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株式会社タイミー 高石 一樹 『組織として』顧客を理解するインタビュー習慣の作り方 〜 継続的ディスカバリーの実践例 〜 @tktktks10

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自己紹介 氏名 / 所属 高石 一樹 株式会社タイミー プロダクトマネージャー
 バックグラウンド / 職歴 コンピュータサイエンス・機械学習 ソフトウェアエンジニア(Androidアプリ) プロダクトマネージャー

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「ユーザーインタビュー」 強力な顧客理解の営み =

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よくあるインタビューの実情 重要なのは分かっているが、インタビューの企画から実施が重くて
 中々時間が取れなかったり続かない… 個人の頑張りに依存していたり、単発で終わってしまいがち リサーチャー 個人として頑張っているが、チームにインサイトを接続することが
 難しく孤軍奮闘状態… PM

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半年前(2~3月) 当人が詳しくなるに留まる 現在 頻度 参加者 月間人数 1ヶ月に2~3人(波あり) 2~3人 インサイト
 活用 リサーチ関連職 当時のインタビュー体制

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半年前(2~3月) 当人が詳しくなるに留まる 現在 プロダクト戦略、バックログアイテム、
 マーケティング施策… 頻度 参加者 月間人数 1ヶ月に2~3人(波あり) 2~3人 週5回(毎日) 20人前後(累計200人程) インサイト
 活用 リサーチ関連職 デザイナー・アナリスト・エンジニア・ PdM・PMM・マーケター・経営… 現在のインタビュー体制

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個人の頑張りに依存していたり、単発で終わってしまいがち 組織として、継続的に顧客の声を取り込めるように 継続的ディスカバリー(Continuous Discovery)の実践例としてお話ししたいと思います

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想定聴衆 チームや組織として プロダクトの価値提供に携わる全ての方

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1. インタビューが組織の習慣になったきっかけと成果の実例 2. プロダクトの成果へ繋げるインタビューのサイクル 3. 継続的なインタビューを支える仕組みづくり 目次(今日お伝えしたいこと)

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1. インタビューが組織の習慣になったきっかけと成果の実例(Why) 2. プロダクトの成果へ繋げるインタビューのサイクル(What) 3. 継続的なインタビューを支える仕組みづくり(How) 目次(今日お伝えしたいこと)

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1. インタビューが組織の習慣になったきっかけと成果の実例 2. プロダクトの成果へ繋げるインタビューのサイクル 3. 継続的なインタビューを支える仕組みづくり 目次

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POとしての顧客解像度不足(質の高い優先順位づけ)を改善したかった もともと定量分析は得意だったが、顧客の「なぜ」を紐解く定性分析の経験が薄かった プロダクトチームがいつでも顧客と話せる状態を作りたかった 当時からチーム内のエンジニア・デザイナー・アナリストの顧客理解に対する欲求は非常に高かった ものの、1~2週間のスプリント内で企画からインタビュー実施まで出来るほどの手軽さがなかった きっかけとなった課題感 個人として場数を踏むためにも、顧客志向なチームづくりのためにも、
 「気軽に顧客と話せる場」としてインタビューの仕組みをPMMと作ることに

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ユーザーインタビュー組織化の軌跡 PdMとPMMが中心になって狭くインタ ビューのサイクルを回すと同時に、イ ンタビューの仕組み化にも着手。参加 コストを極限まで下げられるように改 善を続け、最終的にGoogleCalendarに 自分の名前を入れるだけでインタ ビューに参加できるように。 週1~2回 / 累計10回 小さく始めた取り組みが、結果的に「継続的」「組織的」へと成長 2022/2 2~3月で構築したインタビューに参加 できる仕組みを社内に公開。チームや 隣接部署、役員の参加も増え始める。 総インタビュー人数が30を超えたあた りで新しく顧客セグメントができ、そ の後戦略や施策で引用するように。 週2回 / 累計30回 2022/4 新入社員のオンボーディングなどにも 使われ始め、「まずは一緒に顧客と話 してみよう」という行動が多くなる。 この頃からほぼ毎日会社のどこかでイ ンタビューが行われるようになった。 週5回 / 累計80回 2022/6 インタビューのバリエーションも広が り、エンジニアも広く巻き込んだインタ ビューが増え始める。広い戦略だけでな く、日々の仮説立てや小さな改善にもイ ンサイト還元される機会が増えつつあ る。 週5回 / 累計120回 2022/8~

