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FERMENSTATION IMPACT REPORT 2025 Fermenstation is a biotech startup advancing the circular economy by upcycling unused resources through proprietary fermentation technology.

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Fermenting a Renewable Society 発 酵で 楽しい 社 会 を! 02 IMPACT REPORT 2025 03

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Introduction はじめに ファーメンステーションのインパク トレポー トをご覧いただき、 ありがと うございます。 本レポー トも4 年目となり、多くの方に読んでいただき、ご意見 や対話の機会をいただいています。インパク トレポー トを発行 する企業も増え、同じ志を持つ仲間が少しずつ広がっている ことを実感する一年でもありま した。 2025年は、会社と して選択と集中を進め、自分たちの役割 を見つめ直す年でした。 食品領域への注力をより明確にし、 研究開発と して積み重ねてきた技術が実装に移行する中で、 事業のあり方も変化してきています。そう した変化の中で、イ ンパク トの捉え方が 広がってきました。 関わる領 域が 増え、 考えるべきことも増えていきま した。 社内でもインパク トに対する向き合い方が少しずつ変わってき ま した。 対話を重ねながら、試行錯誤を続けてきた結果、イ ンパク トは組織全体で共通の視点と して考え続けるものへと 変わり始めています。 社内にインパク トチームが立ち上がり、 社外との対話も増えています。また、社外のさまざまな現場 での対話を通じて、私たちの取り組みがより広い文脈の中に あることを実感する機会も増えてきました。 創業当初は直感 的に大切にしていたものが、今は組織と して言葉にし、考え 続けるテーマになってきていると感じています。 本レポー トで は、そう した過程や模索を、できるだけ率直に記録しま した。 インパク トとどう向き合っていくかを考えるうえでの、一つの事 例と して見ていただけたら幸いです。こう した対話を通じて仲 間が増え、事業性と社会性の両立を目指す取り組みがさ らに 広がっていきますように。 酒井 里奈 株式会社ファーメ ンステーショ ン 代表取締役 国際基督教大学 (ICU) を卒業後、 富士銀行、 ドイツ証券など金融系複数社に勤務。その後、 発酵技術に興味を持ち、東京農業大学応用 生物科学部醸造科学科に入学、2009 年 3 月 卒業。 同年、株式会社ファーメ ンステーション を創業し代表取締役就任(現任) 。 “ 皆さんと一緒に 事業性と社会性の両立が 当たり前の世の中を作りたい ” F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y IMPACT REPORT 2025 05 04 はじめに

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「食べ物が大量にムダになる世の中はおかしいのでは」という 疑問を抱えながら、なんとなく見ていたテレビで紹介されてい た東京農業大学(東京農大)の「 生ゴミをエネルギーに変 える」という研究テーマを見たことが契機となり、東京農大 農学部醸造科学科の受験を決意し、発酵について学びま し た。 卒業と同時に、発酵技術を軸と し、未利用資源活用を ビジネスにするため、 ファーメ ンステーショ ンを 2009 年に創業。 創業時は、SDGs も採択前であり、サステナブルな素材自 体のニーズが少なかったことから、自社で製造した素材を使っ た化粧品などの販売からスター トし、未利用資源を活用する 事例を見せることで、サステナブルな素材の市場を作ってきま した。 サステナビリティの追求に加え、未利用資源から機能性のあ る素材を作る技術の確立と、その先にある資源循環型社会の 実現に向けた、パイオニアの自負を持って走り続けています。 ファーメンステーションは、世の中にあふれる「未利用資源」 を活用し、資源が循環する社会を作ること、事業性と社会性 を両立するビジネスを確立することを目指して創業されま した。 代表の酒井は、大学を卒業後、都市銀行に入社。 3 年目 に出向した国際交流基金日米センターで、社会課題の解決 に向き合う人々と出会ったことが転機となり、 「世の中の課題 をビジネスで解決していきたい」と考えるようになりま した。 その後、銀行でエネルギーやインフラなどのプロジェク トファイ ナンスを担当、環境への関心を強めますが、環境に配慮した プロジェク トに関与することはできませんでした。その後転職し た外資系証券会社でニューヨークに出張。 ファス トフー ドチェーンでチーズバーガーを注文、1 個しか頼んで いないものが 2 個出てきたので断ったところ、 「食べないなら捨 てて」と言われたことに猛烈な違和感を覚え、帰国しま した。 創業ストーリー F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y History 創業ストーリー 009p Fermenting a Renewable Society 世の中の課題を ビジネスで解決していきたい。 「食べないなら捨てて」と 言われたことに猛烈な違和感を覚えた。 「生ゴミをエネルギーに変える」 という研究テーマを見たことがきっかけに。 「未利用資源から素材を作る技術の確立」 と、 「資源循環型社会の実現」 。 IMPACT REPORT 2025 07 06

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パーパス さ らに私たちの事業の根幹は、すべての未利用資源排出者や それを有効活用したい企業、地域、行政、インパク トコミュニ ティなど、国内外のさまざまなステークホルダーとの関わりにあ ります。社会と幅広い接点を持っていることはファーメ ンステー ションの特長でもあり、社会の担い手と してコミュニティの視 点を持ち続けるという意思を込めて“Society” という言葉を 使っています。 ファーメ ンステーション(FERMENSTATION)という社名は 英 語の発 酵(fermentation)と駅(station)を掛け合わ せた造語です。 発酵技術によって未利用資源を活用すること で、様々な資源が姿を変える。また、通過すると必ずいいこ とがある。そんな「駅」のような存在になりたいという想いが 込められています。 発酵における微生物のように、 社会に対してポジティブに作用する 存在でありたい 微生物の作用によって、有機物が人間にとって有益なものに 変化する現象を指す発酵(Fermentation) は、当社の原点 であり、最も得意とする技術です。 同時に、ファーメ ンステー ションという会社のあり方を象徴する現象でもあります。 私た ちは発酵における微生物のように、社会に対してポジティ ブに 作用する存在でありたいと考えます。 “Fermenting” という現 在進行形の言葉を使うことで、やり続ける、動き続けるという 意志や想いを込めています。 また、私たちは事業や社会が常に生まれ変わり、より良く変化 し続けることが大切だと考えています。 そのために Sustainable (持続可能)ではなく、 “ Renewable(再生可能) ” という言 葉を選びま した。 「再生」の過程には様々な困難があり ますが、 それらを乗り越えて新たな価値を生み、社会や事業を更新して いく ことこそが、当社の事業の醍醐味であると考えています。 未利用資源に価値が見出され、 発酵技術によってより価値あるものに生まれ変わることで、再生・循環する社会。 未利用資源をキーとした新しい資源活用のあり方、 資源廃棄という概念をなくし、 資源循環をベースとした世の中を構築することを目指して、 パーパスを Fermenting a Renewable Society と制定しました。 自然環境や社会、関係する全てのステークホルダーが、 ファーメンステーションという 「駅」を通過することで、前より良くなり続ける。 そんなあり方を目指しています。 “ Fermenting a Renewable Society ” パーパス F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y Purpose パーパス IMPACT REPORT 2025 09 08

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目次 目次 Contents はじめに 創業ストーリー パーパス 特別対談 取り扱う社会課題 課題解決アプローチ 事業について 事業のハイライト アップサイクル技術の進化について 組織について 数字で見る2025 年間トピックス ステークホルダーから見たファーメンステーション コラム インパクト推進の全体像 B Corp更新 IMMの進捗 今後について おわりに 04 06 08 12 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 10 IMPACT REPORT 2025 11

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guest profile 鳥居 希 2015 年、バリューブックス(長野県上田市) 入社。インク ルーシブでリ ジェネラティ ブな経済を目指す B Corp™ 認証取 得を推進。その一環と して 『B Corp ハン ドブッ ク』 を監訳し、 2022 年6月出版。2024 年 3月、B Lab日本公式パー トナー B Market Builder Japan を設立・共同代表に。同年7月、 バリ ューブッ クス代表取締役に就任し、ジェ ンダーギャ ッ プ解消 にも取り組む。同年10月、バリューブッ クスが B Corp 認証 を取得。 特別対談 Special Talk Session 特別対談 Nozomi Torii Lina Sakai 鳥居 希 × 酒井 里奈 「 不 完 全さ」 を引き受 けながら、 事 業を育てるということ 事業の規模が大きくなると、顕在化することがある、社 会性と事業性の間に生じる葛藤。 乗り越えるには、ど う すれば良いのでしょ うか。そんな問いに向き合っていただ いたのは、 ファーメ ンステーションと同じ B Corp メ ンバー と して活動をともにしてきた、バリューブックスの代表取 締役であり、B Market Builder Japan* の共同代表の 鳥居希さん。 2024 年に代表取締役に就任してから初 めてゆっく りとお話しする機会でもあったことから、近況 の報告を しながら、お互いに知りたいことを改めて聞き合 う機会になりま した。 酒井:考え方自体は今もまったく変わり ません。ただ、両立でき ると「言う」こと と、実際に両立させながら事業をスケールさせ ることの間には、大きな隔たりがある。その現実を、ここ数年 で強く実感しています。 鳥居:確かに、B Corp 認証を取得している企業という と、社 会性と事業成長を完璧に両立させていて、ステークホルダー全 員がハッ ピー、というイ メージを持たれがちですよね。 酒井:ま さにそ うです。でも実情は決してそんなことはなく て、さ まざまな矛盾を包含しながら、折り合いをつけたり、説明や説 得を重ねたりする必要がある。きれいな状態で進められることば かりではあり ません。 「完全に不完全である」 という選択 鳥居:仮に B Corp の評価項目をすべて満たす企業があったと しても、 その企業が 「完璧」 かといえば、 そ うではないと思います。 B Corp の基準自体も完璧なものではあり ませんし、 ベネフィ ッ ト ・ コーポレーショ ンという法人形態にも欠点はあると思います。た だ、より良い存在になるためのツールと して使っていく、という 姿勢が大事なのではないで しょ うか。 酒井:何が足りていないのかに気づく ためのきっかけ、というこ とですよね。 鳥居:はい。 完璧ではないということがわかる、その状態こそ が重要だと思っています。その意味で、バリューブッ クスは「完 全に不完全である」と堂々と言っています。 酒井:矛盾を否定してしま う と、具体的なアクショ ンが取れなく なって しまいますよね。 スケールは、葛藤や緊張を伴う 鳥居:以前、岩手の工場にお邪魔したのはもう 3 年前になり ま すね。この数年で、国際的な賞の受賞や資金調達、事業領 域の拡張など、ファーメンステーションさんは大きく成長された 印象があります。一方で今日は、単なる成長の話というより も、 「この変化の中で、何が変わり、何が変わらなかったのか」を 伺いたいと思っています。 酒井:目に見える部分や定量的に語れる部分は、確かに大き く 変わりま した。 関わるメ ンバーも増え、食分野への進出など事 業領域も広がりま したし、拠点の数も増えています。ただ、振 り返ってみると、一番変わったのは事業への向き合い方かも し れません。 鳥居:向き合い方、という と。 酒井:自分で言うのもおかしいのですが、 「スター トアップら しく “賭ける”ようになった」と感じる場面が増えま した。 社会性と 事業性は両立できると考えてきま したが、事業をスケールさせる ということが、これほど多くの葛藤や緊張を伴う ものだとは、正 直、以前は十分に想像できていなかったと思います。 鳥居:事業と して、アクセルを踏み込むフェーズに入ったという ことですね。 酒井:また、社会性と事業性の両立に対するマイン ドセッ トも、 少し変化しているかも しれません。 鳥居:酒井さんといえば、創業当初から、その両立を掲げてこ られま したよね。 *  B Market Builder Japan (BMBJ) B Market Builder Japan は、 日本の B Corpと共にムーブメ ン トを主導し、 「インクルーシブかつ公平で公正な経済」を目指す B Lab の公式パー トナー です。 2024 年 3 月より新チーム体制のもと活動しています。 Text by Mari Minakuchi 12 IMPACT REPORT 2025 13

