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© asken.inc AI導入の理想と現実 ~コストと浸透〜 25/06/30 山口将央

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© asken.inc 2 自己紹介 oprst 色々やってました。前職はソフトウェアエンジニア エンジニア職種 フロントエンドエンジニア:5〜10年 バックエンドエンジニア:5〜10年 データサイエンティスト:3〜5年 ※個人的にこの6ヶ月触ってみたサービス

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© asken.inc 3 AIとの出会い Devin RooCodeの衝撃

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© asken.inc 4 本日のアジェンダ 1 導入戦略 どのように承認を得て、計画を立てたか 2 導入の軌跡 Phase 1 RooCode: スモールスタートと見えた課題 Phase 2 Devin: 活用を加速させたブレイクスルー Phase 3 Cursor: 全社展開への最終決断 3 活用の現在地 組織に浸透させるための取り組み 4 結論 6ヶ月間の挑戦から得られた学び

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© asken.inc 5 はじめに - なぜ今、Coding Agentなのか? 2024年12月、大きな転機 Devinとの出会い これは単なるコード補完ツールではない。開発のやり方が根底から変わる 当時の強い危機感 「この波に乗らなければ、確実に他社に遅れを取る」 多少の失敗は覚悟の上。とにかく、組織で活用する道を模索し始め ました。

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© asken.inc 6 導入戦略 - 3段階アプローチ 導入戦略 - 3段階アプローチ 経営層には「リスクを抑えつつ、効果を最大化する」 段階的導入を提案 ステージ ツール 課金形態 目的 Step 1 RooCode 従量課金 リスクを抑えて性能を検証 Step 2 Devin 定額制 +
 従量課金
 高度な機能の活用可能性を探 る Step 3 Cursor 定額制 コストを固定し、全社展開へ 承認は得たものの、2つの大きな懸念がありました。

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© asken.inc 7 導入前の2つの懸念 1. 技術スタックとの相性 本当に、私たちの環境で使えるのか? Kotlin Swift PHP 主力は Kotlin, Swift, PHP VS 世間の成功事例は Python, TypeScript が中心 本当に実務レベルの性能が出るのかは未知数でした。 2. 組織への浸透 「良いツール」を配るだけでは、誰も使わない。 多忙な日常業務の中で、どうやって新しいツールを試してもらう か? どうすれば「特別なもの」から「当たり前の道具」になるのか?

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© asken.inc 8 Phase 1:RooCode編 (2025年1月〜) まずは小さく始める - パイロット導入 目的: 各技術領域(iOS, Android, Server)で性能が出るかをクイックに検証 体制: 精鋭メンバー4名で検証チームを発足 VSCode拡張機能として導入(撤退のしやすさを考慮) 工夫: 業務時間を調整し、「触る時間」を意図的に確保 定期的なMTGで進捗と課題を共有 検証チームメンバー A Android Kotlin I iOS Swift S Server PHP L Lead 調整役

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© asken.inc 9 RooCode編の課題 - 1ヶ月で見えた「 2つの壁」 全社展開後、利用状況に極端な差が発生 すごく使う人 6万円 ($400) vs ほぼ使わない人 数百円 ($1~2) なぜ? ① エディターの壁 普段使いの IntelliJ / Xcode からの乗り換えコストが想像以上に高かった。 ② "従量課金 " の心理的な 壁 「いくらになるか分からない」という不安が、試行錯誤の妨げに。 特に、効果的な使い方を探る初期段階では、この心理的ハードルが致命的でした。

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© asken.inc 10 Phase 2:Devin編 (2025年2月〜) 停滞ムードを打ち破るブレイクスルー 当初の状況 2025年2月 RooCode同様、一部のメンバーが触るものの、爆発的な活用には至らず… 〜2月下旬 「どう使えばいいんだろう?」という模索が続く。 転機は突然に (2025年3月) Ask Devin, Devin Wiki の登場 リポジトリを横断した仕様調査・影響範囲調査 が可能に! この機能をきっかけに、Devinの活用が一気に加速しました。

