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VUI Design概要 Yoichiro Tanaka (Google Developers Expert)

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Yoichiro Tanaka Software Engineer / IT Architect Google Developers Expert (Web) twitter.com/yoichiro google.com/+YoichiroTanaka

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1. 会話が成立する前提 2. 会話の流れと組み立て 3. 会話サービスにおけるキャラクター設定 4. おもてなしと信頼の作り方 5. 会話としてやり取りする方法、原則 6. 台本の書き方 7. 試作、テスト

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1. 会話が成立する前提

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単なる雑談ではなく、適切な会話を組み立てて話し続けるのは、かなり難しいこと

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天気は?

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天気は? いつの? どこの? 雨降るか聞きたいだけ? どこまで細かく知りたいの?

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会話には状況を示すコンテキストが必要 意識していないけれど絶対に存在するコンテキスト 上で会話している。 コンテキストを全部「会話で」伝えることは難しい。 話の流れ、話し相手のこと、今置かれている状況、 必要とされている事項 長時間覚えておくことでもない。

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大前提 役目、目的を説明しておく。 役目や目的を欲張らない。 会話の理解、言葉の認識を前提にしない。失敗を前提にする。 期待していない会話をするユーザもいる。

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2. 会話の流れと組み立て

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会話は様々な断片に分かれ、基本的にそれらが連続していたりいなかったり。つまり、整理が必要。

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会話の種別(Leszek Zawadzki氏提唱) Opening 会話のはじめ、きっかけ Extra 特別な会話、普段あまりない事象 Skip 次の事象、次の会話へ、選択して次へ Core 核となる大切な会話、主たる内容の会話 Chatter 雑談、会話を楽しむための会話 Ending 会話を終えるための結び、失敗時の終了 Help ヘルプ、手助け、質問

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1. 共通の土台を据えるためにチャンネルを開 く。 2. 約束する。 3. 意味を組み立てる。 4. 発展させる。 5. 同意に集中する。 6. 行動または交流する。 会話の6つのステップ 1. 話し手Aが話し手Bにメッセージを送る。 2. BはAと会話することを約束する。 3. AとBは一連の構造化されたアイディアと文 脈を理解し合う。 4. AまたはBが今回のインタラクションから物事 を学習し獲得する。 5. 上手くいけばAとBは同意に達する。上手くい かなければ状況の修復を試みる。 6. 会話の結果として実用的なアクションがとら れるか、無意識の目標に達する。

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会話の流れと組み立てのテクニック 答えを誘導する。 はい、いいえ、わかりません 答え方を誘導する。 何時に起こしましょうか? うまく会話を終わらせる。 失敗してうまくいかなったときも ...

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3. 会話サービスにおけるキャラクター設定

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コンピュータを使っている、という感覚ではなく、誰かにお願いしている、という感覚に近い

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会話型インターフェースを設計する前に、会話の雰 囲気について検討する。 - 楽しいゲームを作成しているのであれば、少し変 わった口調を使用したほうがよい。 - ニュースリーダーを作成しているのであれば、堅 実で改まった口調を使用したほうがよい。 名前、性格、特徴、会話ポリシーなど ペルソナを作る

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独自のブランドとアイデンティティを反映する。 リピーターになってもらう。 一貫性を持つ。 ペルソナを作る

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会話の距離感 ちゃんと会話の距離感を計る。 例えば7段階評価して、改善していく。 親しすぎる ぞんざいすぎる

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4. おもてなしと信頼の作り方

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おもてなしは、最初の印象が非常に重要

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あなたが誰であるかを伝える。 相手がわかることで安心する。 適量の情報を伝える。 多くの情報を与えて圧倒しない。 短くて親しみやすい挨拶にする。 上級者にとっても... 会話の始まり

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会話を適切に終了する。 ユーザがシンプルなフレーズで会話を終わ ることができるようにしておく。 会話の終わり

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5. 会話としてやり取りする方法、原則

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文章とは違う「会話」 相手のことを考える。 タイミングを読む。 先読みする。 感情に寄り添う。 マネジメントしてもコントロールしない。 話の要点がわかりやすいように。 余計なプレッシャーを与えない。 上から目線ではいけない。 ネガティブな言い回しにならない。

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GUIですらわかりづらいことは、会話では絶対にわかってくれない