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嬉しさ①:組織全体で顧客の共通理解が増え、あらゆる取り組みの方向性が揃う Before After 組織が拡大する中で部署ごとに異なるユー ザ像を持ち始めており、開発や施策の優先 順位を揃えるのにコストが掛かっていた。 部署を超えて同じ顧客と話す時間を定常的に 持っているため、優先順位づけに関するの前 提が揃ったり、ものづくりからマーケティン グまでなどの施策の一貫性が出始めた。 拡大し続ける組織においても顧客を中心に据えることで
 部署やチームを一気通貫した課題解決につながる

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嬉しさ②:「顧客に聞いてみる」までのリードタイムが圧倒的に早くなった Before After 目的が設定されてからインタビューを手配するのでチームが結果を得る までの時間が長く、スプリントにも収まらないなどアジャイル型の開 発サイクルにリズム合いづらい。一定サイズの目的が明文化されないと インタビューが起きづらいのも課題。 日頃からインタビューが常態化していることで仮説立案や検証のスピードが向上する 日 月 火 水 木 金 土 目的設計・インタビュー手配 インタビュー実施 インタビュー実施 事後処理・インサイトまとめ そもそも毎日インタビューをしているので、ある程度目的が定まり次第走りながら顧客 と話す。「理由ができてから企画する」のではなく「理由ができたら聞きに行く」。結 果は随時やスプリントレビューの開発サイクルに合わせて還元。「ちょっと聞きたい」 も可能。 日 月 火 水 木 金 土 目的設計・インタビュー実施 インタビュー実施 目的変更・インタビュー実施 インタビュー実施

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1. インタビューが組織の習慣になったきっかけと成果の実例 2. プロダクトの成果へ繋げるインタビューのサイクル 3. 継続的なインタビューを支える仕組みづくり 目次

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インタビューの開催頻度 1回60分のインタビューを平均して週に5回。1日1回は誰かがインタビューをしている頻度。 誰でもGoogleCalendarから参加できる枠が、毎日1時間用意されている(具体はchapter3で後述)

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インタビューの参加者 PdM/PMMが中心となり、チームメンバーまで役員を含むステークホルダまで幅広く参加。最近で はデザイナーやプロダクトマーケターも同じくらい主導している。基本2人1組。

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インタビューから得たインサイト、
 どうやってチームに共有・活用していますか?

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よくある例①:誰にも読まれない議事録と録画 長すぎるインタビューの議事録はキャッチアップコストが高く、読むハードルが高い。 仮に読んだとしても、共通の理解になりづらい。 インタビューした人「まとめたよ!」 チーム「どこら辺を読めばいいんだろう…?」

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よくある例②:結局伝えるために全て1から説明する インタビューの理解が個人に閉じているため、結局すべてドキュメントや口頭で説明しなおす。 インタビューと同じくらいのコストをかけて説明した割には、理解が欠落したりする。 インタビューした人
 「xxxのような課題があって現状はyyyで解決しており…」 チーム
 「(1時間後)…たぶん分かりました」 +

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個人の理解から、チームと組織の理解へ 多能的な職種からなるチームでは、良いプロダクトのアウトプットを出すにはお互いの 協業が不可欠 いくら一個人だけの理解を深めたとしても、結局はチームの協力が必要になる いかに効率良く質の高い「チームや組織としての理解」を作れるかが重要

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チームや組織においてインタビューを成果につなげるための3ポイント ① 原則2人以上で参加する 成果に必要なのは個人の理解よりチームの理解。オブザーブでも構わないので、2人以上で参加する。普段から協業している 役割で一緒に臨むとその後の効果大。 ② 参加したメンバーで「協力して」振り返りを行う インタビューを行っただけでは、参加者の理解はバラバラ。協力して振り返りを行う過程で初めて「チームとして」「組織と して」の理解を作ることができる。できればインタビューの直後、遅くともその日中に一緒に振り返りを行う。 ③ 振り返りでInterview Snapshotを一緒に作る インサイトの簡潔なまとめであるInterview Snapshotに落とし込む過程で自然と議論と共通理解が発生する。共通理解のあるま とめは、そのまま開発や戦略に引用することができる。

