スプリントゴールで価値を駆動しよう
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Taku Fujii
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スプリントゴールで 価値を駆動しよう 2024/7/4 M3&T Lab. 藤井 拓
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藤井 拓のプロフィール ⚫ 所属 ➢ 2024年4月1日から:とある社会福祉法人、 M3&T Lab.(個人事業) ⚫ 略歴 ➢ 1984年4月~1990年6月:メーカーで半導体製造プロセスの研究に従事 ➢ 1990年6月~2022年3月:株式会社オージス総研で研究開発に従事 ◆ 2011年-2022年:アジャイル開発などの研究開発、書籍翻訳、コミュニティー活動等に従事 ➢ 2022年4月~現在: M3&T Lab. でアジャイル開発のアドバイザーや書籍翻訳等に従事 する傍ら、2022年4月から2年間社会福祉を学び、2024年4月からパートタイムで社会 福祉の仕事に従事している。 ◆ 2022年7月:アジャイルなマネジメントに関する書籍『マネジメント3.0』の邦訳を刊行 ⚫ 最近の関心 ➢ 不確実性への挑戦、シニアライフの模索 2 SNSは、最近はLinkedIn( taku-fujii-1304392)がメインですが、Facebook、Xも時々 使っています。
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本講演の元ネタ:”Driving Value with Sprint Goals: Humble Plans, Exceptional Results” (Addison-Wesley, 2023) M3&T Lab. 3 マーテン・ドメイン(Maarten Dalmijn)のプロダクトオーナー (PO)として実践経験に基づく現実的なアドバイスが豊富に盛り 込まれた書籍 ⚫価値の探索を行う上で、スクラムをどのように 活用すべきか ⚫POを中心に、スプリントゴールを軸にスクラム を実行することで、価値の探索により注力する ことができる 現在、”Driving Value with Sprint Goals“は一通り翻訳し、訳文見直し中。この秋の邦訳刊行を目指 しています。
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このお話のゴールとアウトライン ⚫ゴール ➢スプリントゴールを用いてスクラムの柔軟性を高め、価値の探索とい う目標により集中する方法を理解することができる。 ⚫アウトライン ➢スクラムをなぜ使うのか? ➢複雑な仕事を行う際の要点 ➢スクラムの2つのスタイルとよいスプリントゴールの特徴 ➢スプリントゴールを中心にスクラムイベントを再考する ➢まとめ M3&T Lab. 4
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スクラムをなぜ使うのか? M3&T Lab. 5
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アジャイル開発の狙いと、 日本でまだ多くの「実情」 ⚫アジャイル開発の狙い ➢(狙いA)市場やニーズの不確実性と向き合い、価値あるものを早く見出し、提供す る ⚫日本のまだ多くの「実情」 ➢(狙いB)仕様どおりに安くて品質が良いものを作る …日本のこのような実情に合わせたら、アジャイル開発の良さは損なわれる…. ⚫日本の企業にスクラムというアジャイル手法が少しずつ普及し てきている 6 M3&T Lab.
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アジャイルソフトウェア開発宣言 私たちは、ソフトウェア開発の実践あるいは実践を手助けをする活動を通じて、よりよい 開発方法を見つけだそうとしている。 この活動を通して、私たちは以下の価値に至った。 ⚫プロセスやツールよりも個人と対話を、 ⚫包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、 ⚫契約交渉よりも顧客との協調を、 ⚫計画に従うことよりも変化への対応を、 価値とする。すなわち、左記のことがらに価値があることを認めながらも、私たちは右記 のことがらにより価値をおく。 7 出典:https://agilemanifesto.org/iso/ja/manifesto.html アジャイル宣言が起草されたのは、2001年だった。 狙いB 狙いA M3&T Lab.
