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1 菊岡 大夢 2025.07.23 株式会社WFS / ゲームデザインディレクター(コンテンツ) ©WFS ヘブンバーンズレッドにおける 世界観を活かしたミニゲーム企画の作り方

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2 序説 -自己紹介とヘブンバーンズレッドについて 導入 事例紹介 課題と解決 まとめ ©WFS

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3 菊岡 大夢 自己紹介 ©WFS 2016〜2022:株式会社コーエーテクモゲームス 2022〜2025:株式会社WFS ヘブンバーンズレッドのディレクターの一角として 新施策・新コンテンツの企画・監修の役割を担う 担当施策 ・ライブモード ・大島屋物語 ・ドゥエロ ジャンル:音楽ゲーム ジャンル:経営シミュレーションゲーム ジャンル:TBS

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4 ヘブンバーンズレッドとは ©WFS “物語体験”を主軸に設計されたRPG WRIGHT FLYER STUDIOS×Key による共同制作 世界観・キャラ・ストーリーテリングを重視した コマンドバトルRPG。 命をかけて敵と戦う「戦場」と、 少女たちが生きるかけがえのない「日常」を描き、 過酷な運命に立ち向かう物語を「体験」できるゲーム。 ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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5 序説 -ミニゲームってどんなの? 導入 事例紹介 課題と解決 まとめ -なぜこのテーマを扱うのか -ミニゲーム企画の課題とは ©WFS

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6 ©WFS ヘブンバーンズレッドにおける 世界観を活かしたミニゲーム企画の作り方 セッション題名に とありますが…… 導入

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7 導入 ©WFS そもそもミニゲームって どんなの?

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8 本セッションでの定義 ミニゲームってどんなの? ©WFS • ストーリー中に挟まる • 本来のジャンルとは異なる 上記二点を満たすゲーム

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9 ©WFS ヘブンバーンズレッドにおいて 今までリリースしたものだと… ミニゲームってどんなの?

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10 ©WFS 「大島屋物語」より 経営シミュレーション ミニゲームってどんなの? ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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11 ©WFS 「小さき帝と穏やかな朝食」より スニーキングアクション ミニゲームってどんなの? ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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12 ©WFS 「メインストーリー5章中編」より ドゥエロ(ボードゲーム) ミニゲームってどんなの? ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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13 ©WFS 本作を扱わずに例えると するならば…… ミニゲームってどんなの?

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14 ©WFS RPGで冒険の最中に 食料調達のために行われる 「釣りミニゲーム」とか ミニゲームってどんなの?

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15 ©WFS アクションゲームで移動のために 戦闘機などに乗り込んで始まる 「シューティングゲーム」とか ミニゲームってどんなの?

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16 ©WFS このようなミニゲームについて ヘブンバーンズレッドの事例をもとに 企画フローを共有していきます ミニゲームってどんなの?

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17 ©WFS 特に、本作のIP特性上 「ゲームプレイが 物語の没入感を高める」 を目的とする企画について言及します ミニゲームってどんなの?

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18 ©WFS ではなぜ今 このテーマを扱うのか なぜこのテーマを扱うのか

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19 ©WFS 例えば こんな経験はありませんか? なぜこのテーマを扱うのか

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20 ©WFS なぜこのテーマを扱うのか 私 いいですね、少し 考えてみましょうよ 汎用的で手軽に遊べる ミニゲーム作れませんか

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21 私 ©WFS 何やら盛り上がってますが…… なぜこのテーマを扱うのか 先行投資にも なりそうですね! 拡張性もあると いいね

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22 ©WFS うーん…… なぜこのテーマを扱うのか 私 ね! ね!

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23 ©WFS 皆さんならどうしますか? なぜこのテーマを扱うのか

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24 ©WFS 無限に悩みますよね なぜこのテーマを扱うのか

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25 ©WFS そして何かを思いつきます ガチンコ 1打席勝負? デッキ構築型の ブラックジャック? たたいてかぶって ジャンケンポン? なぜこのテーマを扱うのか

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26 ©WFS ほぼ考案中にボツになります ガチンコ 1打席勝負? デッキ構築型の ブラックジャック? たたいてかぶって ジャンケンポン? ゲーム性が弱い 手軽じゃない なぜこのテーマを扱うのか

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27 導入 ©WFS ガチンコ 1打席勝負? 渾身の案が1つ残るが…… これならいけるか……?

