Slide 1

Slide 1 text

横浜DeNAベイスターズの躍進を ⽀えたAIプロダクト 2025.5.29 ⼤⻄克典 (DeNA)

Slide 2

Slide 2 text

© DeNA Co., Ltd. 2 ⾃⼰紹介 ● ⼤⻄克典 ● 略歴 ○ 2014-2017: 東京⼤学原⽥牛久研でComputer Visionの研究 ■ 修士時代: CVPR, ACMMM, AAAI ○ 2017: DeNAに新卒で⼊社 ■ 横浜DeNAベイスターズ×AIプロジェクトの新規⽴上&主導 ● 現在のRole ○ プロダクトマネージャー 1

Slide 3

Slide 3 text

© DeNA Co., Ltd. 3 アジェンダ ● ベイスターズチーム強化 × AIプロジェクト:プロダクト具体例 ○ Catcher skill metric ○ 投⼿コマンド ○ スイング動作解析 ● AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫 ○ プロダクトマネジメント ○ アジャイル 2

Slide 4

Slide 4 text

© DeNA Co., Ltd. 4 プロダクト具体例 Catcher skill metric 投⼿コマンド スイング動作解析

Slide 5

Slide 5 text

© DeNA Co., Ltd. 5 Catcher skill metric ● キャッチャーの各スキルを定量的に評価できるように 1 Data Trackman / Hawkeye AI model Skill visualization

Slide 6

Slide 6 text

© DeNA Co., Ltd. 6 Catcher skill metric ● 1球単位で捕逸確率を予測 ○ ブロッキングスキルをより正確に評価 1 Old stats 暴投 or 捕逸 10-0 or 0-10 ⽚⽅の責任 / 減点⽅式 / ⼀律評価 AI stats 捕球難易度を推定 2 : 8 責任割合の分解 / ⽌めたら加点 / 難易度で評価に濃淡

Slide 7

Slide 7 text

© DeNA Co., Ltd. 7 Catcher skill metric ● 単にデータ提供だけでなく、可視化まで⼀貫して作成 ○ 詳細な分析や振り返りも可能に 1

Slide 8

Slide 8 text

© DeNA Co., Ltd. 8 Catcher skill metric ● 現在地点と⽬標地点を明確にできるのが最も効果的だった ○ 選⼿が漠然と練習から明確な⽬的意識を持って練習に ○ コーチもデータがあることではっきりと選⼿に伝えやすくなる 1 もっとブロッキング 良くせんとあかんぞ 全然体⼊れられてないやん うーん…やっぱそうですか わかりました (あまりしっくりはきてない) コーチ 選⼿ ブロッキングで-4点分損してるぞ! 特に曲がり球逸らしまくってる (実際に映像⾒せながら) ほら!全然体⼊れられてないやん ほんとですね…! そこもっと重点的に勉強します コーチ 選⼿

Slide 9

Slide 9 text

© DeNA Co., Ltd. 9 投⼿コマンド ● コマンドとは? 2 コントロール 枠の中に投げる能⼒ 四球% 今永選⼿ > ⼤貫選⼿ ≧ ⽯⽥健選⼿ コマンド 狙ったところに投げる能⼒ 実際の制球⼒ ⼤貫選⼿ ≧ 今永選⼿ > ⽯⽥健選⼿ [2023]

Slide 10

Slide 10 text

© DeNA Co., Ltd. 10 投⼿コマンド ● コマンド能⼒を測定可能に 2 映像からミット構えた位置を推定 コマンドスコア化

Slide 11

Slide 11 text

© DeNA Co., Ltd. 11 投⼿コマンド ● 単にデータ提供だけでなく、可視化まで⼀貫して作成 ○ 詳細な分析や振り返りも可能に 2

Slide 12

Slide 12 text

© DeNA Co., Ltd. 12 投⼿コマンド ● Pitcher skill metricの活⽤ ○ コマンドスキルの定量化によってPitcher版skill metricが作成可能に 2 コーチたちとデータを ⾒ながら議論する定例 選⼿へのFB

Slide 13

Slide 13 text

© DeNA Co., Ltd. 13 スイング動作解析 ● 試合でのスイングを動作解析できるように 3 ハイスピードカメラ 600fps 4台 解析点を3D検出 関節 / バット / ボール 簡易分析ツールも作成 バイオメカニストによる動作解析

Slide 14

Slide 14 text

© DeNA Co., Ltd. 14 スイング動作解析 ● バイオメカニストのFB件数を激増させることに成功 3

Slide 15

Slide 15 text

© DeNA Co., Ltd. 15 AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫

Slide 16

Slide 16 text

© DeNA Co., Ltd. 16 AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫 ● キーワードはこの⼆つ ○ プロダクトマネジメント ○ アジャイル 1

