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© 2025 UPSIDER.inc 現場を離れたCTOが再発見した 『マネジメントの原点』 〜ハンズオンと組織視点を行き来した1年の物語〜

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© 2025 UPSIDER.inc 赤沼 寛明 Hiroaki Akanuma) 株式会社UPSIDER 支払い.com事業部CTO x: @akanuma エムスリーやNubee Tokyoでの開発を経て、2015年にユニファ東京オフィスの立ち上げ時に参画。取締役 CTOとしてプロダクトデベロップメント本部を統括し、外国籍メンバーを含む多国籍チームを率いて複数の新 規プロダクトを立ち上げ。2025年4月よりUPSIDER「支払い.com」事業部CTO。

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© 2025 UPSIDER.inc 本日の問いかけ 「マネジメントを担う=現場から離れる」 ということ?

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 1 合理的な判断が生んだ「手触り感」の喪失 現場から離れていった 10年

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 1 10年間の役割変遷タイムライン 1年⽬ 唯⼀のフルコミット エンジニア (現場100%) 2年⽬ 取締役CTO就任 「今まで通りやる」 3年⽬ メンバーからの提案 で実装から離れる 5年⽬以降 PMからも離れる 組織‧経営に特化

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 1 実装を離れる決断 「マネジメントに専念しては?」 メンバーからの提案。 自分が実装タスクを持つとボトルネックになる現実を認め、開発実務を委ねる決断をした。 開発を任せられるチームができたという点はポジティブ それでも開発実務に携わり続けるべきだったのでは?

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 1 「離れること」の合理性 経営者としての成長 : CTOコミュニティでの学び、CFOによる経営管理の強化、コロナ禍の意思決定な ど、現場から離れた経験は無駄ではなかった。 組織の自走化 : 自分が関わらなくてもプロダクトが育ち、メンバーが経営と直接話せる体制ができたこと は、組織論としては正解だった。 リスク回避 : CTOが単一障害点になることを防ぎ、ガバナンスを効かせる経営判断としては合理的だっ た。

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 1 離れて感じた違和感 解像度の低下 現場に聞かないと、仕様も⼯数も 課題の核⼼もわからない。技術的 意思決定が現場頼みになった。 発信テーマの枯渇 技術的な実体験がなくなり、組織 論の類似テーマばかりに。⾃分発 信の価値が出せない焦燥感。 「仲介」の限界 経営と現場の情報を仲介している 感覚になり、経営での主張に「⾃ 分の⾔葉」としての⾃信が持てな かった。

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 1 「離れる合理性」と「失うもの」の天秤 得たもの(経営の視座) 失ったもの(⼿触り感) 意思決定 俯瞰的な予算‧組織判断 ファクトに基づいた主張の強度 プロダクト 事業戦略との整合性 仕様‧アーキテクチャの深い理解 信頼構築 「上から⾒守る」安⼼感 「横で戦う」実感を伴う信頼

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 2 ブランクを経ての未経験スタックへの挑戦と発見 現場に戻ったインパクト

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 2 UPSIDERでの現場復帰 なぜ現場に戻ったか 「手触りを取り戻したい。自分のキャリアとしてもこのままではジリ貧になるのでは」という危機感。プレイ ングマネージャーとして動ける「支払い.com」事業部CTOの道を選んだ。

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 2 「手を動かす」ことの再定義 事業軸のキャッチアップ Tech軸のキャッチアップ ⾦融‧Fintechドメインの基礎 ⽀払い.com事業戦略と予算 事業部全体の組織課題 アーキテクチャと実際のコード インフラ環境とデプロイプロセス 各メンバーのキャリア観とスタンス

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 2 CTO Task Map https://github.com/h-akanuma/cto_roles_and_tasks

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 2 最初にぶつかった壁 「自分が一番下手」の覚悟 業務で未経験の技術スタック(Kotlin, Ktor, Google Cloud etc.) 「CTOなのにこんなこともわからないの?」と思われる怖さ ・LLMを相棒にブランクを埋める ・臆せず初歩的な質問を繰り返す ・能力より「同じ目線で関わる意図」を先に示す

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 2 仕様の解像度 コードこそが最新のドキュメント 金融領域の複雑な分岐は、手を動かして初めて「実感」として理解できた。 これにより、Biz側とのディスカッションでもメンバーに聞かずに自信を持って答えられる範囲が激増した。