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鳥居:まさにそうです。 私が関心を持っているジェンダーギャッ プの領域でも同じことが言えます。DEI の観点で見ると、マイ ノ リティ性は性別だけで決まるものではありません。 「女性だけ を対象にしてよいのか」という問いをいただく こと も多いです。 酒井:私たちも、 「未利用資源だけを対象にするので良いのか」 「食べ物を食用以外に使うことは果たして良いのだろうか」と いうよ うな問いをいただく ことがあります。そんな時、鳥居さんは どのよ うに応えていますか。 鳥居:私自身は元々、ジェンダーギャ ップの改善に取り組むこと で、障がいの有無や性的指向など、属性に関係なく「組織の 中で声を上げにくい」と感じている人に良い影響があるのでは ないか、という仮説を持っていま した。そ して今、実際に組織 の代表と して実践する中で、その手応えも感じています。その こと をお話しすることが多いですね。 酒井:できていないことに目を向けるのは大事ですが、律するこ とばかり していると、身動きが取れな く なって しまいますよね。 鳥居:おっ しゃる通りです。不十分だからといって、不要だとい うことではない。 足りなさを認めた上で、できている部分をきち んと評価し、示していく こと も必要だと思っています。 酒井:社外に対しても、 社内に対してもですね。 イ ンパク トレポー トは、そのための手段の一つだと感じています。 鳥居:いく ら説明しても批判を受けることはあると思いますが、 結局は実例を積み重ねていく しかない。 売上や成長性を前面 に出すことが本意ではない場面もありますが、そう した指標で 語った方がよい局面があること も、実感しています。 「説得」 よりも価値をつくる 酒井:私個人の話になるのですが、伝え方に対する意識はこ こ数年でかなり変わりま した。 少し前までは、 「べき論」に陥っ ていた部分があったと思います。 鳥居:ユーザーに対しても、社会課題レベルでの共感やコミ ッ ト を求めていた、ということですね。 酒井:はい。 社会課題に向き合う姿勢は今も変わりませんし、 会社と しての熱量はむ しろ上がっています。ただ当時は、技術 やプロダク トの力が今ほど強く なかったこともあり、社会的意義 を前面に出さなければ手に取ってもらえないのではないか、とい う不安もあったのだと思います。 鳥居:ブラン ドの社会的意義に共感してく ださる方もいれば、も う少し即物的な価値が、手に取るきっかけになる方もいそうで すよね。 酒井:はい。 当たり前のことですが、私の正義を誰かに押し 付ける権利はありません。ファーメ ンステーショ ンという会社も、 私自身も、完璧からは程遠い存在です。 正論で説得しにいっ ても、共感されないことがあるのは当然のことだと思うよ うになり ま した。 振り返ると、当時はユーザーにとっての価値への想像 が足りず、少し頭でっかちになっていたのかも しれません。 鳥居:意識が変わった理由は何だったので しょ う。 酒井:技術力やプロダク トの独自性が磨かれてきたことが大きい ですね。意義を伝えること をやめたわけではありませんが、説明 にエネルギーを使うより も、事業そのもので価値を生むフェーズ に入ってきたと感じています。 鳥居:バリューブックスは、バックグラウン ドの異なる 7 名で構 成されています。 男女比は男性 4 名、女性 3 名。 会社法で 定められている取締役会のように業務執行の意思決定機関で はなく、独自に名付けて設置している会です。 必ずしも全員が 数字やビジネスに強いわけではな く、デザインや働く仲間たちの ケアに強みを持つメ ンバーもいて、社員の代表である、という 考え方がベースにあり ます。 酒 井:Representative ( 代 表 者 ) という考え方ですね。B Corp と も通じるところがあり ます。 鳥居:はい。B Corp 認証と関わる中で、その重要性を強く意 識するようになりま した。 私は B Corp ハン ドブック日本語版の 監訳にも関わったのですが、自社の役員構成が社員を代表して いないことに、矛盾を感じたんです。 当時は役員 5 名のうち、 女性は私ひと りで した。 酒井:社長に就任される前のお話ですね。 鳥居:はい。私自身は女性ではあり ますが、結婚も しておらず、 子どももいません。 家庭を持つスタッフの代表にはなりきれてい ないと感じ、子育てを しながらキャ リアを重ねている女性 2 名に 役員をお願いしま した。 酒井:ビジネスバックグラウン ドでないメ ンバーがいても、議論 に支障は出ないので しょ うか。 鳥居 : 実は、 役員会では人や組織に関する話を中心に しています。 酒井:それは、かなり思い切った判断ですね。 鳥居:役員会のテーマは「人」です。このような形にすること 鳥居:よく わかります。バリューブックスも古本流通事業を行っ ていますが、 「そもそも本を リユースする必要があるのか」といっ た根源的な問いすべてに向き合っていたら、前に進めません。 酒井:新しい考え方を万人に理解してもら うのは難しい。その 点は、割り切れるよ うになってきま した。 「正義の罠」 に陥らないために 鳥居:意見が違うこと自体は、とても健全なことだと思います。 無理に同じ方向を向かせる必要はありません。私自身が掲げて いる正義に違和感を持つ人がいても、不思議ではないと思って います。B Corp 認証にしても、手放しで称賛するのは危険。 それは「正義の罠」です。 酒井:なるほど。私自身は、ソーシャルインパク トへの意義を問 われると身構えて しま う タイプなので、今の言葉には非常にハッ と させられま した。 鳥居:例えば社会課題そのものに関心がない人と も対話を重ね ながら、一緒に大きなシステムを変えるためのアクショ ンに繋げ ることが、遠回りのよ うでイ ンパク トを生むための近道だと感じて います。 酒井:組織のメ ンバーについても、同じよ うに考えていますか。 鳥居 : はい。 事業が根ざす思想が大き く揺らがないこと を前提に、 目指す方向や志向が異なるメ ンバーと、ど う一緒にやっていく か を模索しています。 酒井:その考え方は、役員会 *1 のあり方にも表れているそ うで すね。 特別対談 14 IMPACT REPORT 2025 15

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で、 「利益と人」を天秤にかけずに、意思決定ができるように しています。役員というより、 「係」に近い存在かも しれません。 事業や数字の意思決定は、各事業部が責任を持つ形にしてい ます。 酒井:想像していた以上にラディカルなティール組織 *2 で、 驚いています。 鳥居:私自身にとっても大きなチャレンジで した。本当にお金の こと を把握しなく てよいのか、社長がお金を中心に考えなく て心 配されないか、という不安もありま した。それでも「人」を中心 に据えた意思決定を徹底したいと思っています。 酒井:なかなか真似ができる意思決定ではないと思いますが、 このようなところこそがバリューブックスさんの強さなのだと改め て感じますね。 鳥居:とはいえ、今の状態が完璧に全社員を代表できているか といえば、決してそうではありません。ただ、人の役割や能力 を測る基準を変えるということは少しずつ進んでいると思います。 会社の役員はビジネスに強く なければならないという固定概念を 取り払い、社員の代表であること を優先した役員構成です。 酒井: 「物差し」を変える、も し く は複数用意する、という ことで すよね。非常に共感します。ファーメ ンステーショ ンでは創業時 から、社会性と事業性の両立を目指すと言ってきま したが、同じ 社会性の中にも、環境、人権、文化や地域性など様々な尺度 があります。ですからすべてを追いかけたく なってしま う気持ちを ぐっと抑えて、現実と折り合いをつけること も非常に重要。自分 たちにとっての理想像を しっかり と描きながら、いかに長くやり続 けることができるかという意識を持ち続けたいと考えています。 鳥居:昨年亡く なった B Lab の共同創業者アン ドリュー・カッ ソイ氏が、2024 年にパリで行われたイベン トで「大聖堂を築 いた職人たちは、完成を見ることはないと知りながらも、美を信 じて技と道具を携え集った。 経済システムも同じ く私たち一人 ひとりが形づく るもの。 消費者・投資家・働き手と しての立場 を通じ、勇気と配慮をもって共に行動すれば、望む社会を築け る。 」と話していま した。 酒井:名言ですね ! 鳥居:B Corp は昨年認証企業数が一万社を超えま したが、そ れでも世界全体のビジネスの中ではほんのひと握り。 少数派で あることを伸び代と捉え、素晴ら しいポテンシャルを最大化して いけたらと考えています。 繰り返しになりますが、完璧ではない こと を理解しながら、改善し続けるというのがポイ ン トです。 酒井:自分たちのこと を信じながらも、視野を広く持ち、周囲と 関わりながらやり続けたい。そ う強く思いますね。 *1業務執行に関する最終決定権を持たない任意の会議体。 法定の意思決定 機関と しての役員会とは位置づけが異なるもの。 *2フレデリ ック・ラルー氏の著書『Reinventing Organizations』で提唱され た組織モデル。 階層的な管理や トップダウンの指示ではなく、従業員一人ひ と りが自律的に組織の目的達成に向けて意思決定し、行動する。 特別対談 16 IMPACT REPORT 2025 17

