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© Recruit Co., Ltd. デザイン経営実現に向けた デザインスタイルとは プロダクトデザイン室 デザインマネジメントユニットデザインマネジメント部 部長 磯貝直紀 2023. 3.14

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© Recruit Co., Ltd. 2 所属 リクルート プロダクトデザイン室 デザインマネジメントユニット デザインマネジメント部 部長 デザインディレクター 京都工芸繊維大学大学院を修了後、GKデザイングループにて通信 キャリアのデザインマネジメントや自治体の公共デザインなど、 領域を横断したデザイン業務に携わる。 2015年にリクルートに入社し、HR、日常消費、学び領域のプロダ クトデザイン業務に従事。現在は、事業横断のデザインマネジメ ント組織を立ち上げ、デザイン領域に特化したナレッジシェア、 コミュニティ化推進をはじめ、組織長としてリクルート全体のデ ザイン価値向上に寄与する業務を行っている。 磯貝 直紀 Naoki Isogai 略歴

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© Recruit Co., Ltd. 本日の流れ ・リクルートのご紹介 ・デザイン組織のご紹介 ・リクルートの過去のあゆみ ・具体的な取り組み ・成果/課題/展望 ・まとめ

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© Recruit Co., Ltd. リクルートとは?

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© Recruit Co., Ltd. 人生のあらゆるシーンに寄り添って 数多くのサービスを提供している、 実は世界でも稀有な会社です。

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© Recruit Co., Ltd. 向き合うマーケット領域 集客支援 ライフイベント ライフスタイル 業務・経営支援 Air ビジネスツールズ …

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© Recruit Co., Ltd. フェーズ・規模 顧客・ユーザーの課題設定の 解像度を高めPMFを実現 プロダクト価値の定義を強化 マーケットの反応を見ながら ビジネスの筋を模索 0 → 1  LTVを向上させるためのUX進化  マーケティング・販促強化 中長期戦略に則りながら 顧客・ユーザー数を獲得 1 → 10  圧倒的な顧客数・ユーザー数を土台 に更なる利便性強化  ソリューションの提供の幅を広げる 国内最大級の地位を築き、 更なる進化を推進する 10 → 100

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© Recruit Co., Ltd. ビジネスモデル リボンモデル SaaSビジネス 2000年代までは主にリボンモデルというビジネス モデルを通じて価値提供してきました。 現在は、リボンモデルに加えてSaaSビジネスを展 開しています ✓利便性の向上 ✓満足度の向上 ✓業務債務の軽減 ✓生産性の向上 リクルート SaaS

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© Recruit Co., Ltd. リクルートの特徴 多様な 領域 多様な フェーズ ・規模 多様な ビジネス モデル

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© Recruit Co., Ltd. リクルートのデザイン組織について

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© Recruit Co., Ltd. プロダクトデザイン室 デザインマネジメントユニットがデザインを統括

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© Recruit Co., Ltd. 事 業 組 織 事 業 組 織 事業組織 事 業 組 織 事業組織 事 業 組 織 事業組織 事 業 組 織 事業組織 事 業 組 織 事業組織 事業組織 リクルートのデザインを統括する社内横断組織 機 能 組 織 デザインマネジメントユニット Air ビジネスツールズ … グループ グループ グループ グループ グループ グループ

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© Recruit Co., Ltd. デザインディレクター デザインを活用しプロダクトの価値を最大化していく役割 職種名

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© Recruit Co., Ltd. 14 ただ、決して順調だったわけではない。 過去のリクルートの歴史も紐解きながら、 経緯含めて説明したい。

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© Recruit Co., Ltd. リクルートの過去のあゆみ

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© Recruit Co., Ltd. 亀倉雄策さん ・リクルート社外取締役 ・デザインと経営の融合を標榜 日本のグラフィックデザイナー。日本グラフィックデザイナー協会 (JAGDA)初代会長。 代表作にフジテレビジョンの旧シンボルマーク(8マーク)や日本 電信電話(NTT)のマーク(ダイナミックループ)、TDKのロゴマ ーク、1964年東京オリンピックのポスター、サンケイアトムズ、ニ コンFおよびヤクルトスワローズのユニフォームがある。 出典:wikipedia

