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制作準備概論 作り始める前に 24.04.24 稲⽥和⺒ 1 スライド共有OK! ● #mastival2024 で盛り上げてください ● 机の上の資料は⾃由に⾒てOK

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⾃⼰紹介 稲⽥ 和⺒(いなだ‧かずみ) ● mast17 ● ⾦先⽣(情報デザイン)の研究室 ● デザイン‧メディアアートなど 2

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4 ……ほんとうにこれだけ?

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今⽇はここを考えます 5 このへんは分野依存 詳しい⼈が他にもいる

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● いい「モノ」はすべて膨⼤なINからできている ● ❌ 勉強 ではなく ⭕ 経験 ○ 好きなものをたくさん⾒て吸収する ○ 技術を覚えるより、作りたいものが先にある⽅が良い → どうやって出会い、学ぶのがよいのか インプットがないと、アウトプットも出来ない 6

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本⽇のおしながき ● おもしろいモノ(展⽰)にはどうやったら出会えるか ● どこをみればいいのか ● そのあとなにをすればいいのか 7

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最近なにか「展⽰」を⾒に⾏った⼈? 8

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「展⽰」を⾒られる場所 ● 博物館(美術館‧科学館) ● ギャラリー ● イベント ● 店舗など…… 9 近隣かつ稲⽥がよくいくところからいくつか

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● ⽇本科学未来館(お台場)先端技術‧⽴体視ドームシアター ● 国⽴科学博物館(上野‧つくば)⾃然科学‧⼯学 ● 東京国⽴博物館(上野)歴史⽂化 ● インターメディアテク(東京)歴史‧メディア ● つくばにもある ○ エキスポセンター、地質標本館、JAXAスペースドーム、地図と測量 の科学館…… 博物館‧科学館 10 近隣かつ稲⽥がよくいくところからいくつか

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● 東京都現代美術館(清澄⽩河) ● 森美術館(六本⽊) ● 国⽴新美術館(六本⽊) ● NTTインターコミュニケーション‧センター(初台) ● ⽔⼾芸術館 現代美術ギャラリー(⽔⼾) *ギャラリーというものの、規模的には美術館に近い(定義からは外れる) 美術館 11 近隣かつ稲⽥がよくいくところからいくつか

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企画展‧コレクション展の違い ● 企画展 ○ テーマのもと作品を集めて展⽰する ● コレクション展(or 常設展) ○ 館蔵品を中⼼に紹介する ○ 「美術館のおすすめ」が出ていることも ○ たいていは企画展と⼀緒に⾒れる 12

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13 宮島達男《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》 Keep Changing, Connect with Everything, Continue Forever いつでも会える、おなじみの存在としてのコレクション

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ギャラリー ● ⼩さい展⽰空間 ● 作品を販売しているものもある ● 貸しギャラリーもある ● 初めて⼊るのはやや怖い ● 規模的には⾃分たちに近く、学 ぶものが多い 14 ⼾⾕成雄『視線体:散から連 連から積』 Shugo Arts(六本⽊)2022

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15 横⼭奈美「遠くの誰かを思い出す」ケンジタキギャラリー六本⽊(六本⽊)

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野村在 「君の存在は消えない、だから⼤丈夫」資⽣堂ギャラリー(銀座) 16

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ギャラリー ● ⼤⼿企業の企画によるもの ○ 資⽣堂ギャラリー、エルメスギャラリー…… ● 所属アーティストによるもの ● 条件のもとで貸し出しているもの 17 ● 多くの場合は⾃由に出⼊りしてOK ● ハンドアウト(配布物)も⾃由にもらってよい ● スタッフさんは基本的に声をかけてこない

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つくばのギャラリー ● ちなみにつくばにもある ○ ネオつくば、千年⼀⽇珈琲、アート ギャラリー布々…… ● なんと⼤学にもある ○ T+、芸術系ギャラリー、⼤学会館 ギャラリー…… 18 筑波⼤学アートコレクション選2023-Ⅱ『オマージュ⽯膏像—東京⾼等師範学 校の遺産』芸術系ギャラリー(2023)

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どこをみればいいの? 19 きょうは、展⽰形式∕⽂章∕施⼯⽅法について

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「展⽰形式そのもの」 ● 展⽰にも技術の上⼿い‧ヘタがある ○ ⽩いきれいな空間に置けばOK、ではない ○ どう置くか⾃体にも意味をもたせることができる ■ 配置場所 ■ 他の作品との関係 ■ 什器(台座等)の有無 ● 評価基準をつくるとすれば: 「作品の魅⼒‧個性をいかに引き出せるか」 20

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21 アントニー‧ゴームリー『反映∕思索』東京国⽴近代美術館 画像出典:https://www.momat.go.jp/collection/s00377 対称な2体の彫刻 ガラスで視覚効果を作る

