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ソニックガーデンの紹介 2022年3月版 株式会社ソニックガーデン 倉貫義人

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倉貫 義人 株式会社ソニックガーデン 代表取締役(創業者) 株式会社クラシコム 社外取締役(2018年〜) ● 1974年京都出身、10歳からプログラミング ● 立命館大学 → 学生ベンチャー → ゲーム開発 ● TIS株式会社、アジャイル開発の普及に貢献 ● 受託開発 → 社内システム → 社内ベンチャー ● 2011年、TIS社内ベンチャーをMBOして創業

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株式会社ソニックガーデン ● 2011年創業「納品のない受託開発」を提供開始 ● プログラマを一生の仕事にする、高みを目指す ● プログラミングを通じて自立できる人をつくる ● ソフトウェア開発の道を究めて、文化を広める

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全国に散らばる仲間たち ● 2016年オフィス撤廃、全員リモートワーク ● 社員50名が、22都道府県から勤務 ● 北海道から沖縄まで

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移住して働く、旅しながら働く、地元で働く

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社員について 平均年齢 約 36歳 25〜57歳 社員数 50人 役員含む

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事業について 納品のない受託開発 月額定額 顧問チーム 100%直接取引 企画〜運用まで 100社以上の実績

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納品のない受託開発 新規事業を 立ち上げたい 既存システムに 課題がある 基幹業務を システム化したい 業務改善で 効率化を図りたい まるで優秀な内製チーム、しかもマネジメント不要。 月額定額の顧問形式で事業の成長を支え続けます。

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なぜやっているのか 「プログラマを一生の仕事にする、高みを目指す」 ● 楽しく真面目にソフトウェア開発に向き合う仕事 ● プログラミングの腕を磨き続けたい人たちの場所 ● 創業メンバー(同じバスに乗る仲間)がプログラマ ● 創業者の思い「心はプログラマ、仕事は経営者」

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見積り/要件定義なし ドキュメントなし プロジェクトなし 契約時間なし 納品のない 受託開発 通勤のない 働き方 働く場所の縛りなし 本社オフィスなし 申請・制限なし 勤怠報告なし 管理のない 会社経営 上司/指示命令なし 承認・決裁なし 部署・管理職なし 売上目標・評価なし

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納品のない 受託開発 通勤のない 働き方 管理のない 会社経営

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目次 第1部:受託開発におけるアジャイル開発 第2部:社内の開発から社内ベンチャーへ 第3部:「納品のない受託開発」の誕生 第4部:「納品のない受託開発」の裏側 第5部:全社員リモートワークに至る道筋 第6部:ナレッジワーカーと管理ゼロ経営 第7部:プログラマの採用・育成と生き方 第8部:仕事を通じて自立する人をつくる 第9部:アジャイル思考による新しい経営 第10部:私たちの経営が目指すものは何か

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第1部 受託開発におけるアジャイル開発

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学生時代の原体験 ● ベンチャーの経験、好きなことが仕事になる ● 研究室でゲーム製作、インターネットに感動 ● プログラミングできる会社を探してTISへ入社

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1999年頃のSIerはマネジメント重視へ ● 入社年度に方針転換、マネジメントの会社へ ● プログラミング能力が重宝されてデスマーチ ● 大型案件を立て直せずプログラマとして挫折

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アジャイル開発との出会い ● プロジェクトの分析、上流工程は綺麗な世界 ● ウォーターフォールが元凶なのではないか? ● アジャイル開発ならばプログラマが主役に?

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会社を辞めるか続けるか ● アジャイル開発を広げるための活動を始めた ● コミュニティ参加して脳のブレーキが壊れた ● 「独立するなら、有名になれ、仲間を作れ」

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ガラパゴスなキャリア戦略 ● 大企業でアジャイル開発している珍しい人物 ● 社外でコミュニティ活動している珍しい社員 ● 基盤技術センターの立ち上げに招聘され異動

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アジャイル開発の限界 ● 営業からプロジェクトマネージャまで試した ● パートナー「言われたことだけをやりたい」 ● 不要なものでも全部開発するビジネスモデル

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従来の受託開発が抱える問題 ● 発注者と受注者で目指しているゴールが違う ● 利用価値よりも、要件定義に従うことが価値 ● 生産性が低いほど、見積もり金額が高くなる