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Interview Snapshotを協力して作ることで、インタビューを記憶に刻む インタビュイーの写真や特徴的な事実を簡潔にまとめることで、効率的にインタビューの記憶を呼 び覚ますメモを作る。これを「Interview Snapshot*」と言う。 タイミーでは下図のように文字だけの簡略バージョンを使っているが、直後のたった30分の振り返 りで作ったメモにも関わらず、議事録冒頭に貼っておけば半年経っても思い出せる効力がある。 *Continuous Discovery Habitsより引用 僕自身を顧客に例えた場合のInterview Snapshot例

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応用例①:ユーザーストーリーに引用する Interview Snapshotをユーザーストーリーの背景 に引用するだけ そもそもチームメンバーと元になったインタ ビューに同席しているため、顧客課題は引用する だけで伝わる User Story Background Interview Snapshot 代表例としてこのようなユーザーさんがいました

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応用例②:プロダクト戦略の顧客セグメントに引用する インタビューの回数を重ねていくと、利用目的別に大きな傾向が見えてくる。この傾向をセ グメントとして定義し、今後注力すべき対象を選択する。 このような戦略レベルの議論をする際は、各部のステークホルダや経営陣を元のインタ ビューに同席してもらっておくとかなり効力を発揮する。 インタビュー結果を元にセグメントを構築 プロダクト戦略やロードマップに引用

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1. インタビューが組織の習慣になったきっかけと成果の実例 2. プロダクトの成果へ繋げるインタビューのサイクル 3. 継続的なインタビューを支える仕組みづくり 目次

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なぜインタビューを組織レベルで継続することが難しいか 1. インタビューに付随する作業の重さ 目的設計、母集団形成、リクルーティング、当日までの連絡、インタビュー実施、謝礼支払い、 振り返り、etc….。インタビューの設定から実施までを個人が継続的に行うのはほぼ無理。 物理的なハードルと心理的なハードルが掛け合わせが習慣化を妨げる 2. インタビューへの不慣れ・専門領域の違い インタビュー経験が少ない人やリサーチが専門領域ではない職種の人にとっては、心理的ハードル が高い。根本が解決しないと推進者の孤軍奮闘が続く。

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タイミーにおけるインタビュー参加までの流れ 1. 毎日固定で設置されている
  GoogleCalendarに予定を入れる 2. 当日の時間になったら
  GoogleMeetに入るだけ
 (議事録はNotionで用意される)

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参加者側がインタビューの実行だけに集中できる環境を作る インタビューの設定 インタビューの参加 母集団形成 リクルーティング 当日までの連絡 謝礼支払い 目的設定 インタビュー実施 振り返り インタビュー設計

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参加者側がインタビューの実行だけに集中できる環境を作る インタビューの設定 インタビューの参加 母集団形成 リクルーティング 当日までの連絡 謝礼支払い こういうインタビューが したいです どうぞ! 参加者 利用媒体:電話/SMS/メール経由、自社プロダクト*、外部調査会社…. *タイミーの場合、インタビュイーの募集自体にタイミーを使っている

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参加者側がインタビューの実行だけに集中できる環境を作る インタビューの設定 インタビューの参加 参加者 Interview as a Service
 (product marketing部として構築・運用) GoogleCalendarから 参加表明 インタビューの設定

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心理ハードルを落とす:ファシリテーションはできる人が全力でサポートする どれだけ参加が楽になっても、未経験の人にとってインタビューは不安。最初のうちは 「全部自分がサポートするので!」とファシリテーションを買って出る。
 → 2~3回やると慣れてくる 慣れてきたら、職種上できた方がいい人や興味がある人には積極的にスキルを伝播す る。

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1. インタビューが組織の習慣になったきっかけと成果の実例 2. プロダクトの成果へ繋げるインタビューのサイクル 3. 継続的なインタビューを支える仕組みづくり 伝えたかったこと再掲

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全体まとめ  インタビューを組織の習慣になることで、チームや部署を超えた協力が容易になる他、イ ンサイトがプロダクトに反映されるまでのリードタイムが圧倒的に短縮される  インタビューをプロダクトの成果につなげるために振り返りは不可欠であり、Interview Snapshotを用いることで効率的にインサイトをチームや組織の共通理解をつくることができる  インタビューを組織として習慣化するためには徹底的に参加ハードルを落とすことが効果 的であり、インタビューの仕組み化を行うことが重要

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株式会社タイミー 高石 一樹 『組織として』顧客を理解するインタビュー習慣の作り方 〜 継続的ディスカバリーの実践例 〜 @tktktks10