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卒業論文の書き方 高久雅生 (筑波大学図書館情報メディア系) [email protected] 1 初版作成: 2019年11月16日 最終更新: 2023年9月11日

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全体方針 • 要件を確認する:〆切、分量 • 構造化しながら書く ✓ 全体の構成(アウトライン)は、IMRADに準ずる ✓ 細かな文章は、パラグラフライティングに徹する • 書きやすい部分から執筆を進めること ✓ 第1章から順序よく進めなくてもOK  例えば、手法の説明は事実を書くだけなので、まだ実験結果が出ていなく ても書けるはず ✓ 一方で、IntroductionやDiscussionはストーリー(ロジック)が重要 なので、時間をかけて検討する必要あり  こまめに指導教員に相談すること ✓ まずは、全ての章に何かが書いてある状態(第0版)を目指そう • 一回で書き終わることは無いので、計画的な執筆を! ✓ 指導教員とのあいだで最低でも3~4往復程度のやりとりが必要 • できれば LaTeX で書く 2

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参考文献 • 世の中には文章作成法、さらには論文作成法に ついての文献が多数あるので、適当なものに目 を通して読んでおくと参考になると思う ✓ 図書館でNDC:816.5(論文)の棚をながめてみる とよい • 個人的には以下の2冊は参考になると思う 3 木下是雄. 理科系の 作文技術. 中央公論 新社, 1981, 244p. ISBN: 4-12-100624-0 酒井聡樹. これから論文 を書く若者のために. 究 極の大改訂版. 共立出版, 2015, 326p. ISBN: 978-4- 320-00595-2

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全体方針:要件の確認 • 以下をよく読んでおくこと ✓ 学類公式サイト → 「学生支援情報」 内の 【20XX年度卒業研究情報】  知識情報・図書館学類における卒業研究  卒業論文書式 • 卒業論文とは? ✓ 卒業研究はみなさんが初めて取り組む研究活動であり,小さいながらも知識情報学分野の研究テー マに自律的に取り組んで,その方法論的基盤を獲得することを目標にしています.その達成プロセ スとして,研究の実施,卒業論文の作成,その成果の発表がみなさんに求められます. • その評価は? ✓ 最終発表会に出席した主専攻担当教員および協力教員が「優れている」「十分」「不 十分」の記名評価を行います.教員は以下の五つの判断基準のひとつ以上に該当する と判断した場合に「不十分」の判定を下します.  仕事, 課題, 手法, 結果, 論理 • 分量や様式は? ✓ 抄録(A4; 1ページ) ✓ 卒業論文(PDF)  標題紙, 目次, 本文, 参考文献を必ず含む  本文の分量は12,000字以上 4

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全体方針 構造化(パラグラフライティング)の徹底 • トップダウンに全体の構成を構造化(アウトライン 化)して考えること ✓ 論文全体 → 章 → 節 → パラグラフ → 文 ✓ 章のなかの節レベルの検討は後回しでよい 長すぎるようならあとから分けるので十分 重要なのは、章とパラグラフの2つ • パラグラフのレベルで何を書くべきか落とし込めれ ばあとはひたすら内容を文として埋めていくだけ ✓ 穴埋めとして文章を執筆していく ✓ 逆に、文が書き辛いようだと、その個所のパラグラフ の流れ(ロジック)があいまいで不十分であることを 暗示している 5

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全体の構成:IMRADとは 6 •Introduction ✓ はじめに •Methods (Materials and Methods) ✓ 提案手法 •Results ✓ 結果 •and •Discussion ✓ 考察 研究課題は何か? なぜ取り組むのか? どのように研究に取り組んだか? どのような結果が得られたか? その結果からどのような ことが言えるのか?

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全体の構成:IMRADの章構成 • 具体的には以下のような章構成が想定できる ✓ 1. はじめに Introduction ✓ 2. 関連研究 ✓ 3. 提案手法 Materials & Methods ✓ 4. 結果 Results ✓ 5. 考察 Discussion ✓ 6. おわりに ✓ 謝辞 ✓ 参照文献 ✓ 付録 • ただし、上記の3・4章の部分は研究テーマによって変わっ てくるので、厳密にこれを守らずともよい • ※関連研究部分を考察の章で書く流儀もある 7

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1章:はじめに • 「なぜこの研究が必要なのか」を書く • 具体的には以下のような内容を順序だてて、意味が通るように説得的になるよ うに主張していく ✓ 研究の背景  そもそも、あなたがやろうとしている対象領域はどういうモノなのか?  実践や産業上または社会的な要請があるなら、それがどういったものかを一から説明すること  できれば数字を出すこと(潜在的な利用者の数;対象データの数など) ✓ 研究の意義  社会的に求められている? 誰が求めている?  他の研究者たちはどのような形で取り組んでいる? ✓ 研究の新規性  他の研究者たちが取り組んでいない OR 取り組みが弱いところはどこなのか?  他の研究との差別化はどのような感じ? ✓ 研究の目的 & 貢献 & RQ  研究の目的を簡潔に述べる  何を知りたいのかをRQ(Research Question)として明示する  加えて、研究の貢献は何か? • 自分の主張を補強できる部分があれば、積極的に他者の文献を参照すること ✓ 次の章(関連研究)とは役割が違うので、同じ文献を2つの章で2回参照することになる 8

