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AIエージェントの開発に必須な コンテキスト・エンジニアリング とは 最近話題のコンテキスト・エンジニアリングについて、プロンプト・エンジニアリン グとの違いを解説する。近頃、「コンテキスト・エンジニアリング」という言葉を耳 にする機会が増えている。本資料では、その概念を理解するために、「プロンプト・ エンジニアリング」との対比から解説を試みる。 2 0 2 5 / 0 8 / 2 6 博 報 堂 D Y ホ ー ル デ ィ ン グ ス 執 行 役 員 ・ C A I O 森 正 弥

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自己紹介 博報堂DYグループが目指す「人間中心のAI」の進化 アクセンチュア、楽天を経て デロイト トーマツにて先端技術・AI領域をリード(APACリード) 日本ディープラーニング協会 顧問 東京大学 共創プラットフォーム開発 顧問 慶應義塾大学 xDignity センター アドバイザリーボード 森 正弥 (もり まさや) 博報堂DY ホールディングス 執行役員 CAIO(Chief AI Officer) / Human-Centered AI Institute 代表

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HCAI (人間中心のAI)コンセプト―ムービー:「人間を極める。AIと」 • AIは単なるツールをこえていく。AIを使いこなすことで企業のパフォーマンスを高めるだけ でなく、人の持つ創造性を解き放っていく https://www.hakuhodody- holdings.co.jp/topics/2025/04/5431.html https://www.youtube.com/watch?v=ELtSqhqPsEo

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プロンプト・エンジニアリングの基本 プロンプト・エンジニアリングとは、大規模言語モデル(LLM)に対して与える入力文──指示や例示、フォーマット上のヒントなど──を工夫し、 モデルの出力を望ましいものへと導く技術である。プロンプトの質は、モデルの振る舞いや応答の内容を大きく左右する。最近、こうした手法が広 く共有され、体系的に整理されつつある。

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プロンプト・エンジニアリングの主要手法(おさらい) 1 役割の付与 「あなたは、飲料業界で多数の新商品プロ モーションを手掛けてきたプロのマーケタ ーです」と伝えることで、モデルが応答時 に専門的な視点や語彙を用いるようになる 。これは、単に「マーケティングの企画を 考えてください」と指示するよりも、より 実践的かつ深みのある出力を得やすい。 2 少数の例の提示 「言語的説明よりも例示によって学習させ る」というアプローチであり、2~3件の入 出力例を提示することで、モデルに望まし いフォーマットや文体を暗黙的に理解させ る。たとえば、JSON形式で特定の構造を 持つ出力を得たい場合、該当例を示すこと で、意図が明確に伝わる。 3 思考の連鎖 推論過程をモデルに明示的に書き出させる ことで、応答の飛躍や漏れを防ぐ試み。「 ステップ・バイ・ステップで」「順を追っ て考えよう」といった指示を加えることで 、モデルがより論理的な展開を見せるよう になる。とりわけ複雑な課題や数理的な推 論を含む問いに対して有効性を発揮する。

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役割付与の応用 AIモデルへの役割付与 「あなたは、飲料業界で多数の新商品プロモーションを手掛けてき たプロのマーケターです」と伝えることで、モデルが応答時に専門 的な視点や語彙を用いるようになる。 ユーザー自身の役割付与 「わたしは、飲料会社のクライアントです。今までも様々なプロジ ェクトの企画を見てきたので、そんじょそこらの企画では満足しま せん」と自らの役割も伝えておくと、それを考慮したアプトプット をモデルは模索してくれる。 このように、AIとユーザー双方に役割を設定することで、より具体的な文脈の中での対話が可能になる。

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プロンプト・エンジニアリングの追加手法 制約の明示 「100語以内で回答して下さい」「与えられた情報のみを用いるこ と」などと条件を付すことで、モデルの出力を意図から逸脱させず 、品質を安定させることができる。 思考の連鎖 「ステップ・バイ・ステップで」「順を追って考えよう」といった 指示を加えることで、モデルがより論理的な展開を見せるようにな る。とりわけ複雑な課題や数理的な推論を含む問いに対して有効性 を発揮する。 以上のようなプロンプト・エンジニアリングの技法は、現在でも広く活用されているが、今現在、その延長線上にある「コンテキスト・エンジニア リング」への関心が高まりつつある。

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コンテキスト・エンジニアリングとは コンテキスト・エンジニアリングとは、LLMが推論を行う際に参照するすべての情報──プロンプト、検索結果、メモリ、ツールからのデータなど ──を、動的かつプログラム的に統合・構築するアプローチである。ここでは、プロンプトの工夫にとどまらず、情報の選定・配置・構造化そのも のが重要となる。すなわち、LLMが持つ「コンテキストウィンドウ(入力領域)」を、最適な形で満たすことが求められる。

