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The Impact of Advertising along the Conversion Funnel PaperRetail [公開用] 兵頭 亮介 [Seiler+, Quantitative Marketing and Economics 2017]

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概要 The Impact of Advertising along the Conversion Funnel [Seiler+, QME2017] 背景 ● 広告(i.e., 折込チラシ)の各CVファネル(来店, 棚通過, 購買)への影響は明らかではない 手法 ● チラシ情報と店舗内回遊データセットの構築 & パネル分析 結論 ● チラシはファネルの下部(購買)にのみ影響を与える ● チラシは掲載カテゴリの棚前通過数には影響しないが、購買点数は約10%増 ○ 顧客が同ブランドの商品をより多く購入したことに起因 ● 棚が近接したカテゴリ間や同カテゴリ内でのSpillover Effectは観測されず 2

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広告はマーケティングミックス(4P)において重要な役割 ↪ ❓ 企業が顧客に購買行動を起こすための打ち手の組み合わせ        製品(Product), 価格(Price), 流通(Place), プロモーション(Promotion)  数字でみると ... ● 広告費用は 1兆円 (総売上高の1.4%)* ● 広告予算のうち 42 %が Feature Ad(特定商品を販促するチラシ) 背景 2014年の小売業における広告の立ち位置 3 * “The Food Industry Speaks 2015”, Food Marketing Institute.

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背景 最近の日本では... 4 2020年 日本の広告費, 電通 表. 媒体別広告費 <2018年~2020年>※小売業ではなく全体

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       「チラシにより顧客は来店したのか?」        「チラシ掲載商品の棚通過は増加したのか?」        「チラシにより商品の売上は増加したのか?」 背景 チラシがファネルのどこに影響を与えるか把握したい Conversion Funnel: How to Build, Analyze & Optimize 5

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背景 チラシがファネルの各段階に与える影響に関する研究は少ない 6 Conversion Funnel: How to Build, Analyze & Optimize Offline Purchase Funnel ❌ ❌ ❌ ⭕ なぜ? - オフライン購買ではファネル上部のデータ取得が難しいから

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本論文の貢献 & 主要な結果 ● 実店舗内での消費者行動が観察可能なデータセットを構築した (今回の実験では) ● チラシ広告は広告掲載カテゴリの棚通過数には影響しない ● チラシ広告は、同じ数の消費者が同ブランドの異なる商品を購買させること により、広告掲載カテゴリの販売数量を増加させる ● 広告による同カテゴリ内・近隣カテゴリへの Spillover Effects はみられない ● 上記結果、 ”チラシ広告はファネル下部にのみ効果的である” ことに一貫する 消費者の行動メカニズムを議論した 7

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店舗:某大手スーパーマーケット in 北カリフォルニア 面積:約45,000平方フィート 商品数:30,000点 期間:26日間(8/24/2006 - 8/29/2006, 9/7/2006 - 9/26/2006) データ: ● ID-POS ● 店舗内回遊データ ● チラシデータ データセット 概要 8

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● 一部のショッピングカードにRFIDタグを装着 ○ 三角測量で店舗地図内に定義したポイント(4フィート間隔)を約4秒間隔で特定 ● 該当カテゴリの少なくとも3つのポイントを横断した場合に 「該当カテゴリの棚に訪問した」とみなす これにより、ある商品カテゴリの  棚通過数, 棚通過前経過時間, 棚前滞在時間 が取得可能 データセット 店舗内回遊データ 9

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データセット チラシ ● チラシ掲載商品とそのカテゴリ ● 商品 / 週単位 ● チラシ掲載と 値引きプロモーションは相関していない ○ 値引きを強調したチラシではない 10

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最終データセット チラシ掲載商品・購買量が極端に少ないカテゴリを除外してデータセットを構築 カテゴリ数:21  生鮮商品, 保存可能商品など含むが  青果・生肉は含まない 商品数:1,200点 期間:26日間 11

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実験 実験1. Decomposing the Impact of Advertising  カテゴリの棚通過数, 売上高 に対するチラシの効果を推定 実験2. Robustness Check  実験1の推定結果の頑健性を検証 実験3. Spillover Effects  チラシによる棚近接カテゴリ間、同カテゴリでのスピルオーバー効果の検証 12

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FeatureNum_ct:カテゴリ c 内のチラシ掲載商品数 δ_c, θ_t:カテゴリ c と日付 t の固定効果 X’_ct:その他のマーケティング変数(値引き商品数, カテゴリ内の平均価格, ディスプレイ陳列数) 実験1-1 Decomposing the Impact of Advertising:Category Traffic 日付・カテゴリー毎の棚通過数 Traffic_ct を回帰 13 c: 商品カテゴリ, t: 日付

