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「AI哲学マップ」企画の振り返り JSAI 2023 企画セッションKS-23「AI哲学マップ・総括セッション」 2023年6月6日 熊本城ホール 清田 陽司 (人工知能学会 前編集委員長, 株式会社LIFULL)

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学会誌「人工知能」レクチャーシリーズ 2001-2002 認知科学(全7回) 2002-2003 哲学とAIにおける対象世界モデリング (全7回) 2003-2004 AI研究者が学ぶ言語学の新展開(全 6回) 2005-2007 脳科学(全9回) 2007-2009 知能コンピューティングとその周辺(全 11回) 2009-2010 知能ソフトウェア工学(全5回) 2010-2011 サービスイノベーションとAIと教育(全 6回) 2011-2012 コンピュータ将棋の技術(全 7回) 2013-2015 人工知能とは(全11回) 2015-2017 つながりが創発するイノベーション(全 12回) 2017-2018 シンギュラリティとAI(全7回) 2019-2020 人工知能と今(全11回) 2021-2022 AI哲学マップ(全11回) 2023-2024 AI と社会と人間〜ぶつかる・なじむ・と けこむ〜

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レクチャーシリーズ「AI哲学マップ」企画のきっかけ ● コロナ禍という人類社会の危機に直面して、学会・編集委員 会として何ができるだろうか? ● AIマップβの新たな発展を図りたい ○ 6/13(金)14:00-15:40 企画セッションKS-13「コミュニケーションツール としてのAIマップ」(D会場) ● 故 長尾真先生「情報学は哲学の最前線」(2019) 清田 陽司, 三宅 陽一郎: アーティクル: レクチャーシリーズ「AI 哲学マップ」開始 にあたって
 人工知能 2021年1月号, p. 74-78 


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なぜ「AIと哲学」なのか?

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AIマップβ マップD「AI研究は多様、フロンティアは広大」

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AI分野の特異性 ● 各々の科学分野にあるべき「中心的な基礎理論」が存在しない ○ 「知能」の本質についてのコンセンサスはまだ得られていない ○ 「知能」の捉え方は複数存在する ■ AIマップβの技術マップだけで 5種類ある ● 方法論としての「構成論的アプローチ」のみが共有されている ○ 「知的なシステムを作って実際に動かす」ことで、知能の本質に迫ろうとしている ● 中空の中心を「哲学」で埋めてきた?

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異分野の人どうしが対話する意義 ● お互いの分野の枠を超えて、新たなフロンティアを切り開ける可能性 ● 異分野の人との対話から得た視点を持ち帰り、自らのコミュニティに投げかけること で、コミュニティの発展につなげられる可能性 ● cf. 対話研究会(2021年9月号 長尾先生追悼記事集を参照)

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第2次AIブームまでのAIと哲学 ● 学際研究活動「サイバネティクス」 ○ 数学者ノーバート・ウィーナーを中心に推進( 1940年代) ○ 脳とのアナロジーにより知能を計算機で実現するアプローチを探求 ○ フォン・ノイマン、アラン・チューリングにも影響を与えた? ● 第1次AIブーム収束時の動き ○ ALPACレポートによる基礎研究の必要性の指摘 [ALPAC 66] ○ フレーム問題の定義 [McCarthey 69] ● 第2次AIブームが喚起した哲学の議論 ○ 中国語の部屋 [Searle 80] ○ 一般化フレーム問題 [松原 90] ○ シンボルグラウンディング問題 [Harnard 90] ○ 記号主義とコネクショニズム [Russel 02]

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片桐恭弘先生の回想 …しかし、「現代思想」の議論は全くかみ合わなかった。哲学側は「コンピュータで人間の知能が説明でき るなどあり得ない、そもそもそんなことを考えるのが不遜だ」という論調。 AI側は「できるかどうかはやって みなければわからない、コンピュータを使うのは研究の方法論であって、方法論を頭ごなしに否定するの は理解できない」という論調。なんでこんな議論になるのだろうと不思議に思った記憶がある。この座談会 が掲載された「現代思想」が出版されてすぐに著名な経済学者に新聞紙上で「頭の固い計算機学者」のよ うに評されてしまった。 もっともAIと哲学の「感情的」すれ違いは日本だけの現象ではないようだ。 John McCarthyとともにフレー ム問題を提唱したPat Hayesはフレーム問題に関する論文を集めた本の中で哲学者がフレーム問題を全 く違う問題にすり替えてしまったと「怒って」いる。 斉藤 康己, 中島 秀之, 片桐 恭弘, 松原 仁 : アーティクル : AIUEOのはじまりからお わりまで, 人工知能, Vol. 35, No. 5, pp. 257-261 (2020), doi:10.11517/jjsai.35.2_257

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本レクチャーシリーズの挑戦 ● 現代社会が直面する諸課題に向き合い、哲学者とAI研究者の建設的な対話の場をつくる ● 人間と世界に関して細分化を重ねた学問の諸課題を、 AI研究というテーブルの上で再構築 する ● 第4次AIブーム、さらにその先で参照され得る議論をアーカイブとして残す

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「AI哲学マップ」 対談ゲストとテーマ

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本レクチャーシリーズからの発展 ● 総括記事(学会誌38巻1号〜3号) ○ 前編: 哲学から人工知能へ 15 の批判 ○ 中編: 人工知能—哲学対応マップ ○ 後編: 七つの哲学—人工知能コラボレーション ● 表紙企画「人工知能歴史絵巻」 ○ 対談で登場いただいた杉本先生、松原先生、谷口先生による監修 ● 出版企画

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第4次AIブーム(?)にどう向き合うか? ● 社会からのさまざまな要請に、受け身でなく主体的に「あるべき姿」を語る ○ 生成AI、大規模言語モデルがもたらす正負双方のインパクトを直視する ● 異分野の人々との対話・協働を積極的に行う ○ 哲学はすべての学問の基盤であり、異分野の人々との対話を促す ○ 予測できない未知の課題には、分野を超えた協働なしには向き合えない