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宇宙開発の人が設計やモデリング について考えてみた 2022.1.20 設計 モデリング LT会 Vol.3 miure https://m-miura.jp/

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発表概要 ● 宇宙開発の人たちが集まってつくった設計&モデリングの会社について ● アーキテクチャ設計について考えてみる&我々のアプローチを紹介 ● 設計・モデリングを含む「システム工学」の出身地は宇宙開発だ!と 主張しつつも、もはや遅れているので、ソフトウェアやWebの皆さんと も仲良くなりたい

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目的と目次 目的 ● エンジニアコミュニティの皆さんにレヴィが開発・提供している モデリングツールやフレームワークについて知って欲しい ● (後述するように)宇宙開発よりもソフトウェアやWebの世界の方が 設計・モデリングの話が進んでいるので、意見やアドバイスが欲しい 目次 ● 自己紹介 ● 会社紹介:宇宙開発の人がつくった設計・モデリングの会社 ● 宇宙開発とシステム工学 ● アーキテクチャ設計と対話型モデリング このスライドのダウンロード:https://bit.ly/20220120lt ※配布すると怒られそうな画像とかロゴとかは消しています

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自己紹介

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自己紹介 三浦 政司 (みうら まさし) 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 准教授 株式会社レヴィ 共同創業者&システムデザイン研究所所長 ● 菌類からロケットまで、複雑システムなら何でも扱う研究者 ● 鳥取に10年間住んでいたけれど、最近関東に戻ってきた ● 好きなこと:蟻、コミック、自転車、B級スポット巡りなど https://levii.co.jp/ https://m-miura.jp

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機会があったら話したいこと(呼ばれるの待ち ● 蟻コロニーの創設と飼育          <- https://r.m-miura.jp/ants/ ● 自然言語処理技術の無駄遣い        <- https://note.com/miure ⇨「異世界転生あるあるを導出」「ネット上の怖い話を分類」など  ● 木材腐朽菌のエージェントシミュレーション <- https://bit.ly/fimas2021 ● 人工知能鹿肉品質判定器「ジビエーアイ」  <- https://r.m-miura.jp/gibierai/ ● ロケット工学、宇宙開発、分散協調制御の話 システム 我が家で生まれたアリ 自然言語処理で 異世界転生あるあるを導出 木材腐朽菌 種間競争 MAS

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宇宙開発の人たちがつくった設計・モデリングの会社

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株式会社レヴィ 複雑さの中に、価値と面白さを見つけよう 2016年5月創業 現在メンバ29名 (業務委託等含む) 創業メンバー:JAXA宇宙科学研究所で一緒に学んでいた仲間たち

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オリジナルフレームワーク:システミング® ● システム工学のエッセンスを抽出して『使える』システムデザインのための フレームワーク「システミング」として再構築 ● システミングを効果的に習得・実践するためのツールや教材を開発

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対話型モデリングツール:Balus® ● システミングを効果的に実践することができる Webサービス ● 素早く簡単にビューやシステムモデルを構築 ● チームメンバやステークホルダが対話しながら システムモデリング ● 自動構造化やファシリテート支援などの 高度な機能(実装作業中)

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システム開発体験ゲーム:ペジテの自転車 ● ゲームを通してシステム開発の流れと 難しさを疑似体験 ● システム開発の全体像や重要なこと、失敗しや すいところを学ぶことができる導入教材 ● 自転車メーカーの新製品開発チームの一員に なりきって顧客満足度の高い自転車の開発を 目指す協調ゲーム 2022/2/12無料体験会参加者募集中!  ※レヴィ公式ブログからお申し込みできます

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提供サービスの例 ● ソフトウェア企業の成長戦略を支える開発チームの組成・育成支援 ● 業務改革/DXのための上流設計支援、開発マネジメント ● 業務課題の抽出・整理・解決に向けた支援 ● 新規事業戦略策定、新製品開発などの支援 ● 「Balus」をサブスクリプション型ライセンスで提供 研修・セミナー形式のサービス コンサル・設計代行形式のサービス

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誰もがシステム工学の考え方を活用 できるようにすることで、 複雑な社会の様々な課題を解決して、 面白くて価値のあるシステムを たくさん生み出したい

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宇宙開発とシステム工学

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システム工学(Systems Engineering)の出身地 他の分野に先駆けて複雑さに挑んできた航空・宇宙・防衛などの 分野で複雑さに挑むための良い方法が洗練されてきた。 images: JAXAデジタルアーカイブス