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F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y パーパスの章でご紹介した通り、私たちは、 “Fermenting a Renewable Society”の実 現に向けて、 未 利 用 資 源に新たな価値を見出し、再生・循環する社会を構築す ることを目指しています。 単に未利用資源を取り扱うベン ダーと してではなく、産業を横断する基盤技術やプラッ ト フォームを展開することを視野に入れ、事業活動を進めて います。そのため、特定の課題のみに焦点を当てるので はなく、複雑に絡み合う社会課題を多面的に捉え、ある ひとつの解決方法がほかの課題も解決するような、マルチ なインパク トを生み出すことがファーメンステーションの事 業の特長のひとつです。 特に、食品ロス、製造副産物、 規格外品などの食品廃棄物を未利用資源と捉え、複合 微生物発酵というアプローチで高付加価値な食品素材を 開発することで、石油依存や資源不足の課題解決にも貢 献できると考えています。 まず、廃棄物の課題についてです。 大量生産、大量廃 棄が前提となっている現代社会では、本来活用できるは ずの多くの未利用資源が、産業廃棄物や家庭ごみと して 焼 却や埋め立て処 分されており、 二 酸 化 炭 素の排出や 土壌の劣化などの環境問題を引き起こしています。 未利 用資源の活用については、肥料化や飼料化など、一部 のカスケー ド利用が進んでいるものの、さらなる拡大が急 務となっています。 循環型社会の実現が解決できる 社会課題は多岐に渡ります。 私たちが今、 特に力を入れているのは 「廃棄物」 「石油依存」 「資源不足」 の3つです。 Social Issues 取り扱う社会課題 取り扱う社会課題 当 社は、 特に食 品 廃 棄 物の高 付 加 価 値 化にフォーカス しています。 「 食 べるために 作ったものを捨てる」こと は、生産にかかったエネルギーや資源をすべて無駄にする だけでなく、廃棄プロセスでさらに環境汚染が進みます。 UNEP(国連環境計画)の推計 *1 によると、世界の食 品 廃 棄 物 *2 は生 産された食 料の 3 分の 1 を占めるとさ れ、排出される温室効果ガスのうち 8% から 10% が食品 廃棄物に起因するとされています。 世界各国が SDGs に 基づき、2030 年までの食品廃棄物削減目標を掲げてい ることからも、この問題がグローバルな共通課題であるこ とが分かります。日本においても、農林水産省の推計 *3 では、2022 年度の食品廃棄物は 2,232 万 t にのぼり、 そのうち 707 万 t が 一 般 家 庭から、1,525 万 t が 食 品 製造業を含む事業活動から発生しています。 特に、食品 製造過程で発生する廃棄物の約 8 割は再利用されていま すが、その 9 割以上は飼料や肥料と してリサイクルされる にとどまっています。また、本来食べられるのに捨てられて いる「 食 品ロス」*4 は、このうち約 472 万 t( 家 庭 系 236 万 t +事業系 236 万 t)と推計されています 。 また、世界的な人口増加が進む中、数億人が飢餓の状 態にある一方で、先進国では大量の食料が廃棄されてい ます。このように食料配分が不均衡であることや、食料 へのアクセスのしやすさが公正でないことも、食品廃棄の 根深い課題であると捉えています。 当社では、食品廃棄物をより高付加価値な食品原料や 化粧品原料へと生まれ変わらせるアップサイクルに注力し ています。アップサイクルにより、未利用資源を新たな機 能性原料と して活用することで、資源廃棄とバージン素材 の浪費を同時に防ぐことが可能になります。さ らに、食品 廃棄物に限らず、森林の剪定・伐採後に発生する木材、 畑の剪定・収穫後に出る茎や葉、穀物の精穀時に発生 する糠など、一次産業における産業廃棄物の活用も視野 に入れ、取り組んでいます。 廃棄物削減のインパク トは、石油依存や資源不足の課題 解決にも及びます。ファーメンステーションでは、 「バイオ ものづく り」において、原材料を石油などの化石資源から 生物由来の原料に置き換えるとともに、微生物の力を複 合的に活用して有用化合物を生み出す持続可能な製造プ ロセスを構築しています。マッキンゼーの研究機関 (MGI) の推計 *5 によれば、バイオものづく り(バイオエコノ ミー) の市場規模は、2030 年から 40 年頃にグローバルで約 200 兆 ~ 400 兆 円、 農 業・水 産・食 品 分 野で約 80 *1 UNEP「 食 品 廃 棄 指 標 報 告 2024」 参 照 https://www.unep. org/resources/publication/food-waste-index-report-2024 *2 ここでは、引用元である UNEP に合わせ、食品ロスと食品廃棄を国際 基準の考え方(サプライチェーン上のどこで消えたか)で示しています。 ◯ 食品ロス (Food Loss) : 約 13 〜 14% /上流(生産 ・ 輸送 ・ 加工) で消えるもの。 消費者の目に触れる前に消えるため 「損失 (Loss) 」 ◯ 食品廃棄(Food Waste) :約 19% /下流(小売・外食・家庭) で捨てられるもの。消費者の管理下に入った後に捨てられるため 「廃 棄(Waste) 」 *3 農林水産省「食品廃棄物等の利用状況等(令和 4 年度推計)<概 念 図> 」 参 照 https://www.env.go.jp/content/000321836. pdf *4 引用元である農林水産省 (食品リサイクル法) の定義による食品ロス (可 食部) 。 食品廃棄物全体のうち、 「本来食べられるのに捨てられたもの」 を指す。 *5 McKinsey Global Institute (MGI) “The Bio Revolution: Innovations transforming economies, societies, and our lives”https://www.mckinsey.com/industries/life-sciences/ our-insights/the-bio-revolution-innovations-transforming- economies-societies-and-our-lives 兆 〜 120 兆円に達すると予測されています。 未利用資 源由来の食品素材を活用することで、石油の使用削減と 脱炭素社会の実現に貢献することができます。 さ らに、日本ではバイオマスの生産量が限られているため、 バイオものづく りの拡大に伴い資源不足の問題が懸念さ れています。 加えて、 海 外からの原 料 調 達においては、 原材料のコス ト高や透明性確保も課題の一つです。こう した状況の中で、食品廃棄物などの未利用資源を活用す ることは、バイオものづく りを持続可能な形で普及させる 有効なアプローチであると考えています。 国内で資源を循 環させることで、原材料の透明性確保や食の安全保障に も寄与することができます。 これらの課題を解決した先に私たちが目指しているのは、 単に廃棄物を減らすだけではなく、資源を「使い、捨てる」 という一方通行型の消費のあり方から、新たな資源循環 型社会へと移行することです。 未利用資源を最大限に活 かし、資源の価値を循環させることで、持続可能なバイオ ものづく りの新たな基盤を築いていきます。これからも多 様なステークホルダーと協力しながら、1 人(1 社)では 実現不可能な社会課題の解決と新たなエコシステムの構 築を目指していきます。 18 IMPACT REPORT 2025 19

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パーパ 発酵の一般的な定義は、 「微生物の働きで有機物を分解し、 人間にとって有益な特定の物質を生成すること」です。一般 的になじみのある漬物やチーズなどの発酵食品や、ビールや 日本酒などの酒類、醤油や味噌などの調味料の製造に加え て、医薬品等や、家畜の糞尿等を活用した堆肥の製造過程 などにも、発酵技術が使われています。 また、合成生物学の進展により加速する「バイオものづく り」 において、発酵技術は食料システムを変革させる中核を担っ ています。バイオものづく り とは、バイオマスを原料に微生物 等の物質生産能力を活用する産業構造を指しますが、当社 ではこのプロセスを食品ロス(未利用資源)のアップサイク ルに応用しています。 食品製造過程で発生する食品ロス(未利用資源)は、栄養 価など食品と しての有用性が残存しているにもかかわらず、技 術的ハー ドルから、多くが飼料や肥料、あるいは廃棄物と し て処理され、価値を低減させていま した(ダウンサイクル、カ スケー ドの下降)当社では、独自の複合微生物発酵を適用 することで、これらの未利用資源から、発酵由来の旨味や香 味などの機能性成分を開発・製造しています。 これにより、廃棄コス トを削減するだけでなく、食品廃棄物を 高付加価値な食品素材へとアップサイクルし、再び食のサプ ライチェーン上位へ還流させる資源循環型社会の構築を目指 しています。 当社の発酵技術の特徴は、組成の異なる資源を、高機能の バイオ素材に転換できる、アップサイクル技術のプラッ トフォー ムです。 麹・酵母・細菌等の多様な微生物のライブラリー を保有し、様々な有機物に対して適切な技術や条件の組み 合わせを適用できるノウハウを構築しています。また、有機物 ごとに異なる発酵の最適化条件や、発酵による生産物のデ ザインを最短距離で特定するための技術プラッ トフォームを保 有。さ らに、自社工場による製造機能を持つことで、事業化 まで一気通貫で対応しています。 私たちは「発酵技術」で「未利用資源」を高付加価値な「機能性バイオ原料」にアップサイクルする 事業を展開しています。アップサイクルとは、廃棄物や副産物など、一度使われ、従来の仕組みの中 では廃棄されてきた資源を、様々なアイデアや手法で価値の高いプロダク トや素材に変換することです。 資源の再活用という意味では、 リユース(再利用)やリサイクル(再循環)と同じですが、 単なるカスケー ド利用ではなく、より価値を高めているところに違いがあります。当社では未利用バイオマスに関する豊 富なデータベースや、微生物ライブラリー、発酵法に関する知見・開発体制を保有しており、未利用資 源から主に食品向けの新しい原料を開発する独自のアップサイクルモデルの構築に挑戦しています。 F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y Approach 課題解決アプローチ 課題解決アプローチ ● 発酵技術 未 利 用資 源とは、有 効 活 用されずに廃 棄されていたり、 従来不要とされていた資源を指します。私たちが取り扱う のは、その中でも食品製 造のサプライチェーン上で食品 廃棄物として排出され、発酵技術が適用可能なものです。 例として、右記のようなものがあります。 単糖を含むもの さとうきび、果物、糖質の多い野菜、糖そのものなど ●一次産業の現場で、規格外等で廃棄される  果物や野菜 ●食品・飲料の製造工場で出る製造副産物 でんぷんを含むもの 穀物 (米、麦など) 、イモ類、 でんぷんそのものなど ●休耕田を再生して栽培したお米 ●規格外で食用にならない穀物やイモ類 ●食品工場や飲食の現場で出る余剰品 (ごはんなど) 繊維質 (セルロース) を含むもの 木、紙、繊維質の多い野菜など ●食品・飲料の製造工場で出る製造副産物   (果汁の搾りかす、ワインの搾りかすなど) ●有効に活用されていない伐採木・剪定枝 ●有効に活用されていない古紙やパルプ バイオ原料とは、植物由来バイオマスなどを用いて開発さ れる、生物由来の原料です。いまだに多くが 石油などの 化石資源に依存する素材を置き換えるために、様々な産 業を横断して注目を集めている領 域です。私たちが発 酵 技術を適用して作る原料は、食品向け原料(フレーバー、 呈味向上原料、機能性原料) 、プラントベースドフード向 け原料、植物由来エタノール、化 粧品向け発酵エキスな ど多岐に渡りますが、これらはすべてバイオ原料にあたり ます。 ● バイオ原料 ● 未利用資源 20 IMPACT REPORT 2025 21

