験、前職のスタートアップではスクラムマス ターとしてスクラムの導入を推進、その後、同社でEMを経てVPoE就任 2024年10月よりアジャイルコーチとして現職に入社 急成長する開発組織の支援に従事 2025年2月現在、システムコーチング®のプロフェッショナル実践コース を受講し、プロコーチ資格取得のために勉強中

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Women in Agile Tokyo 2024に参加した話 ※以下、Tokyoを省略します

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Women in Agile 2024(昨年)に参加した経緯 当時、 エンジニア組織のマネージャーでした 私は組織力向上を目指していました 社外の知見を組織に持ち込むため、 エンジニアの カンファレンス参加を促していました

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Women in Agile 2024(昨年)に参加した経緯 しかし・・・ スクラムフェスや Regional Scrum Gathering Tokyoに 参加したいと 手を上げてくれたメンバーは なぜか男性のみだった

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Women in Agile 2024(昨年)に参加した経緯 Womenを冠している カンファレンスだと参加しやすいので は?と思い誘った結果 女性エンジニア・PdMの3名が 参加してくれた ・・・と、参加したのは「会社のために」という理由でした。。。

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当時、Women in Agile の「Women」に心の壁があった 実は私としてはWomenについて積極的に考えたい気持ちはなかった・・・ そもそも、「女性」とか「ジェンダー」、「マイノリティ」などの問題について 深く考えたことが無い私が軽々しく意見を述べることをしてはいけない 無知が故に立ち入ることへの恐怖を感じていました

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参加してみて・・・ とてもたくさんの学びがありました

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Women in Agile 2024 KEYNOTE 引用:https://www.wiajapan.org/2024 スポーツコーチングの世界で 女性のコーチの育成に注力

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Women in Agile 2024 KEYNOTEで出された問い 引用:Women in Agile Tokyo2024 Keynote 個が輝く社会に向けて〜スポーツ界での挑戦〜 リラックスして考えてください。

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正解は?

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引用:Women in Agile Tokyo2024 Keynote 個が輝く社会に向けて〜スポーツ界での挑戦〜 リラックスして考えてください。 外科医が母親だった 私は答えられなかった つまり、男性だと思っていた Women in Agile 2024 KEYNOTEで出された問い

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引用:Women in Agile Tokyo2024 Keynote 個が輝く社会に向けて〜スポーツ界での挑戦〜 リラックスして考えてください。 外科医が母親だった 私は答えられなかった つまり、男性だと思っていた Women in Agile 2024 KEYNOTEで出された問い これは「外科医は男性」という認知バイアスが働いている 問題なのは「私が答えられなかったこと」ではなく 私のような人々が大勢いるから このような「問い」がある という社会である現実

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午後:オープン・スペース・テクノロジーでの対話 参考:オープン・スペース・テクノロジーとは OSTはワークショップの進め方の一つです。 参加者自身が検討したいと思っているアイデア、解決したい課題などを持ち寄り、 自分達でワークショップで話すテーマを決めます。 1つのOSTの中でテーマは複数提案されるので、テーマごとのセッションが並行で開催されます。 参加者がどのセッションに入るかは自由です。 テーマに賛同する参加者が自発的に集まって対話をします。 引用:参加者がつくる対話の場 オープンスペーステクノロジー(一部改)

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議題:「女性が働きづらい理由」「男性と働いていて思うこと」 女性: 「女性は働きつづけることが前提になっていない上に、  ライフステージによって働き方が変化するので、キャリアプランを立てにくい」 「社内に同様のライフステージを辿っている人が少なく、  ロールモデルを探そうと思っても社内にいない」 男性: 「男性は定年までは働きつづけることが暗黙的に前提になっている  その前提が男性の生きづらさにつながっていそうだが、  男性が認識できていないケースもある」

