や対話の機会をいただいています。インパク トレポー トを発行 する企業も増え、同じ志を持つ仲間が少しずつ広がっている ことを実感する一年でもありま した。 2025年は、会社と して選択と集中を進め、自分たちの役割 を見つめ直す年でした。 食品領域への注力をより明確にし、 研究開発と して積み重ねてきた技術が実装に移行する中で、 事業のあり方も変化してきています。そう した変化の中で、イ ンパク トの捉え方が 広がってきました。 関わる領 域が 増え、 考えるべきことも増えていきま した。 社内でもインパク トに対する向き合い方が少しずつ変わってき ま した。 対話を重ねながら、試行錯誤を続けてきた結果、イ ンパク トは組織全体で共通の視点と して考え続けるものへと 変わり始めています。 社内にインパク トチームが立ち上がり、 社外との対話も増えています。また、社外のさまざまな現場 での対話を通じて、私たちの取り組みがより広い文脈の中に あることを実感する機会も増えてきました。 創業当初は直感 的に大切にしていたものが、今は組織と して言葉にし、考え 続けるテーマになってきていると感じています。 本レポー トで は、そう した過程や模索を、できるだけ率直に記録しま した。 インパク トとどう向き合っていくかを考えるうえでの、一つの事 例と して見ていただけたら幸いです。こう した対話を通じて仲 間が増え、事業性と社会性の両立を目指す取り組みがさ らに 広がっていきますように。 酒井 里奈 株式会社ファーメ ンステーショ ン 代表取締役 国際基督教大学 (ICU) を卒業後、 富士銀行、 ドイツ証券など金融系複数社に勤務。その後、 発酵技術に興味を持ち、東京農業大学応用 生物科学部醸造科学科に入学、2009 年 3 月 卒業。 同年、株式会社ファーメ ンステーション を創業し代表取締役就任(現任) 。 “ 皆さんと一緒に 事業性と社会性の両立が 当たり前の世の中を作りたい ” F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y IMPACT REPORT 2025 05 04 はじめに
ビジネスにするため、 ファーメ ンステーショ ンを 2009 年に創業。 創業時は、SDGs も採択前であり、サステナブルな素材自 体のニーズが少なかったことから、自社で製造した素材を使っ た化粧品などの販売からスター トし、未利用資源を活用する 事例を見せることで、サステナブルな素材の市場を作ってきま した。 サステナビリティの追求に加え、未利用資源から機能性のあ る素材を作る技術の確立と、その先にある資源循環型社会の 実現に向けた、パイオニアの自負を持って走り続けています。 ファーメンステーションは、世の中にあふれる「未利用資源」 を活用し、資源が循環する社会を作ること、事業性と社会性 を両立するビジネスを確立することを目指して創業されま した。 代表の酒井は、大学を卒業後、都市銀行に入社。 3 年目 に出向した国際交流基金日米センターで、社会課題の解決 に向き合う人々と出会ったことが転機となり、 「世の中の課題 をビジネスで解決していきたい」と考えるようになりま した。 その後、銀行でエネルギーやインフラなどのプロジェク トファイ ナンスを担当、環境への関心を強めますが、環境に配慮した プロジェク トに関与することはできませんでした。その後転職し た外資系証券会社でニューヨークに出張。 ファス トフー ドチェーンでチーズバーガーを注文、1 個しか頼んで いないものが 2 個出てきたので断ったところ、 「食べないなら捨 てて」と言われたことに猛烈な違和感を覚え、帰国しま した。 創業ストーリー F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y History 創業ストーリー 009p Fermenting a Renewable Society 世の中の課題を ビジネスで解決していきたい。 「食べないなら捨てて」と 言われたことに猛烈な違和感を覚えた。 「生ゴミをエネルギーに変える」 という研究テーマを見たことがきっかけに。 「未利用資源から素材を作る技術の確立」 と、 「資源循環型社会の実現」 。 IMPACT REPORT 2025 07 06
