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B.LEAGUE における バスケットボールの リアルタイム勝利確率モデルの 構築 名城大学理工学研究科 杉江幸治,小中英嗣

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目次 研究背景 モデリング手法の概要 アルゴリズム モデリング結果・有効性の確認 まとめ・今後の予定 1

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研究背景 スポーツや将棋など各局面における 形勢判断や予測勝率算出のための数理モデルの構築が盛ん 2 盤面 形勢 数理モデル 将棋における盤面から形勢判断

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研究背景 スポーツや将棋など各局面における 形勢判断や予測勝率算出のための数理モデルの構築が盛ん 3 バスケットボールの試合 予測勝率

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研究背景 スポーツや将棋など各局面における 形勢判断や予測勝率算出のための数理モデルの構築が盛ん 4 Play-by- play 予測勝率 数理モデル Play-by-playデータ

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研究背景 バスケットボールにおけるリアルタイム勝敗確率モデリング手法 勝利確率の経験的な推定値を用いる手法 一般的なLOESS(locally weighted scatter plot smoothing)手法を ロジスティック回帰に拡張した手法 プロビット回帰モデルで算出したリアルタイム勝利確率に 平滑化フィルタリングを行う手法 5

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研究背景 バスケットボールにおけるリアルタイム勝敗確率モデリング手法 勝利確率の経験的な推定値を用いる手法 一般的なLOESS(locally weighted scatter plot smoothing)手法を ロジスティック回帰に拡張した手法 プロビット回帰モデルで算出したリアルタイム勝利確率に 平滑化フィルタリングを行う手法 • 外れ値への対処法の合理性 • 得失点差に対する予測勝率の単調性が保証されていない 6 課題

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研究背景 目的 各試合時刻ごとに得点差に対して勝敗確率が単調性を保つような モデル化方法を提案すること 提案手法に対して予測精度,対数損失,較正値に基づき有効性を 確認すること 7

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モデリング手法の概要 提案手法 各時間ごとの経験的勝敗確率に対して ロジスティック回帰を行うことで 予測勝敗確率をモデリングする手法 8

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各時間ごとの経験的勝敗確率の計算 経験的勝敗確率の定義 𝑤 Δ𝑠, 𝑡 = 𝑂𝑤 Δ𝑠, 𝑡 𝑂(Δ𝑠, 𝑡) 𝑡: 経過時間 𝑖,𝑗: チーム添え字 𝑠𝑖 ,𝑠𝑗 : チーム 𝑖, 𝑗 の得点 Δ𝑠: 𝑠𝑖 - 𝑠𝑗 𝑂 Δ𝑠, 𝑡 : 経過時間 𝑡 ごとの Δ𝑠の発生回数 𝑂𝑤 Δ𝑠, 𝑡 : 𝑖 が試合に勝利したときの 経過時間 𝑡 ごとの Δ𝑠の発生回数 9

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一般化線形モデルのあてはめ 𝑤(Δ𝑠, 𝑡) に対して,各 𝑡 においてシグモイド関数に基づいて 一般化線形モデルのあてはめを行うことで予測勝敗確率 ෝ 𝑤(Δ𝑠, 𝑡) を構築する. 10

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アルゴリズム 1. プレイ単位のデータ (以降,Play-by-play データ) を 𝑁𝑠 試合分用意する. 2. 試合単位で Play-by-play データを選択し,経過時間 𝑡 ごとに ホームチーム 𝑖 の点差 Δ𝑠 を計算する.これを全試合に対して行う. このときクオーター数が 4 つではない試合 (延長戦など) は除外する. 3. 𝑡 ごとの Δ𝑠 の発生回数 𝑂(Δ𝑠, 𝑡) とチーム 𝑖 が試合に 勝利したときの 𝑡 ごとの Δ𝑠 の発生回数 𝑂𝑤 Δ𝑠, 𝑡 を計算する. 11

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アルゴリズム 4. 𝑂(Δ𝑠, 𝑡) と 𝑂𝑤 Δ𝑠, 𝑡 から経験的勝敗確率 𝑤(Δ𝑠, 𝑡) を 計算する. 5. 𝑤(Δ𝑠, 𝑡) に対してシグモイド関数に基づいて 一般化線形モデルのあてはめを行い,ෝ 𝑤(Δ𝑠, 𝑡) を構築する. この処理を 𝑡 = 0, 1, · · · , 2400[s] に対して行う. 12