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事業について F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y Business Overview 事業について 主に食品・飲料工場で排出される製造副産物から、食品 メーカーや化粧品ブラン ドなどのパー トナー企業が求める機 能を実現するバイオ原料を共同開発。製造受託や技術ラ イセンスまでを含め、開発から事業化まで一気通貫での協 業を行っています。また、フー ドロス削減や脱炭素、クリー ンラベルなどの社会的ニーズに応え、未利用資源アップ サイ クルの社会実装を推進しています。 ● 共同開発事業 ● 食品原料 未利用資源×発酵ならではの特長を活かし、風味やコクの増強・改善 に加え、美容やヘルスケア分野での機能性向上を実現する食品バイオ 原料を開発・製造しています。現在、乳製品、製菓、調味料など幅広 い用途に対応可能な発酵風味原料や、酒類・清涼飲料水向けのフレー バースピリ ッ ツの開発を進めています。 ● 化粧品原料 植物由来の発酵エタ ノールや発酵エキスを、 主に化粧品原料用途で製造 ・ 販売しています。環境にも配慮した製法で未利用資源をアッ プサイ クルし ており、サステナブルであると同時に、発酵由来の高い機能性を備えた 原料です。 ● 原料事業 未利用資源を活用するス トーリーと機能性にこだわりながら、環境に配 慮した商品開発に伴走します。 食品メーカーで出るフー ドロスからエタ ノールを製造し、衛生用品・化粧品・日用品の商品開発を行うなど、 コラボレーショ ン型での製造受託を行っています。その他、ナチュラル ・ オーガニッ ク処方の化粧品ブラン ドの立ち上げ、サステナブルなライフ スタイル雑貨の開発支援など を行っています。 ● OEM事業 未利用資源アップサイクルの価値を一般消費者に直接伝える手段と して、オーガニック米由来の発酵原料を使ったコスメ ブラン ドを展開。 サステナブルやアップサイクルの概念が浸透していない頃から重要な 役割を果た してきま したが、次のフェーズである食品・飲料の研究開 発に集中するため、多くの皆様に惜しまれつつ、本事業は 2025 年 を持って幕を下ろ しま した。 ● 自社ブランド事業 4 つの事業を支えるのは、東京ラボ(船橋市)での研究開発と、横 浜パイロッ トプラン ト(横浜市)でのスケールアップ実証と生産技術開 発、奥州ファク トリー(岩手県奥州市)における製造です。東京ラボ では、最先端のバイオものづく り をはじめ、新しい技術の開発や素材の 試作 ・ 試験など を進めます。横浜パイロッ トプラン トでは主にスケールアッ プの実証試験を実施。奥州市の製造拠点では、 これらの研究と連携し、 原料の製造など を行っています。 ● 研究開発・製造 ファーメンステーションでは、独自の未利用バイオマス データベース・微生物ライブラリー、複合微生物発酵 技術で、4 つの事業を展開しています。 2025 年は、 前期に参入した食品・飲料市場における 原料開発を本格化させ、共創事業だけでなく自社原料 のプロ トタイプ品を開発。 国内外の展示会で顧客評価 やプレマーケティングを行いました。 22 IMPACT REPORT 2025 23

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F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y Highlights 事業のハイライ ト 事業のハイライト 2025 年は、2024 年から方針と して掲げていた食品領 域への注力を、 事業活動と してより明確にした 1 年でした。 当社はこれまで、食品・飲料メーカーや化粧品メーカーな ど多様な企業と「 未利用資源×微生物発酵 」による共 同開発(共創)を進めてきま した。 以前は、その出口と してエタノールや化粧品向け原料と しての活用が多く を占 めていましたが、 技 術の進 展に伴い、 食 品・飲 料 向け 素材と しての実用化が進んでいます。その結果、2025 年においては事業共創に占める食品領域での活用が増 加し、具体的な案件と して過半数以上となりま した。 代表的な事例と して、2024 年 9月に上市された宝酒造 株式会社の「発酵蒸留サワー」にて、搾汁過程で生じ る柑橘の果皮などの未利用資源を当社技術で発酵・蒸 留した「果皮発酵スピリッツ」が採用されたことが挙げら れます。この採用は、当社の素材が RTD 飲料の付加 価値を高め、既存製品との差別化に寄与することを示し ています。これを皮切りに、実際の上市は今後になるも のの、現在も複数の食品・飲料向け素材の開発が進行 しています。 また、対象となる素材領域も拡大しています。 酒類用ア ルコールに加え、発酵由来の立体的で複雑な味を実現 する「フレーバー素材 」 、本物感のあるコクや旨味を付 与する「呈味(ていみ)調味素材」 、そ して将来的な食 料資源と して注目されている「プロテイン素材」など、多 様な食品テーマでの開発が進んでいます。 市場性の観点においても、消費者のクリーンラベル(添 加物等をなるべく使わないシンプルな原材料表示)への 要求、脱化学合成素材への転換、アップサイクル素材 のマーケッ ト拡大などが加速しており、未利用資源×微生 物発酵由来のナチュラルな素材であること、添加物では なく食品表記が可能な点、未利用資源/発酵由来なら ではの奥行きある味と香りなど、当社の強みへの確かな ニーズと追い風を感じています。 今後も、未利用資源を 有効活用するだけでなく、食品素材と しての機能や価値 を重視し、食の領域における資源循環の実装を進めてい きます。 食品領域へのフォーカス 〜未利用資源の価値を多様な食品素材として食卓へ〜 1 研究開発基盤と事業開発の連動をより強化した年となり ま した。 これまで当社は、主にパー トナー企業のニーズに合わせ、個 別の未利用資源を用いた共同開発や事業化を行ってきま し た。このプロセスを通じて、多種多様な未利用資源と微生物 の組み合わせに対応する技術開発や最適化のノウハウを蓄積 してきた結果、当社が優位性を持つ技術領域や独自性が改 めて明確になり ま した。 具体的には、技術パー トで解説している「複合微生物発酵 技術」や「発酵産物ライブラリー」の構築が挙げられます。 2025 年は、これらの技術基盤を活用し、従来の共創モデル に加え、自社研究に基づく独自原料の開発・展開へ向けた 動きを本格化させま した。2026年には複数の自社原料の上 市を計画しており、その準備と して、2025年は展示会への 出展や、試作段階のサンプルを用いた初期顧客へのヒアリ ン グや評価、上市に向けた事業計画の策定や体制の構築を実 施しま した。 これにより、共創を通じて培った、顧客ニーズを把握するマー グローバル展開を見据え、2025年は北米および欧州市場に おいて現地マーケティ ングと事業基盤の構築を進めま した。 米国市場においては、食品素材の展開に向けた準備と して、 主要なフー ド系展示会である「IFT FIRST」への出展や、 サンフランシスコでの独自イベン トの開催、現地の小売店舗 や家庭への訪問調査など、多角的なリサーチを実施しま した。 また、 MISTA、 Kitchen Town、 IndieBioといった現地のフー ドテック・エコシステムや、アップサイクルフー ド協会(UFA) への参画を通じてネッ トワークを拡大しま した。これらの活動 の結果、原料販売や共創に向けてサンプル評価に向けた複 数の契約を締結するなど、具体的なリー ド顧客の開拓が進ん でいます。 欧州市場においても、当社の取り組みは評価を得ま した。ラ グジュアリー ・ コングロマリ ッ トである Kering が日本で開催した 「Kering Generation Award Japan」 での 最 優 秀 賞 受 賞をはじめ、 フランスでのプログラム参加、 欧州の主要ソーシャ ルインパク トイベン ト「Change Now」 への登壇・出展を 行いま した。 さ らに、 スペイ ンの Basque Culinary Center ケッ ト側の知見と、競争優位性のある技術に基づく プロダク ト 側の強みが結びついてきています。 研究基盤の強化と事業 開発を有機的に連動させることで、市場ニーズに合致した素 材開発と社会実装を推進する大きな一歩を踏み出すことがで きま した。 (BCC)が 主 催するコンペティション「Culinary Action on the Road」 東京大会で優勝し、 スペイ ンで開催されたフー ドテッ クカンファレンス「FOOD 4 FUTURE」での登壇や、 現地シェフとのアプリケーショ ン検討など を実施しま した。 2025 年に実施したこれらの活動を足掛かりと して、海外市 場における事業展開の可能性を探索し、準備を進めていき ます。 研究基盤と事業開発の連動 〜独自技術とライブラリーに基づく 自社原料開発の推進〜 2 海外展開への布石 〜北米・欧州市場におけるプレマーケティングとエコシステムへの参画〜 3 24 IMPACT REPORT 2025 25