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実験1-1 チラシ掲載による棚通過数に有意な増加はみられず 14 緩 < 棚通過の定義 < 厳 緩 < 棚通過の定義 < 厳 回帰係数 α 全ての棚 主要な棚のみ p値 0.707 appendix. 入店から棚までの時間や棚滞在時間をoutcomeにしても同じ結果に

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実験1-1 諸条件を変更した実験も同様の結果に 15 緩 < 棚通過の定義 < 厳 緩 < 棚通過の定義 < 厳 回帰係数 α 全ての棚 主要な棚のみ 有意ではない上に推定された回帰係数は非常に小さい 試算(1):掲載商品が8つ増えると(1std shift)、棚通過数が +5人(0.631*8)                   わずか0.22%の増加

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実験1-2 Decomposing the Impact of Advertising:Category Sales 16 日付・カテゴリー毎の売上に関する指標 Sales_ct を回帰 c: 商品カテゴリ, t: 日 FeatureNum_ct:カテゴリ c 内のチラシ掲載商品数 δ_c, θ_t:カテゴリ c と日付 t の固定効果 X’_ct:その他のマーケティング変数(値引き商品数, カテゴリ内の平均価格, ディスプレイ陳列数)

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実験1-2 売上に関する指標 Sales_ct チラシが売上に与える影響を詳しくみていくため 目的変数として、売上に関する指標を4つ定義 1. # Cons. Purchasing:購買顧客数 2. # Cons.-Brand Pairs:購買した顧客-ブランドペア数 3. # Cons.-UPC Pairs:購買した顧客-商品ペア数 4. Quantity:購買点数 17 1 1 2 3 例

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実験1-2 目的変数によって推定結果の傾向が異なる 18 購買顧客数 回帰係数 α 購買した 顧客-ブランドペア数 目的変数 購買点数 購買した 顧客-商品ペア数

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実験1-2 (1),(2)はチラシによる顕著な影響なし かつ 有意ではない 19 購買顧客数 回帰係数 α 購買した 顧客-ブランドペア数 目的変数 購買点数 購買した 顧客-商品ペア数 特に(1)の結果は実験1-1の結果; ”チラシにより棚通過数は増加しない”と一貫している

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実験1-2 (3),(4)はチラシによる顕著な売上増 かつ 有意 20 購買顧客数 回帰係数 α 購買した 顧客-ブランドペア数 目的変数 購買点数 購買した 顧客-商品ペア数 試算(4):掲載商品が8つ増えると(1std shift)、購買点数が +11.4(1.427*8)                  10%の購買点数増加

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実験1-2 4つの異なる目的変数に対する結果をまとめると... 21 購買顧客数 回帰係数 α 購買した 顧客-ブランドペア数 目的変数 購買点数 購買した 顧客-商品ペア数 チラシ広告は掲載カテゴリへの新規流入というより, 顧客のバスケットを拡大させることで販売を促進する ↪ 顧客が同じブランドの製品を複数購入する(i.e., 異なる味, 種類)ことに起因

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いくつかバイアスになりうる要因があげられる 1. マーケティング活動が時間的に相関している可能性 - e.g., チラシ掲載と目立つ棚での陳列のタイミングが同時 2. チラシが時間変動する需要ショックと相関している可能性 - e.g., 七面鳥はクリスマスの時期に掲載されやすい 今回の実験設定上、これらが影響した可能性は小さいと主張 Robustness Checkと題して実験4つを行い推定の頑健性を示している 実験2 Robustness Check(大部分省略) 22

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各要因による頑健性を検証した。実験の概要は以下、 1. Time-Varying Demand Shocks - 競合店舗を含めた回帰により、マーケット共通の需要ショックへの頑健性を示した 2. Market-level Marketing Activity - TVCM等のメディア広告の影響は上記1.及び日付の固定効果で除外されている 3. Correlation in Marketing Activity - チラシ掲載とdisplay陳列の相関は小さい & 施策が少ない生鮮食品に限定した回帰によ り、他マーケティング施策への頑健性を示した 4. Measurement Error - 測定誤差が想定される棚通過数は従属変数, 推定値にバイアスは含まれないなど... 実験2 Robustness Check(大部分省略) 23

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チラシによる2つの Spillover Effects を検証 実験3 Spillover Effects 24 実験3.1 Cross-Category Spillovers 実験3.2 Within-Category Spillovers 商品棚が隣接したカテゴリ間での効果 同カテゴリ内の代替商品への効果