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images from: nasa.gov

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images from: mit.edu

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images from: nasa.gov 百万点以上の部品、 何百万行というソフトウェアコード、 40万人にもおよぶプロジェクト関係者

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アポロ計画をはじめ、 宇宙・航空などの分野の中で培われてきた 複雑だけど目的を満たすものを実現するための ベストプラクティス それを体系化したものが システム工学

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アポロ計画をはじめ、 宇宙・航空などの分野の中で培われてきた 複雑だけど目的を満たすものを実現するための ベストプラクティス それを体系化したものが システム工学 対象をシステムとして見る システム設計の話 モデリングの話

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システム工学はベストプラクティス集 ● 原理や理論から導出されたものではない ● 「こうすれば上手くできるよ」を集めたもの (正確には、集めて体系化したり標準化したりしたもの) ● 先人の試行錯誤の結果を活用することができる INCOSE Systems Engineering Handbook NASA Systems Engineering Handbook

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誰もがシステム工学の考え方を活用 できるようにすることで、 複雑な社会の様々な課題を解決して、 面白くて価値のあるシステムを たくさん生み出したい

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ということで、いろいろやっているけど 今日はそのうちのアーキテクチャ設計に 焦点をあてて、我々の提案を紹介

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アーキテクチャ設計と対話型モデリング

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アーキテクチャ設計とは? 実装プロセス 統 合 プ ロ セ ス 設 計 プ ロ セ ス

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アーキテクチャ設計とは? 実装プロセス 統 合 プ ロ セ ス 設 計 プ ロ セ ス 上流設計 要求分析 アーキテクチャ設計

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参考資料では ビジネス分析 プロセス 利害関係者要求 定義プロセス アーキテクチャ 定義プロセス 設計定義プロセス システム分析 プロセス 実装プロセス 統合プロセス 検証プロセス 移行プロセス 妥当性確認 プロセス 運用プロセス 保守プロセス 保守プロセス 要求定義プロセス ISO/IEEE 15288:2015 p17-Fig.4で定義されている システムライフサイクルプロセスのうち技術プロセスを抜粋 システムズエンジニアリングの基本的な考え方, JAXA

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(システム)アーキテクチャの定義 ISO/IEEE 42010 ある環境におけるシステムの基本的な概念や性質のことであり、 そのシステムの要素と関係、そして、設計と進化の原則が具現されている。 ASCII.jpデジタル用語辞典 コンピューターやシステム全体の設計思想や構造のこと。 ちょっと何言ってる かわからないです

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「アーキテクチャ設計」でやりたいこと ● 複雑なシステムを開発する際には様々な専門家が分野を横断して 協力する必要がある。 ● 詳細な設計や最適化は各分野の専門家に任せざるを得ない。 ● 一方で、システムの全体像や基本的な姿については認識を合わせて 合意をとっておきたい。 どんなシステムをつくるのか?について認識が揃っていないと 上手く手分けできない(手戻りや統合失敗の原因となる)

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「アーキテクチャ設計」でやりたいこと どんなシステムをつくるのか?について認識が揃っていないと 上手く手分けできない(手戻りや統合失敗の原因となる) 詳細な設計や最適化は各分野の専門家に任せる               「どんなシステムをつくるのか?」については認識を合わせる 両立させたい!

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「アーキテクチャ設計」でやりたいこと 機能 物理 運用 抽象度高 抽象度低 関係者の間で合意を とっておくシステムの姿 (アーキテクチャ) 各専門家に任せる詳細

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「アーキテクチャ設計」は抽象度が難しい 機能 物理 運用 抽象度高 抽象度低 抽象度が高過ぎるとこ ろで合意しても、 認識がずれる 抽象度が低すぎると 合意がとれない

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「アーキテクチャ設計」は正解探しではない 機能 物理 運用 抽象度高 抽象度低 どこかに正解があるので はなく、様々な専門性や 視点から見て合意できる ことが重要

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あらためて整理すると アーキテクチャ設計 関係者の間で「どんなシステムをつくるか?」の全体像と基本的な姿に について合意を得るプロセス アーキテクチャ 合意を得るのにちょうどいい抽象度で表したシステムの姿 難しいポイント ● 「ちょうどいい抽象度」を探らなければならない ● 正解探しではなく、合意ポイント探し

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あらためて整理すると アーキテクチャ設計 関係者の間で「どんなシステムをつくるか?」の全体像と基本的な姿に について合意を得るプロセス アーキテクチャ 合意を得るのにちょうどいい抽象度で表したシステムの姿 難しいポイント ● 「ちょうどいい抽象度」を探らなければならない ● 正解探しではなく、合意ポイント探し システミング を提案