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アップサイクル技術の進化について 技術は、社会実装のフェーズへ 複合微生物発酵を核とした研究開発から、 事業と社会を支える技術基盤へ ファーメ ンステーショ ンはこれまで、未利用資源を価値ある 素材へと変換するための中核技術と して、複合微生物発酵 技術の研究開発を進めてきま した。単一の微生物に依存す るのではな く、複数の微生物が持つ代謝機能や相互作用 を活用することで、未利用資源が本来持つポテンシャルを 引き出し、立体的で奥行きのある香味や機能性を創出する。 この考え方は、私たちの研究活動を通じて磨かれてきた重 要な技術的基盤です。 この複合微生物発酵技術は、単なる研究テーマではありま せん。 原料特性の理解、発酵条件の設計、評価手法の 構築を含む総合的な技術体系と して蓄積されてきま した。そ の結果、発酵という現象を、研究者個人の経験や勘に依 存するものではなく、再現性をもって扱うための知見が社内 に蓄積され、事業展開を支える基盤となっています。 現在、この複合微生物発酵技術は、確実に社会実装の 段階に入っています。 農林水産省 SBIR フェーズ 3 事業は、これまで研究開発 してきた複合微生物発酵技術を、研究室内にとどめること なく、食品素材と して社会に実装するための取り組みと して 位置づけられています。 本事業は順調に進捗しており、そ の中で磨き上げてきた発酵制御技術や評価技術の一部は、 特徴的な香味プロファイルを有する米ヌカ由来の発酵素材 と して具体化しています。また、一部の素材は、研究段階 を超え、食品素材と して市場に供給することを前提と した上 市準備の最終段階にあり ます。 私たちの技術は、 「研究と して成立する技術」から、 「事業 と して社会に届けること を前提に設計された技術」へと明確 に進化しま した。 生産技術基盤の構築に向けた取り組み 複合微生物発酵技術を社会実装するためには、研究成果 を安定的に再現できる生産技術基盤が不可欠です。そのた め、研究・生産イ ンフラの整備を段階的に進めてきま した。 横浜市鶴見区に新設したラボはすでに稼働しており、研究 開発と生産技術開発をつなぐ中核拠点と して機能していま す。この拠点では、将来のスケールアップを見据えた発酵 条件の検証や、製造プロセス設計に向けた検討を進めてい ます。ラボレベルで得られた知見を、より実製造に近い条件 で検証することで、社会実装に向けた技術的課題を一つず つ整理しています。 あわせて、数百リ ッ トルスケールの通気攪拌型培養装置を 備えたパイロッ トプラン トの立ち上げ準備も進行しており、 2026 年春の本格稼働を予定しています。このパイロッ トプ ラン トは、ラボスケールで確立した複合微生物発酵条件を、 より実製造に近いスケールで検証・最適化し、将来の量産 や安定供給につなげる役割を担います。 このよ うな生産技術基盤の構築は、単にスケールアップのた Core Technology アップサイクル技術の進化について F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y めだけではあり ません。食品素材と して継続的に供給するため の再現性、品質の安定性、将来のコス ト構造までを見据えた 技術設計であり、事業と して成立させるための前提条件でもあ り ます。 研究・生産・品質保証を 一体で捉えるという考え方 未利用資源を原料とする発酵素材は、原料由来のばらつき が大き く、特に複合微生物発酵においては、微生物間の相 互作用や発酵挙動の違いが最終品質に影響を与えます。そ のため、優れた発酵技術だけでなく、再現性、安定性、安 全性、品質保証までを含めた設計が不可欠です。 私たちは、研究開発・生産技術開発・品質保証を分断され た機能と してではなく、一体の技術システムと して捉え直す取 り組みを進めています。 研究段階から製造・品質を見据えた 設計思想を持つことで、複合微生物発酵という柔軟で高度 な技術を、実用に耐える形で社会に実装する基盤を整えて います。 このような考え方は、短期的な効率や目先の成果を優先する ものではありません。むしろ、時間をかけて技術と事業の土 台を固めるための取り組みです。複合微生物発酵は、その自 由度の高さゆえに条件設定や評価の難易度も高くなります。 しかし、だからこそ研究段階から製造・品質を見据えた設計 思想を持つことが、将来的な事業拡大や外部パー トナーとの 共創において重要になり ます。 私たちは、 技術を 「特定の研究者が扱えるもの」ではな く、 「組 織と して再現し、継続的に発展させられるもの」と して確立す ることを重視しています。この姿勢そのものが、社会実装を 前提と した技術開発の一部であると考えています。 次世代の研究基盤としての 発酵産物ライブラリー 並行して私たちは、発酵産物ライ ブラリーの構築を進めていま す。 本ライブラリーは、未利用資源の種類、微生物の組み 合わせ、発酵条件、成分分析、官能評価といった情報を体 系的に整理・蓄積する取り組みです。 加えて、ヘルスケア関連の機能評価データの取得も本格的に 進めています。発酵産物から調製したサンプルを用い、細胞評 価系によるスクリーニングを行う ことで、中性脂肪蓄積抑制作 用などの機能性に関するデータを蓄積しています。これにより、 食品素材と しての香味価値に加え、機能性の観点から も発酵 産物を評価できる研究基盤が整いつつあり ます。 発酵産物ライブラリーの構築は、研究開発の効率化だけを 目的と したものではありません。 未利用資源や複合微生物発 酵という不確実性の高い領域において、どのような条件設定 や評価軸が有効であったのかを振り返り、次の研究や事業 判断に活かすための「組織の記憶」と しての役割も担って います。 これにより、個別案件ごとに蓄積されてきた知見を組織全体 で共有し、研究テーマの立ち上げや共創検討の初期段階か ら、より解像度の高い議論が可能になります。 発酵産物ライ ブラリーは、研究者個人の経験に依存していた技術を、チー ムと して磨き続けるための研究基盤でもあります。また、取得 された網羅的なデータについては、将来的に機械学習や AI を活用した解析・活用を行う構想も描いています。 環境インパク トを見据えた技術開発 東京大学との LCA 共同研究 技術を社会に実装する う えで、 私たちは性能や機能だけでな く、 環境負荷を含めた視点も重要だと考えています。その一環と し て、東京大学と連携し、未利用資源由来の発酵素材を対象 と した LCA(ライフサイクルアセスメ ン ト)の共同研究を進め ています。 原料調達から製造プロセスに至るまでの環境影響 を定量的に評価し、将来的な量産や社会実装を見据えた技 術開発に活かすこと を目的と しています。 技術は、 進化し続ける 私たちの技術は、事業と社会を支える技術基盤と して、確実 に次のステージに向かっています。 複合微生物発酵技術の社会実装、生産技術と品質保証を 見据えた体制構築、発酵産物ライブラリーの整備、そ して東 京大学との LCA 共同研究。これらはすべて、 「発酵で楽し い社会を ! 」というパーパスを、理念ではな く現実のプロセスと して更新し続けている証です。 26 IMPACT REPORT 2025 27

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ファーメンステーションは、R&D チームをは じめとして、事業開発メンバーなど、様々な バックグラウンドのメンバーで事業を展開し ています。世の中の新しい当たり前を作るた め、みずからが進化を続け、自律的な個々 の集合体であるために、さまざまな社内制度 を作っています。例えば、学びに対して補助 を提供する 「学び制度」もその一例です。 研究開発および製造は、関東と岩手県奥州 市にある 3 つの拠点にて行い、 幅広いステー クホルダーとの関係を大切に活動しています。 新しい価値を作り、 社会に実装するための、 柔 軟で自律 的な組 織へ 3 つの拠点 OSHU FACTORY 岩手県奥州市  | 製造・研究開発 Our Team 組織について TOKYO LAB 千葉県船橋市| 東京オフィス兼研究開発 組織について YOKOHAMA PILOT PLANT 神奈川県横浜市| 実証プラン ト 男性 女性 71% 29% 30 代 50 代 20 代 24% 19% 5% ● 飲料メーカー (R&D) ● 金融 ● 地方自治体 ● コンサルティング ● 食品メーカー (R&D/製造) 男女比率 在籍拠点比率 年代比率 出身業界・職種 (一部) ● スター トアップ (事業開発) ● 商社 (事業開発) ● 化学メーカー (R&D) ● 設備メーカー (製造) 奥州市 24% 10% 66% 船橋市 横浜市 40 代 52% F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y 28 IMPACT REPORT 2025 29

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2025 年も共創案件としてアヲハタや雪印メグミルクなどから排出される未利用 資源の開発を進める一方で、発酵産物ライブラリーや自社製品開発のための試 作試験として、摘果りんご粕や果物の搾汁粕、野菜の端材、穀物ヌカなどの食 品残さや農産物規格外品を含めて数多くの未利用資源にアプローチした年とな りました。 多様な未利用資源を高機能な発酵産物へと変換する 独自の発酵アップサイクル技術を活用し、健康機能性 を模索する発酵産物ライブラリーの構築を開始しまし た。このライブラリーを基盤として、食品ロスなどの未 利用資源削減とともに、脂質抑制など健康に寄与する 食品素材の実現を目指しています。 2025 研究対象として試験に取り組んだ 未利用資源の数 原料 50 種 × 酵素 1 種 × 微生物 30 株 発酵産物ライブラリーの数 数字で見る 2025 110 2025 in Numbers 数字で見る 2025 奥州ファクトリーにて未利用資源を発酵した際に残る 「粕の粕」のコン ポスト堆肥化を進めました。製造時に発生する 「粕の粕」はすべて土に 還る肥料として生まれ変わっており、引き続き最後まで使い切れる資源循 環の具体化を進めています。 これまでも社内の Slack にインパクトのチャンネルを設け、社外や世界を取り 巻くインパクトに関するニュースを気づいた都度共有してきましたが、2025 年 からは毎週「Impact Hub」として共有を特化させる取り組みを始めました。イ ンパクト関連のニュース、業務における気づきだけでなく、人権やジェンダーに 関する本の感想や、地域、家庭といった日常的なインパクト視点を気軽に共有 できる場として運用しています。 地域への寄付では、8 月に全国展開される 「食品衛生週間」 に併せて、ファクトリーが所在する奥州市の児童向けに日々 の衛生意識向上に貢献すべく、 「お米とりんごのウェットティッ シュ」を寄付し、寄付を受けた子どもたちや保護者の皆さんか らも好評いただきました。 コンポス トによる発酵残さの有効活用量 インパク トに関するニュースや 気づきのシェア数 地域、インパクトコミュニティへの 商品寄付数 251kg 307 5,700 =1,500検体 F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y 30 IMPACT REPORT 2025 31

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年間トピックス ・ ハーバー ドビジネススクール 視察受け入れ ・ アヲハタとジャムの規格外 品を活用した除菌ウェッ ト ティ ッシュを開発 1月 ・ 奥州ファク トリーで障がい者 支援施設に清掃委託開始 ・ 雪印メ グミルクとスキムミルク の規格外品を活用した除菌 ウェ ッ トティ ッシュを開発 6月 ・ シンガポール Future Food Asia 2025 の Round Table に参加。サーキュラーエコ ノ ミーと Food Waste がテーマ ・ ChangeNOW 出展 ・ 国内の食品展示会「ifia」海外の食品素 材展示会「IFT」にてアップサイクル食 品素材を出展 5月 ・ 第1 回 「ケリング ・ ジェネレー ション・アワー ド・ジャパン」 にて最優秀賞を受賞 3月 4月 ・ インパク トレポー ト発行 (初となる英訳版も発行) ・ 奥州ファク ト リーで地域風物 詩 鯉のぼり掲揚を継承 ・ PwC 財団の助成採択で、 発酵産物ライブラリーで多 様な未利用バイオマスを付 加価値に転換するプラッ ト フォーム事業を開始 7月 ・B Corp 再認証 ・ 奥州市内小学校、 奥州い さわ会(福祉施設) へウェ ッ トティ ッシュを寄付 8月 ・ 東京大学と環境影響の定 量評価確立を目指した共 同研究開始 9月 ・ ISAイベン トに出展、登壇 10月 ・ 未利用資源から開発した「ゆずさ のうエキス」 採用のポーラ 「From Loss To Beauty」第二弾発売 ・ 岩手大学との「未利用バイオマ ス発酵産物のヘルスケア機能 の探索」で共同研究開始 11月 12月 ・ 東京都「SusHi Tech Global」 の第1弾スター トアップに選出 F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y Annual Topics 年間トピックス 32 IMPACT REPORT 2025 33

