日本のインターネット - ネットワーク入門勉強会 #4
社内で開催したネットワーク入門勉強会にて発表した資料の一部を公開します.この回では日本のインターネットについて特集し,私たちが普段何気なく使っているインターネット網がどのような仕組みなのかを入門者向けに解説しました.
Keywords: AS, FLET'S, NGN, NTT, IPoE, VNE, ISP
日本のインターネットネットワーク入門勉強会 #4Naoki Ikeguchi @siketyan
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前置き2
$ whoami• 池口 直希 Naoki Ikeguchi a.k.a. しけちあ Siketyan• 21 卒 退 サーバサイドエンジニア #441_sst• 元・豊田高専生 (愛知) #kosen18s• 愛知県江南市 出身• 東京都北区 在住https://s6n.jp/ Twitter: @s6n_jp3❌
本題4
私たちはインターネットに繋がっている(本当に?)5
インターネット私たち6
インターネット私たち7
前提8
前提① インターネットは AS で構成されるピアリングPeeringインターネット9
AS ってなに• 自律システム (Autonomous System)• インターネットを構成する単位となる• 固有の番号 (ASN) を持つ• ASN の数には限りがある• AS 同士は相互に以下のことを行う• 接続 (ピアリング) する (トランジットを用いる場合もある)• 経路情報を交換する• 交換された経路情報をもとに IP パケットを他の AS に転送する10
インターネット私たち AS 他の AS11
前提② 私たちは ISP (Internet Service Provider)と契約している• いわゆるプロバイダというやつ• 私たちは ISP を契約しなければインターネットに接続できない• なぜか?• 利用する ISP によってインターネットアクセスの速度が異なることもある(遅延,帯域幅)• なぜか?12
私たち ISP他のユーザ13インターネットAS
結論14
私たちは ISP (AS) 経由でインターネットに接続している• ほとんどの場合 ISP は AS を持っている• 例: AS4713 NTT Communications Corporation (OCN)• JPNAP という IX (Internet Exchange) 経由で各 AS とピアリングしている[1]• ISP によってピアリングしている AS は違う• ここから経路の違いが発生するので帯域幅や遅延が変わる• 自分で AS を運用すればインターネットに直接接続できる[2]^1: https://www.peeringdb.com/ix/95^2: https://www.homenoc.ad.jp/15
私たち ISP16インターネットAS
私たち AS(ISP)17インターネットAS
FLET‘S というネットワーク18
19
フレッツ光はインターネットに接続していない• NTT 東西が提供しているフレッツ光というサービスは ISP 業務を行なっていない=インターネットに接続していない• 日本電信電話株式会社等に関する法律(NTT 法)による制限• フレッツ光が提供するのは FLET‘S 網 (NGN) と呼ばれる閉域網への接続のみである(東西で別の網になる)• FLET’S を利用するとき,回線契約の他にプロバイダ契約が必要なのはこのためである• 現在 FLET’S 網は IPv6 ネットワークである20
私たち ISPNGN21インターネットAS
FLET’S 網とインターネット22
IPv6 編• VNE (Virtual Network Enabler) 経由で接続する• IPoE 接続を用いて NGN と IPv6 インターネットを繋ぐ• NTT の制約により 3 事業者 16 事業者だけがこの VNE 業務を行える• ISP はこの VNE と契約して接続を卸売される形となる• つまりインターネットへの接続性能は ISP ではなく VNE に依存する• 携帯回線における MNO / MVNO / MVNE の関係に近い• NTT (MNO): 回線を提供• ISP (MVNO): ユーザと契約して VNE 経由のインターネット接続を提供• VNE (MVNE): ISP (MVNO) と契約してインターネット接続を提供23
いろいろな VNE• BBIX 株式会社• Yahoo! BB 光 など• 日本ネットワークイネイブラー株式会社 (JPNE)• BIGLOBE 光 など• インターネットマルチフィード株式会社 (MF)• IIJmio ひかり など+ 6 社 (2021/04/30 現在)24
© 2018 INTERNET MULTIFEED CO.https://www.janog.gr.jp/meeting/janog42/application/files/8015/3238/7118/janog42-IPoE-vne_toyama.pdf25
IPv4 編• PPPoE を用いてユーザと ISP が直接 (PPP) 接続し,インターネット接続を提供する方式が主流だった• 最近では VNE が IPv4 over IPv6 接続を IPoE で提供することが多くなった• これによって ISP は自社設備をほぼ持つことなく業務を行える• ユーザはどの ISP を選んでも VNE が同じなら接続性能は同じである• 後述する NAT / NAPT によって IPv4 アドレスの利用数を減らしている26
VNE と IPv4 over IPv6 接続と NAT/NAPT• BBIX• 「IPv6 高速ハイブリッド」の名前で IPIP6 トンネル (アドレス占有) 方式[1]• JPNE• 「v6 プラス」の名前で MAP-E 方式[2]• MF• 「Transix」の名前で DS-Lite 方式[3]^1: https://orumin.blogspot.com/2020/07/bbix-ipv4-over-ipv6-4rdsam.html^2: https://www.jpne.co.jp/service/v6plus/^3: https://www.mfeed.ad.jp/transix/dslite/dslite.html27
MAP-E (Mapping of Address and Port Encapsulation)• VNE 側から指定されたアドレスとポート範囲で NAPT してからIPIP6 トンネルに送信する• ユーザ側 (CPE; Customer Premises Equipment) で NAPT を行うため VNE 側の設備が軽い• 検証のみで良いのでステートレスな設備で済む• 特殊な NAPT 方式なので CPE の交換やファームウェア更新が必要なこともある28
DS-Lite (Dual-Stack Lite)• CPE は IPv4 パケットをそのまま IPIP6 トンネルに送信して,VNE 側で NAPT を行う• CPE 側は NAPT 機能が不要なので IPIP6 トンネルに対応していれば良い• VNE 側の設備で大規模な NAPT を行う CGN (Carrier Grade NAT) が必要• NAPT テーブルが必要なのでステートフルな設備である29
© 2018 INTERNET MULTIFEED CO.https://www.janog.gr.jp/meeting/janog42/application/files/8015/3238/7118/janog42-IPoE-vne_toyama.pdf30
まとめ31
まとめ• インターネットは AS の集まりでできている• 私たちは AS になる代わりに AS である ISP (VNE) と契約している• NTT のフレッツ光が提供する NGN は閉域網である• IPv6 では NGN を通って VNE 経由でインターネットに接続• IPv4 では二つに分かれる• PPPoE 方式の場合 NGN を通って ISP 経由でインターネットに接続• v4 over v6 (IPoE) 方式の場合 VNE 経由で NAPT してインターネットに接続• 固定 IPv4 アドレスサービスを利用している場合や VNE によってはこの限りではない32
参考文献• 小川・久保田 (2020) 『徹底解説 v6 プラス』,ラムダノート株式会社,ISBN 978-4-908686-08-5.• 外山 (2018) 『VNE 事業者とは』,「フレッツ IPoE 方式の理想と現実」,https://www.janog.gr.jp/meeting/janog42/application/files/8015/3238/7118/janog42-IPoE-vne_toyama.pdf ,2021/08/15 閲覧.33