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© Recruit Co., Ltd. 初代リクルートロゴ 本社オフィス(当時)

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© Recruit Co., Ltd. デザイン誌『CREATION』発行

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© Recruit Co., Ltd. ギャラリー 運営

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© Recruit Co., Ltd. デザイン性の高い情報誌プロダクト/広告

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© Recruit Co., Ltd. 新規事業提案制度 圧倒的当事者意識 個を尊重する仕組み 個人の意志が尊重され、 ボトムアップで価値創造がしやすい環境 好奇心を新しい価値創造へ 目的志向で動くスタンス 自分らしい仕事を選択できる Will-Can-Mustシート 人材開発委員会 ミッショングレード制 キャリアウェブ制度 …

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© Recruit Co., Ltd. 狭義デザイン 広義デザイン 狭義から広義デザインまで、 幅広くデザインを活用するスタンスが DNAレベルで染み付いていた ・圧倒的 当事者意識 ・個を尊重する制度

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© Recruit Co., Ltd. 出典:https://issuu.com/dansk_design_center/docs/design-ladder_en

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© Recruit Co., Ltd. かつてリクルートはデザイン経営の先駆者だった かつてのリクルートの デザイン活用度合い

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© Recruit Co., Ltd. ただ、それが継続できたわけではなかった

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© Recruit Co., Ltd. 紙プロダクトの デジタル化 上場に伴う分社化 人の入れ替わり 時代の変遷と共にデザインガバナンス機能が低下 反面「広義なデザイン」はDNAとして継続

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© Recruit Co., Ltd. 最上位のDNAは残りつつも、中間段階が崩れた状態。 このままではDNAも劣化する懸念があった。 「広義デザインDNA」 新規事業提案制度、圧倒的当事者 意識、個の尊重など 数年前の リクルートの状態 かつての名残り

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© Recruit Co., Ltd. かつての理想のリバイバルを目指して、 デザイン推進活動を行っている 数年前の リクルートの状態

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© Recruit Co., Ltd. 具体的にやっていること全体像

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© Recruit Co., Ltd. 価値 貢献 信頼 獲得 ポジション/ 役割拡大 組織基盤 デザイン浸透 サイクル 組織基盤づくり デザインで価値貢献を行い、信頼を獲得し、ポ ジションや役割を拡大していくサイクルを回す サイクルを回していく際に、組織が破綻しない よう、各種制度の構築や採用/育成を促進する

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© Recruit Co., Ltd. デザイン浸透サイクル 組織基盤づくり 価値 貢献 信頼 獲得 ポジション/ 役割拡大 価値 貢献 信頼 獲得 ポジション/ 役割拡大 組織基盤 組織基盤 組織基盤 価値 貢献 信頼 獲得 ポジション/ 役割拡大

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© Recruit Co., Ltd. ・事業横断組織のため、多様な状況下での貢献が求められる ・杓子定規なデザイナー定義に固執すると信頼が得られない 課題 どうするか?

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© Recruit Co., Ltd. 特徴・ポイント① 不確実性で 役割や業務の難易度を定義 どんな役割でも内包できる柔軟性を持った定義 • 「業務不確実性」と「デザイン不確実性」の 2軸をかけ合わせて難易度を判定 • 業務不確実性は、ビジネス・技術・プロダク ト戦略等に起因する業務推進上の不確実性 • デザイン不確実性は、ユーザー・体験・デザ イントレンド等に起因するデザイン推進上の 不確実性 業務不確実性 デザイン 不確実性 UIデザインが得意な Aさん グラフィックが強みの Bさん リサーチが強みの Cさん 合意形成が得意なD さん 役割難易度・高

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© Recruit Co., Ltd. ボトムアップ・目的志向で価値を生み出す リクルートのDNAを体現した組織フィロソフィー 特徴・ポイント② 組織フィロソフィー 「動かすデザイン」 の設定 リクルートのデザイン職能としてのスタンスを 言語化したもの。 今までも根底に流れていたものだが、改めて言 語化したことで、内省にもつながった。

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© Recruit Co., Ltd. 結果、多様だが同じスタンスを持つ メンバーの拡大と定着によって、 リクルートを体現する 共通するスタンス 得られたもの 様々な事業状況に 対応できる人材多様性

