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JobsToBeDone/ジョブ理論を まとめてみた Yusuke Hisatsu

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はじめに ● このスライドは、以下2つのインプットを元に小難しいJTBDを自分なりにわかりやす くまとめようとしたものです ○ クレイトン・M・クリステンセン著「ジョブ理論」 ○ UX DAYS TOKYOワークショップ「顧客が望むプロダクトをつくりだせ 〜JTBD の実践的アプロー チ〜」 by Jim Kalbach

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JTBD(Job To Be Done)とは 『人々が商品やサービスを自らの生活に「雇用」するのは  そこに「片付けるべきジョブ」があり、  ジョブを片付けることで「進歩」するためである』 という考え方(理論) by Clayton M. Christensen

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JTBDを使うと何が嬉しいの? 「片付けるべきジョブ」が何かを突き止めることで、 ユーザがサービスやプロダクトを雇用する「本当の理由」を突き止められる その結果… ● ユーザが本当に求めるサービスやプロダクトを作ることができる ● 争うべき本当の競合が見つかる ● 参入すべき本当の市場が見つかる ● イノベーションの確率が上がる

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ビッグデータとの違い 定量データ分析はユーザの傾向や相関関係は突き止められるが、 「なぜ雇用するのか」つまり因果関係までは突き止められない 例:「50代男性の多くは新聞を買う」 ● 新聞を買う人は別に50代男性だから買うわけではない(つまり相関関係) ● 何かしら「片付けたいジョブ」があるはずだが、定量データだけでは明らかにはなら ない

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相関関係ではなく因果関係を見つける 原因(JTBD) → 結果(雇用)

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ミルクシェイクの話 ”あるファストフード企業がミルクシェイクの売上を改善したいと思った。 ミルクシェイクの購入者属性を整理し、同一の属性を持つ人を対象に、重めがいいか軽めがいいか、フルーツ味 かチョコレート味か、など、どんなミルクシェイクが理想的か尋ねた。調査はうまく進み、特定したターゲットの好み をもとに製品を改善したが、売上は全く改善しなかった。 そこで別のチームが再び調査を行った。調査チームは店舗で来客を一日中観察した。すると早朝にミルクシェイ クを買う客が多いことに気がついた。早朝の購入者になぜミルクシェイクを買ったかを尋ねると、 ● 長い車通勤の間に片手で手間なく飲める ● 一気に飲めないので暇つぶしになる ● 腹持ちが良い といった理由だとわかった。 この調査結果をもとに製品開発を再度行ったところ売上を改善することができた。 ”  「イノベーションへの解」より引用

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JTBDはユーザーやデータが教えてくれるわけではない 自ら見つけ出さないといけない

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Good Example

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What’s Job?

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ジョブの要素 「ある特定の状況で人が遂げようとする進歩」 ・各ジョブは必ず特定のコンテキストの中で発生する <コンテキスト> ○ ライフステージ ○ 家族構成 ○ 財政状況 <属性データ> × プロダクトの属性 × 顧客の特性(マクロ) × トレンド × 競争反応

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ジョブの要素 「ある特定の状況で人が遂げようとする進歩」 ・雇用者は必ず何か進歩(=ゴールに向かって進むこと)しようとしている

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ジョブとニーズの違い ニーズ   ありたい姿と現状のギャップの差から乗じる欠乏感  例:「美味しいものが食べたい」 ←漠然としていて解決策を提示できない ジョブ  特定のコンテキストにおいて片付けたいこと  例:「朝時間がないときに手早く美味しいものを食べること」

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ニーズ主導のマーケティングの失敗例 「より効率的に移動したい」というニーズは汲み取ったが、 「どのような状況の、どのような問題を解決するのか?」に対する解がなかった 結果的に現在も限定的な使われ方しかしていない

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ジョブのヒエラルヒー Aspirational :家族の思い出を大事にする   ↕   Big :写真をかける   ↕   Little :穴を開ける   ↕  Micro :ドリルを買う ※上位の方が良いというわけではなく、自分たちがどの階層のジョブをターゲットにする か意識することが重要  →スタートアップ企業がAspirationalを解決するのは無理

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ジョブの3つの側面 機能面:A地点からB地点に移動する 感情面:爽快感を感じる 社会面:かっこいいと思われる

