Link
Embed
Share
Beginning
This slide
Copy link URL
Copy link URL
Copy iframe embed code
Copy iframe embed code
Copy javascript embed code
Copy javascript embed code
Share
Tweet
Share
Tweet
Slide 1
Slide 1 text
航空機事故に学ぶ 事故の考察・再発防止 萩原 涼介 ( @raryosu ) 2021.05.15 1
Slide 2
Slide 2 text
航空機事故の発生率 2
Slide 3
Slide 3 text
航空機事故の発生率 0.000001% 3 ※ 2008年-2017年の米国航空会社定期便における飛行距離に対する死亡事故発生率の平均 [参考⽂献] 遠藤信介: 航空輸送100年 安全性向上の歩み, 公益社団法⼈ ⽇本航空技術協会, pp.1-2, 2019
Slide 4
Slide 4 text
4 [出典] 遠藤信介: 航空輸送100年 安全性向上の歩み, 公益社団法⼈ ⽇本航空技術協会, pp.1-2, 2019
Slide 5
Slide 5 text
今日のテーマ どのように航空機事故を減らしているのか? 我々のサービス運営に活かせることはないか? 5
Slide 6
Slide 6 text
自己紹介 6
Slide 7
Slide 7 text
自己紹介 萩原 涼介 7 @raryosu 株式会社ミクシィ TIPSTAR プロダクト開発2グループ マネージャー インターネット大好きマンだったけど、 最近あまりインターネットしてないマン
Slide 8
Slide 8 text
最近の業務 サービスを安定して運用できる仕組みづくり ⇒ エンジニアリング的なことも、非エンジニアリング的なことも 8
Slide 9
Slide 9 text
考えた 航空機事故の解説動画をよく⾒てるけど… これって結構仕事に役⽴つんじゃね?(単純) 9
Slide 10
Slide 10 text
航空機事故の事例 10 ⽇本航空駿河湾上空ニアミス事故 原因を想像しながら聴いてね😌
Slide 11
Slide 11 text
注意事項 事故に関する解説は、 公式記録(事故調査報告書)に基づいた 実話をもとに構成しています 11 [参考⽂献] 航空・鉄道事故調査委員会: 航空事故調査報告書 ⽇本航空株式会社所属 JA8904 (同社所属 JA8546 との接近), pp. 4-10, 2002
Slide 12
Slide 12 text
事故の概要 2001年1月31日 15時55分11秒、静岡県 駿河湾沖で2機の航空機が異常に接近 12 A: 日本航空907便(羽田→那覇) B: 日本航空958便(韓国→成田) 105〜165m 20m〜60m A の乗客乗員427名中9名が重症・91名が軽傷 A の機体の一部が損傷
Slide 13
Slide 13 text
事故の背景 事故当時、航空管制官 X(訓練中)・航空管制官Y(訓練監督)が管制 907便(A)は FL390(約 12,000m)へ上昇中 958便(B)は FL370(約 11,300m)を水平飛行中 13 管制官 X 管制官 Y 航空機 A (907便) 航空機 B (958便)
Slide 14
Slide 14 text
事故の流れ 管制官のレーダー画面上に、A と B が接近していることが警告される 14 航空機 A (907便) 航空機 B (958便) FL 367 (11,200m) FL 370 (11,300m) 15時54分15秒 (事故発生 56秒前)
Slide 15
Slide 15 text
事故の流れ 15時54分27秒 (事故発生 44秒前) 15 管制官 X A は FL350 まで降下してください 航空機 B (958便) FL 370 (11,300m) 航空機 A (907便) FL 367 → FL 350 降下開始
Slide 16
Slide 16 text
事故の流れ 16 15時54分34秒 (事故発生 37秒前) 航空機 B (958便) FL 370 から降下開始 航空機 A (907便) FL 350 降下中 (降下指示には従わない) A は上昇・B は降下せよ TCAS (空中衝突防止装置)
Slide 17
Slide 17 text
事故の流れ 17 15時54分55秒 (事故発生 16秒前) 航空機 B (958便) FL 368 降下中 航空機 A (907便) FL 367 降下中 (降下指示には従わない) 「957便」は上昇せよ(⾔い間違い) 管制官 Y
Slide 18
Slide 18 text
事故の流れ 18 15時54分55秒 (事故発生 16秒前) 航空機 B (958便) FL 368 降下中・降下率増加 航空機 A (907便) FL 367 降下中 B の降下率を増加せよ TCAS (空中衝突防止装置)
Slide 19
Slide 19 text
事故の流れ 15時55分02秒 (事故発生 9秒前) A は FL 390 まで上昇 管制官 Y 航空機 B (958便) FL 364 降下中 航空機 A (907便) FL 365 降下中 ※ A からの応答はなし。 回避操作に集中しており、呼び出しに気づけなかった可能性
Slide 20
Slide 20 text
事故の流れ 15時55分05秒 (事故発生 6秒前) B の機⻑は A を視認し、 回避のため機⾸を上げ降下率を減少 航空機 B (958便) FL 362(降下率減少) 航空機 A (907便) FL 363 降下中
Slide 21
Slide 21 text
事故の流れ 15時55分06秒 (事故発生 5秒前) A の上昇率増加せよ TCAS (空中衝突防止装置) FL 361 降下中 航空機 A (907便) FL 362 降下中 (降下指示には従わない) 航空機 B (958便)
Slide 22
Slide 22 text
事故の経過 22 A: 日本航空907便(羽田→那覇) B: 日本航空958便(韓国→成田) 105〜165m 20m〜60m 15時55分11秒 最接近 FL 355 降下中 FL 357 降下中
Slide 23
Slide 23 text
事故調査報告書による事故原因 23
Slide 24
Slide 24 text
事故原因の考察 • 管制官によるヒューマンエラー • 便名の取り違え • 直前に便名の似た便との交信があったこと • 訓練中の管制官への説明に忙殺されていたこと • 接近の警告レーダーの作動が遅れたこと • A 機機長による降下操作 • TCAS の回避指示と逆の操作を行う危険性の認識が不十分だったこと • 他の運航乗務員から適切な助言が行われなかったこと • TCAS に関連する対応訓練が行われなかったこと • 運行に関する規程類の不備 24 etc.