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プロンプトからコンテキストへ プロンプト・エンジニアリングの限界 一部では、「コンテキスト・エンジニアリングは新しいプロンプト・ エンジニアリングである」と言われるが、それは一面の真理でありつ つも、両者が排他的な関係にあるわけではない。 対話型モデルでの例 ChatGPTのような対話型のモデルに対して「自分に合ったランニング ウェアを教えてほしい」と尋ねるような場合、プロンプトの工夫は依 然として価値を持つ。サイズの違いや価格帯、シューズとの相性など 、会話を通じて個別の条件を深掘りしていく過程では、プロンプトの 設計が重要な役割を果たし続ける。 プロンプトの設計がより広範かつ構造化された実装へと発展していった結果、「コンテキスト・エンジニアリング」という新たな呼称が定着し つつあるのである。

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AIエージェントとコンテキスト設計 カスタマーサポートなどの用途でAIエージェントを設計・構築する際には状況が異な る。そこではユーザーとの繰り返しのやり取りを前提とせず、あらゆる問い合わせや シナリオに初期設定の段階で対応できるような、包括的な文脈・知識・指示セットを 与えることが求められる。たとえば、請求・返金対応、ログイン障害、利用規約検索 、迷惑行為への対応、さらには人的サポートへのエスカレーションまでをカバーする 必要がある。このようなケースでは、プロンプトは膨大かつ複雑になり、Markdown 形式を用いた構造的記述が求められることもある。

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コンテキスト設計の具体例 ユーザーが「来月の出張に合わせて府中市でホテルを予約して」と指示したとする。このとき、AIエージェントは「承知しました。ホテルを予 約しました」と返答するかもしれない。しかし、その予約先が広島県の府中市ではなく、東京都の府中市であった場合、ユーザーの意図とは異 なる結果となる。 これは一見、ユーザー側の指示が曖昧だった──すなわちプロンプト設計が不十分だった──ことに起因するようにも見えるが、実際には、AIエージ ェントがユーザーのカレンダーや会議情報といった周辺情報を参照できなかった点に、コンテキスト設計上の課題があると捉えることもできる。

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AIエージェントの定義と現状 AIエージェントとは、自律的に環境を感知し、ユーザーの目標達成に向けて行動する ソフトウェアシステムである。今日では、プログラミング支援に特化したAIエージェ ントが普及しており、コードの生成やデバッグ補助などに利用されているが、一般的 なビジネス領域でも、営業活動を支援するエージェントが登場している。たとえば、 見込み顧客に対するアポイントの取得など、アウトバウンド型の営業支援に活用され ている。

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AIエージェントの構成要素(1-4) 1 モデル すべてのAIエージェントは、大規模言語モデル(LLM)などの基盤モデ ルを必要とする。代表的なものとしては、OpenAIのGPT、Anthropicの Claude、GoogleのGemini、またはオープンソースのLlamaやMistralなど が挙げられる。 2 外部ツール ツールとは、エージェントが外部システム──たとえばカレンダー、ファ イル管理、メール、データベース、APIなど──と連携するためのインタ ーフェースである。LLMはそれ自体では外部情報へのアクセスや操作を 行えないため、ツールを通じて初めて現実世界との接点を持つことがで きる。 3 知識と記憶 AIエージェントは、現在の文脈だけでなく、過去のやり取りやドメイン 知識を参照することで、より的確な応答を返すことができる。短期メモ リは直近の会話を要約し、コンテキストウィンドウ内に保持することで 、対話の一貫性を保つ。長期メモリは、ユーザーの好みや過去のやり取 り、タスク履歴などをベクトルデータベースに保存する。 4 状態管理 旅行予約や問い合わせ対応など、複数ステップを要するタスクにおいて は、途中の進行状況を把握・維持することが重要である。フライト予約 が済んだか、ホテルのチェックイン時刻が決まっているか、送迎の手配 が完了しているかなど、これらの状態を正確に記録し、文脈を保持する 。