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© Recruit Co., Ltd. デザインを浸透させていく動きを ボトムアップで推進することができている 価値 貢献 信頼 獲得 ポジション/ 役割拡大 価値 貢献 信頼 獲得 ポジション/ 役割拡大 価値 貢献 信頼 獲得 ポジション/ 役割拡大 組織基盤 組織基盤 組織基盤

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© Recruit Co., Ltd. 具体的な業務

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© Recruit Co., Ltd. デザインディレクター デザインを活用しプロダクトの価値を最大化していく役割 職種名

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© Recruit Co., Ltd. 39 デザインディレクター3つの役割 不確実性の高い状況において、プロト タイピングを行いながら早期に価値検 証サイクルを回し、プロダクトの立ち 上げや事業変革をデザインドリブンで 牽引する。 デザインドリブンで 事業を変革 ユーザー観点が特に重視される成長フ ェーズのプロダクトにおいて、ユーザ ーインサイトを捉え、複雑なユースケ ースに最適なUI/UXデザインを提案す る役割を担う。 ユーザーへの 提供価値最大化 成熟フェーズの大規模プロダクトにおい て複数案件やサブプロダクト等を横断し、 デザインの価値を事業に翻訳。全体のデ ザインを統括し、そのクオリティの担 保・向上推進を担う。 事業に合った デザイン コンサルティング フェーズ、サイズ、ビジネスモデルの違いなど、 事業状況によって役割が変わる

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© Recruit Co., Ltd. ①デザインドリブンで変革を牽引 未来の理想像を 具現化する 検討の初期段階で理想像を具現化し 組織全体で共有することで議論を前進させる。 デザインの力がビジネスを動かすドライバーに

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© Recruit Co., Ltd. 戦略に沿ってコンセプトを立て プロダクトの未来像をデザイナーが描く 戦略実現の核となるコンセプトを策定し 最終型をプロトタイピングして全員に共有 未来像から実現可能性を逆算して プロダクト進化もデザイン

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© Recruit Co., Ltd. 戦略を体現するUXをデザイナーが創造し 事業推進のスピードを上げる プロデューサー これやりたい! 実現するには何が必要!? 事業部長 戦略で描いた時よりも 10倍ユーザーが喜びそう! これでGOで!! エンジニア これ実現するために あのデータ使えますよ! PdM 戦略会議リリースして 要件定義進めますね!

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© Recruit Co., Ltd. ②ユーザーへの提供価値を最大化 デザイナーが直接現場で一次情報を取得し、開発 に取り込む。ユーザーインサイトとプロダクトを 結びつけることで、提供価値を最大化する。 ユーザーインサイトと プロダクトを結びつける

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© Recruit Co., Ltd. 現場にデザイナーが直接リサーチ、 インサイトを捉え、素早くプロダクトにフィードバック 直接現場でユーザーリサーチを行い、 仮説検証・課題抽出 インサイトをチームにフィードバックし、 最適な形にプロダクトを修正する 対象店舗抽出 インサイト抽出 開発・デザイン要件の修正 調査設計 検証調査

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© Recruit Co., Ltd. デザイナーが直接ユーザーインサイトを捉えることで、 本質的な価値をプロダクトに組み込む たくさんあった要求仮説から、本当に必要なユーザーインサイトを捉えた シンプルな画面設計に落とし込むことに成功 仮説A 仮説 仮説 仮説 仮説 仮説

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© Recruit Co., Ltd. ③事業に合ったデザインコンサルティング 事業状況を見定めて最適なデザイン活用のあり方を提示。 デザインの価値を翻訳することで、 事業理解を獲得し、デザインの活用範囲を拡張する。 デザイン価値を 翻訳して提示する

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© Recruit Co., Ltd. 事業状況を理解し、デザインを活用した際の価値を翻訳 全体最適な活用策を提示する 事業毀損や開発効果も加味した ゴール設定・効果測定 開発実現性を考慮した デザインシステム構築

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© Recruit Co., Ltd. 事業に合ったデザインの価値を翻訳して伝えることで デザインの活躍範囲を拡張していく 競合優位性 マーケットシェア ブランド戦略 デザイン文化 デザインリソース デザイン浸透度 顧客ニーズ パートナーシップ クライアントニーズ 開発体制 開発プロセス 技術要素 対応チャネル プロダクトフェーズ 事業KPI 事業ごとに変動する要素