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22 アントニー‧ゴームリー “Two Times II” 東京オペラシティ エレベーターホールの 空間構造に呼応させる

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23 ロン‧ミュエク 『スタンディング‧ウーマン』 ⼗和⽥市現代美術館

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24 光線環境の変化する場所 表情の変化をつくる

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25 『ダミアン‧ハースト 桜』 国⽴新美術館(2022)

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26 『ダミアン‧ハースト 桜』 国⽴新美術館(2022) 巨⼤な展⽰室をお花⾒のような、 にぎやかな空間に

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27 『マーク‧マンダース マーク‧マンダースの不在』東京都現代美術館(2021)https://youtu.be/Zlt1g2Sn28Q 同じ作品を形を変えて何度も展⽰

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28 『マーク‧マンダース:保管と展⽰』 東京都現代美術館(2021) 参考:マーク‧マンダース、ふたたび。東京都現代美術館で特 別展⽰「マーク‧マンダース:保管と展⽰」 - 美術⼿帖(2021 年7⽉17⽇) https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/24333 「マンダースの不在」展では、個々の作品を精緻に 配置することで、作品間の関わりを辿る「一つのセ ンテンス」の実現が企図されていましたが、本展示 では、個々の作品がセンテンスを構成する以前の、 いわばバラバラな単語の集合体として、一種中間的 な状態が提示されます。同じ作品でありながら全く 別のインスタレーションとなります。 (美術館ステートメントより)

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29 マーク‧マンダース《狐∕⿏∕ベルト》

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31 ポスト出典:https://togetter.com/li/1797064 場所選びも展⽰づくりの作業のひとつ 違った観客との関わりが⽣まれるかも?

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映像の展⽰って難しくない? 32

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33 ジャン‧シュウ‧ジャン(張徐展) 《熱帶複眼》 https://youtu.be/rbWkZ38a5OI

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34 六本⽊アートナイトに出品 作品と場の魅⼒を引き出すには どう展⽰するのがよい?🤔

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35 ジャン‧シュウ‧ジャン(張徐展) 《熱帶複眼-動物故事系列》六本⽊アートナイト2023 路上になにやらいかつい物量のセットが登場 LEDビジョン、スピーカ8本!

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36 ジャン‧シュウ‧ジャン(張徐展) 《熱帶複眼-動物故事系列》六本⽊アートナイト2023 https://twitter.com/nandenjin/status/1662413228893433867

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37 画像(左)出典:六本⽊アートナイト2023に 台湾アーティスト張徐展の動画作品『熱帯複眼』出展 - 台北駐⽇経済⽂化代表処台湾⽂化センター https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000193.000042392.html 眩しい映像と突き抜ける⾳、屋外とは思えない迫⼒の映像体験 👆(楽⼠の⼈形がスピーカーに載っている)

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38 『佐藤雅晴 尾⾏-存在の不在∕不在の存在』⽔⼾芸術館(2021) 記録映像:https://youtu.be/UyjpONS1n7o ループするアニメーションが作る、淡々と流れる時間 優しいが底なしの恐さがある空間……

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39 『佐藤雅晴 尾⾏-存在の不在∕不在の存在』⽔⼾芸術館(2021) 👆トイレ前にトイレットペーパーの映像がある 👇向かい合った壁に展⽰されている

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デザインも難しくない? 40 デザイン作品は展⽰空間のためのものではない。 展⽰空間で魅⼒的になる形に作り直さないといけないかも

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42 『未来のかけら』21_21 DESIGN SIGHT(開催中)より、nomena+郡司芽久 進化の過程で⽣まれたデザインを 触って感じられる模型に

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43 『未来のかけら』21_21 DESIGN SIGHT(開催中)より、⼭中俊治+マンフレッド‧ヒルド《Apostroph》 デザイン作品の中⼼は モノではなく思考のプロセス?

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44 『ジャン‧プルーヴェ 椅⼦から建築まで』東京都現代美術館(2022)より、《「メトロポール」チェア》 椅⼦の前脚を浮かせて傾けるのが 好きだった作家。 構造がわかるようにバラして⾒せる

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実は稲⽥も 《住⼈たち》(2019/2021) ● 建物が作品 夜しか観れない ● コンペで実会場展⽰の 必要が発⽣ ● どないすんねん 45

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46 会場に置けるモノを作ることにした 👆サイズ感覚が崩壊したので近所の駐⾞場に置いてみている図

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47 審査もう1段進めたので実物ももう⼀度作ることにした

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48 映像+模型+時差ライブ配信で乗り切りました(『CAF賞展2021』代官⼭ヒルサイドフォーラム)

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⽂章を⾒る 49 Q. どこ⾒ればいいの?