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議題:「女性が働きづらい理由」「男性と働いていて思うこと」 女性: 「女性は働きつづけることが前提になっていない上に、  ライフステージによって働き方が変化するので、ロールモデルを立てにくい」 「社内に同様のライフステージを辿っている人が少なく、  ロールモデルを探そうと思っても社内にいない」 男性: 「男性は定年までは働きつづけることが暗黙的に前提になっている」 「男性は社会で生き抜くということが前提。その前提が  男性の生きづらさにつながっていそうだが、男性が認識できていないケースもある」 女性についての生きづらさだけでなく、 男性は男性の生きづらさがある それに気づいていないことも 認知バイアスが働いている

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議題:「Women in Agileのようなイベントがなぜ大事なのか」 「Women」とか「LGBTQ+」とイベントの名前に冠する力の良し悪しはある しかし、話題に取り上げることで初めて対話が始まる、という事実もある 私にとって印象的だったのは 「極に立つことでわかることがある」 という発言でした

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議題:Women in Agileのようなイベントがなぜ大事なのか 「Women」とか「LGBTQ」と関する名前の力の良し悪しはある しかし、話題に取り上げることで初めて対話が始まる、という事実もある 私にとって印象的だったのは 「極に立つことでわかることがある」 という発言でした Women in Agileに参加した1日を通じて 極に立って対話し、議論をしたことによって 初めて私の中にある認知バイアスに気づくことができた だからこそ、Women in Agileのようなイベントが 社会にとって重要な役割を果たす

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カテゴリーに蓋をしていては見えないものがある 男女平等だからと 同じ人として見ると 結果的に自分の認知バイアスに 気づくことができない 思考停止して気づかないように しているだけ

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カテゴリー分けして認知して初めて気づくことがある 男女平等の歴史はまだ浅い だからこそ 認知バイアスが働く あえてカテゴリー分けして 違いに目を向けなければ 気づけないものがある

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まとめ:Women in Agileに参加してみてどんな気づきがあったか ● 自分が女性の働きにくさ(あるいは男性の働きにくさ)に どれだけ意識を向けずに仕事をしているかを理解した ● 深く関わらないようにしていた「ジェンダーギャップ」についても、 自らが積極的に関わることでしか得られない気づきを得られた ● 自分の中にあるたくさんの認知バイアスに気づいた

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私の人生で避けていた「多様性」 Women in Agileに参加したことで多様性について向き合うきっかけをもらい、 多様性との旅路が始まりました

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多様性に関する私の誤解とその変化

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多様性に対する誤解 Women in Agileに参加するまでの私は 多様性を受け入れること =国籍や人種、宗教、性別などが 違う人たちの考え方や価値観を認め、尊重すること だと思っていた

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多様性に対する誤解 Women in Agileに参加するまでの私は 多様性を受け入れること =国籍や人種、宗教、性別などが 違う人たちの考え方や価値観を認め、尊重すること だと思っていた Women in Agileへの参加後、上記は正しいが、 本質的な理解には至っていないと感じた

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メンタルモデルについて氷山モデルを用いて説明 メンタルモデル 構造 行動パターン 出来事 出来事を起こした当事者は構造・環境に対し て、どのような価値観・想いを持っていたか 引用:無意識が変われば人生が変わる - 「現実は4つのメンタルモデルから作り出される 前野隆司;由佐美加子 何の構造が行動パターンを引き起こしたのか 出来事が発生した要因・行動は何か 何が実際に起こったのか 目に見えて いるもの 目に見えて いないもの

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蓋をしていては思考が硬直してしまう 行動パターン 出来事 男性として生を受け 男性として生きてくる中で形成された 私の人生・価値観 考え方や意見、そこから作られる言動は 男性の視点でしか生まれてこない ※男性に限らず女性も同様

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知ることでしか得られない変化がある 行動パターン 出来事 男性として生を受け 男性として生きてくる中 で形成された私の人生・ 価値観 女性というカテゴリーを意識することで 初めて考え方や発言・行動が変化する 女性の社会での 難しさについて ほんの少し理解

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自らのメンタルモデルを形成する 背景に目を向けられていないことに気づいた 男性・女性を区別しないことで女性の社会での難しさに蓋をしていた 「多様性を認めること」 ≒ 「蓋をして区別しないこと」だと誤解していた しかし、彼らにはその根源となる考え方・人生・価値観がある それを知らずに本質的に考え方や価値観を認め、尊重することはできない

