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心理的安全性を学び直し、 「いい組織とは何か?」を考えてみる  株式会社インフィニットループ 土田 悠樹

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自己紹介 ● 氏名:土田 悠樹(つちだ ゆうき) ● 来歴 大学(経済学部)卒業後、フリーターを経て情報系の専門学校に入学。 その卒業後の2023年4月に(株)インフィニットループに入社し、 この春で2年目となる。 ● 趣味 音楽を聴くこと、スポーツ観戦、お酒を飲むこと 2

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入社から1年経って… ● 会社の雰囲気に慣れてきた ● 後輩が入ってきて、会社の雰囲気の中に入るのを助ける役割になった ● 「いい環境・いい組織の構築に自分も貢献したい」 という意識が強くなった 3

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「いい組織」ってなんだろう…? ● 人によって正解は異なる 例) 性格、立場、年齢、etc…が異なれば、理想の環境は違うものに ● よってこの場では、 「自分がパフォーマンスを出せる組織」と定義する。 … 自分から見て「いい組織とは何か?」を考えていく 4

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本スライドの進め方 これまでの人生のうち、「20代前半」「就職活動」「入社後」の3つの時期について、 ● 何を考えていたか、どんな壁にぶつかってきたか(自己分析) ● その際にどんな本や概念に出会い、どんな感銘をうけたか をそれぞれ振り返る。 そこから、 ● 自分から見た「いい組織」とはどんな組織か ● そのために自分は具体的に何ができるか を明らかにしていく。 5

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1. 「20代前半」 2. 「就職活動」 3. 「入社後」 6

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苦悩の多かった「20代前半」 ● 留年や就活の失敗、合わない職場… ● 「社会人に向いてない」と自分に自信が無くなってしまう ● ついには、 自分の行動が周りを不快にさせているのでは…?と、 自らの行動や言動に対して恐怖を持つように… 7

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1冊目『嫌われる勇気』 岸見 一郎, 古賀 史健 (2013) オーストリアの心理学者 アルフレッド・アドラーの思想を 哲学者と青年の対話形式で説明した本。 ”自由とは、 他者から嫌われることである” ”人間の悩みは、 すべて対人関係の悩みである” 8

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「目的論」 ● 「あらゆる結果の前には原因がある」とする「原因論」に対し、 「何か目的があってその結果を作り出している」とする考え方。 ● 例.) 「過去に失敗があって、不安だから発表できない」のではなく、 「発表したくないから、失敗のせいで不安だという感情を作り出している」 9

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「原因論」 10 「過去の失敗から来る不安」 原因 「発表できない」 「目的論」 「過去の失敗から来る不安」 目的 「発表したくない」 → 過去の経験(失敗)をどう解釈するかは自分次第。 … いま「発表したい」という気持ちを抱いたなら、  過去の失敗は「不安」ではなく「教訓」になる。 過去 現在

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「課題の分離」 ● 対人関係の課題は「自分の課題」と「他者の課題」に分離できる。 ● 「自分の課題」は「自分の信じる最善の道を歩むこと」であり、 それを他者がどう評価するかは「他者の課題」である。 ● 「他者の課題」には介入せず、 「自分の課題」には誰一人として介入させてはならない。 11

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「課題の分離」 12 自分の発言で 上司を怒らせてしまった 自分の発言 上司が怒ったこと 例.) 自分の発言で上司を怒らせてしまった ↑ 自分が反省すべきはこちらだけ

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少し恐怖が和らいだ ● 「過去の失敗があるからもう自分は何もできない」というのは思い込み … ”トラウマは存在しない” ● 他者の顔色を伺って行動を変えなくていい … 勇気を持って自分の行動を選択すればいい ↓ ● 一時期人前に出られなかったが、 再びアルバイトで働けるようになった 13

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とはいえ… ● 「目的論」の発想はとても面白いが、 自分としては「原因論」の方がしっくりくる … 「トラウマは存在する」 ● 他者のフィードバック無しに 「自分の信じる最善の道を歩むこと」ができるのだろうか? ↓ 他者と密にコミュニケーションを取り、 互いに影響し合う環境に身を置きたいと思うようになった 14

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1. 「20代前半」 2. 「就職活動」 3. 「入社後」 15