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仮説  実験1の結果より、チラシ掲載商品カテゴリの棚通過数は増加しなかった - よって別カテゴリの近隣商品へのSpillover Effectsはみられないはず 回帰式 (2)式の目的変数 Sales_ct を近隣商品の売上に置き換えた  ↪チラシ掲載商品カテゴリから半径15feet内を近隣商品と定義 実験3-1 Cross-Category Spillovers 25

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実験3-1 近隣商品の売上に統計的に有意な増加はみられず 26 緩 < 近隣商品の定義 < 厳 回帰係数 α

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実験3-2 Within-Category Substitution & Spillover Effects 回帰式 商品-ブランド-カテゴリレベルでチラシ効果を推定 27 j: 商品, b: ブランド, c: カテゴリ, b_j: 商品 j のブランド, c_b: ブランドbのカテゴリ Feature_jt:商品 j が 日付 t にチラシ掲載されていたら1となるダミー変数 Feature_-jt:商品 j を除いて, 同じブランドでチラシ掲載された商品数 Feature_-bt:ブランド b の商品を除いて, カテゴリc_bでチラシ掲載された商品数 Z’_jt:その他のマーケティング変数(値引き商品数, カテゴリ内の平均価格, ディスプレイ陳列数) γ_j, ζ_t:商品 j と日付 t の固定効果 同じブランドb_jの他の商品が チラシ掲載される割合 同じカテゴリで 他のブランド製品が チラシ掲載される割合

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例えば...  チラシ掲載商品 j の売上が同ブランド b 内の別商品のチラシ掲載により         奪われた場合(Substitution):α2 < 0         増加した場合(Spillover) :α2 > 0 実験3-2 Within-Category Substitution & Spillover Effects 以下の回帰式で、商品-ブランド-カテゴリレベルでチラシ効果を推定 28 同じブランドb_jの他の商品が チラシ掲載される割合 同じカテゴリで 他のブランド製品が チラシ掲載される割合

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実験3-2 α1は有意に正の効果, α2α3は有意ではない 29 α1 α2 α3

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実験3-2 商品間の正のスピルオーバー効果や代替を示す証拠はみられず 30 α1 α2 α3 チラシは掲載商品の売上増加に貢献する(α1)が、 同カテゴリ内の他商品の売上には統計的に有意な影響を与えない(α2, α3)

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実験3 Substitution や Spillover Effectsがみられなかったことから カテゴリーや製品間の広告調整にあまり注意を払う必要がないことを示唆 小売業者にとっては... ● 広告は同じカテゴリーの他の製品の売上をカニバリしないため、 広告によってカテゴリーの売上を伸ばすことができる メーカーにとっては... ● 特にカテゴリー内でスピルオーバーが発生しないことは、 広告によって競合他社に利益を与えたくないメーカーにとって朗報 31

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議論 結果から考えられる行動メカニズム (再掲)主要な結果 ● チラシ広告は広告掲載カテゴリの棚通過数には影響しない ● チラシ広告は、同じ数の消費者が同ブランドの異なる商品を購買させること により、広告掲載カテゴリの販売数量を増加させる ● 広告による同カテゴリ内・近隣カテゴリへの Spillover Effects はみられない ● 上記結果、 ”チラシ広告はファネル下部にのみ効果的である” ことに一貫する 消費者の行動メカニズムを議論した 32

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議論 結果から考えられる行動メカニズム チラシの効果がCVファネルの上部にみられない要因として、2点あげている 1. すでにあるブランドの購入を計画している消費者だけが、 そのブランドに属する製品の広告に注意を払う(広告消費への自己選択) 2. 消費者は広告を目にしてもすぐには行動を起こさず、ファネルの下部での効 果的な刺激が広告の記憶を想起させて購買をもたらす(記憶・想起の研究を引用) 33

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まとめ 34 背景 ● 広告(i.e., 折込チラシ)の各CVファネル(来店, 棚通過, 購買)への影響は明らかではない 手法 ● 広告情報と店舗内回遊データセットの構築 & パネル分析 結論 ● チラシはファネルの下部(購買)にのみ影響を与える ● チラシは掲載カテゴリの棚前通過数には影響しないが、販売点数は10%増加 ○ 顧客が同ブランドの商品をより多く購入したことに起因 ● 棚が近接したカテゴリ間や同カテゴリ内でのSpillover Effectは観測されず

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Appendix 35

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カテゴリ毎の統計情報 36

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広告掲載商品と非掲載商品の値札は同様 広告掲載が強調された陳列・値札ではない 37

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実験3-2 商品-ブランド-カテゴリレベルでのチラシによる効果 商品レベル ブランドレベル:Feature_-jtが1単位増加したときの売上変化は カテゴリレベル α1 + α2 + α3 38