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© asken.inc 11 Phase 3:Cursor編 (2025年4月〜) 最終決断 - 定額制への移行 RooCodeで見えた課題を解決するために 金額の壁 定額制で解消 心理的なブレーキを外し、誰もが自由に試せる環境へ。 エディターの壁 乗り換えを決断 IntelliJ JunieはまだGAされず。待つよりも、今動くことを選択。 「全員が気兼ねなく使える環境」を最優先し、 Cursorの導入を決定

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© asken.inc 12 (小話)導入の裏側 … いろいろありました ... まさかの … 「Cursor導入するぞ!」 と購入稟議を出したその日に … IntelliJ の Junie がGA(正式リリース) 若干悩みましたが、 Junieの実力もわからなかったのでこのまま導入 😱 タイミングって大事ですね… 動かない RooCodeのAWSの権限を整備して、全社に展開したあと ... AWS Bedrock Providerのregionの選択ができないバグが発生 すぐ治るだろうと思ったが、時期がわからないので自分で直した 自分で直しちゃおう ✅

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© asken.inc 13 活用促進の取り組み (2025年6月〜) ツールを導入して終わり、ではない 目的: Coding Agentと共に働くスタイルを当たり前にする 時代の変化に適応し、組織全体の能力を引き上げる 週に1日「Coding Agent Day」を設定 丸一日、腰を据えて Coding Agentを使い倒す日。 普段の業務を Agentと一緒に進め、新たな発見や使い方を模索・共有する。 第1回開催後から、各種ツールの利用状況が顕著に増加 この活動は今後も継続していきます。

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© asken.inc 14 活用促進の取り組み (2025年6月〜) Claude Codeの検討・導入 目的: 現状の技術負債の解消 ドキュメンテーションの充実 リアーキチームへの導入での検証 リアーキプロジェクトにおいて、既存のコードの仕様整理、ドキュメンテーションに活用 
 それ以外にも、テストの簡略化するためのツール作成など、多岐に辺り活用方法が出てきている パイロット導入で効果が確認できたので、範囲を広げていきます Gemini cliも導入を検討しています 溜まったドキュメントを活用するために自社 MCPも開発中

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© asken.inc 15 結論 - 6ヶ月で学んだこと①【推進力】 まずは自分が 
 「誰よりも詳しくなる」こと 自分で徹底的に触り、情報収集し、 
 「なぜこれが良いのか」を自分の言葉で語れるようにする。 
 これが全ての土台でした。 2 「配るだけ」では 
 絶対に浸透しない 活用には個人のスキルと意欲の差が必ず出ます。 「なぜ今、我々がこれをやるべきなのか」という 
 ビジョンを伝え、強い意志を持って 
 推進することが不可欠です。 1 2

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© asken.inc 16 「協力者」を見つけ、小さな渦から大きな波 へ まずは少人数のパイロットチームから始める。 そこで生まれた活用がうまい人をハブにして、成功事例を広げてい く。 頻繁な情報発信で、組織全体の興味・関心を引きつけ続ける。 4 「知見の集積所」を用意し、育てる AI関連の情報を投稿する Slackチャンネルを用意。 最初は自分一人でも、発信し続ける。やがて、仲間が投稿し てくれるように。 5 活用の「兆し」を見逃さない どんな些細な質問や疑問でも、 Slackで見かけたら即レスする。 「困ったら、あの人に聞けばいい」という信頼関係を築くことが 大事。 結論 - 6ヶ月で学んだこと②【浸透戦略】 3 4

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© asken.inc 17 まとめ この6ヶ月で得た学び 技術的な学び Kotlin, Swift, PHPでも十分な性能を発揮できることを確認。 リポジトリ横断検索のようなキラー機能が活用の鍵。 組織的な学び 従量課金より定額制の方が、心理的ハードルを劇的に下げる。 組織全体への浸透は想像以上に大きな障壁。丁寧なサポートが必要。 小さな成功体験を積み重ね、共有することが全体のモチベーションを高める。 これからの展望 Coding Agentとの協働は、もはや避けられない未来。 継続的な活用促進と、新しいツールへ柔軟に対応できる体制を維持していく。

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© asken.inc 18 Thank you!