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会話は短く。相手の時間を尊重する。単刀直入に邪魔にならないように。 相手を信頼する。ひとりひとりそれぞれの会話の仕方がある。 無理矢理システム側が便利な機械的な言葉を話させようとしない。 文脈、その時の状況、環境を意識して、関連する役立つことを話す。 会話としてやり取りする方法、原則

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会話としてやり取りする方法、原則 本来の目的から気をそらすことなく、会話として心地の良いやり取りを。 初めて使う人を引き込み、引き込んだ人は離れないように。 会話は交互に。一方的に質問するだけでなく、会話のキャッチボールを。 勝手に想像して、口に出していないことを予想して決めつけない。

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自然な言い回し 「会話」であって「コールセンターの自動応答」では ない。 → 大事なことは、ユーザを信頼すること。 ● ユーザに言って欲しいことを押しつけること で、圧倒的に不自然な会話になる。 ● 単に「〜ですか?」と質問すれば良い。 1イート0バイトです。"ヒント"と言うことで、いつでもヒ ントを得ることができます。 ヒント 1イート0バイトです。ヒントを聞きたいですか? はい

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自然な言い回し 同じ返事でも複数パターン準備しておく。 ● ユーザにはできるだけ機械的な会話に感じ させない。 ● 現在は3パターン。多ければ多い方が良い。 ● 現在は乱数で返事を選択。本当は同じ返事 を連続しない工夫が必要。 おめでとうございます!3イートです!もう一度遊びま すか? すばらしい!3イートです!もう一度遊びますか? やりましたね!3イートです!もう一度遊びますか?

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バリエーションを予測し、エラーを防止する 「3桁の数字を言ってください」に対して、ユーザが 言うであろう2つの表現に対応する。 ● "ひゃくにじゅうさん" → 123 ● "いち に さん" → 1 2 3 どちらも3桁の数字。 1イート0バイトです。 ひゃくにじゅうさん いち に さん 1イート0バイトです。

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わかりやすい指示を出し直すか、質問を変える 何度も間違え続けることで、ユーザが諦めてしまう 懸念がある。 → 難しすぎて2度と遊んでくれない。 1イート0バイトです。 123 456 789 1イート0バイトです。 1イート0バイトです。

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わかりやすい指示を出し直すか、質問を変える 3回連続で間違えた場合は、ユーザにヒントを聞き たいかどうかを促す。 ● 許可なしにヒントを言うことは避ける。 ● 連続して間違えていることを気にかけてくれ ている、という印象を持たせる。 ● 目的達成(= 正解を言い当てる)を助けること で成功体験をできるだけ経験してもらう。 1イート0バイトです。ヒントを聞きたいですか? 789 3桁の数字の合計は、16です。 はい

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6. 台本の書き方

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VUI Designにおいて台本は非常に重要

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台本の書き方 一息で話せる長さ。(声に出して読み上げる) 自然なセリフ。(話しやすい雰囲気作り) ユーザ発話の方向付け。(質問を投げる) 会話の目印を利用する。(「まず」、「それから」) 変化をつける。(特にあいさつ系の言葉)

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台本の書き方 言葉の統一。(動詞と名詞はいつも同じ言葉遣いを) 過去の発話を覚えておく。(中断と再開) 問題が発生した場合の対処。(特に丁寧に) 文脈に沿ったヘルプの提供。(なるべく少なく) 録音されたオーディオの利用。(時には音源やラジオ)

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台本の書き方 音声サービスならではの価値を入れ込む。 音声サービスには心理的障壁をさげる意味もある。 人が応答できない時間帯でも、いつでも対応できる。 気軽に聞いて、簡単に答えてくれる。 文章ではなく、会話。 人間は面倒すぎてやらないことを任せる。

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7. 試作、テスト

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試作、テスト 何も作らなくても、会話そのものでテスト できる。 ● 台本を使って相手をVUIアプリに 見立てて実際に会話する。 ● 足りなかった言葉の発見 ● 言い回しの変更 ● 欠けている情報の発見 ● より適切な用語 ● 言葉遣い

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PDCAを回す 最初から完璧は無理。早いタイミングで改善してい く。 エラーの回避策をGUIアプリ以上に考慮する。 エラーから抜け出せるようにする。 どこで会話が終わってしまったかを知る。

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参考資料 音声/会話インターフェースの UX(ユーザー体験) の勘所 株式会社エクサ 安藤幸央 https://www.slideshare.net/yukio.andoh/voice-u iux-design-guideline-87578500

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Fin.