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2章:関連研究 • 自分の研究を位置づけるための説明 • 研究領域を体系立てる作業が必要 • いくつかの軸・観点をつくって、それら を節に分けながら解説する ✓ 2~3の研究(参照文献)がひとつのパラグ ラフになるように説明する ✓ 各節の最後に、自分の研究との違いと類似 点を簡単にまとめておく 9

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3章:提案手法 • Materials & Methods の章は研究テーマによって 説明の仕方が大幅に変わる ✓ 検索システムの提案ならば、「提案手法」でよい が、ユーザ実験による○○の解明といったテーマ ならば、「実験」というタイトルになるかもしれ ない… • できるだけ一般化した(汎用的な)手法として 説明する ✓ 個別のデータセットとは独立した説明を検討する こと 場合によっては対象データの説明は、結果の節で述べて もよいかもしれない 10

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4章:結果 • 取得したデータをまとめて結果として示す ✓ 学位論文の場合は、ページ数上限が無いため、全ての分析可 能なデータをすべて書き出してしまうつもりで説明していく • 図表等でわかりやすくまとめる ✓ 図表には番号を付け、すべての図表は本文で図表番号付きで 参照しながら説明すること  例えば:「~~の結果データの分布を図1に示す。」 ✓ 作図する場合は、箱ひげ図・棒グラフ・散布図などでの表現 を用いる  円グラフでの表現はできるだけ避けること • 量的データについては統計検定を行って有意な差(偶然の 差でない)かどうか確認する ✓ t検定, 分散分析 11

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5章:考察 • 前章で出した結果を解釈する ✓ 場合によっては、新たにクロス集計的にまとめなおしたデー タを示しながら ✓ なぜそのような結果となったのか ✓ なにが要因として考えられるか • うまくいっている点とうまくいっていない点など、要素分 解しながら整理して検討を加えること ✓ 将来の自分または研究室の後輩などが読んだときに参考にな るように記述する • 場合によっては、自分の研究の解釈にとって、保留すべき 項目を「限界点」などの節を設けて説明すること ✓ 例えば、対象としたサンプルデータや実験参加者数の不足や 偏りが、実験結果の解釈に制限を与えている点など 12

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6章:おわりに • 1章で説明した研究の目的と対になるように、結論 を述べること ✓ 研究の目的が「効果的な検索手法を提案する」であれ ば、結論では「効果的な検索手法を提案した」となる ように対応している必要がある • 可能な限り、具体的な数値に基づいた記述を含める こと ✓ 「A手法よりもB手法が効果的であることが明らかと なった」 → 「A手法よりもB手法がX指標で70%の改善 となり、効果的な手法であることが明らかとなった」 • 最後に、将来にこの分野を研究しようとする人に向 けて、「今後の課題」をまとめておくとよい 13

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抄録の書き方 • おおまかにでも全体を書き終えてからの 方が書きやすい ✓ 結論部分からの抜粋ですませばよい • IMRADの各要素がバランスよく書かれて いるか確認すること ✓ 背景部分だけで半分を埋めてはいけない ✓ 目的を明確に述べたうえで、手法と結果、 考察の部分が主となるようにする 14

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(参考)LaTeXの使い方 • 卒論テンプレ ✓ (Overleaf) https://ja.overleaf.com/latex/templates/klis-thesis/hvbfzckzcnck ✓ (Github) https://github.com/masao/klis-thesis-template • 相互参照機能を使おう ✓ 番号を振る作業はすべてLaTeXに任せてしまうほうがよい ✓ 図・表や章節、参照文献には意味のある識別子(ラベル)を振る  図表・章節の場合は ¥label{fig:overview}, ¥label{tab:precision10-topics}, ¥label{sec:results-comparison} など  悪い例1: 「システムの全体像を図1に示す。」 ➢ ¥ref機能を使わずにべた書きするのはやめよう • 「システムの全体像を図¥ref{fig:overview}に示す。」などとすること。 ➢ 図表番号の数字を手で書いてしまうのは後から別の図を差し込んだ時にずれてしまうので避けよう  悪い例2: 「システムの全体像を図¥ref{zu1}に示す。」 ➢ 図表番号ではないが、識別子が意味のある文字列になっていない場合、あとから、どの図を何の意味を持っているかの対応 付けが困難になってくるので避けたい ➢ 上の例と同様、図番号をそのままラベルにしてしまうと、別の図を挿入した場合にラベルの意味が混乱しやすくなるため • 参照文献 ✓ 参照文献は出現順に番号付で参照するようにする ✓ 厳密にSIST02形式である必要は無い  重要なのは、SIST02の書式例に厳密に従う必要は無く、SIST02の書誌要素が十分に盛り込まれていて、書誌要素の間が 明確にデミリタ(カンマやピリオド等)で区切られていること  BibTeXを使う場合、標準的なスタイル junsrt で十分 15