Slide 17

Slide 17 text

© DeNA Co., Ltd. 17 AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫: プロダクトマネジメント ● プロダクトマネジメントって…? ○ 『⼈はドリルが欲しいのではなく⽳をあけたいのだ』 (セオドア・レビット) ○ 『もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら彼らは「もっと速い⾺が欲しい」 と答えていただろう』(ヘンリー・フォード) ● 投⼿コマンドの例で紹介 2

Slide 18

Slide 18 text

© DeNA Co., Ltd. 18 AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫: プロダクトマネジメント ● コマンドは計測できるようになったが… ○ 当初のリクエスト:1軍レベルの制球⼒を知りたい 2 2軍投⼿コーチ 制球⼒が測れなくて困ってる 1軍レベルのコマンドって どれくらい? AIチーム コマンドを計測可能にしました! でもここが1軍レベルって ライン特になかったです… いやいや! コマンド計測できるようになった だけでめっちゃありがたい ここで終わっていいのだろうか…?

Slide 19

Slide 19 text

© DeNA Co., Ltd. 19 AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫: プロダクトマネジメント プロダクトの4階層フレームワークで整理 ● 2軍投⼿コーチはコマンドを知りたいのではない ○ 1軍レベルに選⼿を引き上げたい 2

Slide 20

Slide 20 text

© DeNA Co., Ltd. 20 AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫: プロダクトマネジメント ● 開発⽅針をpivot ○ 1軍ラインとコマンドスコアのギャップを埋めるべき! ● Pitcher版skill metricの発⾒ ○ コマンド+他データで1軍ラインまでの距離がわかることを解明 2 コマンドスコア ??? ルーキー 1軍平均レベル 1軍レギュラー

Slide 21

Slide 21 text

© DeNA Co., Ltd. 21 AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫: アジャイル ● アジャイルとは? ○ シンプルだが動くものを作って、ユーザー価値を検証しながら進めていくこと ○ 例)⽔を貯めるバケツを作る 3 各部品をシーケンシャルに開発 • 完成系のイメージを基にそれぞれ作る • 各部品完成後に結合 最低限動くものを少しずつ作る(MVP) • スコープをギリギリまで絞る • バケツ:まずは⽔を掬える浅い桶

Slide 22

Slide 22 text

© DeNA Co., Ltd. 22 AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫: アジャイル ● ウォータフォールとアジャイルの違いの1例 3 メリット • 開発難易度が低い • スケールしやすい デメリット • 結合してみるまで動くかわからない • 仕様変更や障害への対応難易度⾼い デメリット • 開発難易度が⾼い • スケールしにくい メリット • 動かしてみての課題が常に把握できる • 変更や障害に柔軟に対応しやすい

Slide 23

Slide 23 text

© DeNA Co., Ltd. 23 AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫: アジャイル ● スイング動作解析 ○ 3D検出だが、実は皆さんが想像してるような⾼度なアルゴリズムは使ってない ○ ベースは固定環境で2Dkeypoint検出を最後三⾓測量してるだけ ● なぜか? ○ 過去別プロダクトでの失敗を踏まえての開発プロセス ■ 昔あれもこれも詰め込んでリリースしたが、実際にユーザーの価値にはつな がらない機能ばかりなプロダクトを作った失敗があった… ○ なのでまずは最短でシンプルに作って、ユーザーに実際にぶつけてみた 3

Slide 24

Slide 24 text

© DeNA Co., Ltd. 24 AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫: アジャイル ● ユーザーの反応 ○ 関節点に関してはこれで既に精度⼗分 ■ 600fps下では⼈の関節の移動量は⼩さい ■ 移動平均取れば⼗⼆分な精度が出る ○ ただバットの軌道だけは移動量が⼤きく、ここだけもっと精度欲しい ■ バットの精度向上に注⼒することに! 3

Slide 25

Slide 25 text

© DeNA Co., Ltd. 25 AIをユーザー価値に繋げるための⼯夫:まとめ ● プロダクトを作ることは、仮説を検証すること ○ プロダクトマネジメント ■ What/Howだけでなくその上のWhy/Visionまで常に考える ● これを作ればいいはずはあくまで仮説 ○ アジャイル ■ シンプルに動くものを作ってユーザー価値を検証しながら進める ● ユーザーが本当に欲しいものは誰も知らない(ユーザー⾃身含め) ● 必要な精度は解決したい課題によって決まる 4

Slide 26

Slide 26 text

© DeNA Co., Ltd. 26