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この体験から認知バイアスを学ぼうと思った 認知バイアスの存在は知っていたが、 学んだことはなかった Women in Agile 2024への参加を通じて 認知バイアスについて 学ぶべきと考え、書籍を手に取りました BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭

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認知バイアスとは

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認知とは 認知とは「心の働き」全般を示す言葉 ものを見たり聞いたり、そこから何かを感じることから、 何かを学ぶ、覚えるなどはもちろん認知である 見たこと聞いたこと、知っていることを通して何かを考えたり、 判断したり、創造・想像するものももちろん認知である それらを人に伝えるために言葉を用いて行う コミュニケーションもまた認知である 引用(一部抜粋):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~はじめに~

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認知バイアスとは 心の働きの偏り、歪みをさす ただし、精神疾患などに見られる心の働きを指すわけではない こうした疾患を持たない人たちも含めて 人々の行動の中に現れる偏りや歪みに対して 認知バイアスという言葉が用いられる 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~はじめに~

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カテゴリーで認知する・しない時に 起こる認知バイアスについての学び

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カテゴリー化 カテゴリー化は私たちの心の根源に位置しており、 多くの心理的な現象に関係している 人間だけでなく、動物もカテゴリー化をしている 目の前のものが餌なのか、敵なのか、つがいに なれるのかといった判断もカテゴリー化である 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~第3章 概念に潜むバイアス~

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カテゴリー化を支えるプロトタイプ プロトタイプ プロトタイプとの 類似度判定 「この人たちは女性だ」 プロトタイプはそのカテゴリーに属する さまざまな対象の平均的な特徴を束ねたもの プロトタイプは 「それらしい」「それっぽい」もの と考えれば良い 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~第3章 概念に潜むバイアス~ カテゴリー化

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プロトタイプを作るサンプリング 正確なプロトタイプを作り出すためには 事例、サンプルが必要になる 正確なプロトタイプを作り出すためには 偏りのないサンプリングが必須である 果物、魚、椅子などに関しては生まれてから 数えきれないほどのサンプルとなる事例を見ている おおむね偏りのないサンプルがなされ、 作り出されるプロトタイプはおおむね正常になる 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~第3章 概念に潜むバイアス~

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実際には目立つ逸脱値を代表例としてサンプルしてしまう 私たちは自分が出会ったごく少数のサンプルから 勝手にプロトタイプのようなものを 作り出してしまうことが多い 代表例とプロトタイプはほとんどの場合異なる 代表例となるサンプルは、特異な特徴を持つもの であることが多い カテゴリーの中の逸脱値であるようなものが代表例 としてサンプルされるのだ 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~第3章 概念に潜むバイアス~ イチロー選手 日本人野球選手のプロトタイプがイチローだと勘違いした アメリカの球団のスカウトがたくさん来日した

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代表例をプロトタイプと思い込む思考のクセ 私たちはこうして代表例をプロトタイプと思い込み それを元にして勝手な推測、予測、断定を行う こうした人の思考のクセは カーネマンとトヴェルスキーによって 「代表性ヒューリスティック」と名付けられた 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~第3章 概念に潜むバイアス~ 得られた情報 代表例との比較 (本来プロトタイプであるべき) 類似度判定 カテゴリー化

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社会的ステレオタイプ 代表性ヒューリスティックは人種、国籍についても頻繁に生じている。 これは社会学者たちによって「社会的ステレオタイプ」と呼ばれている。 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~第3章 概念に潜むバイアス~ ※記載の事例は書籍に記載のもので、私の意見ではありません 黒人は運動能力がある イタリア人は陽気 現代の若者は身長が高い 慶應生のイメージはお金

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社会的ステレオタイプ 代表性ヒューリスティックは人種、国籍についても頻繁に生じている。 これは社会学者たちによって「社会的ステレオタイプ」と呼ばれている。 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~第3章 概念に潜むバイアス~ ※記載の事例は書籍に記載のもので、私の意見ではありません 黒人は運動能力がある イタリア人は陽気 現代の若者は身長が高い 慶應生のイメージはお金 運動苦手な黒人もいる 陰気なイタリア人も いる 背の低い若者もいる お金のない慶應生もいる