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ジョブを理解すると本当の競合がわかる 「リラックスのためにすることなら、なんでも競合相手だ。 ビデオゲームと競い、ワインを飲むこととも競う。 実に手強いライバルだね。もちろん、他の動画配信サービスとも競う。 ボードゲームで遊ぶこととも。」 Netflix CEO リード・ヘイスティングス

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ジョブを理解すると本当の競合がわかる 最大のライバルは『無消費』 ● ジョブを解決する手段を見つけられず、何も雇用していないこと ● 無消費は意識して探さないと見つけづらい ● その一方、見つけると多くのパイを得ることができる

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ジョブのモデルとステップ Jim Kalbach氏スライドの抜粋&一部加工 JOB Performer “Who” JOBS “What” Process “How” Outcomes “Why” Discover Define / Design / Deliver Model Step

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Discover

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ジョブのモデルとステップ Jim Kalbach氏スライドの抜粋&一部加工 JOB Performer “Who” JOBS “What” Process “How” Outcomes “Why” Discover Define / Design / Deliver Model Step

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Discover Job Performer “Who” ● サービスやプロダクトに関わる人からターゲットを決める ● ペルソナ設定やセグメンテーションをする必要はない Customer Client Buyer “Job Performer”

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Discover Jobs “What” and “How” ジョブを探すときの視点 ● 成し遂げようとしている進歩は何か ● 進歩を阻む障害物は何か ● 障害物のせいで「無消費」を選択していないか ● あるいは不完全な解決策で我慢していないか ● 完全な解決策のために引き換えてもいいと思うものは何か

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ジョブはエスノグラフィ・ユーザーインタビューから見つけ る ● ただしユーザーの行動や言葉をそのまま受け取るのではなく、その裏にある「なぜ」 を突き止める必要がある ● ユーザーインタビューでは提供者の思い込みを質問に組み込んではいけない 参考 https://www.slideshare.net/AyumuNishibe/1-93770575

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ジョブの言語化のコツ ● 動詞で終わる ○ 「穴を空ける」「自分の興味に合ったイベントに参加する」など ● プロセスのゴールを明確に示す  ○ 「健康になる」はどうなったらゴールか不明確なので NG ● テクノロジーやソリューションに言及しない ○ 「SNSで友達を作る」とか「ブロックチェーンで取引する」とかは NG ● 個人の視点で考える ○ 集団(セグメント)ではなくあくまで個人の進歩 ● “And”や”Or”を使わない ○ 使いたいならジョブを2つ定義すれば良い

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Job Mapで整理する Beginning   Middle End Define Locate Prepare Confirm Execute Monitor Modify Conclude via Tony Ulwik https://jobs-to-be-done.com/mapping-the-job-to-be-done-45336427b3bc Job Job Job Job Job Job Job Job Job Job Job Job Job ※フェーズ分けはサービスやプロダクトに合わせてカスタマイズOK

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カスタマージャーニマップと何が違うのか? ● カスタマージャーニーマップはカスタマーと特定のブランド・サービス・プロダクトとの タッチポイントを考えるもの ● JTBDはエンドユーザが達成したいことであって、特定のソリューションとのタッチポ イントは関係ない ● よってJob Mapはサービスとのタッチポイントの前後のコンテキストも含めて作成す る ● どちらがいいというわけではなく、使い方・視点が違うことを理解すべし

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サンプル:イベント運営サービス Beginning   Middle End Plan Decide Prepare Attend Network Record Summarize Report 上司の許 可を得る 同じ悩み を持つ人 と会う クライアン トを見つ ける User1 企業の代 表として 参加 User2 フリーラン ス User3 個人とし て参加 プレゼン 内容をも れなく記 録する 重要なポ イントをま とめる チーム内 に共有す る 集中して 話を聞く 実況 Tweetす る 参加者に 挨拶する 必要な情 報が得ら れるイベ ントを見つ ける 参加者が 多いイベ ントを見つ ける ブログを 書く 重要なポ イントをま とめる 面白くな ければ退 席する

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Define

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ジョブのモデルとステップ Jim Kalbach氏スライドの抜粋&一部加工 JOB Performer “Who” JOBS “What” Process “How” Outcomes “Why” Discover Define / Design / Deliver Model Step