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仕事の性質による分類 :クネビンフレームワーク クネビンフレームワークは、 IBMのDave Snowdenによって 考案された仕事の性質による分 類 ➢仕事の性質を認識することで、 それに合うアプローチが分かる M3&T Lab. 8 Cynefin に対して「カネヴィン」というカタカナ表記を用いている文献もある。
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複雑な仕事を行う際の要点 M3&T Lab. 9
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複雑な仕事をスクラムで実行する上で 大事なこと スクラムの大きな利点は、新たな価値を持つプロダクトの探求な どの複雑な仕事の実行に適していることだが、それが効果を発揮 するためには以下のことが重要になる 1. 謙虚な計画(開発チーム) 2. 意図をもってリードする(プロダクトオーナー) 3. 共通のゴールを持つ(利害関係者間、発注者-受注者間) 4. フィードバックループを短く保つ(スクラムチーム全体) スプリントゴールは、これらを実行する上で鍵となる! M3&T Lab. 10
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自信を持った計画策定とドメイン ややこしいドメイン 複雑なドメイン M3&T Lab. 11 ”Driving Value with Sprint Goals: Humble Plans, Exceptional Results” (Addison- Wesley, 2023)の図に基づいて作成
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大事なこと①:謙虚な計画策定(主とし て開発チーム) 知っていることの範囲からあまり外れずに計画し、それを実行す ることで知らないことを減らす(憶測に時間をかけず、頼らな い) M3&T Lab. 12 ”Driving Value with Sprint Goals: Humble Plans, Exceptional Results” (Addison- Wesley, 2023)の図に基づいて作成
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大事なこと②:意図をもってリードする ⚫計画を精緻に立てることよりも、実行をしながら知らないこと を減らし、それを活かしていくことが大事 ⚫それを行う際に、細かい指示を出すのではなく、チーム(実行 者)に委任していくことが大事 ⚫委任するためには、以下の2つのことを明示することが有効で ある(使命に対する司令官の意図) ➢理由 (Why):その使命が重要な理由 ➢望まれること(What):望まれる成果、あるいは使命の終了状態 M3&T Lab. 13
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大事なこと③:共通のゴールを持つ ⚫起きがちなこと ➢アウトソース:発注者と受注者の間での契約を盾にしたスコープの攻 防 ➢バラバラのロードマップ:チームや担当者間で異なるロードマップを 持つ ⚫大切なこと ➢プロダクトで提供しようとしている価値をベースにゴールを考える ➢プロダクトやスプリントのゴールについて、利害関係者やスクラム チームのメンバーで議論する場を設ける ◆その実現手段の1つとして、リベレーティング・ストラクチャーが紹介されてい る M3&T Lab. 14 リベレーティング・ストラクチャーについては、あとのスライドで少し紹介する
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スクラムは、フレームワークである ⚫スクラムは、意図的に不完全 である ➢スクラムは、プロダクトバッ クログ項目の作成方法等、状 況依存のものが含まれない ⚫スクラムは、短いフィード バックループをもたらすこと で、不確実性への対処に役立 つ スプリント 15 M3&T Lab.
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大事なこと④:フィードバックループを 短く保つ フィードバックループを短く保つことで、自分たちが本当に進む べき進路へとすばやく軌道修正することができる ⚫スクラムには、様々なフィードバックループがあるが、どの フィードバックループがより大事だと思いますか? スプリント M3&T Lab. 16
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プロダクトの価値とは 上位のループを通じて探索するプロダクトの価値とは、以下の2 つの要素から構成される ⚫顧客価値 ➢顧客(ユーザー)の生活(仕事)に違いを生むもの ⚫ビジネス価値 ➢顧客価値を提供することで、提供者が受けるビジネス的な恩恵 M3&T Lab. 17 これらに対する仮説(ビジョン)を立てて、その妥当性を確認するためのプロダクト等を 構築し、仮説の妥当性をデータ(測定)等で検証していくことをスクラムは助ける
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スクラムの2つのスタイルと よいスプリントゴールの特徴 M3&T Lab. 18
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スクラムのプロセス 19 スプリントゴールの設定:開発チーム、プロダクトオーナー、スクラムマスター スプリントバックログ:開発チーム、プロダクトオーナー Schwaber, Ken, et al, Agile Software Development with Scrum, Prentice Hall, 2002の図をベースに作成 プロダクトオーナー Ⓒ 2023 M3&T Lab.
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プロダクトオーナー スクラムのプロセス 20 スプリントゴールの設定:開発チーム、プロダクトオーナー、スクラムマスター スプリントバックログ:開発チーム、プロダクトオーナー 実行可能なソフトウェ ア(インクリメント) Ⓒ 2023 M3&T Lab.