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28 ©WFS ガチンコ 1打席勝負? IPとの不親和によりボツ 世界観に合わない また1から考え直しだ…… なぜこのテーマを扱うのか

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29 ©WFS ガチンコ 1打席勝負? IPとの不親和によりボツ 世界観に合わない また1から考え直しだ…… 何がいけなかったのでしょうか なぜこのテーマを扱うのか

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30 私 いいですね、少し 考えてみましょうよ 汎用的で手軽に遊べる ミニゲーム作れませんか ©WFS なぜこのテーマを扱うのか この人?

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31 私 いいですね、少し 考えてみましょうよ 汎用的で手軽に遊べる ミニゲーム作れませんか ©WFS なぜこのテーマを扱うのか この人? NO!!

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32 私 いいですね、少し 考えてみましょうよ 汎用的で手軽に遊べる ミニゲーム作れませんか ©WFS なぜこのテーマを扱うのか この人? NO!! ・オーダーの粒度は変わるもの ・課題を自ら見つけて企画する場合もある 状況に依存せず企画する術を見出したい

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33 ©WFS こういった事例は少なくないはず なぜこのテーマを扱うのか 何から考えればいいんだ……

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34 ©WFS 原因は? なぜこのテーマを扱うのか •ゲームの根幹を考える機会が少ない •ミニゲーム企画は1つの仕様というよりも ゲーム企画を立ち上げるのに近しい

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35 ©WFS 機会を得にくい事例として 経験を共有したい なぜこのテーマを扱うのか

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36 ©WFS ではどうすればスムーズに ミニゲーム企画ができるのでしょう ミニゲーム企画の課題とは

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37 ©WFS ミニゲーム企画には “課題”が存在します ミニゲーム企画の課題とは

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38 私 汎用的で手軽に遊べる ミニゲーム作れませんか いいですね、少し 考えてみましょうよ ©WFS 1.ゼロベースで考えることは難しい ミニゲーム企画の課題とは

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39 ミニゲーム企画の課題とは やみくもに「面白いゲーム」案を考えるのは無謀 •題材を0から探すのは相当な労力になる •主観が強く、遊びの方向性が偏りがち

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40 ©WFS やみくもに「面白いゲーム」案を考えるのは無謀 時間がかかりすぎる ミニゲーム企画の課題とは •題材を0から探すのは相当な労力になる •主観が強く、遊びの方向性が偏りがち

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41 ©WFS ミニゲーム企画の課題とは •昨今のゲーム開発では工数管理が課題 特に ため、 スピード感が求められる •運営型のゲームにおいてはスケジュールも固い

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42 ©WFS 時間をかけてられない ミニゲーム企画の課題とは

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43 ©WFS ガチンコ 1打席勝負? 渾身の案が1つ残っても…… これならいけるか……? 2.世界観の制約は強い ミニゲーム企画の課題とは

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44 • 世界観や物語に準拠している場合、そこから外れた 要素を組み込むと没入感が削がれる 例) 野球をしたことがないキャラに「一打席勝負を 申し込む」設定は物語として成り立たない ミニゲーム企画の課題とは

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45 ©WFS • 世界観や物語に準拠している場合、そこから外れた 要素を組み込むと没入感が削がれる どんなに面白いゲームでも 必要性がなくなってしまう 例) 野球をしたことがないキャラに「一打席勝負を 申し込む」設定は物語として成り立たない ミニゲーム企画の課題とは

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46 課題 ©WFS 1.ゼロベースで考えることは難しい 2.世界観の制約は強い ミニゲーム企画の課題とは これらの解決方法を探るのが 本セッションの主旨です

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47 序説 -「ドゥエロ」事例から見る思考の沼 導入 事例紹介 課題と解決 まとめ -「世界観を活かす」トップダウン型思考 ©WFS

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48 事例紹介 ドゥエロ ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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49 ©WFS • ストーリーの合間に遊べる、手軽な戦略型ボードゲーム • キャラをデフォルメ化したカワイイ駒を使用 • 専用セリフで登場人物たちが遊んでいる体感を実現 事例紹介 ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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50 動画を差し込む 事例紹介

