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1 2025.01.25 Tokyo.R 複式簿記から純資産を排除する - データフレームに馴染む簿記を考えた -

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2 お金の記録を分類する 減るちゃん 増えるくん

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3 お金の記録を分類する 距離的概念 ちゃん 速度的概念 くん

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4 複式簿記では5種類に分類します そんなのあり?

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5 純資産を取り除いてみる こっちの方がよくない?

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6 距離的概念 速度的概念 減る 増える 減る 増える

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7 純資産を排除する動機 純資産の本質: 純資産は資産の一部 資産に内包するモデルのほうが単純で直感的 これ何?

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8 純資産を排除する動機 正負の符号導入による簿記の簡素化: 借方・貸方という概念を符号の正負に置き換えたい 借方 借方 貸方 貸方 + - + - 負債:負の資産 収益:負の費用

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9 距離的概念 速度的概念 貸借対照表 損益計算書

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10 純資産を排除することで得られるもの 勘定科目の分類を簡素化: 「資産」と「費用」の2つに整理

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11 純資産を排除することで得られるもの 標準的な代数表記が可能に: 正負の符号を活用 仕訳を数学的に記述できる 専門的な知識が不要 誰でも理解しやすい

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12 純資産を排除することで得られるもの 学習コストの削減: 分類や用語が減る 学習コストが大幅に削減 直感的に理解できる

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13 純資産を排除することで得られるもの データフレームとの相性がよい: 場合分けが減る 例) 収益が費用より多い場合、損益は収益 - 費用 収益が費用より少ない場合、損益は費用 - 収益

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14 商品を販売して売掛金とした • 借方:売掛金(資産) 300,000 • 貸方:売上(収益) 300,000 • 売掛金(資産) +300,000 • 売上(費用) -300,000 収益の増加は費用の減少を意味し、それを負の値で表現しています。 数値の合計は0となり、貸借一致の概念を自然に表現できています。

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15 資本金の増加 • 借方:普通預金(資産) 1,000,000 • 貸方:資本金(純資産) 1,000,000 • 普通預金(資本金 | 資産) +1,000,000 純資産に関する取引が存在しない体系ですので、資産が増えるのみです。 増えた資産が「資本金」であることは記録として残しておきましょう。 取引ではないので、この仕訳に貸借一致性はありません。

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16 売上原価を求める 期中の仕入 • 借方:仕入(費用) 7,000 • 貸方:現金(資産) 7,000 期中の売上 • 借方:現金(資産) 9,000 • 貸方:売上(収益) 9,000 期首棚卸在庫を仕入に戻す • 借方:仕入(費用) 700 • 貸方:繰越商品(資産) 700 期末棚卸在庫を仕入から外す • 借方:繰越商品(資産) 1,400 • 貸方:仕入(費用) 1,400 上記の仕訳から売上原価を計算します。 期中の仕入が7,000、期首棚卸在庫700を仕入 に戻しました。それは仕入に足します。期末 棚卸在庫1,400は仕入から外しました。それは 仕入から引きます。したがって売上原価は 7,000+700-1,400=6,300と計算できます。 期中の仕入 • 仕入(費用) +7,000 • 現金(資産) -7,000 期中の売上 • 現金(資産) +9,000 • 売上(費用) -9,000 期首棚卸在庫を仕入に戻す • 仕入(費用) +700 • 繰越商品(資産) -700 期末棚卸在庫を仕入から外す • 繰越商品(資産) +1,400 • 仕入(費用) -1,400 上記の仕訳から売上原価を計算します。 仕入の行を抽出し、全ての値の合計を求めま す。売上原価は7,000+700-1,400=6,300と計 算できます。

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17 損益を繰越利益剰余金に振り替え • 借方:損益(収益と費用の差) 1,000,000 • 貸方:繰越利益剰余金(純資産) 1,000,000 • 損益(繰越利益剰余金 | 資産) +1,000,000 収益が費用より大きい場合の説明です。 純資産に関する取引が存在しない体系ですので、資産が増えるのみです。 増えた資産が「繰越利益剰余金」であることは記録として残しておきましょう。 取引ではないので、この仕訳に貸借一致性はありません。

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18 繰越利益剰余金を利益準備金に振り替え • 借方:繰越利益剰余金(純資産) 800,000 • 貸方:利益準備金(純資産) 800,000 • 繰越利益剰余金(利益準備金 | 資産) +800,000 • 利益準備金(繰越利益剰余金 | 資産) -800,000 純資産同士の振り替えは資産同士の振り替えとして記録します。 増減した資産が「利益準備金」「繰越利益剰余金」であることは記録として残しておきます。

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19 仕訳の書き換えルールまとめ 1. 借方の金額は正、貸方の金額は負とする。 2. 負債は資産に書き換える。 3. 収益は費用に書き換える。 4. 純資産の仕訳は行わないが、相手側の仕訳に純資 産の勘定科目名を記録する。 5. 純資産同士の振替は、資産同士の振替として仕訳 する。相手側の仕訳に勘定科目名を残す。

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20 この変更で失うもの 負債と収益に関する直接的な情報を失います: 費用が 「借方の費用」だったのか 「借方の収益」だったのか 区別できません。 とは言え、別に困りません。

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21 この変更で失うもの 慣れるまで、正負の考え方に混乱するかも: 「収益」の概念を負の値で考えることを不自然だと 感じる方もいると思います。 それでも、正しく計算できます。 ぜひいろいろな仕訳を書き換えて試してください。 実は(資産と費用ではなく)資産と収益に整理することもできます。 その場合、借方・貸方と符号の正負の対応が失われます。 今回は、借方・貸方と符号に互換性がある体系を選びました。

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22 この変更で失うもの 純資産に関する取引記録は消滅: 代わりに資産の増減を記録しますが、これには貸借 一致性がありません。 とは言え、別に困りません。

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23 変わらないもの • 純資産の管理が可能です。資産の一部として記録 しています。 • 借方、貸方は符号の正負と対応しています。 • 勘定科目名は変わりません。 • 取引の仕訳では貸借一致性が維持されます。

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24 純資産を排除する意義 • 簿記の概念を大幅に単純化 • 初心者でも理解しやすい体系 • 学習コストを大幅に削減 例えば、場合分けが減ります。

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25 従来の簿記の課題 • 借方・貸方や純資産など多くの複雑な概念 • 理解のハードルが高い。 簿記の本質は「グループ別の集計」

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26 新体系の利点 • 体系を簡素化 • 本質をより直感的に理解できる • 専門家だけでなく幅広い層が活用しやすい

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27 Q:株主資本等変動計算書は作成できる? A:できます。 株主資本等変動計算書は1年間の純資産増 減レポートです。 純資産は資産の一部として記録しています。 記録に従ってグループ別集計するだけです。

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28 Q:学校法人会計や公会計における純資産 も扱えますか A:扱えます 純資産は資産の一部として管理可能です。 資本金と違って基本金は取り崩せないな ど、運用ルールの違いはありますが、簿 記の構造とは無関係です。

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29 もっと過激な簿記も考えたい • 「複式」をやめたい もっと普通に考えたい。そもそも貸借一致なんて 必要ないよね。速度を積分したら距離が求められ る。片方だけの記録でよいはず。資産 = -Σ費用。 • 勘定科目名から正負の情報を無くしたい 「買掛金」は負の「売掛金」である。