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私がファーメ ンステーションを尊敬する理由は二つあります。 一つは革 新性です。インパク トスター トアップ業界の中でどこより も早くB Corp 認証の取得に動かれたことがファーメンステーションを知った最初の きっかけでした。もう一つは複雑なことを複雑なまま受け入れる柔軟性 です。インパク トモデルβ版を見たときは、複雑なサイクルにさ らに時 間軸まで加味しており驚きま した。 正直一般の読者には理解が難しい とは思う ものの、インパク ト測定の実践者と して、やればやるほど複雑 さ を受け入れざるを得ない現状に私も直面しており、それに誠実に向き 合っていらっ しゃる姿勢に感動しま した。パワフルな酒井さんのリーダー シップのもと、ファーメ ンステーションがポジティ ブなインパク トを創出し ていく こと を心から応援しています。 ファーメンステーションの技術が拓く未来は、食糧危機が解消され、 資源が循環し、生産と消費が分断されない、つく り手と食べ手が共に 支え合う社会だと思います。バイオものづく りが人類と地球の未来をよ り良く していく中で、同社には新産業を創るリーダーと してのビジョンを 掲げ、構想し前進してほしいと思います。 新たな共創を生み出すコア プレイヤーとなってく ださい ! ファーメンステーションさんとの協業で、規格外のハッピーターンが、なんと除菌ウェッ ト ティ ッ シュに生まれ変わっターン ! 資源を無駄にしない、環境にやさ しい独自のものづく りで “驚き”を届けられるって本当にすてきだね。ファーメ ンステーションさんの技術と発想力 は、 環境に配慮したものづく りで、 食品業界の未来を ぐんと広げてく れるんだ。これからも、 みんなにハッ ピーがターンするよう、一緒に未来にやさ しい循環型社会をつく っていこ うね ! ステークホルダーから見たファーメンステーション Voices from Stakeholders ステークホルダーから見たファーメンステーション ターン王子 亀田製菓株式会社 田中 はる奈さん 五常・アンド・カンパニー 経営企画部長 田中 宏隆さん 株式会社 UnlocX 代表取締役 CEO / SKS JAPAN Founder ハッピー王国の バスク・カリナリー・センター、そ して新たなイノベーション拠点である GOe(Gastronomy Open Ecosystem)では、持続可能で、健 康的で、そ しておいしい未来を目指すグローバルなエコシステムの構築 に取り組んでいます。ファーメ ンステーショ ンの技術は、食品の栄養価 を高め、廃棄物を削減し、生物多様性の保全にも貢献します。 発酵 は天然の保存技術であると同時に、 風味を高め、 健康的な食を「喜び」 へと変えてくれます。この考え方は、楽しさ とサステナビリティ、健康と 快楽が共存する GOe の哲学「ヘ ドニスティ ックサステナビリティ(快 楽主義的持続可能性) 」を体現するものです。 協働を通じて、環境 負荷を抑えながらも革新的で風味豊かなプロダク トを生み出し、ガス ト ロノ ミーの未来を切り拓いていけると考えています。 微 生 物の力を生かし、 地 域に眠る未 利 用 資 源を価 値へ転 換する Fermenstation の取り組みは、転換期にある持続的な化成品製造 の視点からも新たな循環モデルを提示するものです。ライフサイクル思 考を基軸に、地域・環境・経済をつなぐ仕組みを自ら事業と して形に している点に強い意義を感じます。 公益性とビジネス性の両立を追求 する姿勢は、持続可能な社会への実装力を備えた稀有な存在と して 期待しています。 Asier Alea さん Director of Global Development at the Basque Culinary Center 私たちは、子育て、高齢者介護、障がい者自立支援を行う社会福祉 法人ですが、近年は生きづらさを抱える人々の交流の場、働く場づく りなど地域が抱える諸課題にも積極的に取り組んでおります。その思 いは弱者に光を当て社会全体を良くする。この考えは分野こそ違えど ファーメ ンステーションと一致しているのでは。これからも重要なパー ト ナーのお一人と して、岩手・奥州から社会性を高める新たなチャレンジ を していきま しょ う。 藤田 春芳さん 社会福祉法人 奥州いさわ会 理事長 菊池 康紀さん 東京大学 教授 34 IMPACT REPORT 2025 35

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コ ラ ム コラム Column コラム “ イノベーションが起きれば、 今日の廃棄物は、明日の廃棄物では なくなるかもしれない ” シンガポールのラウンドテーブル* で感じた ファーメンステーションの使 命 代表取締役 酒井 里奈 * 特定のテーマについて関係者が立場の違いを越えて対等に議論する場。 競争より共創、大きな課題は到底 1 社で解決できるもので はなく、業界を超えた連携が必要ですが、この動きを実感す る機会がありま した。 2025 年 5 月、アジア最大のアグリフー ドイベン ト「Future Food Asia 2025」がシンガポールで開 催され、そこで 行われたラウン ドテーブル「廃棄物から共有価値の創造へ (From Waste to Shared Value Creation) 」 に 招 待し ていただきま した。 主催は Bühler Group と ID Capital。 世界中から専門家が集められた場に、私もスター トアップの 1 社と して参加しま した。 テーブルを囲んだのは、私を含めて総勢 13 名。 議長を務 めた Bühler 社をはじめ、穀物メ ジャー、 アグリビジネス大手、 アジアの食品コングロマリッ トなど世界の食料システムに関 わる大企業、イノベーションの担い手と してスター トアップ経 営者、国際機関や財団も加わり、国や立場を超えた議論が 交わされま した。 前夜のディナーから当日の議論まで、初め ての経験でしたが、地球環境と人口、サプライチェーンの 問題などに向き合う方々と真剣な議論ができたことは、私に とって貴重な経験となりま した。 冒頭、議長より、 「気候変動や人口増加が進む中で、いか にして 100 億人の人々を養う(Feed)か。それを考えるの が、ここにいる私たちの責任である」と発言がありま した。 会議の目的は、食料システムにおける資源効率と循環性を 高めるために何ができるか、 特に「アップサイクル技術、エネルギー効率化、AI 活用」 の観点がど う連携できるかという点です。 議論では、そもそも廃棄物を出さないことが前提にありつつ、 持続可能な成長のためにはイノベーションが必須であること、 特に廃棄物のエネルギー転換から機能性成分の生成に至 るまで、アップサイクル技術への期待が語られま した。 同時 に、広く活用するためには、原料のばらつき、規制の複雑さ、 分散したサプライチェーンなどの課題があり、これに対応す るために食に関わるライフサイクル全体を評価し、セクターを 超えたアプローチが必要であること、また、AI は、プロセス の最適化、廃棄物のプロファイリング、意思決定の改善、 開発期間の短縮などを担うツールと しての意義があることな ど、 終始、 活発な現状報告や意見交換、 議論がなされ、 ファー メ ンステーショ ンからも事例紹介や提言などを行いま した。 議論の最後に全員で合意した言葉があります。 「イノベーションが起きれば、 今日の廃 棄 物は、 明日は廃 棄 物ではなくなる(What is waste today might not be waste tomorrow as innovation happens) 」 。 ファーメンステーションは、未利用資源を、人が食べるもの や価値あるものに転換できる技術を保有しています。この言 葉を現実のものにしていくパイオニアと して、 よりスピーディー に技術を磨き、事業を拡大していこう。 私たちの使命、決 意を新たにするきっかけとなりま した。 36 IMPACT REPORT 2025 37

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Social Impact インパク ト推進の全体像 当社は創業当時から、事業性と社会性を両立させること を 念頭に事業活動および企業運営を行ってきま した。事業が スケールすることでインパク トが拡大するビジネスモデルを 創ること、またそのビジネスモデルが確立したあとも、生み 出すイ ンパク トの確から しさ をポジティ ブ/ネガティ ブの両面 で自分たち自身に問い続けることが、私たちの継続的な使 命であると考えています。 一方で 2024年頃からは、事業領域や組織の拡大、関わ るステークホルダーの広がりとともに、インパク ト創出を暗 黙知に基づいて実践したり、個々の自発性にゆだねるだけ では、組織と して共通の理解を保つことが難しく なってきて いると感じる場面も増えていま した。 その兆候は、 「なんとなく インパク トについての話が噛み合 わない」 「イ ンパク トが PR や広報活動のツールのよ うに受 け取られる」 「熱量がちぐはぐである」という形で組織内の 端々に現れていま した。 ● インパクト創出の具体化に向けて インパクト推進の全体像 ΞΧ΢ϯλϏϦςΟʔ ʢઆ໌੹೚ʣ Ϛωδϝϯτ ʢ؅ཧɾ࣮ߦʣ Ψόφϯε ʢ౷࣏ʣ ϚωδϝϯτγεςϜ ର৅ ใࠂɾ։ࣔ ʢϨϙʔςΟϯάʣ ଌఆɾධՁ ʢϞχλϦϯάɾվળʣ ۩ମԽ ʢϓϩηε / ϚχϡΞϧʣ ࢦ਑ ʢΨΠυϥΠϯʣ ੠໌ ʢεςʔτϝϯτʣ ํ਑ ʢϙϦγʔʣ ର಺త ʢInternalʣ ମ֎త ʢExternalʣ IMM LCA / ΤωϧΪʔՄࢹԽ ΠϯύΫ τϨϙʔ τ ΠϯύΫτϞσϧ ίϛοτϝϯτ 4 B Corpೝূ ελϯε 5 ૊৫։ൃ ࣄۀӡӦ Mutual commitment ະར༻ࢿݯௐୡ ٕज़ɾ੡଄ ഇغ෺؅ཧ 8principles 3 2025年は、具体化のための第一歩と して、それまで個々の 現場で発生する課題に対応する形で向き合ってきたイ ンパク トを、組織と して横断的・中長期的に捉え直すため、イ ンパ ク ト推進チームを正式に立ち上げま した。イ ンパク トを後付け で説明するものではな く、事業判断や設計に先立って参照さ れるものにする、また、 「事業が XX である時、インパク トは XX である」と対で捉え られるよ うにする、そのための基盤づ く りが昨年の大きなテーマとなり ま した。 この図は、ガバナンス (統治) 、マネジメント (管理・実行) 、 アカウンタビリティ (説明責任)の 3 つの観点と、対内的 /対外的の 2 軸で、イ ンパク トに関する取り組みを整理して います。 2025 年はこの中から、主にガバナンスに関わる点と しての B Corp の再認証、2024 年に策定したインパク トモデルを 具体化するための IMM*6 に注力しま した。 次章で、これらの各取り組みの詳細をご紹介します。 このテーマに関連して、インパク ト推進活動の整理を行いま した。 以下の図は、インパク ト創出におけるマネジメ ン トシス テムに、これまでに当社が行ってきた主たる活動 *2 を示した ものです。 *1 イ ンパク ト創出における成果 *2  イ ンパク ト創出の観点で一定の取捨選択を行っているものであり、 当社の 活動のすべてではない *3  8principle 当社のバリューに基づいた8つの行動原則 https://fermenstation.co.jp/value/ *4  コミ ッ トメ ン ト 事業活動を行う上での社会との約束。 2025年に更新に着手しており、 改訂内容を検討中。 https://fermenstation.co.jp/commitment/ *5 スタンス 当社のバリ ューに基づいた事業性と社会性追求を目的と した声明。 *6  Impact Measurement & Managementの略。 イ ンパク ト創出の計画 ・ 測定 ・ 管理を行うためのフレームワーク。 振り返ってみると、 個々人の思いや解釈の幅が広がる中で、 アウ トカム *1 への目線を揃えるためのより具体的な可視化 ・ 言語化や、事業の意思決定の場面でインパク トの判断軸 をどのように持ち込むべきかなど、抽象を具体に繋ぐ仕組 みづく りが必要なフェーズに差し掛かっていたのではないか と思います。 F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y 38 IMPACT REPORT 2025 39