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ディフェンシブな開発 ● SIerの利益は何か?バッファを守り残すこと ● SIerの価値は何か?リスクを丸受けすること ● SIerの評価は何か?沢山の人数で大きな案件

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ビジネスモデルの構造的な欠陥 ● 全ての機能を作るのなら、アジャイルは不適 ● 多重請負の構造によるリスクバッファの無駄 ● 労働集約と完成責任の捻れで利益が出せない

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お客さまから見た受託開発 納品したら開 発者は解散 直したくて も直せない 使い始めてから不 満が出てくる 何が必要か 予想は難しい

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開発者から見た受託開発 ● 人月の見積もりは、生産性向上の意欲を削ぐ ● 開発と保守の分離は、品質向上の意欲を削ぐ ● 案件毎の体制は、チームワークの意欲を削ぐ

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誰も幸せにしないビジネスモデル ● 開発会社は規模を追求するしか生き残れない ● お客様は使えないシステムしか手に入らない ● 開発者は成長のモチベーションが得られない

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第2部 社内の開発から社内ベンチャーへ

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受託開発から足を洗う ● チームの解散、辞めるか(入社以来2度目) ● プログラマで転職は無理、社内で転職しよう ● 社内システムを外注しないで自分の手で作る

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社内システムとアジャイル開発 ● 社内向けSNSの開発と運用、企画と展開まで ● 社員ユーザの近さ、フィードバックの嬉しさ ● 企画・開発・運用が同じチームのスピード感

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社内向けシステムを外販へ ● 社内システムのアジャイル開発は順調だった ● コストセンターには解散と引き抜きのリスク ● 生き残るため自分たちで稼ぐ、外販していく

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社内ベンチャーの誕生 ● 社内資産のオープンソース化、社長決裁の道 ● 経営統合と新社長の就任、リセットと直談判 ● 子会社を妥協して社内ベンチャー制度を作る

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プログラマから経営者へ ● プログラミングを封印、初めての経営に集中 ● 営業もマーケティングも広報も経理も未経験 ● ずーっと赤字、どれだけ管理しても成果なし

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仮説の失敗とピボット ● 仮説:薄利多売、マスマーケ、スケールする ● 実際:B2Bの難しさ、契約・営業コストが大 ● 売り方をピボット、苦手やめて強みを活かす

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経営の本質 ● マーケの転換:お金をかけない、知識を使う ● 営業の転換:儲けるためから、お客様のため ● 管理の転換:働きやすい環境、自由にさせる

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“Point of Sales”から“Point of Use”へ 時間 構築 償却 利用中が最高品質 (サービス業の発想) 買った時点が最高品質 (製造業の発想) 時間 品質 品質

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組織のパラダイムシフト ● 開発よりも運用、継続性と保守性の品質重視 ● 完成よりも成果、コストパフォーマンス重視 ● 計画よりも適応、事業の成長を最優先に置く

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品質のパラダイムシフト 「誰が顧客なのかがわか らなければ、何が品質な のかもわからない。」 (リーンスタートアップより)

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開発のパラダイムシフト ● 絶対バグを出さない → 出してもすぐに直す ● 絶対サーバ落ちない → 落ちてもすぐに復旧 ● 予見的なデータ設計 → データは変わる前提

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社内ベンチャーを買い取って独立 ● 低コスト戦略で黒字化、しかし親会社が合併 ● 成果は製品よりもチーム、チームを続けたい ● 株式会社ソニックガーデン設立、MBOの実施

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第3部 「納品のない受託開発」の誕生

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ビジョンの作り方 ● ビジョナリーカンパニー、同じバスに乗る人 ● プログラマ中心の会社、プログラマを幸せに ● 一緒に独立してくれた仲間を幸せにする会社

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バックトゥ受託開発 ● サービスでレベニューシェアしたいお客さま ● 起業して新規事業を始めて育てたいお客さま ● 継続的に複数のシステムを作りたいお客さま

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2011年当時の世の中 ● クラウドとスマホが普及し、所有から利用へ ● 要件定義できない新規事業やスタートアップ ● 従来の受託開発では取り組めないマーケット