Slide 25
Slide 25 text
事故原因の考察 • 管制官によるヒューマンエラー • 便名の取り違え • 直前に便名の似た便との交信があったこと • 訓練中の管制官への説明に忙殺されていたこと • 接近の警告レーダーの作動が遅れたこと • A 機機長による降下操作 • TCAS の回避指示と逆の操作を行う危険性の認識が不十分だったこと • 他の運航乗務員から適切な助言が行われなかったこと • TCAS に関連する対応訓練が行われなかったこと • 運行に関する規程類の不備 25 etc.
Slide 26
Slide 26 text
管制官によるヒューマンエラー 訓練中の管制官 X に対し、監督者 Y が適切に対処しなかったことが 事件の発端であり、原因であると言える X はかなり接近した状態での接近警報により心理的に動揺 Y も同様に、気づいたときにはかなり接近していたことで動揺 それにより、便名の言い間違いなどが生じた 26
Slide 27
Slide 27 text
事故原因の考察 • 管制官によるヒューマンエラー • 便名の取り違え • 直前に便名の似た便との交信があったこと • 訓練中の管制官への説明に忙殺されていたこと • 接近の警告レーダーの作動が遅れたこと • A 機機長による降下操作 • TCAS の回避指示と逆の操作を行う危険性の認識が不十分だったこと • 他の運航乗務員から適切な助言が行われなかったこと • TCAS に関連する対応訓練が行われなかったこと • 運行に関する規程類の不備 27 etc.
Slide 28
Slide 28 text
A機機長による降下操作 管制官による降下指示と TCAS による上昇指示が相反した ↓ すでに管制官による降下指示に従っていたので これを変更することが心理的に難しかった また、管制官による指示が意図的に発出したと考えたこと、 B 機を視認していることから、降下を継続するのが適切と判断 28
Slide 29
Slide 29 text
事故原因の考察 • 管制官によるヒューマンエラー • 便名の取り違え • 直前に便名の似た便との交信があったこと • 訓練中の管制官への説明に忙殺されていたこと • 接近の警告レーダーの作動が遅れたこと • A 機機長による降下操作 • TCAS の回避指示と逆の操作を行う危険性の認識が不十分だったこと • 他の運航乗務員から適切な助言が行われなかったこと • TCAS に関連する対応訓練が行われなかったこと • 運行に関する規程類の不備 29 etc.
Slide 30
Slide 30 text
運行に関する規程類の不備 国交省による規定では、 TCAS と管制指示が相反する場合の優先順位は規定されていなかった 一方、国際的には TCAS による回避指示に従うよう定められていた 一方は管制官に・一方は TCAS に従うことにより発生した事故 優先順位が明記されていなかったのは制度上の重大な不備 ※ TCAS の指示内容は地上の管制官には伝達されない 30
Slide 31
Slide 31 text
我々に活かせることは? 31
Slide 32
Slide 32 text
事故の発生原因を考察するときに考えること 事故発生時に考えるべきことは「直接的原因」だけでなく その背景や、オペレーションを行っている人間の「心理状況」も考慮 焦っているときには正しく操作できない チームの状況が良くないときには正常な判断ができない お酒を飲んでいるときには想定外のことに対する対応が難しい… 等 32
Slide 33
Slide 33 text
再発防止策 事故の再発防止は、しっかりとした事故原因の考察が必須 今回解説した事故では、以下の対応 ・TCAS の作動状況を管制官が見れるように変更 ・TCAS と管制官の指示が相反する場合は TCAS に従うよう明記 ・管制官の教育訓練強化 33
Slide 34
Slide 34 text
最後に 34 事故原因の考察・再発防⽌の重要性とは?
Slide 35
Slide 35 text
ユーバーリンゲン空中衝突事故 駿河湾沖接近事故が発生した、1年半後 ドイツのユーバーリンゲン上空で航空機2機が衝突 両機の乗員乗客71名は全員死亡 35
Slide 36
Slide 36 text
事故原因 ・管制官の指示ミスと、TCAS 無視 ・夜間であり、視界が悪く両機を視認しづらかった 36
Slide 37
Slide 37 text
事故原因 ・管制官の指示ミスと、TCAS 無視 ・夜間であり、視界が悪く両機を視認しづらかった 37 ほぼ、今回の事件と同じ原因
Slide 38
Slide 38 text
なぜ? 国際民間航空機関は、駿河湾沖の事故について調査を実施せず ⇒ 事故の原因と再発防止策を国際的に共有できなかった 38
Slide 39
Slide 39 text
航空機事故に学ぶ 事故の考察・再発防止 萩原 涼介 ( @raryosu ) 2021.05.15 39