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● なぜ B Corp か 当社は、 「世の中にあふれるゴミがもっと活用できたらお もしろいのに」 「事業性と社会性を両立させたビジネスを 創りたい」というふたつの想いから生まれました。 創業以来 「Fermenting a Renewable Society」 をパー パスに、発酵の技術で未利用資源に新たな価値を見出 し、これらが生まれ変わり、再生・循環する社会を構築 することを目指した事業活動を続けています。このパーパ スの実現のためには、自然環境や社会、関係する全ての 人々、ステークホルダーが、連携し調和する必要があり、 また事業の成長がなければ発展性や持続性がありません。 B Impact Score ● B Corp 認証とは ? B Corp 更新 B Corp B Corp 更新 私たちは、自然なこととして、事業性と社会性の両面で インパクトを追求してきました。 同時に、私たちの取り組みを客観的な視点で検証し、常 に学び、進化することができているかを確認する方法の必 要性も感じてきました。 「B Corp 認証」 は事業性と社会 性の両面でインパクトを追求する優れた企業を認証し、客 観的な指標と定点的なチェック (3 年ごとに再審査) を提 供する制度として、私たちの事業活動や経営を律する良い 手段であると考えています。 環境や働き手、顧客、そしてコミュニティなどのステークホルダーに、ポジティブなインパ クトをもたらす企業に与えられる米国発の国際認証制度です。事業性と社会性の両面の 成果や取り組みに対して 「B Impact Assessment」という形で客観的な指標を提供。3 年ごとの再審査を通じて、定点的なチェックや再評価の機会が与えられます。ファーメン ステーションは 2022 年の 3 月に認証を取得し、2025 年に再認証を受けました。 企業同士がコミュニティを形成し、ソーシャルインパクトという共通の目標に向かって互い に助け合える仕組みが、国内でも模索されています。認証を取得するだけではなく、同じ 目的に向かう仲間として、互いに学び合いながらソーシャルインパクトを 追求する。B Corp は当社にとって重要なコミュニティのひとつです。日 本では 2024 年に「B Market Builder Japan」が発足し、コミュニティ とムーブメントを主導しています。 B Corp 認証取得以来、初の認証更新となった今回。旧基準 *1 での更新となったことで、 取得時との進捗や差分を確認するよい機会にもなりました。より環境インパクトへ寄与す るビジネスモデルが評価され、初回認証時 (2022 年)の 82.2 点に対し、今回の再認 証では 121.5 点のスコアとなりました。 コミュニティ Community ● 認証更新にあたり 顧客 Customers 社員 Workers 環境 Environment ガバナンス Governance 11.3点 / 20点 45.2点 / 105点 10.9点 / 35点 ● 更新時の評価ポイント (抜粋) ●  未利用資源を活用していることに加え、発酵プロセス そのものの環境負荷の低さで評価を得られた。LCA の実施で環境負荷を認識・管理・改善していること に説得力があった。 ●  事業共創により、他社の環境インパクトを低減しうる ビジネスモデルが評価された。当社の意図するイン パクトのスコープを明確にし、社会性を優先したこと (例:原材料が未利用資源でない案件はお断りする) などが評価に繋がった。 ●   全社でインパクトを追求し、学び、対外的に共 有、 公開している点。 *1  B Corp 認 証 は 2026 年 3 月から、 基 準を大 幅 に 改 変し、 新 基 準(B Lab’s New Standards)でのアセ スメン トおよび審査が実施される。 個 別の企業を項目ごとに「 採点 」する スコア制から脱却し、 7 つのインパク ト ・ トピック(Impact Topic)と基礎要 件(Foundation Requirements) で企業を評価し、コミュニティ全体と しての取り組みを重 視する方 向へと 舵を切っている。 ● 尺度としての B Corp 認証 当社にとって B Corp は、持続的に社会的インパクトを 拡大するために参照する、ひとつの 「ものさし」です。B Corp のスコアはあくまで活動を客観的に確認する尺度に 過ぎず、本質は事業活動を通じて社会や環境にポジティ ブなインパクトを生み続けることにあります。 同時に、B Corp 認証企業として求められる基準やスタン スに沿うことで、グローバルの視点を取り入れられること は、当社にとって重要な要素です。 B Corp が提示する問いは、私たちがこれまで当たり前と してきた判断や仕組みの中にある公正性を問い直し、無 意識の偏見 (アンコンシャスバイアス)に気づく機会を与 えてくれます。 今後は B Corp の 「ものさし」を、より具体に持ち込むこ とで、事業活動における社会的インパクトのチェックに活 用し、公正性を客観視するツールとして、また、 「いい企 業運営とは何か?」をみずから問い続ける参照点として運 用していきたいと考えています。 26.5点 / 40点 27.4点 / 40点 F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y 40 IMPACT REPORT 2025 41

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Impact Measurement & Management IMM の進捗 当社は、事業領域の拡大に伴い、2024 年にインパクトモデルを刷新しました (下図) このイ ンパク トモデルは、事業フェーズに応じて、左にビジネス、 右にイ ンパク トの段階的な変化と、それぞれの規模の拡大を図 示したものです。私たちが取り組む未利用資源のアップサイ ク ルは、概念そのものを行き渡らせ、従来は廃棄物と されていた ものを未利用資源と して捉え直すことから始ま り ます。それは例 えば、食品メ ーカーの工場で廃棄物を資源と して分別すること、 アップサイクルを前提と した商品設計や製造ライ ンを組むこと、 法規制を変えることなど、従来の枠組みを取り払い、ステーク ホルダーと ともに既存システムそのものを更新していく ことも含 まれます。 一筋縄では行かない成果達成のため、ビジネスに おいてもイ ンパク トにおいても、既存のシステムや概念を覆すこ とを一足飛びに考えるのではなく、4 フェーズに区切ることで、 創出すべきアウ トカムを段階的に見据える形を取り ま した。 フェーズが上がるにつれて、ビジネス面、インパク ト面ともに、 受益者の種類と規模が拡大すること も私たちのインパク トモデ ルの特徴です。 ࢿݯ॥؀ܕࣾձ ʢੴ༉ґଘ͔Βͷ୤٫ɾࢿݯෆ଍ͷղফɾഇغ෺ͷݮগʣ ະར༻ࢿ ݯͱ ߟ͑ΒΕ͍ͯͨ ΋ͷ͕Ξοϓα ΠΫϧʹΑͬͯ ػೳੑݪྉʹ ੜ·ΕมΘΓɺ ࣗࣾ੡඼ʹ׆ ༻͞ΕΔ ΞοϓαΠΫϧ ͋Γ͖ͷ ࢿ ݯ ഇغσβΠϯɺ ঎඼ઃ ܭ͕͞ ΕΔ ΞοϓαΠΫϧ ݪྉΛੵۃత ʹ࢓ೖΕ࠾༻ ͍ͯ͠Δ ΞοϓαΠΫϧ ੡඼΁ͷΠϯ ηϯςΟϒΛ ֮ࣗ͠ɺ ౰ͨΓ લ ʹ ߪ ೖɾফ අ͍ͯ͠Δ Φʔϓϯγες Ϝ΍ٕज़ʹΑͬ ͯɺ؀ڥՁ஋Λ ߴΊ͍ͯΔ ະར༻ࢿݯഉ ग़ྔ͕େ෯ʹ ࡟ݮ͞ΕΔ ະར༻ࢿݯ͔ ΒͰ͖ͨߴ ػ ೳݪྉ͕ඞਢ ͱͳΓɺ ͦΕ͋ Γ͖ͷ঎඼ઃ ܭ͕͞ΕΔ ΞοϓαΠΫϧ ੡඼Λ౰ͨΓ લʹߪೖ ɾফඅ ͍ͯ͠Δ GHG ഉ ग़ ྔɺ ࢿݯഇغɺੴ༉ ґଘͳͲͷ؀ڥ ෛՙΛ௿ݮ ະར༻ࢿݯ͕ ߴػೳݪྉʹ ੜ·ΕมΘΓɺ ੈͷதͷ༷ʑ ͳ੡඼ʹ׆༻ ͞ΕΔ ະར༻ࢿݯ͔ ΒͰ͖ͨߴ ػ ೳݪྉΛ׆༻ ͢Δ͜ͱͰ ঎ ඼ͷ ػ ೳɺ෇ ՃՁ஋͕޲্ ΞοϓαΠΫϧ ੡඼Λߪೖɾ ফඅ࢝͠ΊΔ ʷ 1ɿ1ͷڞ૑Λ ଟ਺૑ग़͢Δ͜ͱͰ ΞοϓαΠΫϧࣄྫ͕૿Ճ Input ˣ Output ͷ ม ׵ Ձ ஋ ớ Ξ ỽ ϓ α Π Ϋ ϧ Ձ ஋ Ờ ଟ඼छখϩο τ ʷ ΫϦςΟΧϧϚεΛ௒͑ɺ ΞοϓαΠΫϧ঎඼΍ૉࡐͷՁ஋ɺ ࢢ৔͕֦େ ι Ϧ ỿ ồ γ ἀ ϯ ͱ ͠ ͯ ͷ ؀ ڥ Ձ ஋ ớ ෛ ՙ ௿ ݮ Ờ খ඼छେϩο τ ʷ ࣄྫ౰ͨΓͷࣄۀੑΛ֦େ͠ɺ ঎඼Ձ஋ى఺ͷར༻͕֦େ Output ͷ ঎ ඼ Ձ ஋ ớ ͓ ͍ ͠ ͞ ɾ ػ ೳ ੑ Ờ খ඼छதϩο τ ࣭ ࣭ ࣭ ࣭ ྔ ྔ ྔ ྔ ʷ ΦʔϓϯԽ͞ΕͨγεςϜͰ ΤίγεςϜ͕ܗ੒͞ΕΔ ϓ ϥ ỽ τ ϑ Ỽ ồ Ϝ ͱ ͠ ͯ ͷ Τ ί γ ε ς Ϝ Ձ ஋ ଟ඼छେϩο τ #VTJOFTT *NQBDU Ξ΢τϓοτͷ࣭ ʷ ྔ ʹ ෇ՃՁ஋ྔ εςʔΫϗϧμʔ ʢडӹऀʣ ͷ޿͕ΓͱΞ΢τΧϜ ະར༻ࢿݯ ഉग़ऀ ະར༻ࢿݯ ׆༻ऀ ফඅऀ ஍ٿ؀ڥ ϑ ỻ ồ ζ ΞοϓαΠΫϧΛϏδω εͱ͢Δاۀ͕ଟ਺ग़ ݱ͠ɺΤίγεςϜΛ ܗ੒ 4 ΞοϓαΠΫϧ঎඼΍ ݪྉ͕ΫϦςΟΧϧϚε Λ௒͑ͯྲྀ௨͠؀ڥෛ ՙΛ௿ݮ ϑ ỻ ồ ζ 3 ະར༻ࢿݯΛ׆༻ͨ͠ ΞοϓαΠΫϧݪྉΛɺ ػೳੑݪྉͱͯ͠׆༻ ͨ͠঎඼Λྲྀ௨ͤ͞Δ ͜ͱͰࢢ৔Λཱ֬ ϑ ỻ ồ ζ 2 ৯඼ϝʔΧʔͳͲͷະ ར ༻ ࢿ ݯΛ׆ ༻ͨ͠ ΞοϓαΠΫϧ঎඼Λ ࢢ৔ʹૹΓग़͢͜ͱͰɺ ΞοϓαΠΫϧͱ͍͏֓ ೦Λਁಁ ϑ ỻ ồ ζ 1 ؀ ڥ ෛ ՙ ௿ ݮ Ξ ỽ ϓ α Π Ϋ ϧ ੡ ඼ ྲྀ ௨ Ξ ỽ ϓ α Π Ϋ ϧ ֓ ೦ ਁ ಁ ؀ ڥ Ձ ஋ ߩ ݙ ࢢ ৔ ૑ ग़ ࢢ ৔ ։ ์ ࢢ ৔ ֦ େ ࢢ ৔ ֬ ཱ IMM の進捗 は岩手県奥州市という地域にあります。 事業活動を行う上で、 地域社会へ良いイ ンパク トを与えることは常に念頭に置いており、 インパク トモデル上での言及はしていませんが、地域の関与者 が重要なステークホルダーであることに変わりはあり ません。この よ うに、イ ンパク トのモデル化は一定の単純化を伴うため、こぼ れ落ちる要素が生じる点には留意が必要であると考えています。 *1  誰もが健康で豊かな食生活を送るために、 食料にアクセス しやすく、 安全か つ安心して食料品を入手できる状態。 *2  セオリー・オブ・チェンジ(Theory of Change、略称 ToC)とは、ある特定 の文脈において、ど うやって、なぜ、望まれる変化が起こることが期待されるか についての包括的な説明を図示したもの。 「ロジッ クモデル」と並んで、事業 が生み出す変化を描く セオリーである。ToCとロジッ クモデルは一見似ている が、ロジッ クモデルが事業単位で描く のに対して、ToC は日本語訳の「変化の 理論」の通り、社会の中での団体・事業の立ち位置や他のプレーヤーとの役 割分担を描く のに適している。事業の説明責任の境界線を引く こ と もあり、 「究 極的な成果」に対する事業の貢献範囲の線引き を行な う という こと も特徴であ る。 (Blue Marble Japan「ツール⑥ セオリー・オブ・チェンジ」より引用 https://www.blue-marble.co.jp/docs/a06/b20/c25/) ● 社内説明会の実施 β版と して策定したこのイ ンパク トモデルについて、拠点ごとに少 人数で対話型の社内説明会を実施しま した。社内からの反応は 様々で したが、共通して、時間軸の概念を入れた段階的なイン パク ト創出については納得が得られま した。 一方で、抽象的な モデルであることから、成果に至るまでの道筋や KPI が示されて いないことへの質疑や議論が大半を占める形となり ま した。また、 旧モデルと大き く異なる点と して、地域社会への影響について 触れていないこと も質疑の対象となり ま した。私たちの製造拠点 ● 全員参加型の IMM ワークショップ 上記の社内フィ ー ドバッ クを受け、イ ンパク トモデルを具体的に落 と し込むワークショ ッ プを企画。イ ンパク トモデル策定を伴走支援 いただいたブルー・マーブル・ジャパンの千葉さんを講師に迎え、 夏の全社オフサイ トミーティ ングと、秋の続編の 2 回に分けて、 全員参加で実施しま した。 当時、事業側では事業領域拡張に伴う提供価値の見直しとビ ジネスモデルのブラッ シュアッ プが並行しており、それに連動する イ ンパク トの具体化は、動く ゴールに狙いを定める難しさがあり ま した。千葉さんの力をお借り し、 全 2 回、 計 4 時間のワークショ ッ プを経て、事業領域拡大に伴うステークホルダーの特定、彼ら のニーズの見立て、創出するアウ トカムをま とめるワークを行いま した。 アウ トカムへの視座と して特徴的だったのは、多くのメ ンバーが、 未利用資源活用を通じた「食文化創造」 「食品生産システム の変革」 「食のアクセシビリティ*1」を、当社が直接的に生み 出すべきアウ トカムだと捉えていたことです。 食は人々の生活に密接に関わるだけでな く、社会構造や消費行 動を変える産業規模と、それに伴う課題を抱えています。食を通 じたイ ンパク トの創出領域があること を見出したと同時に、これら を「資源循環型社会の実現」という最終アウ トカムにどのよう に接続していく かが次のステップと して浮かび上がりま した。 現 在は、IMM ワークショ ップで挙がった内容を発展させる形で、メ イ ン領域である食品事業の ToC(セオリー・オブ・チェ ンジ *2) を作成しています。すべてが試行錯誤と再検討の連続ですが、 2026 年は ToC からイ ンパク トの評価軸を導出することで道筋を 明確化し、インパク トの歩みをより具体的で堅実なものにしたい と考えています。 F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y 42 IMPACT REPORT 2025 43