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モデリング結果・有効性の確認 利用データ 本研究の対象は B.LEAGUE, 特に B1 リーグとする. 基本データとして,B1 リーグの2016年9月から2019年10月6日までの 全 1736 試合の結果 (Play-by-play データ) を利用 13

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モデリング結果・有効性の確認 1. Play-by-play データを試合単位でランダムに訓練用と検証用に分ける. また,データの割合は 8:2 とする. 2. 訓練用の Play-by-play データを用いて,予測勝敗確率 ෝ 𝑤(Δ𝑠, 𝑡) を構築する. 3. 検証用の Play-by-play データから試合単位で Δ𝑠, 𝑡 を 算出する. 4. 作成した ෝ 𝑤(Δ𝑠, 𝑡) と (Δ𝑠, 𝑡) を用いて各時刻 𝑡 ごとに予測正解率,対数損失,較正値を 計算する. 5. 1-4 を 5 回繰り返す. 14

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モデリング結果・有効性の確認  予測正解率:実際の試合の最終的な勝敗と, ෝ 𝑤(Δ𝑠, 𝑡) > 0.5 が一致する割合.  対数損失:実際の試合の最終的な勝敗を 𝑤𝑎 ∈ {0, 1} としたとき,以下の値. − (𝑤𝑎 log2 ෝ 𝑤 Δ𝑠, 𝑡 + (1 − 𝑤𝑎 ) log2 (1 − ෝ 𝑤 Δ𝑠, 𝑡 ))  較正値:各時刻 𝑡 ごとのホームチームの (予測勝率の和)/(実勝利数) 15

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モデリング結果・有効性の確認 16

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モデリング結果・有効性の確認 17

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モデリング結果・有効性の確認 ෝ 𝑤(Δ𝑠, 𝑡)は 𝑡 が大きくなるにつれて, 一般線形モデルのゲインが 高くなっている 試合終盤での得点は勝敗に 大きく関わることが考えられる. 18

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モデリング結果・有効性の確認 ෝ 𝑤(0, 0) = 0.5325 B1リーグではわずかに ホームアドバンテージがあることを 示している. 19

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モデリング結果・有効性の確認 検証回数 平均値 1 回目 0.7449 2 回目 0.7267 3 回目 0.7269 4 回目 0.7477 5 回目 0.7412 20

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モデリング結果・有効性の確認 試合が終了に近づくにつれて 予測正解率が高くなっている 試合が終了に近づくにつれて 勝敗結果が決定的になっていること を示している 21

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モデリング結果・有効性の確認 試合が終了に近づくにつれて 対数損失の値が低くなっている 試合が終盤になるにつれて 予測正解率が高くなっていることを 示している 22

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モデリング結果・有効性の確認 全ての時刻において 対数損失が 1 より小さい 予測勝利確率は全体的に でたらめな予想より適切である 23

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モデリング結果・有効性の確認 今回の予測勝敗確率はおおむね勝敗確率を適切に評価していることがわかる. 検証回数 平均値 最小値 最大値 1 回目 1.0442 1.0051 1.0838 2 回目 1.0022 0.9560 1.0436 3 回目 1.0131 0.9850 1.0552 4 回目 1.0033 0.9713 1.0594 5 回目 0.9400 0.8970 1.0216 24

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まとめ・今後の予定 まとめ B1リーグについて𝑡ごとにΔ𝑠に対して勝敗確率が 単調性を保つようなモデル化方法を提案し, 2016年9月から2019年10月6日までの結果に基づきモデリング を行った B1リーグではホームチームの勝率が53.5%程度である ホームアドバンテージがあることを示した. 予測精度や対数損失,較正値を元にモデルの有効性を確認し, その妥当性を示した 25

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まとめ・今後の予定 今後の予定 ボール保持・非保持を考慮したリアルタイム予測勝敗確率の 構築 リアルタイム予測勝敗確率を用いた選手の インパクトメトリクス (選手の勝敗に対する貢献を 単一の指標であらわすことを目的とするもの) の 提案および検証 26