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OpenTelemetry の Trace を中心 とした パフォーマンス改善 id:rmatsuoka Hatena Engineer Seminar #27 2023-11-16

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自己紹介 ● id:rmatsuoka ● 2023年新卒 ● Mackerel チーム ● アプリケーションエンジニア ● 母語は Go

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Mackerel

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Mackerel の特徴

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Mackerel は OpenTelemetry の Metric に対応します

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OpenTelemetry とは? ● テレメトリー (メトリック、 トレース、ログなど) の標準 仕様を定めている ● 仕様に基づいた計装ライブラ リの開発 ○ Go, Java, PHP, … ● OpenTelemetry Collector の開発

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テレメトリーを計装するア プリケーションやミドル ウェア ● 計装ライブラリをアプ リケーションに埋め込 む ● 一部のミドルウェアは OpenTelemetry Collector をつかって テレメトリーを計装で きる https://opentelemetry.io/docs/ OpenTelemetry の領域

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OpenTelemetry Collector ● テレメトリーの受信、処理、送信を行うエージェント

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テレメトリーを受信し て保存、表示するモニ タリングサービス ● Prometheus (metric) ● Jaeger (tracer) ● AWS X-Ray (trace) ● Mackerel (metric) など

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Mackerel の Otel 対応 ● OpenTelemetry が策定した Telemetry 送受信プロトコル OTLP によってメトリックを 受信 ● PromQL によってメトリッ クをクエリしてグラフに描画 画面は開発中のものです

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PromQL ● Prometheus に実装されているメトリックをクエリする 言語(式) ● たとえば ○ http_request_total{job=”prometheus”} ■ jobをキー, ”prometheus” を値に持つ属性を持った http_request_total のメトリックをすべて取得する ○ filesystem_usage / filesystem_capacity ■ ファイルシステムの使用率を計算する ● Mackerel では今回 PromQL エンジンを独自に実装して 提供します

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新卒初の仕事として… OpenTelemetry 対応へ向けてコンポーネントの開発・改善 をしています ● OpenTelemetry のメトリックを受信して DB へ保存 (writer) ● リクエストの PromQL を評価してメトリックを取り出す (reader)

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開発しているのはこのコンポーネント RDB Time Series DB Otel metric Reader (ECS) Otel metric Writer (ECS) Otel Collector Web Browser Mackerel あなたの server あなた メトリックのメタデータを保存 メトリックの時系列データを保存 OTLP によってメト リックを受信 PromQL を評価 してメトリック を DB から取得

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今回のお話する仕事 ● もともとこのコンポーネントは PoC であった ○ 実装の方針が正しいか調べるため ○ あまりパフォーマンスを意識した実装にはなっていなかった ● 実際のサーバーからメトリックを送信してブラウザから 見ようとすると重くて使い物にならない ○ 一つのダッシュボードを開くだけで Reader コンポーネントの CPU 使用率が 100 % になった ● 「コンポーネントのパフォーマンスを改善しよう!」

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パフォーマンス改善で大切なこと ● 計測 ○ ボトルネックを改善しなければ意味がない! ○ 推測するな、計測せよ ● どうやってボトルネックを見つける? ○ ツールは色々ある

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Trace を中心に計測してみた! ● Trace をする。さらにTrace で見つかったボトルネックを 他のツールを使うことによって掘り下げていくトップダ ウンの方法で計測 ● コンポーネント Writer / Reader どちらも Trace を使っ てパフォーマンス改善したが、今回の話は Reader に焦 点をあてる ● 「Trace を入れよう」とは id:lufiabb が言った ○ 曰く「タスクとしては Trace を入れて終わるつもりだったけど、 rmatsuoka がパフォーマンス改善を進められそうだから任せた」

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分散トレース ● ひとつのリクエストが処理される過程を追跡する方法 ● マイクロサービスやミドルウェアに「分散」している処 理を横断して追跡する ○ 今回の話では、横断はできておらず一つのコンポーネントだけ見 ています

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分散トレース トレースは「スパン」の木構 造で表すことができる。 Span B は Span A を親に持 ち Span C と Span D を子に 持つ Span A (例: http Handler など) Span B (use case) Span C (database access) Span D

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Go で trace を計装するのは 3 ステップ! 1. Tracer の initialize を追加 2. http.Handler を otelhttp でラップ 3. 計測したい関数に trace start/end の2行追加

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1. Tracer の initialize を追加 // main 関数あたりに trace の送り先を指定する traceExporter, err := otlptracegrpc.New(ctx, ...) ... -- nicepkg/tracer.go -- // pkg ごとに tracer を初期する var tracer = otel.Tracer("example.com/proj/nicepkg")

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2. http.Handler を otelhttp でラップ // リクエスト処理全体のスパンを生成してくれる。 // metric reader コンポーネントは net/http と互換性のある // github.com/go-chi/chi によって書かれている - handler := newNiceHandler() + handler := otelhttp.NewHandler(newNiceHandler(), “servername”, ...)