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「就職活動」 ● 就職活動の定番「どんな会社で働きたいですか?」という質問に対する答えを言語 化するため、色んな本を読んだ ● 最も共感したのは、当時脚光を浴び始めた「心理的安全性」という概念 16

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2冊目 『心理的安全性のつくりかた』 石井 遼介 (2020) 「心理的安全性」の紹介と心理的安全な 組織を作る方法が説明されている。 17

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「心理的安全性」とは何か? ● 1999年、エドモントン教授は「チームの心理的安全性」を提唱した。 ”対人関係におけるリスクを取っても大丈夫だ、という チームの中でメンバーに共有される信念のこと” 18

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「対人関係におけるリスク」とは何か? ● エドモントンによれば、「対人関係におけるリスク」は、 「無知」「無能」「否定的」「邪魔」と思われるリスクに分類される。 例) 1. 無知 だと思われたくないから、必要なことでも質問・相談をしない 2. 無能 だと思われたくないから、ミスを隠したり自分の考えを言わない 3. 否定的 だと思われたくないから、議論でも率直に意見を言わない 4. 邪魔 だと思われたくないから、必要でも助けを求めない 19

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● 対人関係におけるリスクがあるために心理的に安全でないチームでは、 挑戦することや個々の知識・経験をチームに還元することが難しくなり、 チームの学習が阻害されてしまう。 ● 「チームのために対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ」 という意識を植えつけることで、チームの学習を促進させ、 長期的にパフォーマンスを上げることができる。 20

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なぜ今「心理的安全性」が注目されているのか? ● 個人の価値観・ニーズの多様化や社会情勢の急変により、 「これを作れば作るだけ売れる」ような前例や正解が無い時代になってきた ● その様な時代では、コミュニケーションを取りながら、 暫定的な正解を模索し続ける必要がある ● 絶対的な正解に沿って「速く・安く・ミスなく」作れるチームから、 「実験・挑戦・失敗」を続けるチームへ 21

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心理的安全性の高いチームの特徴 1. フィードバックを早いうちから得られるので、 手戻りが減り、品質を高められる 2. メンバーは強さも弱さも見せあえるので、互いの強みを活かしあえる 3. 自由に発信ができるので、新しいアイデアが生まれやすい 22

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3冊目 『ザッソウ 結果を出すチームの習慣 ホウレンソウに代わる「雑談+相談」』 倉貫 義人 (2019) チームにおけるコミュニケーションを 「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」 から 「ザッソウ(雑談・相談)」 に変えることを主張している。 23

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「ホウレンソウ」から「ザッソウ」へ ● 報告と連絡は「決まった事実を一方的に伝えるもの」であって対話ではない … 相談は「決まっていないことについて対話し、議論すること」 ● 一方、雑談では必ずしも目的は必要ない。 … コミュニケーションを取ることに意味がある ● ”アイデアを生み出し、成果を生み出すために必要なのは、 気軽に雑談ができるチームであること。” … 気軽に雑談できる関係性があるからこそ、相談ができる 24

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ザッソウがもたらす6つの効果 1. 「単純接触効果」により、助け合いのできる信頼関係が構築される 2. 共通の価値観やカルチャーが醸成される 3. 社員のキャリアや将来の不安が少なくなる 4. 気軽なフィードバックで仕事の質や速度が上昇する 5. マニュアル化されにくい暗黙知が共有される 6. 自分たちで判断して仕事を進められる社員が育つ 25

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「どんな会社で働きたいですか?」 ● ”他者と密にコミュニケーションを取り、互いに影響し合う環境で働きたい” と思っていた自分にとって、心理的安全性はとても魅力的な概念だった。 ● 「自然体でいられる環境」で働きたいと前から思っていたが、具体的には… - 気兼ねなく雑談・相談ができる環境 - 気兼ねなく自分を発信できる環境 ならば高いパフォーマンスを出せると思った。 26

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1. 「20代前半」 2. 「就職活動」 3. 「入社後」 27

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「入社後」 ● 入社したての頃は日常的なコミュニケーションはともかく、 弱みや趣味を晒すことにまだ抵抗があった … 不快に思われるんじゃないかという不安・恐怖が払拭しきれてなかった ● 雑談をしていけばそのうち慣れて話せるようになるはず…と思いつつ、 自分のマインドセットをどこか変える必要があると思っていた 28