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51 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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52 メインストーリーの自由時間で 交流の代わりに遊べるミニゲーム 企画のお題 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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53 ざっくばらんに考え出すと…… お題はこれだけ 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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54 ©WFS こうなります 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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55 ロジックツリーならこんな感じ ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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56 ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ロジックツリーならこんな感じ ??? 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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57 背景:メインストーリー自由時間 何もわからん 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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58 ひとまず ブレストをしてみるものの…… 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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59 ©WFS 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼 ストーリー・世界観の制約によって 思うように企画が進まない

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60 ©WFS まずは前提条件を明確にし 避けるべき穴を見極めることに ©WFS 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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61 企画要件 1. 全てのキャラと対戦できる 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼 2.世界観を崩さない 3.物語体験を邪魔しない

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62 企画要件 1. 全てのキャラと対戦できる 2.世界観を崩さない 3.物語体験を邪魔しない 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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63 1.全てのキャラと対戦できる ©WFS ミニゲームがプレイできるのは自由時間 ※自由時間はストーリー内でキャラと触れ合える機会 ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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64 1.全てのキャラと対戦できる ©WFS 今回は交流の代替コンテンツ として開発しなければが要件となっている 要件

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65 自由時間の交流の代わりとなる要素とする =全キャラと対戦できなければならない 1.全てのキャラと対戦できる ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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66 1.全てのキャラと対戦できる 本作のキャラ数 48人 (+α) !!

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67 各キャラの個性も強く、趣味嗜好も異なるが 統一されたインターフェースを使わなければいけない 1.全てのキャラと対戦できる ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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68 企画要件 1. 全てのキャラと対戦できる 2.世界観を崩さない 3.物語体験を邪魔しない 事例紹介

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69 ©WFS ミニゲームとはいえ、世界観との関連性は必要 いきなり戦闘機に乗ってシューティングとはいかない 2.世界観を崩さない

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70 ©WFS 本作の世界観設定 2.世界観を崩さない • 地球外生命体「キャンサー」により人類存続の危機 • 決戦兵器「セラフ」を扱える少女たちが戦っている • 少女たちは軍に所属し、基地で生活している • 基地は生活の場であり、学びの場でもある • 少女たちは学生のように過ごし絆を深めている

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71 ©WFS 作中にゲームセンターの存在はあるが、 「全てのキャラと対戦」の要件とは食い合わせが悪い 2.世界観を崩さない ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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72 「キャラ全員」と「基地のどこででも遊べる」 モチーフを決める必要がある 2.世界観を崩さない

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73 ©WFS 重要なのは「メインストーリーの最中」であること モチーフさえハマれば何でもいいというわけでもない 2.世界観を崩さない ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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74 ©WFS ストーリーの流れにも沿った設定がほしい 2.世界観を崩さない ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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75 企画要件 1. 全てのキャラと対戦できる 2.世界観を崩さない 3.物語体験を邪魔しない 事例紹介

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76 ©WFS ミニゲームはメインストーリー中にプレイできる 何時間もプレイさせるような内容にはできない 気づいたら3時間やってたわ ストーリーは明日進めよ 3.物語体験を邪魔しない

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77 ©WFS 難解だったり、繰り返しプレイを求めるゲーム性では メインストーリーに差し込むミニゲームとして不適切 シーンがつながらなくて イマイチ感情移入できない 3.物語体験を邪魔しない

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78 ©WFS サクッとプレイで気分転換、 すぐに物語に気持ちを戻せる 手軽な遊び心地が重要 クリア! 次進めよ いい話! 3.物語体験を邪魔しない ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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79 ここまで来れば余裕…… 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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80 とも限りません 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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81 要件が先行し、柔軟性が失われ イマイチ考えがまとまらないのです 要件要件要件 要件要件要件 あれはダメ これもダメ 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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82 「好きに考えていいよ」でまとまらず 「ここ抑えなきゃダメ」で案が出ない ミニゲーム企画 ストーリー重視IP 「ドゥエロ」事例から見る思考の沼

