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経営組織論 ソニックガーデンの場合 (2023年10月版) ・仕事と働き方の変化 ・組織とマネジメント ・チームとコミュニティ ・「遊ぶように働く」の意味 ・セルフマネジメントと育成 ・経営の目的とは何か

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倉貫 義人 https://kuranuki.sonicgarden.jp/ 株式会社ソニックガーデン 代表取締役(創業者) 株式会社クラシコム    社外取締役(2018年〜) ● 1974年、京都府出身、10歳からプログラミング ● 1999年、TIS株式会社、アジャイル開発の普及に貢献 ● 2011年、TIS社内ベンチャーをMBOして創業 ● 2016年、オフィスを無くし、全社員リモートワーク ● 2018年、株式会社クラシコムの社外取締役に就任

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1章 完成しても、終わりではない 2章 人を増やしても速く作れるわけではない 3章 たくさん作っても生産性が高いとは言えない 4章 人に依存せず同じ品質で作ることはできない 5章 プレッシャーをかけても生産性は上がらない 6章 見積もりを求めるほどに絶望感は増す 7章 一度に大きく作れば得に見えて損をする 8章 工程を分業しても、効率化につながらない

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株式会社ソニックガーデン ● スローガン「一緒に悩んで、いいものつくる」 ● 企業理念 「プログラマを一生の仕事にする」 ● 2011年創業、社員5名→65名、12期連続増収 ● 2016年〜オフィスなし、全員リモートワーク

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見積りなし ドキュメントなし プロジェクトなし 契約時間なし 納品のない 受託開発 通勤のない 働き方 働く場所の縛りなし 本社オフィスなし 申請・制限なし 勤怠報告なし 管理のない 会社経営 上司/指示命令なし 承認・決裁なし 部署・管理職なし 売上目標・評価なし

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納品のない 受託開発 通勤のない 働き方 管理のない 会社経営

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納品のない受託開発 ● 月額定額の顧問スタイルでソフトウェア開発を提供 ● ソフトウェアの企画から運用まで一気通貫で関わる ● お客さまと一体のチームとなって内製のように続く ● 新規事業や業務改善からDXまで、ソフトウェア全て

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仕事と働き方の変化

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私たちの取り組む仕事 ● 仕事とは指示通りに働くことではない、それは作業 ● 仕事とは価値を生み出すこと=誰かの役に立つこと ● これから人に求められる仕事は、再現性の低い仕事 ● 属人的でクリエイティブな仕事にこそ、価値がある

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マニュアルワーカー ナレッジワーカー ● 上司からの指示命令に従う ● 受動的に動く ● 外発的動機づけ ● 現状を維持したい ● 仕事の対価は報酬である ● 仕事と生活は別物 ● 業務の範囲は広げない ● 担当を分業して働く ● ルールが大事 ● 組織と上司に従う ● コンピュータやロボットが得意 ● セルフマネジメントで働く ● 主体的に動く ● 内発的動機づけ ● 改善し続けたい ● 仕事は成長の機会である ● 仕事は人生の一部 ● 責任範囲にこだわらない ● 他者と協業して働く ● ゴールが大事 ● 文化と価値観に従う ● 人間の感性を活かして成果を出す

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組織とマネジメント

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私たちの考えるマネジメント ● マネジメントは管理することではない、管理は手段 ● マネジメント=なんとかする=良い感じにすること ● セルフマネジメントで自律的に働ける環境をつくる ● 組織づくりにチームとコミュニティの違いを活かす

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チーム コミュニティ ● ミッションから始まる ● 目標・ゴールのために集まる ● 終りと解散がある ● 活動(doの価値) ● メンバーは役割を果たす ● 事業と貢献が価値 ● 提供の目線は外向き(社会や顧客) ● よりスキルを重視した採用 ● 即戦力で働ける人材が好ましい ● チームの段階を進めることが大事 ● 戦争や冒険に似ている ● ビジョンから始まる ● 価値観・理念に共感して集まる ● 続くことが前提である ● 状態(beの価値) ● メンバーは居るだけで良い ● 安心と安全が価値 ● 提供の目線は内向き(中の人) ● より人間性を重視した採用 ● 将来のための人材が好ましい ● 定期的なイベントの開催が大事 ● 国や街の統治に似ている

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経営を支える哲学

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私たちの目指す経営 ● 経営とは、資本の再生産だけを目指すものではない ● 文化資本/関係資本/経済資本の循環で幸せを増やす ● 投資ではなく経験への対価なら何も失うものがない ● 予測に基づく計画よりも、現実からの適応で考える