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50 作品の横にあるキャプション 『みらいのかけら』21_21 DESIGN SIGHT(開催中) 『遠距離現在』国⽴新美術館(開催中)

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51 『みらいのかけら』21_21 DESIGN SIGHT(開催中) 『⼤巻伸嗣 真空のゆらぎ』国⽴新美術館(2023) 会場や章の⼊⼝にあるステートメント

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52 作品だけが展⽰の内容を語るのではない。⾔葉も作家の世界を⽀えている 「建物としての自画像は時間がすべて凍結しています。 私の作品、私にとってすべての作品は同じ瞬間に存在します。」 『マーク‧マンダース マーク‧マンダースの不在』東京都現代美術館(2021) 少ない⾔葉でも、読んだ途端 会場に流れる時間に⽬が⾏くようになる

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● 実際書いてみるとめちゃ難しい ○ ⻑すぎてもダメ、⾃⼰満⾜(いわゆるポエム)でもダメ (美術)展覧会にまつわるテキスト 53 ● 作家が書いてるもの∕そうでないものがある ○ 作家ステートメント 作品や制作活動について何を⽬指すか述べている(主観 的) ○ 挨拶⽂、解説⽂ 展⽰主催者やキュレーター(研究者‧展⽰内容の責任者) が 書いている(客観的)

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54 稲⽥は最近、いいなと思ったやつを 全部写真に撮っています

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55 ⾃分ひとりでやるときはちょっと⼯夫が必要 ステートメントも解説も全部⾃分で書かなければならず、ごちゃる…… 『稲⽥和⺒ 潮 重なり隣り合う世界』つくば市⺠ギャラリー(2024)https://nandenjin.com/e/tsukuba24

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施⼯⽅法を⾒る 56 Q. どこ⾒ればいいの? 上級者向けです

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57 『CAF賞展2021』代官⼭ヒルサイドフォーラム

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58 『ジャン‧プルーヴェ 椅⼦から建築まで』東京都現代美術館(2022)より、《「メトロポール」チェア》 例えばこの壁から⽣えてる 謎の台、どうなってる?

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59 ケリス‧ウィン‧エヴァンス《照明⽤ガス…(眼科医の証⼈による)》ポーラ美術館 ⼯事現場もかくやな設営作業

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60 『稲⽥和⺒ 潮 重なり隣り合う世界』つくば市⺠ギャラリー(2024) この壁に直接貼られてる⽂字とかも 知らないと謎ですよね ぜひ観察してみてほしい

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そのあとなにをすればいいのか 61

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インプットがないとアウトプットも出来ない(再掲) 62 ● いい「モノ」はすべて膨⼤なINからできている ● ❌ 勉強 ではなく ⭕ 経験 ○ 好きなものをたくさん⾒て吸収する ○ 技術を覚えるより、作りたいものが先にある⽅が良い ● 幅広いものにアクセスする ● 好きなものに敏感になる ● 時間をきちんと取る

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幅広いものにアクセスする ● セレンディピティ / Serendipity ○ 素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発⾒すること。また、何 かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを 偶然⾒つけること。(Wikipedia) ● 多様性を意識的に⾼める ● ⽬的と違うジャンルのものにも触れ続ける ○ ⽬標分野と遠いジャンルほど⾃分の個性になる ■ 稲⽥だと絵本や⼈形劇 63

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好きなものに敏感になる ● 個性の⾔語化を試みる ○ どこが良いと思ったのか? ○ ⾃分の興味があることは、ほかと 何が違うか? ● 「⾃分の興味はなにから出来て いるのか」を明らかにする 64 稲⽥は最近、⾃分の⾒たものや いいなと思ったコンテンツの 記録を取ってみています https://scrapbox.io/kazumi-inada-bookmarks/

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時間をきちんと取る ● インプットがアウトプットになるための時間 ○ 模倣にならないためには時間がかかる ○ つまり:締め切りギリギリに考え始めない ⼿を動かす作業のスケジュールとは別 ● ⼿を動かすための時間 ○ Paul Graham “Maker's schedule, Manager’s schedule” ■ 作り出すためにはまとまった時間が必要 65

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66 完成品 ⼤量の試作品 ⼭程のアイデア アホほど多いインプット ちなみに:インプットはどれくらい必要?

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67 KYOCERA✕明和電機 アートコラボプロジェクト 登場しては次々とボツになるアイデア……!

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まとめ 68 ● おもしろいモノ(展⽰)にはどうやったら出会えるか ● どこをみればいいのか ○ 展⽰形式、⽂章、施⼯⽅法…… ● そのあとなにをすればいいのか ○ 幅広いものにアクセスする ○ 好きなものに敏感になる ○ 時間をきちんと取る