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Jobに対して「どういう結果に導くか」を定義する Beginning   Middle End Define Locate Prepare Confirm Execute Monitor Modify Conclude via Tony Ulwik https://jobs-to-be-done.com/mapping-the-job-to-be-done-45336427b3bc Job Job Job Job Job Job Job Job Job Job Job Job Job Outcomes Outcomes Outcomes Outcomes

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Outcomesの言語化のコツ 「イベントの内容をまとめる Qualifier Unit Direction 状況を説明する修飾子 “And”や”Or”は使わない 単位 「機会」 「可能性」 「コスト」 変化の方向性 「最大化する」 「削減する」 「増加させる」 時間を 最小化する」

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サンプル:イベント運営サービス Beginning   Middle End Plan Decide Prepare Attend Network Record Summarize Report 上司の許 可を得る 同じ悩み を持つ人 と会う クライアン トを見つ ける User1 企業の代 表として 参加 User2 フリーラン ス User3 個人とし て参加 プレゼン 内容をも れなく記 録する 重要なポ イントをま とめる チーム内 に共有す る 集中して 話を聞く 実況 Tweetす る 参加者に 挨拶する 必要な情 報が得ら れるイベ ントを見つ ける 参加者が 多いイベ ントを見つ ける ブログを 書く 重要なポ イントをま とめる 面白くな ければ退 席する イベントの内容をまとめる時間を最小化する ネットワーキングのための時 間を最大化する イベントを見つけるコストを削 減する

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取り組むべきOutcomesの選定 重要度が高く、満足度が低い Outcomesが最優先       ↑ ユーザーインタビューで2つの指 標を測る

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Design

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ジョブのモデルとステップ Jim Kalbach氏スライドの抜粋&一部加工 JOB Performer “Who” JOBS “What” Process “How” Outcomes “Why” Discover Define / Design / Deliver Model Step

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選んだOutcomesをデザインする ● エンジニアやデザイナーに今までの思考プロセスを正しく伝えるために、  ”Jobs Stories”を定義する ● このストーリーを実現するために、どういうソリューションが最適か考える via Alan Klement  https://jtbd.info/replacing-the-user-story-with-the-job-story-af7cdee10c27

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サンプル:イベント運営サービス via Alan Klement  https://jtbd.info/replacing-the-user-story-with-the-job-story-af7cdee10c27 イベントの内容をまとめる時間 を最小化する ● (When-)  イベント参加後に ● (I want to-) 内容をまとめる時間を短くしたい ● (So I can-) 内容をチームメンバーやフォロワーに共有するために

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Deliver

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ジョブのモデルとステップ Jim Kalbach氏スライドの抜粋&一部加工 JOB Performer “Who” JOBS “What” Process “How” Outcomes “Why” Discover Define / Design / Deliver Model Step

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ジョブを解決していることをアピールする

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ジョブを解決していることをアピールする

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https://experiencinginformation.com/2016/10/23/a-practical-model-for-jobs-to-be-done-jtbd/

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Develop Value

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ジョブのモデルとステップ Jim Kalbach氏スライドの抜粋&一部加工 JOB Performer “Who” JOBS “What” Process “How” Outcomes “Why” Discover Define / Design / Deliver Model Step (Re)Develop Value

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(Re)Develop Value ● 繰り返しDiscover/Define/Design/Deliveサイクルを回す ● 市場を限定せず、Outcomesを届ける市場を広げてみる ● 本当の競合を見つけ、改めてどこに優位性・劣位性があるかを理解する

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最後に

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JTBDは難しい 理論や考え方を知ったところで実際にJTBDを見つけ出すのは難しいです いきなりビシッとジョブが見つかり、バシッとイノベーションを起こせるわけではありませ ん ただJTBDの視点で自分たちのサービスやプロダクトを見つめ直すこのプロセスが非常 に重要です ユーザーは何を解決したいのか、本当の競合は何なのか、何をユーザーに訴えればい いのか… 何度もユーザーインタビューをしてブラッシュアップしましょう

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お願い 私もJTBDを100%マスターしているわけではないので、矛盾点や疑問点があればフィー ドバックをお願いします またJTBDのワークショップがあれば誘ってください(実践経験を積み重ねたい)