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求められるソフトウェア開発 これまで これから 品質重視で作ってから売る 事前の計画に従う 大きく投資してビックバン 減価償却するまで使う リリースまでのプロジェクト スピード重視で市場に出す フィードバックから改修 初期投資はスモールスタート スケールアウトが前提 事業が続く限り改善も続く

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小さな会社が負けない戦略 ● 従来の受託開発が抱える構造的な問題を解決 ● アジャイルとクラウドの経験と強みを活かす ● ウェブの新規事業というマーケットの広がり

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改めて受託開発に潜む問題 ● 不幸の元凶は発注者と受注者のゴールの違い ● 要件定義どおりに完成する使えないシステム ● 一括請負における圧倒的な費用対効果の悪さ

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納品のない受託開発 ● 月額定額で、開発と運用をずっと続けていく ● 顧問として、一人ですべての工程を担当する ● 働く時間でなく、働いた成果を提供する契約

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お客さまは何が嬉しいか ● 要件定義をしない、いつでも仕様変更できる ● 営業が伝言しない、開発者に直接相談できる ● 作らない提案がもらえる、気軽に相談できる

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お客さまが抱えている課題 ● 内製するのは、開発者の採用と育成が難しい ● SIerに発注するのは、柔軟性が低くて高価格 ● フリーランスに頼むのは、いなくなるリスク

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私たちの考えるプログラマ ● お客さまと対話して、抱える課題に提案する ● 仕様設計から実装まで、一気通貫で開発する ● クラウドで安定運用して、継続的に保守する

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銀の弾丸でも万能薬でもない ● ドキュメントは作らない、営業担当はいない ● 客先に訪問しない、働いた時間の報告しない ● 絶対に納期を死守するという約束はできない

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ブルーオーシャン分析 低コスト構造化 差別化 要件定義なし ドキュメントなし 客先訪問、客先作業なし 営業担当、見積もりなし 納期の約束なし 一度に決めなくて良い 動くモノで確認できる 作る人と直接話せる 無駄なものを作らない ずっと相談できる

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第4部 「納品のない受託開発」の裏側

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技術を強みにする戦略 ● 技術の指定は受けない=顧客は気にせず済む ● 社内で技術要素を共通化してナレッジを蓄積 ● 新しい技術は受託開発以外の時間で検証する

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納品のない受託開発の進め方 ● 週一定例のテレビ会議、動く画面で仕様確認 ● コストと期間を固定し、作る機能を調整する ● なぜ、なんのために作る?なるべく作らない

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同じゴールに向かう戦略 ● 月額の上限があるので、作っても儲からない ● 一括請負をしないので、長く続く方が嬉しい ● 時間の約束がないので、生産性と成果が大事

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開発をする前にしておくべきこと ● “何を作るのか?”よりも“何のためか?”が大事 ● “やりたいこと”よりも“困っていること”を確認 ● “最大限の構想”よりも“最小限の完成品”を探る

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設計をする際に気をつけること ● チームと期間は固定して、機能数で調整する ● 何を作るのか?ではなく、何は作らないか? ● タスクばらし、見積もり、優先順位を決める

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体制とチーム ● 一人で全工程を担当、開発と運用は分けない ● 一人で対応しない、ペアもしくはチーム体制 ● 一人あたり複数の企業を顧問として担当する

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チームワークを重視 ● 会社員よりもフリーランスよりもさらに自由 ● フリーランスだと全部自分でやる必要がある ● 得意なことに集中、苦手なことはしたくない

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営業を専任する社員なし ● 営業社員はいない、開発者がお客さまと話す ● 営業するよりプロトタイプ開発で惹きつける ● ストックだから、たくさんの引き合いは不要

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お金かけないマーケティング ● 広告宣伝費ゼロ、新規開拓よりも継続を重視 ● 知識を広める、ファンを作る、先生から入る ● 自分たちで総取りしようとしない、まず市場

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マーケティング分析 一般的な会社 ソニックガーデン 法人営業・人脈・新規開拓 RFPからのコンペ 広告宣伝・展示会など 提案作業 見積もり 既存顧客の満足度・紹介 ウェブからの問い合わせ 宣伝費ゼロ・口コミ お試し期間 サービスメニュー

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事業戦略 ● 短期的な売上より、長期的な関係を築くこと ● 自社の利益より、まずは顧客の役に立つこと ● 大口顧客より、小さく多くの顧客を持つこと