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システミングのエッセンス 専門家B 専門家C 専門家A 1. 視点をわける 2. システムモデルで表現する 3. 視点をつなげる 運用 フロー 機能 構造 運用フローを実現する のに必要十分な機能が 挙げられているか? (整合性観点)

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「対話型モデリング」を言ってもいいかも 専門家B 専門家C 専門家A 1. 視点をわける 2. システムモデルで表現する 3. 視点をつなげる 運用 フロー 機能 構造 運用フローを実現する のに必要十分な機能が 挙げられているか? (整合性観点) 対話するための前提 対話しながらシステムモデルを 構築していくことで合意できる アーキテクチャを探す 対話しながらモデリングを するときの注意点

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ビュー(視点)とモデル システム モデル ビューから見たシステムを 表現したもの ビュー 分けて見るときの枠 ● ビューポイント(関心) ● 抽象度 ● スコープ(範囲) で決まる

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システム設計者がよく使うビューポイント Context Viewpoint システムの全体と境界、および外部との相互作用に関心を持つ Functional Viewpoint システムの機能に関心を持つ Operational Viewpoint システムを操作する、運用するという側面に関心をもつ Process Viewpoint システムの動作、処理の順番などに関心がある視点 Physical Viewpoint システムの物理的な構成、特性、形状などに関心がある視点 どのようなビューポイントが必要か?も探りポイント(対話が必要になることも)

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対話型モデリングツールの開発 提案する対話型モデリングを効果的に実践することのできるツール としてBalusを開発&提供中 ● クラウドを通してシステムモデルを同時編集 ● 手軽な操作でシステムモデルを描く/変える ● ビューを分けながらモデリングする世界観 ● 豊富なコミュニケーション機能

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Balusの画面見ながら紹介(時間あれば) 時間なければ例えばこの動画 :https://levii.co.jp/lab/nandemo/20210716/

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おわりに:(宇宙は)出身地だけど遅れてる気がする

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既存のシステム工学(特に@宇宙開発) ● かっちりしたシステムライフサイクルプロセスが前提となって構築されている。 ● 不確実性やリスクを小さくするためにプロセス重視、意思決定ゲート設置、 資料化重視のマインドセットが基本である。 ● システム工学のテーラリング(各ケースへの適用)には経験豊かな 「その領域におけるシステム工学の専門家」が必要となる。 ● MBSE(モデルベースなシステム工学)などの考え方も普及してきているが、 「正確な記述」や「トレーサビリティ」が重視されがちで「合意を得る」という 重要なモデルの役割が理解されていない場合がある。

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テーラリングにはエキスパートが必要 エキスパートがいると 到達できる活動 システム開発に要するコスト 手戻りのリスクなどを含む プロジェクトのトータルコスト どれほど厳格にSEのプロセスを実行するか システム工学が 欠如している活動 SEプロセスを 実行するコスト 形式を過剰に 適用してしまう 組織など

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探求していること システム開発に要するコスト 手戻りのリスクなどを含む SEプロセスを 実行するコスト プロジェクトのトータルコスト どれほど厳格にSEのプロセスを実行するか エキスパートでなくても ほどよいシステム工学を実践できるフレームワーク を探求したい

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ソフトウェアエンジニアの皆さんの方が 進んでいる(と勝手にイメージしている) ● アジャイル ● DevOps ● ドメイン駆動設計 ● …

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システム工学は宇宙開発出身だけど、 ● 新しいコンセプトの宇宙システムを考えるときは、 既存のアーキテクチャから話をはじめるのではダメ ● ビジネス、用途開発など新しいビューポイントが必要になってきている ● 設計するシステムのスコープを広げて大きなシステムの提案が必要 例)宇宙探査と宇宙輸送のあり方を同時に設計する ● JAXA、民間企業、大学、etc…など多様な立場でチームを形成し、 協力して設計開発に取り組む場面が増えていく ● リソースが不足しがちな中で効率的に設計開発を進めなければならない ● リモートで設計、認識合わせ、合意形成を行わなければならない 宇宙開発のシステム工学は進化しなければならない

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興味を持っていただけたなら

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お気軽にご連絡/フォロー下さい [email protected] ・ https://m-miura.jp [email protected] ・ https://levii.co.jp @levii_sdl (レヴィ システムデザイン研究所) @levii.inc

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https://levii.co.jp/contact で無料配布中! システムデザイン研究所 なんでもモデリング教室