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社会的ステレオタイプ 代表性ヒューリスティックは人種、国籍についても頻繁に生じている。 これは社会学者たちによって「社会的ステレオタイプ」と呼ばれている。 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~第3章 概念に潜むバイアス~ ※記載の事例は書籍に記載のもので、私の意見ではありません 黒人は運動能力がある イタリア人は陽気 現代の若者は身長が高い 慶應生のイメージはお金 運動苦手な黒人もいる 陰気なイタリア人も いる 背の低い若者もいる お金のない慶應生もいる 「社会的ステレオタイプ」も 特異な代表例をカテゴリーの特徴としてしまう 代表性ヒューリスティックの一例

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事例で認知バイアスを考える

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認知している代表例がプロトタイプに近いと認知の歪みが少ない 昭和の頃 女性は結婚して退職し、子育てをするという代表例はプロトタイプと近かった 「君たちはいつ  寿退社するんだね」 昭和の時代では、 人々が認知している「女性」の 代表例とプロトタイプが近く 認知の歪みが少なかったと言える (当時も働き続ける人もいたので、そういった方に対してはNGだったはず) 女性カテゴリー 代表例

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代表例とプロトタイプの類似性が低いと認知バイアスにより誤った行動につながる 平成初期の頃 「君たちはいつ  寿退社するんだね」 平成になり、 人々が認知している「女性」の 代表例とプロトタイプの類似性が低くなり 認知の歪みが発生していた NGな言動として捉えられるようになった 結婚して退職し、子育てする人、は単なる代表例になった 女性カテゴリー 代表例

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カテゴリー化する対象が変化し、代表例の形成が変化した 平成後期から令和の現代 社員カテゴリー そもそも男性・女性を区別すること 自体がされなくなったになった しかし、サンプリングする対象は、過去に知っている人のうち、 特徴的な代表例がサンプルされる 社員カテゴリーとなると、男女平等な社会として 未成熟が故に代表例に女性がイメージされにくい

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認知の歪みにより冒頭のWomen in Agileで話した状況が発生する xxさんはロールモデルを考えたり、 キャリアプランを描いていますか? 先輩方はロールモデルを立てて キャリアプランを描いていたな xxさん優秀だし聞いてみるか ロールモデルとか言われても そもそもこの会社女性エンジニア いないけど・・・ 代表例 これから結婚とか出産とかあって キャリアプランなんて描けない。

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認知の歪みにより冒頭のWomen in Agileで話した状況が発生する xxさんはロールモデルを考えたり、 キャリアプランを描いていますか? 先輩方はロールモデルを立てて キャリアプランを描いていたな xxさん優秀だし聞いてみるか ロールモデルとか言われても そもそもこの会社女性エンジニア いないけど・・・ 代表例 これから結婚とか出産とかあって キャリアプランなんて描けない。 代表性ヒューリスティックによる認知の歪み 社会性ステレオタイプを 無自覚に形成

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カテゴリーで考えることが正しいのか

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だから分けて考えよう・・・という単純な話ではない 男性社員カテゴリー 代表例 女性社員カテゴリー 代表例 ?

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本来、人間は外観で識別するという簡単なカテゴリー化ができない 動物やもののカテゴリー化は容易 一方で人間は 宗教・出身地・職業、 あるいは、性別すらも、 カテゴリーが内面化している 本質的なカテゴリー化はきわめて難しい 目に見えて いるのは外見 目に見えて いない 人を表現するカテゴリーはほぼ見えないと言っても過言はない

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人間の内面にあるカテゴリーのつながりはツリーではない さらに言えば、 カテゴリーはツリーにはなっていない 性別・宗教・出身・・・など 複雑に絡み合っている 目に見えて いるもの 目に見えて いないもの 全てをカテゴリー化し、それを認知してプロトタイプを作って認知することはほぼ不可能

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おそらく、人間がカテゴリー化できるのは1階層程度 難しいからと言って カテゴリーに対して 蓋をしていては何も気づけない 1階層だけでも蓋をせずに そのカテゴリーを認知し、 私たちの中にある認知バイアス に気づく程度のことしかできない