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メリット・デメリット ● ストックビジネスで借入なしの安定した成長 ● 経営者:急成長・急拡大は無理なので諦める ● 開発者:努力に見合う成果と自由を得られる

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第5部 全社員リモートワークに至る道筋

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リモートワークのきっかけ ● アイルランドで働きたい人と、東日本大震災 ● クラウドで成果物、オンラインで働ける土壌 ● 地方からの応募者が単身赴任不可で在宅勤務

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私たちのリモートワーク テレワーク(世の中の理解) 私たちのリモートチーム 事前に申請 制限あり 少数が離れて働く 独りで静かに 定量的な作業 特別な非日常 申請は不要 いつでも 全員が離れて働く チームでワイワイ 協調する仕事 いつもの日常

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私たちのリモートワーク 個人で働く チームで働く 離れて 働く 近くで 働く クラウドソーシング (インターネットで受注) 会社に通勤して オフィスで働く 個人事業主 (フリーランス) 通勤しないけど 会社の仲間と働く

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物理出社から論理出社へ 物理出社 論理出社

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● 雑談する機会 ● 存在感の演出 ● 煩くない通知 バーチャルオフィスの開発

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オフィスのない会社へ ● リモート社員とオフィス社員でフェアにする ● 社長が自らリモートワーク、出社しない社長 ● 全社員リモートワーク、本社オフィスの撤廃

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全社員がリモートワーク ● 冬になるとほぼ毎日スノーボードに行く社員 ● 地元に移住して働く、地元を盛り上げる社員 ● 全社員が、物理的に一堂に集まることはない

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顔を合わせて仕事する ● テレビ会議は毎日する ● 時間を決めずにつなぐ ● 特別な装置は使わない

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社内のコミュニケーション ● 社長ラジオが朝礼の代わり、日記で近況共有 ● 情報はすべてオープン、経費も経営の会話も ● オフィスにいるよりも濃密な信頼感と関係性

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コミュニケーションの場所 オフィス リモート メリット 会議室 テレビ会議 会議室の予約が不要 直前まで仕事、録画して共有 フロア チャット 会話を共有できる 並列に会話できる メール 専用ツール 宛先ミスが減る 進捗状況の把握が容易 ファイル クラウド バージョン管理が容易 同時に編集できる

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ホウレンソウからザッソウへ ● 雑談と相談こそがコミュニケーションの中心 ● 顔が見える、声をかけられる、会話が見える ● 仕事の中に雑談を、雑談の中に相談を入れる

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リモート飲み会

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第6部 ナレッジワーカーと管理ゼロ経営

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ソフトウェア開発の本質とは ● 大量生産・ルーチンワーク・製造業ではない ● デザイン・問題解決・ナレッジワークである ● プログラミングを手段に、問題解決する仕事

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顧問プログラマの仕事 ● プログラミングとコンサルティング共に必要 ● ナレッジワーカー:属人的に問題を解決する ● マニュアル化して再現する単純作業ではない

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ナレッジワーカーの生産性 ● 外発的動機より内発的動機で生産性が高まる ● 細かく管理しない方が生産性が高くなる傾向 ● 上司より現場の方が詳しい、指示命令は無理

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セルフマネジメント ● 指示命令なし、何をするのか、自分で考える ● 勤怠管理なし、報告の義務なし、自分で管理 ● 部署なし、チームあり、周りと協調すること

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フラットな組織 ● 所有と経営と労働の一体化、オーナーシップ ● ヒエラルキーの上意下達よりも、共感と関心 ● 全員で改善、システム化、Company as Code

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組織図の要らない組織戦略 ● 分業して効率化するより、属人性を重視する ● 業務分掌で分けない、兼務を推奨、役割分担 ● 中間管理職は置かない、システムで解決する

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個人評価をなくした会社 ● エンジニアの評価は困難、短期では出せない ● 評価をなくし給与はほぼ一律、賞与は山分け ● 目標管理をしない、各自でベストエフォート

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お金よりも時間を稼ぐ ● 報酬とは何か?金銭的価値だけが尺度でない ● 時間や環境、好きなことができる自由も報酬 ● お客さまと技術に向き合う、社内政治がない