点を持ち続けるという意思を込めて“Society” という言葉を 使っています。 ファーメ ンステーション(FERMENSTATION)という社名は 英 語の発 酵(fermentation)と駅(station)を掛け合わ せた造語です。 発酵技術によって未利用資源を活用すること で、様々な資源が姿を変える。また、通過すると必ずいいこ とがある。そんな「駅」のような存在になりたいという想いが 込められています。 発酵における微生物のように、 社会に対してポジティブに作用する 存在でありたい 微生物の作用によって、有機物が人間にとって有益なものに 変化する現象を指す発酵(Fermentation) は、当社の原点 であり、最も得意とする技術です。 同時に、ファーメ ンステー ションという会社のあり方を象徴する現象でもあります。 私た ちは発酵における微生物のように、社会に対してポジティ ブに 作用する存在でありたいと考えます。 “Fermenting” という現 在進行形の言葉を使うことで、やり続ける、動き続けるという 意志や想いを込めています。 また、私たちは事業や社会が常に生まれ変わり、より良く変化 し続けることが大切だと考えています。 そのために Sustainable (持続可能)ではなく、 “ Renewable(再生可能) ” という言 葉を選びま した。 「再生」の過程には様々な困難があり ますが、 それらを乗り越えて新たな価値を生み、社会や事業を更新して いく ことこそが、当社の事業の醍醐味であると考えています。 未利用資源に価値が見出され、 発酵技術によってより価値あるものに生まれ変わることで、再生・循環する社会。 未利用資源をキーとした新しい資源活用のあり方、 資源廃棄という概念をなくし、 資源循環をベースとした世の中を構築することを目指して、 パーパスを Fermenting a Renewable Society と制定しました。 自然環境や社会、関係する全てのステークホルダーが、 ファーメンステーションという 「駅」を通過することで、前より良くなり続ける。 そんなあり方を目指しています。 “ Fermenting a Renewable Society ” パーパス F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y Purpose パーパス IMPACT REPORT 2025 09 08
研究開発および製造は、関東と岩手県奥州 市にある 3 つの拠点にて行い、 幅広いステー クホルダーとの関係を大切に活動しています。 新しい価値を作り、 社会に実装するための、 柔 軟で自律 的な組 織へ 3 つの拠点 OSHU FACTORY 岩手県奥州市 | 製造・研究開発 Our Team 組織について TOKYO LAB 千葉県船橋市| 東京オフィス兼研究開発 組織について YOKOHAMA PILOT PLANT 神奈川県横浜市| 実証プラン ト 男性 女性 71% 29% 30 代 50 代 20 代 24% 19% 5% • 飲料メーカー (R&D) • 金融 • 地方自治体 • コンサルティング • 食品メーカー (R&D/製造) 男女比率 在籍拠点比率 年代比率 出身業界・職種 (一部) • スター トアップ (事業開発) • 商社 (事業開発) • 化学メーカー (R&D) • 設備メーカー (製造) 奥州市 24% 10% 66% 船橋市 横浜市 40 代 52% F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y 28 IMPACT REPORT 2025 29
利用資源削減とともに、脂質抑制など健康に寄与する 食品素材の実現を目指しています。 2025 研究対象として試験に取り組んだ 未利用資源の数 原料 50 種 × 酵素 1 種 × 微生物 30 株 発酵産物ライブラリーの数 数字で見る 2025 110 2025 in Numbers 数字で見る 2025 奥州ファクトリーにて未利用資源を発酵した際に残る 「粕の粕」のコン ポスト堆肥化を進めました。製造時に発生する 「粕の粕」はすべて土に 還る肥料として生まれ変わっており、引き続き最後まで使い切れる資源循 環の具体化を進めています。 これまでも社内の Slack にインパクトのチャンネルを設け、社外や世界を取り 巻くインパクトに関するニュースを気づいた都度共有してきましたが、2025 年 からは毎週「Impact Hub」として共有を特化させる取り組みを始めました。イ ンパクト関連のニュース、業務における気づきだけでなく、人権やジェンダーに 関する本の感想や、地域、家庭といった日常的なインパクト視点を気軽に共有 できる場として運用しています。 地域への寄付では、8 月に全国展開される 「食品衛生週間」 に併せて、ファクトリーが所在する奥州市の児童向けに日々 の衛生意識向上に貢献すべく、 「お米とりんごのウェットティッ シュ」を寄付し、寄付を受けた子どもたちや保護者の皆さんか らも好評いただきました。 コンポス トによる発酵残さの有効活用量 インパク トに関するニュースや 気づきのシェア数 地域、インパクトコミュニティへの 商品寄付数 251kg 307 5,700 =1,500検体 F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y 30 IMPACT REPORT 2025 31