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© Recruit Co., Ltd. 49 デザインディレクター3つの役割 不確実性の高い状況において、プロト タイピングを行いながら早期に価値検 証サイクルを回し、プロダクトの立ち 上げや事業変革をデザインドリブンで 牽引する。 デザインドリブンで 事業を変革 ユーザー観点が特に重視される成長フ ェーズのプロダクトにおいて、ユーザ ーインサイトを捉え、複雑なユースケ ースに最適なUI/UXデザインを提案す る役割を担う。 ユーザーへの 提供価値最大化 成熟フェーズの大規模プロダクトにおい て複数案件やサブプロダクト等を横断し、 デザインの価値を事業に翻訳。全体のデ ザインを統括し、そのクオリティの担 保・向上推進を担う。 事業に合った デザイン コンサルティング フェーズ、サイズ、ビジネスモデルの違いなど、 事業状況によって役割が変わる

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© Recruit Co., Ltd. 活動の成果・今後の展望

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© Recruit Co., Ltd. 組織設立当初 2020年頃 2023年現在 10名未満 約70名 約30名 事業ニーズ対応がメイン プロダクト戦略レイヤー への関与 デザインレイヤー発信で の価値創出 1グループ 10グループ以上 5グループ 順調に規模を拡大しつつ、関与範囲を広げつつある

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© Recruit Co., Ltd. 目下の課題 デザインリテラシー向上に向けた啓発 「事業領域ごとのデザインへの理解の違い」 デザイン浸透サイクルを回しやすくする工夫が必要

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© Recruit Co., Ltd. 2023年現在 約70名 プロダクト戦略レイヤー への関与 10グループ以上 デザイン啓発の動きを経て、より高次な領域を目指す 今後 100名以上 デザイン担当役員 の擁立 ×デザイン 啓発活動 Design デザイン 浸透サイクル × 組織基盤づくり

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© Recruit Co., Ltd. リクルートのデザインリーダーシップとは まとめ

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© Recruit Co., Ltd. リクルートにおけるデザインリーダーシップとはなんだったのか 個の多様性や意志を尊重し、 目的志向で価値を生み、 デザインの役割を広げていくこと 「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」 Rのボトムアップ文化に合うデザインのスタイル

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© Recruit Co., Ltd. ポイント 「企業風土に合致するデザインスタイルの模索」 個の意志や多様性を重んじる 柔軟な職種定義 目的志向・問題解決スタンス ボトムアップな浸透プロセス 業務不確実性 デザイン 不確実性 UIデザインが得意な Aさん グラフィックが強みの Bさん リサーチが強みの Cさん 合意形成が得意なDさん 価値 貢献 信頼 獲得 ポジション/ 役割拡大 価値 貢献 信頼 獲得 ポジション/ 役割拡大 価値 貢献 信頼 獲得 ポジション/ 役割拡大 組織基盤 組織基盤 組織基盤

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© Recruit Co., Ltd. リクルートにおける悪い例 デザイナーはこうあるべき! ガチガチの職種定義 風土に合わないスタイルは、 水と油のようにフィットせず、 おそらくすぐに瓦解したはず ○○デザイン手法を用いま す!手段先行スタンス トップダウンで 外部CDO招聘! 多様性がなく潰しが効かない。 多様な事業ニーズに応えられ ず、価値貢献が難しい。 目的と手段の倒錯が起き、 うまく事業に根付かず負債 だけ残して終了。 ボトムアップ文化の軽視、 メンバーモチベーション低下。

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© Recruit Co., Ltd. 大切なのは、企業の本質と合致する デザインのスタイルを探し出すこと それが結果、 企業の「デザインの文化」になる 文化は作るものではなく、結果として現れるもの

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© Recruit Co., Ltd. おわりに

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© Recruit Co., Ltd.

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© Recruit Co., Ltd. リクルートが変わると社会が変わる

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© Recruit Co., Ltd. 「デザインのリクルート」の実現に向けて、 亀倉さん時代の先を目指したい リクルートが変わると社会が変わる

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© Recruit Co., Ltd. ご清聴ありがとうございました!