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生産性を高める仕組み ● 仕事を早く終わらせたら好きな仕事ができる ● 報酬が一定、短期間で成果を出せるほど自由 ● お金を稼ぐ仕事と、成長や興味を満たす仕事

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副業か複業か ● 技術本を出している人 ● 海外企業の顧問する人 ● 地方会社の社長する人

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モチベーション ● フロー状態を作る、難易度と技量の中間地点 ● 成長の機会を作る、自己実現と社会貢献の場 ● 心理的安全を作る、情報格差なし、人を見る

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ピープルファースト ● 案件の引き合いと、人の採用を連動させない ● 採用計画なし、採用プロセスに時間をかける ● 性善説と性悪説、管理コストより採用コスト

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第7部 プログラマの採用・育成と生き方

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管理ゼロを支える採用のポイント ● 当人と会社のビジョンが合致すれば入社する ● 採用とは、会社が一方的に選ぶものではない ● 職を求めるのではなく、流派に入門する意思

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インバウンド・リクルーティング ● エージェント・外部メディアを使っていない ● ビジョン、価値観、働き方を自分たちで発信 ● 会社のあり方に一貫性、ミッションを明確に

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トライアウトで採用をシステム化 ● 学歴年齢・前職・住所は不問、履歴書も不要 ● ずっとリモート最初から最後までテレビ面接 ● 採用をシステム化してセルフで進めてもらう

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採用で見極める点:TIPS ● T:テクニック(プログラミング経験・技能) ● I:インテリジェンス(論理思考力・言語化) ● P:パーソナリティ(素直さ・協調性・謙虚) ● S:スピード(判断の速さ・改善できる早さ)

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入社までに長い時間をかける ● 採用を前提としたお付き合いでお互いを知る ● 職業体験と修行、セルフマネジメントの練習 ● 既に入社してもおかしくない状態ならば内定

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育てるのではなく育つ ● ふりかえり(KPT)レビューで価値観の共有 ● 機会を与えフィードバック、後は自分の責任 ● 管理より成長が目的、自立こそが社長の責任

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● すりあわせ(YWT)好き嫌い得意苦手の共有 ● 会社と個人の夢へのベクトルを互いに見直す ● 個人の夢を実現するための場所と機会が会社 共通のビジョンが見えるか

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新卒を採用する意図と育成 ● カルチャーを継承していく将来の経営者候補 ● 長く続ける会社、組織を新陳代謝させる刺激 ● 経営に近い場で雑用など弟子として修行する

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どんな状態を目指すのか ● セルフマネジメントで技能の熟達と心の成熟 ● プログラマとして腕を磨くほど自由になれる ● 仕事と遊びの区別のない「遊ぶように働く」

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「遊ぶように働く」を実現する4つの環境 ● 成長が続くこと (フロー状態のチューニング) ● 裁量があること (内発的動機付けを元に選ぶ) ● 正解がないこと (創作活動や創意工夫できる) ● 仲間がいること (強み弱みを補って協調する)

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これから求められる仕事とは ● 人工知能とロボットが置き換えるのは労働者 ● 残るのは、創造的な仕事か問題解決の仕事か ● 自由な発想が求められる、好きで楽しめるか

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この先のエンジニアの生き方 ● ソフトウェア開発の仕事は、減ることはない ● 受託脳では生き残れない、提案脳であること ● 腕を磨き続ければ、自分の価値を高められる

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第8部 仕事を通じて自立する人をつくる

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創業から10年のふりかえり ● 安定的に成長していける規模と体制ができた ● プログラマとして腕を磨き続ける道ができた ● 世の中には熟練のプログラマが不足している

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次の10年に向けての構想 ● プログラミングで遊ぶ人たちの裾野を広げる ● 社内に限定せずに、熟達を目指す人を増やす ● 将来のある若い人材の採用と育成に投資する

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社内で育てるためのセレクションと制度 ● 入社ハードルを下げないよう別の選抜を用意 ● 入社後も階層構造で上司がマネジメントする ● セルフマネジメントを身につけるまでの環境 セレクション

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セルフマネジメントを身につける5段階 仕事 対人 自分 視座 第1段階 進捗管理 ホウレンソウ 自己管理 自分 第2段階 タスクばらし ザッソウ ふりかえり 上司・同僚 第3段階 プロジェクト遂行 チームビルディング 自己マスタリー 顧客・チーム 第4段階 事業経営 人材育成 自己幸福 組織・業界 第5段階 属人的価値創造 社会的ミッション 自己中心的利他 社会