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1. 3. 計測したい関数に2行追加 // スパンを生成する func NiceFunction(ctx context.Context) { + ctx, span := tracer.Start(ctx, "SpanName") + defer span.End() + // function body }

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モニタリングサービスへ送信 ● 今回、トレーシングデータは AWS X-Ray へ送信した。 ○ AWS Open Distro for OpenTelemetry https://aws-otel.github.io/ ● ECS にあるコンポーネントのサイドカーにAWS が提供し ている ADOT Collector (AWS Distro の OpenTelemetry Collector) を立てた。

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こんな結果が得られる! スパン 緑の線: 実行時間

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結果を観察してみよう 同じ関数がループで呼 ばれている

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N + 1 問題 ● データベースへの問い合わせに発生する問題 ● 取り出すメトリック一覧を取得する RDB へのアクセス を1回 ● それぞれのメトリックの時系列データを Time Series DB から取り出すことをループで N 回実行 ● まとめて取得をするように変更して N+1 問題は解決

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一度に取得できる数に上限を入れる ● PoC では 検索結果の数の上限がなかった。 ● 数百, 千件ものメトリックを一気に取り出そうとして CPU を食い潰していた。

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N+1 問題は解決したが… db.Query がなぜか遅かったりする

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DB への特定のリクエストが遅いことを 発見 ● 特定の条件のリクエストだけが遅い ● 大抵のリクエストはそんなに遅くない ● テーブルはふたつある ○ メトリック (Mackerel のオーガニゼーションの ID や メトリック のタイプなど) ○ メトリックのメタデータ (メトリックの属性のテーブル、メト リックに従属している)

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DB へのインデックスを追加 ● DB の実行計画を`EXPLAIN ANALYZE` コマンドで見る ● メタデータテーブルの index の貼り方がマズかったこと がわかった ● 高速化のためメタデータテーブルを非正規化してオーガ ニゼーションID のカラムを追加した + ALTER TABLE <メタデータテーブル> ADD COLUMN "org_id" BIGINT; + CREATE INDEX on <メタデータテーブル> ("org_id", ...);

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PromQL への評価が遅い

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クエリによっては PromQL の評価が遅い ● Trace では PromQL を評価する関数が遅いことしかわか らない ● Go の プロファイラー pprof を使って調査

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(time.Time).Equal が遅い? ● 時間を表す構造体 time.Time が等しいかを調 べる関数 ● CPU の使用時間を多く占め ている ● この関数単体では遅くない はず

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(time.Time).Equal を沢山呼んでいた ● スライスの中から特定の時間をもつ構造体を探すとき に、ループで探していたことがわかった。 ● Equal メソッドを何度も呼んでいる。 - for _, dataPoint := range metric.DataPoint { - if dataPoint.Time.Equal(at) { - ...

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二分探索をする ● 構造体は時間でソートされていたので二分探索をするよ うにコードを変更 + idx := sort.Search(len(metric.DataPoints), func (i int) bool { + return metric.DataPoints[i].Time.Compare(at) >= 0 + })

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メモリの確保が激しい ● メモリを確保/解放する関 数mallocgc, や madvise なども CPU 使用時間を 多く占めていた ● メモリのプロファイラも 調査した

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メモリの確保を回避する 入力のバリデーションのたびに毎回正規表現をコンパイルし ていた - regexp.Match("[\x00-\x08\x0B\x0C\x0E-\x1F\x7F]", input)

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改善策 ● 正規表現を一度だけコンパイルする ○ 一般的な選択肢 ● 正規表現を使わない ○ 今回はこっち。制御文字がないか調べるだけなので正規表現を使 わずに済ました + strings.ContainsAny(input, invalidChars)

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こうした改善のおかげで * 改善前の遅いリクエストと全く同じものではないので参考程度に

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トレースを計装するときのヒント 1 トレースを自動計装してくれるミドルウェ アを使う ● github.com/uptrace/opentelemetry -go-extra/otelsql ○ DB へのクエリを保存してくれる

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トレースを計装するときのヒント 2 // フィールドを追加する // トレースにリクエストの情報を追加して、トレースの詳細に見る時に // 参考にすることができる。 // この例ではリクエストされた PromQL をフィールドに追加している。 ctx, span := tracer.Start(ctx, "eval", trace.WithAttributes( attribute.String("query", query), attribute.Int64("start", start.Unix()), attribute.Int64("end", end.Unix()), ))

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まとめ ● アプリケーションにトレーシングを導入するのは3ステッ プでできる ● タイムラインの図によってボトルネックが発見しやすい ● Trace の結果から DB の実行計画や pprof などの細かい 情報を見にいくトップダウンに改善ができた

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OpenTelemetry の Mackerel の beta 参加者募集! ● Mackerel「ラベル付きメトリック機能」ベータ版テスト お申し込みフォーム からお申し込みください ○ ブログ記事 [ なぜ Mackerel は OpenTelemetry のラベル付きメトリックをサポートす るのか - Mackerel お知らせ #mackerelio https://mackerel.io/ja/blog/entry/why-does-mackerel-support-open-telemet ry-labeled-metrics ] からフォームに飛べます