ッシュを開発 1月 ・ 奥州ファク トリーで障がい者 支援施設に清掃委託開始 ・ 雪印メ グミルクとスキムミルク の規格外品を活用した除菌 ウェ ッ トティ ッシュを開発 6月 ・ シンガポール Future Food Asia 2025 の Round Table に参加。サーキュラーエコ ノ ミーと Food Waste がテーマ ・ ChangeNOW 出展 ・ 国内の食品展示会「ifia」海外の食品素 材展示会「IFT」にてアップサイクル食 品素材を出展 5月 ・ 第1 回 「ケリング ・ ジェネレー ション・アワー ド・ジャパン」 にて最優秀賞を受賞 3月 4月 ・ インパク トレポー ト発行 (初となる英訳版も発行) ・ 奥州ファク ト リーで地域風物 詩 鯉のぼり掲揚を継承 ・ PwC 財団の助成採択で、 発酵産物ライブラリーで多 様な未利用バイオマスを付 加価値に転換するプラッ ト フォーム事業を開始 7月 ・B Corp 再認証 ・ 奥州市内小学校、 奥州い さわ会(福祉施設) へウェ ッ トティ ッシュを寄付 8月 ・ 東京大学と環境影響の定 量評価確立を目指した共 同研究開始 9月 ・ ISAイベン トに出展、登壇 10月 ・ 未利用資源から開発した「ゆずさ のうエキス」 採用のポーラ 「From Loss To Beauty」第二弾発売 ・ 岩手大学との「未利用バイオマ ス発酵産物のヘルスケア機能 の探索」で共同研究開始 11月 12月 ・ 東京都「SusHi Tech Global」 の第1弾スター トアップに選出 F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y Annual Topics 年間トピックス 32 IMPACT REPORT 2025 33
他社や環境と支え合い、 持続可能で包括的な経済システムを目指すという誓約。 認証取得時の署名 が必須であり、互いの知恵やリ ソースを活用して社会・環境課題解決に協働 するコミ ュニティの一員になること を示す。 近年、社会全体の制度や公共サービスだけでは十分に対応 しきれない課題が増える中、企業に対する社会的な期待は ますます高まっており、企業の役割そのものを変化させつ つあります。それがインパクト企業であるかどうかに関わら ず、消費者や取引先、従業員、投資家などのステークホル ダーは、単なる事業成果や経済性だけでなく、企業が社会 や環境にどのように貢献しているかを重視し、社会的価値 • 企業に求められる社会的な期待への呼応 や公正性の観点からも企業活動を評価するようになってい ます。 このような外部環境の変化や社会の潮流を踏まえ、その 時々の社会に必要なことや、当社が創出すべきインパクト の範囲を柔軟かつ客観的に捉えながら、中長期的な視点 で物事を推進していく必要性が高まっています。 様々な社会課題の中でも、気候変動は世界的な課題として ますます深刻化しており、COP30 をはじめとする国際会 議や B Corp の新基準でも、温室効果ガス削減や資源循 環の促進といった具体的な行動が企業に求められています。 こうした環境下、資源廃棄削減や資源循環の推進を通じて 課題解決の一助となるためには、より迅速かつ効果的に価 値を生み出すことが重要です。 • 気候変動への迅速な対応とステークホルダー連携 地球環境のような大規模な課題は、一社だけで解決するこ とはできません。当社自身のスピーディーな事業推進、イ ンパクト創出はもちろんのこと、アップサイクルを推進する 事業者や志を同じくするコミュニティなど、多くのステーク ホルダーと良い 「相互依存関係 *」を築きながら、歩みを進 めることが必要不可欠です。 前章でも触れたように、これまでの当社のインパクト創出 や優先度の判断は、事業やプロジェクトごとに分かれてお り、組織全体で目線を合わせることが難しい状況にありま した。しかしながら、外部環境の変化は急速で、気候変動 や資源循環、フードロスなどの課題に対応するには、迅速 かつ戦略的な意思決定が求められます。 2026 年は、これらの変化に適切に対応するため、インパ • インパクト創出に関する目線・評価軸の統一 クトの評価軸や判断基準を組織横断で捉え、事業活動や プロジェクトの成果をインパクトのフレームで測定できる体 制を整えたいと考えています。 また、評価軸や成果指標は単なる社内管理のためのもので はなく、外部のステークホルダーに対しても進捗や成果を 共通言語で説明でき、信頼を築く基盤となるものとして運 用したいと考えています。 Looking Ahead 今後について 今後について F e r m e n t i n g a R e n e w a b l e S o c i e t y IMPACT REPORT 2025 45 44