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© Chatwork ふりかえり担当を持ち回りにしたら チームの文化が育った話 〜信じて任せる勇気〜 2023年7月1日 折田 桃子 Chatwork株式会社

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自己紹介 2 ● Chatwork株式会社 モバイルアプリケーション開発部 ● 2020年5月 iOSエンジニアとして入社 ● 現在はチームを支援する人 ○ スクラムマスター・カンバンチームのサポート ○ 支援のモットーは「Happy&Fast!」 折田 桃子 (おりた ももこ) @orimomo_147cm

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はじめに 3 ● 突然ですが、皆さんが一番ワクワクするミーティングは何ですか? ○ そう、ふりかえりですよね! ● ふりかえりは、改善サイクルや心理的安全性を生み出すためにとても大切なイベント ○ 私も一際力を入れて開催してきた

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はじめに 4 2022年に試した「ふりかえり手法」をふりかえる - Chatwork Creator's note

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はじめに 5 ● 「毎回なるべく質の高いふりかえりの場にしたい!」という思いから、 1年以上、自分一人で準備やファシリテーションを担当してきた ● しかし、ここ数ヶ月でチームに役割を完全移譲した ○ 良い変化がたくさんあり、他のチームで活かせそうな学びもあったので この場をお借りしてご紹介

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ふりかえりを持ち回りにするまで 持ち回りにしたことで起こった変化 チームに移譲していくうえでのポイント 信じて任せる勇気 1 2 3 4 AGENDA アジェンダ

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ふりかえりを持ち回りにするまで 1

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● モバイルアプリケーション開発部のチーム再編成 ○ 今年から3チーム制になり、3チーム並行して自分が支援することになった ○ 毎週3チーム分のふりかえり担当をすることに ● 「あれ、ふりかえり準備に追われて余裕がないぞ…?!」 持ち回りを考え始めたきっかけ 8

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● ふりかえりをチームに任せるってどうなんだろう? 任せるかどうか悩む日々 9 検査適応がうまく回らなく なったりしないかな…? すごく簡素なふりかえりに なっちゃったりしない…? 準備が面倒!とみんなから 反発があったら…? チームに介入する機会が 減っちゃうけど平気…?

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● そんな中、1つのチームから声が上がった ○ 「そろそろ僕たちが、ふりかえりを担当したほうがいい気がする」 ● 以心伝心…?! ● 試しにこのチームで持ち回りをやってみると、問題なく回った! 任せるかどうか悩む日々 10

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● 残りのチームにも持ち回りを打診してみた ○ 思ったよりすんなり引き受けてくれた ● 今では3チームとも、メンバーだけでふりかえりを担当している 全チームで持ち回りの導入 11

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参考: チーム内アンケート結果(抜粋) 12 Question Answer ふりかえりを持ち回りにしないかと打診されたとき、どんな気持ちでしたか? チームメンバーでやるのが自然だと思った。 チームのイベントを自分ごとにしたい感があり、立候補した。 準備に時間とられるなとは思ったが、チーム内で自立して成長できる機会では?とも思った。 スクラムマスターのように、みんなからいいアクションを引き出せるのか不安。 自分にはできるのか?

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持ち回りにしたことで起こった変化 2

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● 私が一人で担当していたときは、良くも悪くも私カラーのふりかえりになっていた ● 持ち回りにしてからは、各チームが能動的に「これ楽しい」「これイイね」を 探すようになり、チーム独自の文化が醸成されていった ○ 私では思いつかない工夫をしていたり、知らない手法を使っていたり 良い変化1: チームごとの文化が育った 14

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● 「今日は何の日?AIを使ったふりかえり」 ○ 今日は何の日?を調べてきて、それにちなんだイラストで飾られる ■ 「エッフェル塔の日」「和菓子の日」「スケボー選手の誕生日」など ○ AIをうまく活用している ■ オススメのふりかえりの手法、イラスト生成 良い変化1: チームごとの文化が育った (チーム1の場合) 15

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● 「シンプルイズベスト!効率重視のふりかえり」 ○ Good/Bad/Fact/Emoなど、自分たちが気に入った手法を使い倒している ○ 次回の準備が楽になるように、ふりかえりが終わった瞬間に次回分を用意 ■ どのチームよりも短い準備時間 良い変化1: チームごとの文化が育った (チーム2の場合) 16