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セルフマネジメントの基本:タスクばらし ● 決められた作業ではなく、仕事をする ● 仕事をするとは仕事を終わらせること ● 目的の確認、分解、見積り、優先順位

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セルフマネジメントの基本:ザッソウ ● 雑談で始まる相談、相談を兼ねた雑談 ● 雑に相談できれば「問題vs私たち」に ● ザッソウが生み出す心理的安全な関係

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セルフマネジメントの基本:ふりかえり ● 体験を内省し、抽象化して次に活かす ● 行動を改善し、漸近的に成長し続ける ● 自分自身を客観視できることを目指す

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セルフマネジメントな人材を育成するために 1 子供扱いするのではなく、 大人同士で付き合う 5 勉強だけではなく、 経験にフィードバックする 2 指示するだけではなく、 目的と期待から伝える 6 教育するだけではなく、 自ら気付くようにする 3 育成するのではなく、 挑戦できる機会をつくる 7 決めて伝えるではなく、 話し合って決めさせる 4 顧客から守るのではなく、 仕事を頼って見守る 8 結果を褒めるのではなく、 過程と姿勢を認める

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挑戦できる機会を作る=フロー状態

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自ら気付くようにする=コーチングする ● ふりかえりで答えを教えず思考を促す ● 考えや理由を問うことで言語化を促す ● 経験へのフィードバックで内省を促す

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過程と姿勢を認める=アクナレッジメント ● 結果を褒めると、失敗を恐れてしまう ● 他者の評価に依存しない自立心を育む ● 自信を持つには、成果を出すしかない

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私たちソニックガーデンの経営の目的とは ● 技能・知性・人格・自立心を陶冶する ● 自立できる人材となるよう環境を作る ● 自立できる人材が働きたい会社にする

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第9部 アジャイル思考による新しい経営

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予測型マインドセット 適応型マインドセット(アジャイル思考) ● 未来の目標を先に設定する ● 目標から逆算して計画を立てる ● 計画通りに進める ● 準備して将来の変化に備える ● 予測を元に不足を補う ● 役割に人をアサインする ● 想定外をなくす ● 結果や評価にこだわる ● 数字は達成すべきもの ● 無駄がないよう見極め大きく賭ける ● 大量生産や製造に向く ● 未来の成功を獲得する ● 現在できることに集中する ● 今の積み上げで見通しを立てる ● 臨機応変に進める ● 変化に対応できる状態を保つ ● 実績を元に充足を知る ● 人に合わせた役割がある ● 例外を歓迎する ● 手段や過程にこだわる ● 数字は状態を測るもの ● 無駄も受け入れて小さく試し続ける ● 問題解決や創造に向く ● 現在の幸せを続けたい

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経営者の仕事 ● 現場から制度の仕組み、必ず実態が先にある ● 考える機会を用意する、考える中身は任せる ● 適材適所を見つける、名前と役割を見つける

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経営を支える企業文化 ● 遅巧よりも拙速、真面目にフランク、小口化 ● ソースコード至上主義、無駄の排除、自動化 ● 形に拘らない本質主義、チートして楽をする

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プログラマによる経営 ● ペアプログラミング→ペア経営、代表2人制 ● リファクタリング→現場・現物からの制度化 ● ロジック作り、分割統治、人はソフトウェア

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家計簿のような経営 ● 短期の売上よりも、長期のストックを重視 ● 大口顧客を作らない、沢山のお客さま重視 ● B/S、P/Lよりも、キャッシュフローを重視

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時間を大切にする経営 ● 楽しい仲間と共に好きな仕事を長く続けたい ● お金を稼ぎすぎるより、人生の時間を大切に ● 働く時間を短くするより、働く時間を楽しく

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ベストエフォート経営 ● 短期的な無理をしない、打ち上げ花火しない ● 長い期間を持続的に自然なペースで働くこと ● 将来の幸せのためより、今の幸せが続くこと

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なぜ無理をしないのか? ● 人生100年の時代、天職で好きな仕事をする ● 組織よりも個人が長生き、組織から自立する ● 死なない戦略が大事、続ければ価値に変わる