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皆さんへの問いかけ 複雑な仕事を成し遂げようとした場合に、先に示した「スクラム のプロセス」はどこがイマイチなのだろうか? ⚫私も、スクラムは「狙いA」に適していると語っていたものの、 「狙いA」をより良く行うという観点で考えることが不十分 だった… M3&T Lab. 21 1-2分
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アナコンダ-スタイル-スクラム 先に説明したスクラムの「プロセス」には、いくつかの危険性 (不十分点)がある ⚫計画した全てをやりきる ➢複数のプロダクトバックログ項目をすべてやりきることが目標になる ⚫フィーチャー工場 ➢価値の探索、検証よりも機能の実現が目的化する ⚫フィードバックループが伸びる ➢学んだことを取り入れて軌道修正が遅れる M3&T Lab. 22 サン・テグジュペリ、星の王子さま、新潮社、2006. の図を参考に作成
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スクラムの2つのスタイル アナコンダ-スタイル ハチドリ-スタイル ⚫実行しながら、やることを決 める M3&T Lab. 23 ⚫やることを最初に決めて、そ れをやり遂げる • ハチドリ-スタイルでは、スプリントゴールが鍵となる! • これらの2つのスタイルの間に連続的な分布がある
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良いスプリントゴールとは スプリントゴールは、スプリントの使命(司令官の意図)を表現 するものであり、以下のFOCUSという言葉で表される特徴を持 つ ⚫楽しさ(Fun) ⚫成果指向(Outcome-oriented) ⚫協働(Collaborative) ⚫突き詰めると(Ultimate) ⚫単一(Singular) M3&T Lab. 24
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良いスプリントゴールの特徴(その1) ⚫楽しさ(Fun) ➢覚えやすく、可能であれば楽しさや遊び心を感じるようなもの ⚫成果指向(Outcome-oriented) ➢スプリントの成果として期待されるものを表す ⚫協働(Collaborative) ➢スクラムチーム全体で作る M3&T Lab. 25 スプリントで開発された機能は、出力にすぎず、成果ではない
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良いスプリントゴールの特徴(その2) ⚫突き詰めると(Ultimate) ➢自分たちが達成しようとしていることの究極的な理由を示す ⚫単一(Singular) ➢スプリントの間に完了させる最も価値の高い、単一の目的を示す M3&T Lab. 26
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ハチドリ-スタイル-スクラム スプリント計画策定では、開発チームとスプリントゴールが達成 できそうかについて合意できればよい。 M3&T Lab. 27 ⚫分からないことを時間をかけて憶測しても、時 間の無駄であり、根拠のない、もっともらしい 計画ができる可能性がある ➢分かる範囲で計画し、実行して分かることでスプリ ント中に残りの期間を計画すればいいのではないか ⚫スプリントゴールにキャパシティーすべてを割 り当てない ➢スプリントゴールに関係すること(項目)と関係し ないこと(項目)が混在するようにする
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スプリントゴールを中心に スクラムイベントを再考する M3&T Lab. 28
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スプリトレビューに向けて、 スプリントゴールの準備を始める スプリントレビューの主目的は、スプリント中に作った機能 (フィーチャー)にお披露目にあるのではない! スプリントレビューで取り上げるべき話題 ⚫そのスプリントで行ったことに価値があると信じられるか ⚫プロダクトインクリメントの価値を検査と適応する ⚫私たちが次に何に取り組むべきか? M3&T Lab. 29 ここで言う「プロダクトインクリメント」は、今回のスプリントで追加された機能だけではなく、 その時点のプロダクト全体を指す
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私たちが次に何に取り組むべきか? POは、スプリントゴールの下書きを持つとともに、1-2-4-Allの ような方法で参加者のアイデアを短時間に集約する ⚫1-2-4-Allは、リベレーティング・ストラクチャーで提案されて いるアイデアの集約方法 M3&T Lab. 30 1分 2分 4分 5分 …
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スプリント計画策定 スプリントゴールの達成可能性について、チームと議論し、合意する。 ⚫スライド25#「ハチドリ-スタイルースクラム」で記したようなやり 方で比較的短時間で計画策定を行う ⚫結果として、以下のようなスプリントバックログが作成される ➢スプリントゴール(Why) ➢そのスプリント向けに選ばれたプロダクトバックログ項目の集まり(What) ➢プロダクトインクリメントを提供するためにスプリントバックログに含まれ ている実行可能な計画(How) M3&T Lab. 31
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その他のスクラムイベント ⚫デイリースクラム ➢スプリントゴールに向けた進捗を確認する ⚫スプリントレビュー ➢先に挙げた議論すべきことを中心にする ➢価値の提供に結びつきそうどうかを裏付ける証拠(データ、フィード バック等)を示す ⚫スプリント振り返り ➢プロダクトゴールに向けての自分達の進捗を振り返る M3&T Lab. 32
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まとめ 本講演では、マーテン・ドメインの”Driving Value with Sprint Goals”の内容を参考にして 以下のことをお話した。 ⚫ スクラムをなぜ使うのか? ⚫ 複雑な仕事を行う際の要点 ⚫ スクラムの2つのスタイルとよいスプリントゴールの特徴 ⚫ スプリントゴールを中心にスクラムイベントを再考する POを中心に、スプリントゴールを軸にスクラムを実行することで、価値の探索により注力 することができる ➢ スクラム自身を固定的に考えず、より柔軟に考えていくことが大事ではないか M3&T Lab. 33
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“Driving Value with Sprint Goals” の邦訳の ゲラ査読者を募集しています! 査読期間は、今のところ2024年9月頃から1か月程度(多少前後する可能性 あり)で8名程度の方に査読をお願いできればと考えております。 ➢査読のご協力者が8名に達した時点で募集を終了いたします ⚫書籍の構成 ➢第I部:なぜゴールが大事なのか? ➢第II部:スプリントゴールは、スクラムの心臓の鼓動である ➢第III部:スプリントゴールで、価値を駆動する ➢第IV部:スプリントゴールのよくある障害を克服する ⚫査読の内容等に関するより詳しい情報は、以下のGoogleフォームに記し ておりますので、ご検討のほどよろしくお願い致します。 ➢https://x.gd/F9RBb M3&T Lab. 34