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83 なのでちょっとだけ 考えを切り替えました 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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84 「好きに考えていいよ」でまとまらず 「ここ抑えなきゃダメ」で案が出ない ミニゲーム企画 ストーリー重視IP これを制限ではなく「要素」に捉える 企画を構想する上での武器に転換する 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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85 「ここ抑えなきゃダメ」 ストーリー重視IP 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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86 「ここ抑えなきゃダメ」 ストーリー重視IP 「ここを起点に考える」と捉える! 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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87 つまり…… 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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88 企画要件を ここにはめる 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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89 要件は抑えなければならないものから ゲームを作る要素として組み込まれます 考えるハードルが 一個減った 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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90 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない ボトムアップで考えるのではなく 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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91 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない トップダウンで考える 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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92 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない せっかくなので ここも埋めましょう 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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93 この企画における 「コンセプト」になります 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない コンセプト 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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94 コンセプト 箸休めなのにスルメ系ボードゲーム 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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95 重厚なストーリーの合間の 息抜きとなるような手軽さ 要件3 箸休めなのに スルメ系 ボードゲーム 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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96 登場する主要48キャラ全員と戦えるくらい 拡張性・耐久性のあるゲームルール 要件1 箸休めなのに スルメ系 ボードゲーム 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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97 「軍が支給した知育玩具」として、 どのキャラが遊んでも違和感ない設定 要件2 箸休めなのに スルメ系 ボードゲーム 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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98 重厚なストーリーの合間の 息抜きとなるような手軽さ 登場する主要48キャラ全員と戦えるくらい 拡張性・耐久性のあるゲーム性 「軍が支給した知育玩具」として、 どのキャラが遊んでも違和感ない設定 要件1 要件2 要件3 箸休めなのに スルメ系 ボードゲーム 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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99 埋まってきました 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー 箸休めなのにスルメ系 ボードゲーム

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100 しかし まだどんなゲームか 分かりません 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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101 次はここですね 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない 箸休めなのにスルメ系 ボードゲーム 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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102 上位要素をより具体的に 分解していきます 物語体験を邪魔しない = 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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103 そこで重要になるのは “言語化”です 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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104 例えば…… 物語を邪魔しない 3分で終わる = よしクリア! 次行こ次! 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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105 例えば…… 世界観を崩さない キャラをモチーフに = 月歌の駒 かわいい! 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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106 例えば…… 全キャラと対戦できる 何回でも遊べる = 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー 今回はこう来るか 遊び甲斐がある

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107 このように埋めていく 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない 何回でも遊べる 蒐集要素がある キャラをモチーフに使う どこでも遊べる 3分で終わる ルールが簡単 箸休めなのにスルメ系 ボードゲーム 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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108 最大10手のゲーム さらに言うと…… 3分で終わる = 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー •ボードゲームなら5×5の25マス •優勢劣勢がひと目で分かるように

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109 下位項目も埋めていく 3分で終わる ルールが簡単 5×5マスのボドゲ デッキは10手分のみ 優勢劣勢がひと目で分かる 先行有利 … 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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110 戦い方が変わる さらに言うと…… 何回でも遊べる = 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー •プレイするごとに盤面が変わる •デッキの更新がある

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111 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない 何回でも遊べる 蒐集要素がある キャラをモチーフに使う どこでも遊べる 3分で終わる ルールが簡単 箸休めなのにスルメ系 ボードゲーム … … … これを繰り返してできたのが 「世界観を活かす」ドゥエロの企画フロー

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112 序説 導入 事例紹介 課題と解決 まとめ -開発中に出た課題と解決フロー -トップダウン型思考の利点とは ©WFS

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113 企画が終わり開発に入っていきます 実は開発時にもトップダウン型の考え方が 活きてきます 課題と解決

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114 駆け引きをつくりたい 開発課題その1 開発中に出た課題と解決フロー

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115 開発が始まり モックで遊べるようになりました 開発中に出た課題と解決フロー

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116 開発中にチーム内プレイをしていると こんな意見が上がりました 開発中に出た課題と解決フロー

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117 ・相手への干渉度が少なく盛り上がりにかける ・盤面の挽回の余地がなく既定路線になりがち 開発中に出た課題と解決フロー