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 2 信頼の構築 「横で一緒に戦う」信頼 一緒に開発することでメンバーのスキル・負荷・スタンスの解像度が上がった。 アサインや評価に実感が伴い、マネジメントの質が向上。

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 2 戻ってみてわかった 3つのこと 解像度は手触りから 情報のインプットと体験は別物。 ⼿触りがあって初めて「使える知 識」になる。 信頼は同じ土俵から 「上から⾒守る」信頼と「横で戦 う」信頼は質が違う。意図を先に ⽰す重要性。 整理と体験の差 タスクマップで網羅的に整理して いても、現場に⼊らなければ活か せなかった。

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 3 「仲介」から「翻訳」へ:CTO/EMの真価 行き来の中で見えたもの

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 3 「行き来」の実態と役割のバランス 意識的な時間設計 実装に寄りたい気持ちを抑えつつ、CTOタスクマップを使いながら全体のバランスを管理。 前職の「固執」や「放任」ではない、動的な最適化へ。

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 3 現場感から経営に貢献できる価値 技術理解が判断を加速する 障害対応: 初動調査は自分で、途中から指揮へ。切り替えのタイミングを的確に判断。 採用: 現場の実態を説得力を持って語れる。リアリティのある回答。 Biz連携: 現場の受け止め方を予測し、技術的妥当性をその場で判断。

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 3 経営目線から現場に貢献できる価値 アウトカム視点の注入 優先順位: 事業への貢献度をベースに、やる/やらないをトップダウンで判断。 意図の伝達: 経営の意図をメンバーが納得できる言葉で現場へ落とし込む。 全体最適: 単なる技術追求ではない、事業成長のための技術選定をリード。

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 3 「翻訳者」としての真価 仲介ではなく翻訳を 情報は右から左へ流すだけ(仲介)では不十分。 両方の文脈を理解し、相手が理解できる形へ変換する(翻訳)ことがCTO/EMの価値。 両方に足を置いているからこそ、この変換は可能になる。

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 3 Before vs After 前職後半(離れていた頃) 経営100% / 現場感覚 0% 現場に聞かないとわからない。⾃信のない主張。 発信テーマの枯渇。情報の「仲介」者。 UPSIDER(現在) 現場と経営の「⾏き来」 ファクトベースの判断。メンバーへの意図信頼。 ⾃らの⼿による課題解決。価値を⽣む「翻訳」者。

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© 2025 UPSIDER.inc マネジメント ≠ 現場から離れること

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 4 再現性を生む3つのフレームワーク 再発見した 3つの原点

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 4 手触り感 情報の3段階 1. 報告ベース: 伝聞による抽象的な把握 2. 知識整理: タスクマップ等による構造理解 3. 実体験: 自ら触れることで得られる文脈理解 意思決定の解像度

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 4 同じ土俵 「意図信頼」の先行構築 パラシュート人事において、能力信頼を示すには時間がかかる。だか らこそ、現場にどっぷり入る「姿勢」で、 本気で関わっているという意図を先に伝える。 信頼構築の起点

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 4 任せる≠離れる セットで考えない 「任せる」=「現場からいなくなる」ではない。 信頼して任せながらも、自ら現場に関与し続けることは 可能であり、むしろ理想的なマネジメントである。 権限委譲の再考

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 4 関与と権限委譲のマトリクス 現場関与: 低 現場関与: ⾼ 権限移譲: ⾼ 放任 ⽬指すべき姿 権限移譲: 低 独裁 過⼲渉(マイクロマネジメント)

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 4 明日から現場に入ってみるなら 例 1 週1回のペアプロ / モブプロに参 加してみる。現場の空気と技術ス タックを感じる。 例 2 ⼩さなタスク(リファクタや軽微 なバグ)を1つ⾃分で完結させて みる。 例 3 1スプリント、チームメンバーと して参加する。LLMを使い倒せば ハードルは低い。

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© 2025 UPSIDER.inc CHAPTER 4 注意と心構え 「現場を奪う」にならない: 自分がボトルネックになったり、メンバーの成長機会を奪わないよう、意識的に任せる。 グラデーションを認める: 現場への入り方は人それぞれで良い。ICとマネジメントは二項対立ではなく、 事業にどう貢献するかのバランス。 「自分が一番下手」でいる: CTOの看板を捨て、一人の開発者として敬意を持って関わる。

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© 2025 UPSIDER.inc 規模が大きくなれば離れざるを得ないかもしれない。 それでも、今の私にとっての最適解として。 マネジメントの原点は 現場にあった