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● 「あなたの推しは誰ですか?多様な手法のふりかえり」 ○ ファシリテーターの推しの画像が添えられ、紹介タイムがある ■ 自己開示、相互理解にもつながる ○ 自分たちで見つけてきた色々な手法をアグレッシブに試している 良い変化1: チームごとの文化が育った (チーム3の場合) 17

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● チーム運営やファシリテーションの奥深さに興味を持つメンバーが出てきた ○ チームの様子を日々観察し、それに応じてふりかえり手法を変えたり ○ 準備を含めたふりかえりに楽しさを見出し始めたメンバーが多い ○ スクラムマスターの役割がいい感じに溶け出している! ● 準備をメンバー同士で助け合いながらおこなうことで、チームの結束が強まった ● スクラムマスター不在でも質の高いふりかえりが毎週おこなわれるようになり、 自己組織化に一歩近づいた 良い変化2: メンバー・チームの成長の機会となった 18

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● スクラムマスターは常にチームの一歩だけ先を行き、変化していく過程の ガイド役であることが求められる ○ インプットしたり一人考えたりする時間が必要だが、以前は余裕がなかった ● 持ち回りにしたことで時間的余裕ができ、今すべきことに集中できるようになった ○ 他チームとの関係性にフォーカスした動き ○ 大規模スクラムについてのティーチング ○ 外部イベントへの登壇やブログ執筆 etc… 良い変化3: スクラムマスターに余裕が生まれた 19 Zuzana Sochova. 『SCRUMMASTER THE BOOK 優れたスクラムマスターになるための極意 ――メタスキル、学習、心理、リーダーシップ』 . 翔泳社. 2020年. 21ページ

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● デメリットは何かなかったのか、気になりますよね ○ ここからは、持ち回りにしたことで失われてしまったものについて説明します 良い変化だけ? 20

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● ふりかえりの事前準備に時間をとられてしまい、開発時間が少し減ったとの声 ○ 準備にかかる時間は平均30分程度 ■ 人によって10分〜1時間以上と幅がある様子 ■ 新しい手法探しやデコレーションが楽しくて、ついついやってしまう人も ○ 担当が回ってくる頻度は月に1回程度 ● 持ち回りにしたことで得たものと比較すると、そこまで深刻な問題ではないという認識 ○ ふりかえり準備が原因でスケジュールに遅れが出たという事例は今のところなし 失われたもの1: メンバーの開発時間 21

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● スクラムマスターがふりかえり担当から外れたことで、ふりかえりの手法や ファシリテーションのやり方について学べる機会が減ってしまったとの声 ● 対策 ○ (担当者が休みのときなどに)スポットでスクラムマスターが担当する ○ 持ち回りのローテーションにスクラムマスターも加わる ○ ふりかえりに参加する中でなるべく知見をシェアしていく 失われたもの2: メンバーがスクラムマスターから知見を得る機会 22

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● これまではチームにフォーカスしてほしいことから逆算してふりかえり手法を選んだり、 ファシリテーションをする中で気づきを与えたりというような 「ふりかえりをリードするという形でのチームへの介入」ができた ○ 持ち回りにしたことでそれができなくなった ● 一方で、一歩引いた立場からの参加が可能になり、場の状況を客観的に見ながら、 タイミングを計って介入ができるようになった ○ 効果も実感できており、これはこれで良い介入の仕方かもしれない 失われたもの3: スクラムマスターがチームに介入する機会 23

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● 多少失ったものもあるが、今のところ深刻な問題にはなっていない ● 良い変化のほうが大きく、やって良かった!という印象 起こった変化についてのまとめ 24

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参考: チーム内アンケート結果(抜粋) 25

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参考: チーム内アンケート結果(抜粋) 26 Question Answer 上記を選んだ理由を教えてください。 チームとして成長できるから。 チームとして明らかに今の方が、以前より成熟しているから。 メンバーが担当すると、それぞれの個性が出ておもしろい。 はじめは緊張と怖さが勝っていたが、今となっては効果を感じる事が多いので楽しくもなってきた。 今週担当だなぁと、いまだに緊張する・・・

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チームに移譲していくうえでのポイント 3

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● メンバーの理解もあり、思ったよりスムーズに導入できたという印象 ● しかし、もし何の準備もなくいきなり持ち回りを打診していたら、うまく行かなかった ● チームへの移譲を成功させるためのポイントがいくつか存在していて、 それを事前にクリアしていたからこそ、今回スムーズに移譲ができたのでは? ○ それらを押さえておくことで、他チームでも再現しやすくなるかもしれない 今回の持ち回り導入にあたり 28