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118 ・相手への干渉度が少なく盛り上がりにかける ・盤面の挽回の余地がなく既定路線になりがち 駆け引きが少ない! 開発中に出た課題と解決フロー

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119 改善案として最初に提案したのが 一列を自駒で埋めたらボーナス というルール 開発中に出た課題と解決フロー

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120 ボーナスを与えないよう相手の駒を見て妨害するなど 先読みが必要になり、駆け引きが生まれる! 開発中に出た課題と解決フロー ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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121 このルールを導入しテストプレイを実施 チーム内でもある程度好評だったのですが…… 開発中に出た課題と解決フロー

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122 ちょっと待った! 開発中に出た課題と解決フロー

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123 ロジックツリーを見直してみると 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない 何回でも遊べる 蒐集要素がある キャラをモチーフに使う どこでも遊べる 3分で終わる ルールが簡単 箸休めなのにスルメ系 ボードゲーム 開発中に出た課題と解決フロー コレ

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124 このルールを導入すると ひと目で戦況が分からなくなる つまり ルールが難しくなる 開発中に出た課題と解決フロー

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125 開発中に出た課題と解決フロー あそこ置いたら次はあそ こにおいて、ボーナスが 入るから……あれ今どっ ちが勝ってるんだ……? ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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126 これではコンセプトから外れ 狙ったゲーム性になりません ルールわからん 開発中に出た課題と解決フロー

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127 別案として「動くエネミー駒」を導入 コイツが動きます 開発中に出た課題と解決フロー ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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128 「動くエネミー駒」の導入によって ことに 成功! •「どっちが勝ってるか」は分かりやすくしたまま •「プレイヤー同士の駆け引き」を生み出す 開発中に出た課題と解決フロー

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129 ボトムアップ的に考えると どこまでが正しいのか理解しづらい 全てのキャラと対戦できる 何回でも遊べる 蒐集要素がある ルールが簡単 開発中に出た課題と解決フロー ここの項目って 本当に正しいのかな

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130 トップダウン的に考えれば どこまで正しいかが明確で間違えても考え直しやすい 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない 繰り返し遊んでも飽きない 拡張性が高い キャラをモチーフに使う どこでも遊べる 3分で終わる ルールが簡単 開発中に出た課題と解決フロー ? ? ? ? ボーナススコア ここまでは 正しいはず!

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131 AIをつくりたい 開発課題その2 開発中に出た課題と解決フロー

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132 新しいゲームルールのAI…… どう作る? ルールやモチーフが固まりいよいよ実装 今回はPvEなのでAIが必要です 開発中に出た課題と解決フロー

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133 5×5の盤面上で 開発中に出た課題と解決フロー エネミー駒を倒して スコアを獲得する 駒同士を連結させ強くなり SCORE+7!!

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134 よし、いけそうだ 開発中に出た課題と解決フロー

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135 ちょっと待った 開発中に出た課題と解決フロー

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136 AIの思考フローが多ければ 戦いがいのあるCPU対戦に できるかもしれませんが…… 開発中に出た課題と解決フロー それでよかったのでしょうか?

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137 AIの思考フローが多いということは プレイヤーの思考フローも多いということ つまり 手軽さが失われる 開発中に出た課題と解決フロー

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138 ロジックツリーを見直してみると 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない 何回でも遊べる 蒐集要素がある キャラをモチーフに使う どこでも遊べる 3分で終わる ルールが簡単 箸休めなのにスルメ系 ボードゲーム 開発中に出た課題と解決フロー コレ

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139 これではコンセプトから外れ 狙ったゲーム性になりません このゲーム考えるこ と多すぎ…… 開発中に出た課題と解決フロー

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140 特に今回は48人以上のキャラと 対戦することが前提となります 開発中に出た課題と解決フロー ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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141 手軽さを失えば物語体験を損なうだけでなく キャラとの接触が減り存在感が希薄化します 開発中に出た課題と解決フロー ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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142 今回のAIは 「初見プレイヤーが考えること」 以上のことはさせない方針に 開発中に出た課題と解決フロー

