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プロダクトマネジメントと民主主義 2022.11.02 pmconf b-1 河野 文弥

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自己紹介 河野 文弥 / Kohno Fumiya / @fnwiya 【所属】 ・株式会社ユーザベース INITIAL事業 執行役員CPO ・株式会社wellday 執行役員CPO ・政治情報可視化サービス「JAPAN CHOICE」開発者 【キーワード】 #SaaS #エンプロイーサクセス #エンゲージメント #スタートアップ #政治 #選挙 #エンジニア

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プロダクトマネジメントにおける 意思決定は民主的であるべきなのか

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民主的なプロダクトマネジメント? 例えば... ・開発の優先度をメンバーによる 投票で決める ・プロダクトビジョンをミーティングでそれぞれ持ち寄りの 合議で決める ・意思決定者が持ち回りや評価によって頻繁に 入れ替わる

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コンウェイの法則 コンウェイの法則とは 組織がシステム開発を行う際、その組織構造と同じ構造のシステム設計を行ってしまうという法 則のこと。 一つのチームで作れば大きな一つのシステムに、小さな分断したチームが作れば独立した個 別のシステムになる。 → プロダクトマネジメント版コンウェイの法則 組織の意思決定構造がサービス設計を規定する

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民主的な意思決定構造は 妥協的なサービス設計を生む

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民主的であることのメリット ・多様な視点が反映される ・プロセスに納得感が生まれやすい ・特定の人に依存しない

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民主的であることの弊害 ・コミュニケーションコストの増加  →意思決定の遅れ ・玉虫色の決定となる  →選択と集中ができない ・短期/目の前のKPIに向けた施策に走る  →中長期的な一貫した投資の不足。リスクテイクできない。

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民主的な意思決定の帰結 プロダクトマネジメント版コンウェイの法則により、 総花的、折衷的なサービス設計になりがち。 また、意思決定にも時間がかかる。

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民主主義の失敗? ・COVID‑19による死亡率は民主主義国家ほど高い ・コロナ禍における経済成長率は  民主主義国家ほど低い https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/ecooutlook/2020/dia6ou0000026cxv-att/nr20200714pec_02.pdf

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なぜ民主主義か チャーチル 「民主主義は最悪の政治といえる。  これまで試みられてきた、民主主義以外のすべての政治体制を除けばだが」 重視されているのは × パフォーマンス ○ プロセスの正統性(legitimacy)

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民主的にやった方がいいこと ・誰も取り残してはいけないサービスの設計  →多様な視点が重要 ・組織や会社、働き方に関する意思決定  →プロセスの納得感が重視される

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理想的なサービス設計とは プロダクトビジョンを最短距離で実現する ・誰のどんな課題を解決して、どんな価値を提供するのか。クリアでシャープ ・全体を通じた一貫性がある ・精度高くも素早い意思決定と実行

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では、どのように 意思決定していくべきか

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政体循環史観 古代ローマの歴史家ポリビオスの『歴史』より 政治制度は「王政→僭主政→貴族政→寡頭政→民主政→衆愚 政→王政」のように循環して推移するという歴史観。 王政は腐敗して僭主政や貴族政となる。貴族政も堕落して寡頭 政に取って変わられ、やがては民衆に打倒される。民主政も衆 愚政へと劣化し、民衆は王の誕生を待望する。 → 民主主義も一つの意思決定構造の 選択肢 王政 僭主政 貴族政 寡頭政 衆愚政 民主政 腐敗 正統性 堕落 正統性 劣化 待望

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優しい終身の独裁者になろう

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優しい終身の独裁者 優しい終身の独裁者( Benevolent Dictator For Life、BDFL)とは オープンソースソフトウェア開発プロジェクトの少数のリーダーに与えられる称号である。 コミュニティ内で論議、論争が発生した際に最終的な仲裁を行う権利を持つ。 一般的にはソフトウェアの仕様の最終決定者ではないが、 定義を拡張して、責任を持ち最終的に意思決定を行うことまでを提案したい。 調整するな、決定せよ

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独裁的なプロダクトマネジメント 例えば... ・開発の優先度をメンバーによる投票で決める  →参考として投票は集めても、決めるのはオーナー ・プロダクトビジョンをミーティングでそれぞれ持ち寄り の合議で決める  →まずオーナーがビジョンを示す ・意思決定者が持ち回りや評価によって頻繁に入れ替わる  →原則オーナーは変えない

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全部決めなきゃいけない? そもそもPdMの業務範囲は膨大 その全ての意思決定を担わなければならないのか? → 答えはYes。それだけPdMの責務は重い。 ただ分割統治や権限委譲によりスコープをコントロールすることはできる。

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分割統治/地方分権 一つのプロダクトには一人の独裁者 → プロダクトを分割する。 × 機能による分割 ○価値により分割 参考: 「プロダクトを分割してマネジメントする」小城久美子 / ozyozyo https://note.com/ozyozyo/n/n9899e384488b プロダクト pmconf サブプロダクト 簡単に応募できる サブプロダクト スムーズに動画がみれる 基盤プロダクト SSOで認証できる

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権限委譲/デリゲーションポーカー http://nuworks.jp/ja/2016/12/09/deligationpoker/ 権限委譲をする/しないではなく、 段階を設定した上で チームでどの程度権限委譲を行うかを決める。 意思決定の方法を事前に合意することで、 優しい独裁を実現する。

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デリゲーションポーカーの例 抽象度大 抽象度小 ・プロダクトビジョン ・バリュープロポジジョン ・ロードマップ ・カスタマージャーニー ・要件定義

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独裁者は何によって正当化されるのか 独裁≠自分の好きにやっていい → 各社のビジョン/ミッション/バリューに従う。VMVが憲法。 コミットメントと説明責任。 成果を出す。なぜその意思決定をしたのかを丁寧に伝える。

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最後に 決めることから逃げない。 意思決定の量と質こそが学びと成果

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最後に 政治においては民主主義の力を信じる。 投票にいきましょう!