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Social Issues
社会課題を多面的に捉え、
ひとつの解決方法が
ほかの課題も解決するような
マルチなインパクトを創出
私たちが今、特に力を
入れているのはこの 3 つです
「廃棄物」
「石油依存」
「資源不足」
循環型社会の実現が
解決できる社会課題は多岐にわたります。
取り組む社会課題
パーパスの章でご紹介した通り、私たちは、“Fermenting a
Renewable Society” の実現に向けて、未利用資源に新たな価値
を見出し、再生
・
循環する社会を構築することを目指しています。
単に未利用資源を取り扱うベンダーとしてではなく、産業を横断
する基盤技術やプラットフォームを展開することを視野に入れ、
活動を進めています。そのため、特定の課題のみに焦点を当てる
のではなく、複雑に絡み合う社会課題を多面的に捉え、あるひと
つの解決方法がほかの課題も解決するような、マルチなインパク
トを生み出すことがファーメンステーションの事業の特徴のひと
つです。特に、廃棄物を未利用資源と捉え、発酵アップサイクル
というアプローチで課題に取り組むことで、石油依存や資源不足
の課題解決にも貢献できると考えています。
まず、廃棄物の課題についてです。大量生産、大量廃棄が前提と
なっている現在の社会では、本来活用できるはずの多くの未利用
資源が、産業廃棄物や家庭ごみとして焼却や埋め立て処理されて
おり、二酸化炭素の排出や土壌の劣化などの環境問題を引き起こ
しています。未利用資源の活用については、肥料化や家畜飼料化
など、
一部の活用が進んでいるものの、
さらなる拡大が急務となっ
ています。
ファーメンステーションは、特に食品廃棄物の削減に注力してい
ます。UNEP(国連環境計画)の推計によると、食品廃棄物は世
界の食料生産量の 3 分の 1 を占めるとされ、また、世界で排出さ
れる温室効果ガスのうち 8% から 10% が食品廃棄物に起因する
とされています。世界各国が SDGs に基づき、2030 年までの食
品廃棄物削減目標を掲げていることからも、この問題がグローバ
ルな共通課題であることが分かります。日本においても、農林水
産省の推計では、
2021年度の食品廃棄物は2,402万トンにのぼり、
そのうち 732 万トンが一般家庭から、1,670 万トンが主に食品製
造過程で発生しています。この食品製造過程で発生する廃棄物の
約 8 割は再生利用されていますが、そのうち 9 割は飼料や肥料と
してサイクルされるにとどまっています。
ファーメンステーションでは、食品廃棄物をより高付加価値な原
料や商品へと生まれ変わらせるアップサイクルに注力していま
す。アップサイクルにより、未利用資源を新たな機能性原料とし
て活用し、
資源の浪費と廃棄を同時に防ぐことが可能になります。
さらに、食品廃棄物に限らず、森林の剪定・伐採後に発生する木
材、畑の剪定・収穫後に出る茎や葉、穀物の脱穀時に発生する籾
殻、バイオマスなどの一次産業における産業廃棄物、工業製品の
製造過程で発生する副産物の活用にも取り組んでいます。
廃棄物削減のインパクトは、石油依存や資源不足の課題解決にも
及びます。ファーメンステーションでは、近年注目を集める「バ
イオものづくり」のアップサイクル技術を活用し、石油などの化
石資源を生物由来の原料に置き換えるとともに、微生物の力を活
用して有用化合物を生み出す持続可能な製造プロセスを確立して
います。OECD の推計によれば、このバイオものづくり分野の市
場規模は 2030 年にグローバルで約 200 兆円に達するとされてい
ます。未利用資源由来のアップサイクル原料を活用することで、
石油の使用削減と脱炭素社会の実現に貢献することができます。
さらに、日本ではバイオマスの生産量が限られているため、バイ
オものづくりの拡大に伴い資源不足の問題が懸念されています。
加えて、海外からの原料調達においては、原材料の透明性確保も
課題の一つです。こうした状況の中で、食品廃棄物などの未利用
資源を活用することは、バイオものづくりを持続可能な形で普及
させる有効なアプローチであると考えています。国内で資源を循
環させることで、原材料の透明性確保や食の安全保障にも寄与す
ることができます。
これらの課題を解決した先に私たちが目指しているのは、単に廃
棄物を減らすだけではなく、資源を「使い、捨てる」という一方
通行型の消費のあり方から、新たなアップサイクルエコシステム
へと移行することです。未利用資源を最大限に活かし、資源の価
値を循環させることで、持続可能なバイオものづくりの新たな基
盤を築いていきます。これからも多様なステークホルダーと協力
しながら、1 人 (1 社 ) では実現不可能な社会課題の解決と新たな
エコシステムの構築を目指していきます。
020p
019p Fermenting a Renewable Society Impact report 2024