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1階層でもカテゴリーに自覚的になるだけで見える世界は変わる 難しいからと言って カテゴリーに対して 蓋をしていては何も気づけない 1階層だけでも蓋をせずに そのカテゴリーを認知し、 違いを知ること 私たちの中にある 認知バイアスに気づくことが大切

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さらに言うと・・・本当の意味での認知メカニズムの克服は困難 代表性ヒューリスティックは できるだけ排除した方がよいと思われるかもしれない どんなことについても偏りのない、数百を超える事例を集めてから結論を下す というのは現実的に無理だからだ 加えて、このバイアスは、カテゴリー化という、私たちの日常生活を支える きわめて基本的な認知メカニズムに由来している このこともこのバイアスの克服を困難にしている 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~第3章 概念に潜むバイアス~

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認知バイアスを知ること、吟味を行うことが大事 このバイアスを知ることによって、 様々な言説がどんなサンプルから導き出されたのかを 考えることができるようになるだろう 一定以上の数の偏りのない事実から導き出されたことなのか、 それとも特殊例からの結論なのか こうした吟味を行うことは、大事な決断を下す時には重要である 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~第3章 概念に潜むバイアス~

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まとめ:認知バイアスについての学び ● カテゴリー化という認知が発生していること ● 私たちから生み出される発言や行動が何らかの 過去の出会いの中で生まれた代表例によって作られていること ● そういった認知バイアスの元で生きていると知ることが大切

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(少し視点が変わります) システムコーチング®における多様性の学び ※ システムコーチング®はCRR Global Japan 合同会社の登録商標です。 http://www.crrglobaljapan.com 

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システムコーチング®とは 組織や人の関係性を対象にしたシステムコーチング は、2人以上の関係性すべてを想定したもので、 その活用先は多岐にわたります。 その目的は、 イノベーションの促進や多様性の包含、 成果や成長の促進、心理的安全性の回復、 葛藤解決など、 人の関係性によって左右されうるほぼすべてのこと が対象となります。 ※ システムコーチング®はCRR Global Japan 合同会社の登録商標です。 http://www.crrglobaljapan.com  引用(一部改):CRR Global Japan Webサイト「システムコーチングって何ですか?」

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Women in Agileと同時期にシステムコーチング®の研修を受けていた 2/2-2/4 2/6 2/11 認知バイアス 書籍購入 Women in Agile システムコーチング① 3/7 読了 3/8-3/10 システムコーチング② 2024

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システムコーチングのコースの中でどのあたりか Women in Agile 2024の前 認知バイアス書籍 読み終えた後 2/2-2/4 3/8-3/10 イマココ 引用:CRR Global ORSCプログラムについて 2024/9/28-2025/6/25

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応用コース2つ目でIDICという考え方を学ぶ テレビ・シリーズStar Trek (1966- )の根幹をなすのは, 原作者Gene Roddenberry(1921-91)による ”infinite diversity in infinite combinations(IDIC)” (無限の組み合わせによる無限の多様性) という視点であり, そこから展開される世界は,様々な惑星の様々な種族が, 種族間の紛争を乗り越え,平和に共存しようとする 23・24世紀の未来の宇宙である。 引用:日本アメリカ文学会 ~Star Trek の中のアメリカ~

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国のメタファーで多様さを表現 システムコーチングでは個人や組織・チームについて 生きてきた環境、価値観、趣味趣向、人間関係など 様々な背景を国の文化で表現します それぞれが別の国を持ち、 それぞれの国を訪れることもできるし、 文化を互いに輸出入することもできる しかし、深く根付いた歴史的背景や文化を 完全に相互理解することは難しい 時にその相互理解の難しさに国と国が対立することもある 私たちはそれぞれが独自の文化を育んだ国を持っている だからこそ人と人との関わりはとても難しい Image generated with ChatGPT

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一人として同じ国の人はいない、無限に多様である 歩んできた人生、そこにある 喜び、悲しみ、苦しみなど、 宗教や性別などの カテゴリーでは表現されない 目に見えない多様さが 人の中には広がっている Image generated with ChatGPT