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予測型マインドセット 適応型マインドセット(アジャイル思考) ● 未来の目標を先に設定する ● 目標から逆算して計画を立てる ● 計画通りに進める ● 準備して将来の変化に備える ● 予測を元に不足を補う ● 役割に人をアサインする ● 想定外をなくす ● 結果や評価にこだわる ● 数字は達成すべきもの ● 無駄がないよう見極め大きく賭ける ● 大量生産や製造に向く ● 未来の成功を獲得する ● 現在できることに集中する ● 今の積み上げで見通しを立てる ● 臨機応変に進める ● 変化に対応できる状態を保つ ● 実績を元に充足を知る ● 人に合わせた役割がある ● 例外を歓迎する ● 手段や過程にこだわる ● 数字は状態を測るもの ● 無駄も受け入れて小さく試し続ける ● 問題解決や創造に向く ● 現在の幸せを続けたい

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遊ぶように働く

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私たちの望む働き方 ● 働くのは、ただ労働の対価を得るためだけではない ● 普通に働いていることが、遊んでいるように見える ● 「遊びながら働く」「消費的に遊ぶこと」ではない ● ついやってしまう没頭する好きなことを仕事にする

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4つの要素 ● 成長が続くこと(フロー状態が続けられる) ● 裁量があること(内発的動機づけで動ける) ● 正解がないこと(創意工夫と失敗ができる) ● 仲間がいること(自分の強み弱みを活かす)

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「遊ぶように働く」ためには ● 高い生産性で成果をあげ続けられる卓越した技術力 ● 己の強み弱みを知って、行動の改善を続ける内省力 ● 「問題vs私たち」を使いチームワークが発揮できる ● 高い視座を得て、全体が良い感じになるよう動ける

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セルフマネジメントと自由への道 仕事 対人 自分 視座 第1段階 進捗管理 ホウレンソウ 自己管理 自分 第2段階 タスクばらし ザッソウ ふりかえり 上司・同僚 第3段階 プロジェクト遂行 チームビルディング 自己マスタリー 顧客・チーム 第4段階 事業経営 人材育成 自己幸福 組織・業界 第5段階 属人的価値創造 社会的ミッション 自己中心的利他 社会

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職人的な育ち方

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私たちの人材育成 ● 育成は教育や研修ではない、自律で育つまでの支援 ● 技術向上と仕事を通じて、人格まで含めた人材育成 ● ただ技術力だけでなく、文化や価値観も身につける ● 再現性のない仕事は、職人の徒弟制度で真似て育つ ケ ア

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上司 親方 ● 部下のできることを増やして成果を出させる ● 部下が成果を出せるよう手は出さず支援する ● 必ずしも部下の上位互換である必要はない ● 多様な部下を取りまとめて、相互協力させる ● 部下に対する権限をもって接する ● 不確実性には部下と一緒になり取り組む ● いずれ部下との関係性が逆転することがある ● 部下に対して助言する。判断は部下が決める ● ふりかえり(KPT)で共感と肯定に重きをおく ● すりあわせ(YWT)で賞賛と過去に重きをおく ● 人徳と人柄で慕われるとうまくいく ● 部下が仕事をしてくれたら感謝を示す ● 組織をまとめるのに共通のミッションを持つ ● 安心して意見を言える関係をつくる ● 弟子を自分と同じことができるコピーにする ● 弟子が成果を出せないときには取って代わる ● 職においては絶対的な上位互換であること ● 弟子の足並みを揃えず、伸びるやつを伸ばす ● 弟子からの権威でもって従わせる ● 弟子にとって正解がある前提で取り組む ● 弟子からすると生きてる限り師匠でい続ける ● 弟子に対して指導する。師匠に従い判断する ● ふりかえり(KPT)で期待と成長に重きをおく ● すりあわせ(YWT)で挑戦と未来に重きをおく ● 実力と経験で敬われるとうまくいく ● 厳しく指導したら弟子から感謝される ● ビジョンをまとめた結果で組織になっている ● 畏怖されることも厭わずに指導する

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管理しないマネジメント

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私たちの目指すところ ● 高い技術を身につけ知性を磨き、自立心を育むこと ● 自立できる人材が、働きたいと望む会社とすること ● 自立した人同士が、切磋琢磨しながら貢献すること ● 志を共にする仲間として、自立した人が増えること

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ありがとうございました(講演者について) 倉貫義人 株式会社ソニックガーデン代表取締役 https://kuranuki.sonicgarden.jp ブログ 連絡先 [email protected] 2023年発売