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143 「手軽に遊べて普通に勝てる」 のゲームバランスでAIを実装 開発中に出た課題と解決フロー ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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144 トップダウン型の考え方は 開発過程において指標になります トップダウン型思考の利点とは

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145 トップダウン型思考の利点とは 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない ボトムアップ型の思考

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146 トップダウン型思考の利点とは 全てのキャラと対戦できる 世界観を崩さない 物語体験を邪魔しない トップダウン型の思考

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147 •物語の主題が決まっている •物語のモチーフをそのまま使う 次のような条件を備えると より上位項目の縛りが強くなります トップダウン型思考の利点とは このような場合トップダウン型の思考が 適合するケースが多くなってきます

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148 大島屋物語 トップダウン型思考の利点とは ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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149 ©WFS • ストーリー準拠の簡易的な経営シミュレーションゲーム • 6人の姉妹が各々収集・生産・販売等を行い、店舗経営する • キャラの掛け合い、協力して経営している感じが楽しい トップダウン型思考の利点とは ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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151 このゲームにおいては物語主題として 「主人公が店を経営する」という要素が 決まっていた トップダウン型思考の利点とは

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152 そのため冒頭からすでにある程度 ツリーが埋められる状態にある トップダウン型思考の利点とは 経営シミュレーション ゲーム結果とシナリオ分岐 キャラ同士のふれあい ? ? ? ? ? ? ヘブバンプレイヤーが 楽しめる店舗経営

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153 あとは「どういったゲームにするか」を 要素を分解して決めていくだけ 経営シミュレーション ゲーム結果とシナリオ分岐 キャラ同士のふれあい ? ? ? ? ? ? ヘブバンプレイヤーが 楽しめる店舗経営 トップダウン型思考の利点とは

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154 ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ここでボトムアップ型の考え方をすれば 「店を経営する」のにもいくつか案が出せるかも トップダウン型思考の利点とは

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155 ©WFS 店に来た客の要望を聞いて 効率を求めて制限時間内に 商品を作るゲームとか 椅子 ください 人形 ください トップダウン型思考の利点とは

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156 ©WFS 店で売る「モノづくり」に着目し 工作する過程をゲーム性に仕立てた リズムゲームにしてしまうとか トン カン カン カン トップダウン型思考の利点とは

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157 ただ、もし何か要件と合わない要素が 出たときに都度解決を図る必要がある 制限時間に効率よく 商品を提供するゲーム キャラ同士のふれあい ? ? ? ? ? ? スマホはコントローラがない! 操作が複雑だとプレイしづらい トップダウン型思考の利点とは

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158 何より当初は仕様を一日で考えて 開発を進めなければいけないという スピード感が必要だった コンセプト決め 仕様策定 開発 1営 5営 10営 … OUT トップダウン型思考の利点とは

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159 キャラ性・世界観はもちろん重要 ミニゲームでもキャラがしないであろう行動はNG トップダウン型思考の利点とは 大島四ツ葉のキャラ性で テキパキ動くゲームは合わない ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key

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160 •物語重視のゲーム •スピード感が必要な状況 =トップダウン型フローが最適 トップダウン型思考の利点とは

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161 トップダウンで考えることで 固く着実に企画を作り トップダウン型思考の利点とは 経営シミュレーション ゲーム結果とシナリオ分岐 キャラ同士のふれあい ? ? ? ? ? ? ヘブバンプレイヤーが 楽しめる店舗経営

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162 立ち上げから開発もスムーズに コンセプト決め 仕様策定 開発 1営 1営 10営 … トップダウン型思考の利点とは OK

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163 ユーザーの声としても ミニゲーム込で好評なイベントとなった トップダウン型思考の利点とは

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164 序説 導入 事例紹介 課題と解決 まとめ ©WFS

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165 •物語重視のミニゲーム企画は要件が多い まとめ •トップダウンに考えると戻りが少なく、 スピード感のある開発も可能 •要件が多い企画は要件をゲームの要素に 組込みトップダウンで考えるとスムーズ まとめ

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166 菊岡 大夢 2025.07.23 株式会社WFS / ゲームデザインディレクター(コンテンツ) ©WFS ヘブンバーンズレッドにおける 世界観を活かしたミニゲーム企画の作り方