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ディープ・デモクラシー(深層民主主義)と呼ばれる声や感情 ディープ・デモクラシーは アーノルド・ミンデル博士により提唱された概念 ディープ・デモクラシーは声無き声とも表現される しかし、システムコーチングでは言葉だけでなく、 個人の喜び、悲しみ、苦しみなど 全く表出化しない感情もある 関係性の中に「常に存在するもの」と考える Image generated with ChatGPT

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真の多様さとは、カテゴリーを隔てることなく人の存在を尊重し、認めること 無自覚・自覚的にカテゴリー分けした人々 私たちがカテゴリー分けした人々は、実はそれぞれが異なる人生を歩み、 それぞれの人が心の中に異なる文化の国を持っている そして、人の中にあるディープ・デモクラシー、 すなわち、言葉にならなくとも、現実には存在している、 悲しみ、苦しみ、痛みなど・・・ 私たちはディープ・デモクラシーを言葉として受け取ることをせずとも、 ディープ・デモクラシ−の存在を尊重することが大切 全ての人は違う人であるからこそ、カテゴリーでの認知をやめること これが真に多様さを受け入れるということではないでしょうか

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学びを統合する

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矛盾している? 全ての人が多様である、と考えることは、 結果的に蓋をして見ないようにすることとあまり変わりがない しかし、どちらも大切なことである カテゴリーで 多様さを認知する 自分にある 認知バイアスに気付く カテゴリーでの 認知をやめる

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社会に表出化していないカテゴリーが存在する まだディープ・デモクラシーとして 表出化していないカテゴリーも おそらく存在する そして、社会が変化する中で新たな カテゴリーも生まれる 社会には 我々が認知していないカテゴリーが 無限に存在する可能性

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多様さ 私たちの根底にある認知メカニズムである カテゴリー化を無視して思考することは難しい 私たちが真に多様さの中で 生きていくためには カテゴリーがあることを認知し、 私たちの思考に存在する認知バイアスに気づく そしてまた、 カテゴリーでは表現されない多様さに気づく 自分の認知を循環させ、成長することが 私たちに必要なことではないでしょうか 変化する社会の中で循環させながら成長していく カテゴリーで 多様さを認知する 自分にある 認知バイアスに気付く カテゴリーでの 認知をやめる

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場に形成されるメンタルモデル

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個人の理解に留まってしまう ここまでの学びは 個人の理解を深めることの話でした しかし、組織や社会全体でこういった 理解を広めていくためには十分ではありません 今回のように 登壇して発信することで裾野は広がっていきます しかし、本当にこのような小さな活動でしか 良い社会は生まれないのでしょうか

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Regional Scrum Gathering Tokyo 2025年1月8日~1月10日 Regional Scrum Gathering Tokyo 2025が 開催されました 私は3回目の現地参加でした Regional Scrum Gathering Tokyo 2025は、 東京で行われるRegional Gatheringとして 14回目になります。 運営母体である 一般社団法人スクラムギャザリング東京実行委員会は、 スクラムを実践する人が集い垣根を超えて語り合う場を 提供するという目的によりコミットしています。 引用:Reginal Scrum Gathering 2025Webサイト -about event-

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Regional Scrum Gathering Tokyo このカンファレンスは どんなカテゴリーの人がいるかなどを 認知することなく、 全ての人が個として尊重され、 受け入れられている 全ての人の多様さを受け入れることを 体現している場であると感じました

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第三の存在は関係性が作り出す人格 システムコーチングの学びでは 関係性には第三の存在という人格が あると考える 「第三の存在」には知性や感情がある 人が歩んできた 人生・価値観・人との出会いなどで形成される 第三の存在も、その関係性の 歴史・価値観・属している人により形成される 第三の存在

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集団のバイアスというものが存在する 認知バイアスにおいても 「共同に関わるバイアス」が取り上げられる 認知的共感や相互作用により 集団の認知が形成されるというもの 引用(一部改):BLUE BACKS 認知バイアス 心に潜む不思議な働き 鈴木 宏昭 ~第8章 共同に関わるバイアス~ 集団には集団の力学というものがあり、 1人の行動を支配する原理とは 別の原理が働くのだ