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● 「スクラムマスターがいなくても回るのが理想なので、なるべく任せていきます」 というのをあらかじめチームに伝えておく ○ 口頭や、ブログなどで度々伝える ● メンバーも「いつかそうなるんだな〜」と心づもりができる ポイント1: 移譲についての認識をチーム内で揃えておく 29 https://creators-note.chatwork.com/entry/2022/09/16/095601

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● 「なぜ実施する必要があるのか?」を説明したうえで、 実際にスクラムイベントを通じてチーム・プロセスが良くなる成功体験をしてもらう ● メンバー全員がスクラムイベントを必要だと思っている状態が土台となる ポイント2: スクラムイベントの重要性を理解してもらう 30

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● スクラムマスターがファシリテーションを引き受け、チームに定着させる ● テンプレ化できそうな部分はテンプレ化する ○ 例)スプリントプランニングの流れをマニュアル化しておく ○ 例)色々なふりかえり手法をコピペで使えるようにしておく ● 心理的安全性の高い場を作っておく ○ 例)朝会にファイブフィンガーを導入し、気軽に話せる雰囲気を作る ○ 例)ふりかえりのmiroを飾り付け、楽しさ・ワイワイ感を感じてもらう ● メンバーに任せた際、ここで作った型をベースとして発展させてもらえるので、 ゼロベースで任せる場合と比べてチームが軌道に乗りやすく、混乱しずらい ○ 一方でやりすぎると自主性が損なわれてしまうので、バランスを見ながら ポイント3: まず自分がやって見せて、最低限の型を作る 31

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● 朝会→ スプリントプランニング → ふりかえり の順で移譲していった ○ 時間が短く、事前準備が少ないものからまずは任せてみる ○ ふりかえりは自由度が高く、ファシリテーションスキルも必要なので難易度高め ● メンバーに負荷をかけすぎないように寄り添うスタンスを大切に ○ 人前で話すのが苦手なメンバーへの配慮 ○ メンバーの様子を見ながら段階的に任せていく ポイント4: 簡単そうなスクラムイベントから順に任せていく 32

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● 移譲した後もできるだけイベントには参加し、必要に応じてフォローする ○ 例)ふりかえりの手法選びについて相談に乗る ○ 例)ファシリテーションで行き詰まっていたらさりげなく誘導 ● 「ふりかえりのふりかえり」で担当者に良かった点などをフィードバックする ○ 近くで見守っているよ!というメッセージング ● いざというとき助けてもらえるという安心感をメンバーに持ってもらいつつ、 その上で自由にのびのびやってもらうのが一番だと考えている ポイント5: 任せっぱなしにせず、近くで見守る 33

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信じて任せる勇気 4

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● 持ち回りにする前に悩んでいた自分は、チームを信じて任せる勇気が足りてなかった 任せることには勇気がいる 35 検査適応がうまく回らなく なったりしないかな…? すごく簡素なふりかえりに なっちゃったりしない…? 準備が面倒!とみんなから 反発があったら…?

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● 任せるようになった今でも、不安が全くないかと言われるとそうではない ○ 役割をチームに移譲していくと、自分抜きでもチームが回るようになるので スクラムマスターとしての存在価値が下がったようで少し怖いときもある ○ スクラムマスターの手腕を披露する機会が減って、 チームから信頼を得続けられるのか、不安になるときもある 任せることには勇気がいる 36

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● でもだからこそ、チームに必要とされ続けるために、 「もっとスクラムマスターとしてパワーアップせねば!」と前を向く力にもなる ● スクラムマスターとして次のステップに挑戦する良いタイミングなのかも ○ 道は「私のチーム」→「関係性」→「システム全体」と終わりなく続いていく 任せることには勇気がいる 37 Zuzana Sochova. 『SCRUMMASTER THE BOOK 優れたスクラムマスターになるための極意 ――メタスキル、学習、心理、リーダーシップ』 . 翔泳社. 2020年. 47ページ

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● 任せることで ○ メンバーの成長の機会になったり、チームの成熟化につながる ○ スクラムマスターとしても、やるべきことに集中できるようになる ● 私自身、チームを信じて任せてみて本当に良かった!と心から言える ● 今すぐに任せることはできずとも、任せる日に向けた準備はスタートできる ● 少しずつでも、勇気を持って任せてみませんか? 信じて任せてみませんか? 38

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働くをもっと楽しく、創造的に