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時間を資源と考える経営 ● 現在の売上を最大化すると、可能性が狭まる ● 時間を稼いで、時間をエンジニアに投資する ● 最も重要な資産は人材、効果的な投資は教育

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変化の中で生き残る戦略 ● 未来を予測して備えることは難しい、諦めた ● 変化を受け入れ、自分から変化を起こすこと ● 変化し続けられた組織だけが、生き残るはず

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戦略なのか戦術か ● 戦術は勝つため、戦わない負けないのが戦略 ● 自然にできる仕組みと環境を作ることが戦略 ● 優れた戦略があるなら、戦術を活かせば圧勝

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私たちのマネジメント戦略 ● 負けない戦略、勝てる場所、何より戦わない ● 死なない戦略、小さく賭ける、長く続くこと ● 無理ない戦略、人は弱い前提、仕組みで担保

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第10部 私たちの経営が目指すものは何か

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これからの仕事はどうなるか ● 仕事とは誰かの指示通りに働くことではない ● 自分の頭で考えて働くのがナレッジワーカー ● クリエイティブな仕事とは再現性が低い仕事

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マニュアルワーカー ナレッジワーカー ● 上司からの指示命令に従う ● 受動的に動く ● 外発的動機づけ ● 現状を維持したい ● 仕事の対価は報酬である ● 仕事と生活は別物 ● 業務の範囲は広げない ● 担当を分業して働く ● ルールが大事 ● 組織と上司に従う ● コンピュータやロボットの方が得意 ● セルフマネジメントで働く ● 主体的に動く ● 内発的動機づけ ● 改善し続けたい ● 仕事は成長の機会である ● 仕事は人生の一部 ● 責任範囲にこだわらない ● 他者と協業して働く ● ゴールが大事 ● 文化と価値観に従う ● 人間の感性を活かして成果を出す

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ナレッジワーカーのマネジメント ● マネジメントは管理・監視することではない ● なんとかすること良い感じにすることが仕事 ● 内発的動機づけ重視で働ける環境を作ること

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私たちにとって会社とは何か ● 腕利きのプログラマが集まったコミュニティ ● 理想のソフトウェア開発を目指す流派と道場 ● 一生懸命に仕事をして遊ぶように働く人たち

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チーム コミュニティ ● ミッションから始まる ● 目標・ゴールのために集まる ● 終りと解散がある ● 活動(doの価値) ● メンバーは役割を果たす ● 事業と貢献が価値 ● 提供の目線は外向き(社会や顧客) ● よりスキルを重視した採用 ● 即戦力で働ける人材が好ましい ● チームの段階を進めることが大事 ● 戦争や冒険に似ている ● ビジョンから始まる ● 価値観・理念に共感して集まる ● 続くことが前提である ● 状態(beの価値) ● メンバーは居るだけで良い ● 安心と安全が価値 ● 提供の目線は内向き(中の人) ● より人間性を重視した採用 ● 将来のための人材が好ましい ● 定期的なイベントの開催が大事 ● 国や街の統治に似ている

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中心にある価値観 ● 変化を抱擁する ・・・ Embrace Change ● 変化を恐れない ・・・ Fearless Change ● 変化を先駆ける ・・・ Social Change

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変化への姿勢 ● 変化を予測して、あらゆる場合に備えること ● 変化を予測せず、変化できる状態を保つこと ● 私たちは、前者より後者の価値観を重視する

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ソニックガーデンのこれから ● 変化し続けていくこと以外は決まっていない ● 組織の規模や人数すらもコントロールしない ● 目指す世界観の実現を自らの組織で実験する

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私たちはどうあり続けたいのか ● 高みを目指すプログラマが切磋琢磨している ● 習慣を変えるソフトウェアを生み出している ● 物心両面で豊かに健やかに働き暮らしている

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境界のない村づくりのビジョン ● 働くと生きるの境界をなくす ● 仕事と暮らしの境界をなくす ● 地域と会社の境界をなくす

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プログラミングで遊ぶ文化つくろう プログラマを一生の仕事に

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https://www.sonicgarden.jp/

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ありがとうございました(講演者について) 倉貫義人 株式会社ソニックガーデン代表取締役 https://kuranuki.sonicgarden.jp ブログ 連絡先 [email protected]