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スクラムコミュニティの第三の存在 2023年に初参加したとき 私は多様性についての学びを ほとんどしていなかった しかし、既に個が尊重されている 雰囲気を感じており、実感もあった 私が個人としてのメンタルモデルとして 「多様さに生きる」価値観を 持ってなかったとしても集団の力学が働いた スクラムコミュニティには 既に「多様さに生きる」ための 集団としてメンタルモデルが形成されている 第三の存在

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多様性がイノベーションを生み出すと考える文化 ジム・コプリエンとニール・ハリソンは 「Organizational Patterns of Agile Software Development (邦訳:“組織パターン”ーチームの成長によりアジャイルソフト ウェアの変革を促す」) において多様性をパターンとして載せている 彼らは、多様性をイノベーションと、問題に対する解決策を 見つける能力を刺激する良い方法だと認めている 引用(一部改):マネジメント3.0 ~第4章情報ーイノベーションシステム~

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アジャイルの多様さを尊重される文化によって コミュニティの文化が醸成された スクラムコミュニティは アジャイルの価値観を持った 人々の集まり 自然な流れとして スクラムコミュニティに 多様さを受け入れる メンタルモデルが形成された

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スクラムコミュニティは正統的周辺参加を意識した文化醸成をしてきた 熟練者のアジャイルの価値観により コミュニティの文化が醸成されていった 文化に飛び込んだ新規参入者も徐々に 個人としてメンタルモデルを獲得していく 私もその1人になりつつある 引用:Reginal Scrum Gathering Tokyo スクラムギャザリングの歩き方

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個人の気づきが社会の変化へ

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始まりは個人の気づきから 私は昨年 Women in Agile 2024に 参加し、多様性について学び始めました その学びはもしかすると 社会の中では当たり前の話 だったのかもしれません しかし、私の人生にとって 価値ある学びを経験できました Women in Agileとの出会いに感謝しています Women in Agile 2024 システム コーチング 認知バイアス

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恐怖や不安を乗り越える時、人は大きく変化する エッジモデル (システムコーチングの考え方)

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恐怖や不安を乗り越える時、人は大きく変化する 「ジェンダー」とか 「マイノリティ」について話すの怖い 女性の社会での生きづらさを知り 認知バイアス・多様性に関する知識を得る

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一人一人が世界に影響を与える 私たち一人一人の活動が 世界に波紋を広がる 私たち個人個人の学びは 小さなものかもしれない しかし、私たちの一歩が 世界を変えていく一歩になる 引用(+意訳):CRR Global -world work- World Work embraces the idea that we are continuously impacting the world, whether we are conscious of it or not. ワールドワークは、 私たちが意識しているかどうかに関わらず、 私たちが世界に影響を与え続けているという 考えを大切にしています

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関係性の中にある文化を形成するのは個人の小さな一歩から 第三の存在としてのメンタルモデルを 作っていくのは結局のところ個人の集合体である 始まりは少人数かもしれません しかし、 個人個人が大切な文化や価値観を守りながら コミュニティや組織の願いが大きくなることで 関係性の文化に命が吹き込まれていくのです

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私たち一人一人の一歩が社会を変化させていく

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始まりは私たち一人一人の小さな一歩かもしれません Women in AgileやRSGTのようなコミュニティがあるからこそ、 社会はゆるやかに変化していくのだと思います しかし、小さな変化がいつか大きなうねりとなって 社会の変化をもたらすのだと信じています

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改めまして、Women in Agile Organizerの皆様には このような学びの機会、さらには発表の機会まで いただけたことを感謝申し上げます 本当にありがとうございました

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ご清聴ありがとうございました

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PR:システムコーチング®のクライアント募集してます 現在CRR Global Japanのシステムコーチングのプロフェッショナル実践コース を受講中です 資格取得のために100時間の実践が必要です クライアントになっていただける方 ぜひお声がけください 興味ある方で 一緒に受ける方の当てがない状態でも良いので ぜひお声がけください まずは無料相談へ!