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AIエージェントの構成要素(5-8) 5 音声と発話 音声による入力や出力が可能になることで、ユーザーはより自然な インタラクションを行うことができる。とりわけ高齢者支援や運転 中の操作といった状況において、音声インタフェースは利便性とア クセシビリティを大きく向上させる。 6 ガードレール これは、AIエージェントが安全かつ倫理的に動作するための制御機 構である。たとえば、カスタマーサポートにおいて、ユーザーの挑 発的な言動に対して不適切な返答を返さないようにするなど、想定 外のリスクを回避するために設計される。 7 モニタリングと改善 AIエージェントは構築して終わりではなく、配備後もその行動ログ やユーザーとのやり取りを継続的に観察し、パフォーマンスや精度 、応答品質を分析して改善していく必要がある。運用環境での実証 を重ねることで、モデルの調整やプロンプト、ツール接続の改善が 実現される。 8 オーケストレーション これは、複数のAIエージェントが目的達成のために連携しながら動 作する設計思想を指す。たとえば、旅行予約に関わるエージェント と、経費精算に関わるエージェントが連携して行動するような場合 、それぞれのタスクを切り分けつつ、共通の文脈を維持し続けるた めのコンテキスト共有が欠かせない。

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RAGの重要性 広く活用もされてきたRAG(Retrieval-Augmented Generation)の手法は、動的に外 部データベースに接続し、必要な情報のみを抽出・統合して出力に反映させる点で、 コンテキスト・エンジニアリングの実装上、極めて有効な技術である。 RAGは特に専門知識を要する領域で、AIエージェントが正確な情報に基づいて応答す るために不可欠。

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ハンバーガー比喩で理解する AIエージェント ハンバーガーと呼ばれるためには、バンズ、パティ、野菜、調味料といった基本的な 構成が必要である。ただし、その内訳には多様性が許容されている。バンズは全粒粉 でも白パンでもよく、さらにはレタスなどの代替素材を用いても構わない。パティも 牛肉、鶏肉、植物由来の代替食品など、多様な選択肢が存在する。こうした多様性を 持ちながらも、一定の構成原則が守られてはじめて、それは「ハンバーガー」と認識 される。同様に、AIエージェントもまた、基本的な構成要素を備えてこそ、機能的に 成立すると言える。

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コンテキスト・エンジニアの役割 構成要素の整理 AIエージェントに求められる構成要素──ツ ールの仕様、記憶へのアクセス、知識ベース の適用範囲、音声入出力の発動条件など── を整理する 連携方法の記述 それらをどのように連携させるかを正確に記 述するプロンプトを設計する 取扱説明書の作成 こうして作成されたプロンプトは、エージェ ントにとっての「取扱説明書」となり、内在 する能力を効果的に引き出すための基盤とな る このプロンプト設計は一朝一夕には完成しない。多くの場合、理想的な構成に到達するまでには試行錯誤を要する。そのため、コンテキスト・エン ジニアリングには一定の時間と熟慮が求められる。

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実運用に向けた課題 AIエージェントをPoC(概念実証)やデモの枠を超えて、実運用可能なシステムとし て構築するためには、「Vibe Coding」(感覚的なコーディング)では限界がある。こ うした複雑な要件に対応するためには、より深い文脈理解と統合設計を可能にするツ ールが必要となる。その代表的な例が、「Augment Code」のようなエンジニアリン グ支援ツールである。

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Augment Codeの機能 高度な支援機能 デバッグ、テストコードの生成、リフ ァクタリング、あるいは大規模なコー ドベースのナビゲーション支援を提供 する。 クラウドエージェント 開発者がノートPCを閉じている間でも 、テスト修正やリファクタリングなど のタスクが自動的に進行する。 セキュリティと互換性 ISOおよびSOC 2認証を取得しており 、顧客のコードを学習データに使用し ない。対応するIDEも多岐にわたり、 VS Code、JetBrains、Vim、Cursorな どが利用可能。

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プロンプトとコンテキストの関係 プロンプト・エンジニアリング 「問いを設計する技術」 • AIとの対話の質を高める • 単一の会話や質問に焦点 • 出力の形式や内容を調整 コンテキスト・エンジニアリング 「仕組みを構築する技術」 • 対話を成立させる文脈と環境を整備 • システム全体の設計に関わる • 複数の情報源を統合 この二つの技術が相互に補完し合うことで、AIエージェントはより柔軟かつ的確に振る舞うようになり、現実のタスク遂行においても最適な結 果をもたらす可能性が高まる。

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まとめ:AIの未来に向けて 今後、AIの実用展開を進めるうえで、プロンプトからコンテキストへと視野を拡張し ていく姿勢が、ますます重要となっていくだろう。プロンプト・エンジニアリングは 「問いを設計する技術」であり、コンテキスト・エンジニアリングは「仕組みを構築 する技術」である。前者によってAIとの対話の質を高め、後者によってその対話を成 立させる文脈と環境を整備する。この二つの技術が相互に補完し合うことで、AIエー ジェントはより柔軟かつ的確に振る舞うようになり、現実のタスク遂行においても最 適な結果をもたらす可能性が高まる。