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*  B Corp の「相互依存宣言(Declaration of Interdependence) 」に当 社も署名している。企業が単独の利益追求ではな く、 他社や環境と支え合い、 持続可能で包括的な経済システムを目指すという誓約。 認証取得時の署名 が必須であり、互いの知恵やリ ソースを活用して社会・環境課題解決に協働 するコミ ュニティの一員になること を示す。 近年、社会全体の制度や公共サービスだけでは十分に対応 しきれない課題が増える中、企業に対する社会的な期待は ますます高まっており、企業の役割そのものを変化させつ つあります。それがインパクト企業であるかどうかに関わら ず、消費者や取引先、従業員、投資家などのステークホル ダーは、単なる事業成果や経済性だけでなく、企業が社会 や環境にどのように貢献しているかを重視し、社会的価値 ● 企業に求められる社会的な期待への呼応 や公正性の観点からも企業活動を評価するようになってい ます。 このような外部環境の変化や社会の潮流を踏まえ、その 時々の社会に必要なことや、当社が創出すべきインパクト の範囲を柔軟かつ客観的に捉えながら、中長期的な視点 で物事を推進していく必要性が高まっています。 様々な社会課題の中でも、気候変動は世界的な課題として ますます深刻化しており、COP30 をはじめとする国際会 議や B Corp の新基準でも、温室効果ガス削減や資源循 環の促進といった具体的な行動が企業に求められています。 こうした環境下、資源廃棄削減や資源循環の推進を通じて 課題解決の一助となるためには、より迅速かつ効果的に価 値を生み出すことが重要です。 ● 気候変動への迅速な対応とステークホルダー連携 地球環境のような大規模な課題は、一社だけで解決するこ とはできません。当社自身のスピーディーな事業推進、イ ンパクト創出はもちろんのこと、アップサイクルを推進する 事業者や志を同じくするコミュニティなど、多くのステーク ホルダーと良い 「相互依存関係 *」を築きながら、歩みを進 めることが必要不可欠です。 前章でも触れたように、これまでの当社のインパクト創出 や優先度の判断は、事業やプロジェクトごとに分かれてお り、組織全体で目線を合わせることが難しい状況にありま した。しかしながら、外部環境の変化は急速で、気候変動 や資源循環、フードロスなどの課題に対応するには、迅速 かつ戦略的な意思決定が求められます。 2026 年は、これらの変化に適切に対応するため、インパ ● インパクト創出に関する目線・評価軸の統一 クトの評価軸や判断基準を組織横断で捉え、事業活動や プロジェクトの成果をインパクトのフレームで測定できる体 制を整えたいと考えています。 また、評価軸や成果指標は単なる社内管理のためのもので はなく、外部のステークホルダーに対しても進捗や成果を 共通言語で説明でき、信頼を築く基盤となるものとして運 用したいと考えています。 Looking Ahead 今後について 今後について F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y IMPACT REPORT 2025 45 44

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おわりに ファーメンステーションのインパク トレポー トを読んでいただ きありがと うございま した。 2025 年は、食品事業への本格参入、食品向けの自社 原料開発、2013 年から続けてきた自社ブラン ド事業の閉 鎖など、選択と集中を具体化させた年となりま した。 前回のレポー トに記載の通り、当社は 2024 年にインパク トモデルを刷新しま した。 資 源 循 環 型 社 会 実 現までの複 雑で長い道のりの上で、 目先のインパク トを追いかけるのではなく、その先にある大 きなゴールを見据えるために時間軸の概念を持たせたもの です。 このインパク トモデルをまずは社内に伝えるために、拠点ご とに少人数で、対話型の説明会を行いま した。また、社 外に向けては、 初となる冊子版、 英訳版のレポー トを発行、 インパク トレポー トのイベン ト実施など、目指すインパク トを 表明すると同時に、様々なフィー ドバックを頂く機会にもな りま した。 私たちが今後の活動において主な市場と して考えている食 領域では、資源廃棄の他にも、気候変動による食文化 の喪失、格差による食へのアクセシビリティ、食料安全 保障、サプライチェーン上での人権の問題など、様々な 社会課題があります。 こう した課題は、 食品領域に事業を拡張した当事者と して、 無視できない社会課題であると認識を新たにしま した。 同時に、食のシステムチェンジを考える中で、これらの社 会課題解決への視座が、社内から自発的かつ自然と持ち 上がってきていることに、 組織と しての強みを感じています。 今回のレポー トでは特に、インパク ト測定(IMM)につい ての記述に悩みま した。 おわりに 事業領域を探索的に広げ、より本質的な提供価値を模索 している中、あえてインパク トにおける定量的な KPI や評 価軸を明確に設定していないことから、読み手にとって成 果の測れなさや、分かりにく さを生むのではないかという不 安がありま した。 しかし、当社と しては、分かりやすさや評価可能であること よりも、事業と矛盾することなく一体であり、納得できる指 標でなければ、みずから追う意味がないと考え、2025 年 は評価指標を持たない選択を しま した。 2026 年は、 これらの評価軸の構築や指標導出を模索し、 向き合う 1 年になると予想しています。 私たちのコア技術である「微生物発酵」は、技術そのも のも生み出されるアウ トプッ トも、それぞれの要素は合理的 でありながら、極めて複雑で有機的な相互作用で成り立っ ています。 線形では設計できない微生物の働きを、環境を整えること で方向づける発酵という作用は、社会課題を複雑な連関 と して捉えシステムそのものを設計し直すことで、社会を次 の段階へとシフ トさせるインパク ト創出のあり方に似ている と感じています。 より大きく深い、本質的なアウ トカムを目指すインパク ト企 業と して、高い壁に挑むスター トアップと して、次のインパ ク トレポー トでより多くの成果をご報告できることを目指し、 日々の活動を推進して参ります。 最後になりま したが、このレポー トを作成するにあたり編集 とクリエイティブを担って頂いた皆さま、IMM にご支援や ア ドバイスを頂いた専門家の皆さま、ソーシャルインパク ト に関するコミュニティの皆さま、いつも応援してくださる皆さ ま、事業性と社会性を共に追求する社内外の仲間にお礼 を申し上げます。 インパク ト担当 渡辺 麻貴 Designed by homesickdesign 46 IMPACT REPORT 2025 47