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4冊目 『Team Geek』 Brian W. Fitzpatrick, Ben Collins-Sussman 角 征典・訳 (2013) Googleでプログラマを経てリーダーを務めるよう になった著者が、エンジニアのチームの作り方を 説明する本。 29

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主張 ● ”ソフトウェア開発はチームスポーツである。” 広く一般的に利用されているソフトウェアの中で、 本当の意味で1人の人間が作ったものはいくつあるだろうか? ● ”あらゆる人間関係の衝突は、 謙虚(Humility)・尊敬(Respect)・信頼(Trust)の欠如によるものだ。” … 「HRT」という3本柱を使ったチームビルディングを推奨している。 30

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3つの柱「HRT」 ● 謙虚(Humility) 誰もが全知全能ではないし、絶対に正しい訳でもないと自覚する ● 尊敬(Respect) 一緒に働く人を思いやり、その能力や功績を高く評価する ● 信頼(Trust) 他者は有能であり、正しいことをすると信じる 31

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批判(フィードバック)について注意すべきこと ● 批判をする側は、相手を思いやり、「成果を改善してほしい」と願いつつ、 建設的な批判を行う。(尊敬) ● 批判を受ける側は、自らのスキルに謙虚になり、 他者は私とチームに恩恵をもたらすと信頼して耳を傾ける。 ● 批判とは個人に対するものではなく、その課題や書いたコードに対するもの … ”自分の価値を自分の書いたコードと結び付けてはいけない” 32

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5冊目(ブログ記事) 『「心理的安全性」は なぜ混乱を 招き続けるのか』 桂 大介 (2023) https://q.livesense.co.jp/2023/09/26/ 「心理的安全性」に関する誤解を解き、 その構築のためのヒントを提示している。 33

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引用 ● ”お互いに許容を示すことも多少は有効だが、 ほんとうに安全性を示したいのなら、 自分が率先して対人リスクをとるしか方法がない。” ● ”心理的安全性が教えてくれたのは、 保身を捨てる恐怖を乗り越えた先には、 実は安全が待っているということだ。” 34

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感じたこと ● 自分を晒せないのは他者を信頼しきれていないからではないか? … 嫌われることへの恐怖はここから起きているようだ ● 他者や環境に心理的安全性を求めるより、 まず自分からコミュニケーションを取りに行くべき … 相手もコミュニケーションを取っていいか迷っているかも 35

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実践した結果 ● 仕事・プライベート問わず、少しずつだが自分から発信するようにした … 社内のチャットで分からないことや興味を持っていることを積極的に書く … プライベートで使うSNSでも、自分からリプライを送るようにする ↓ ● 発信するたびに反応が帰ってきて、徐々に抵抗が無くなってきた ● 「自分がどんな人物か」知ってもらえるようになった 36

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まとめ 37

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自分から見た「いい組織」とは ● 雑談を含めたコミュニケーションが活発な組織 … 社員間の相互理解が深まり、互いに助け合いやすくなる … 現状の課題の解決策や新規事業に繋がるアイデアが生まれやすくなる ● HRT(謙虚・尊敬・信頼)が満たされた組織 … 意見をする側も受け取る側も安心してそれをぶつけ合える関係性 → 改善のためのフィードバックを得られやすくなる → 成長・改善の機会を増やせる 38

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自分は具体的に何ができるか ● 他者の発言に対して積極的にリアクションを返す … 「聞いてますよ」と伝わることで、「発言していい」という空気を作る ● 自分の情報をオープンにする … 強みも弱みも知ってもらうことで、助けたり助けられたりしやすくなる ● 自分からコミュニケーションを取りに行く … これも「発言していい」という空気を作ってくれる 39

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まとめ ● 「心理的安全性」が高まると、プロダクトの品質向上に繋がったり、 メンバー間の助け合いや新たなアイデアの発明が促進されたりする。 ● また、共通の価値観や信頼関係が醸成され、メンバーが定着しやすくなる。 ● その構築には、雑談 と HRT(謙虚・尊敬・信頼)が重要。 40

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ご清聴ありがとうございました