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STORES 株式会社 西村 駿人 Welcome Fintech Community #2 2024年 8月5日 STORES 決済 電子マネー編

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(本題の前に)参加者の属性質問 質問: 今の業務がFintechに関係ある方? 2 Yes No 「推測するな、計測せよ」と言いますからね 2/3くらい の方がYes でした

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自己紹介 3 ヨヨイ 本名: 西村 駿人(にしむら はやと) ネット上では nhayato で活動 STORES 株式会社所属(2022年7月〜) STORES 決済のバックエンドエンジニア PCI DSS監査対応やったことある側

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自己紹介(続き) 「PCI DSS監査対応やったことある側」? 4 https://www.st.inc/news/2024-03-13-stores-pcidss 2024年3月にプレスリリース STORES 決済 を担当した ※今日はPCI DSSの話はしません

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STORES 決済 の紹介 5 Q. STORES 決済 って何? A. 街のお店で見たことがあるかもしれない、これ

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STORES 決済 の紹介(続き) 6 https://stores.jp/payments

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あの図を使って STORES のポジションを紹介 7 国際ブランド イシュアー カード会員 アクワイアラー 加盟店 4パーティースキームの図

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あの図を使って STORES のポジションを紹介 8 国際ブランド イシュアー カード会員 アクワイアラー 加盟店 決済サービスプロバイダ(PSP)である STORES 決済 今日はPSPの立場で 見えている話をします

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本日の発表内容 私が関わったプロジェクトの紹介 電子マネー決済を事例に、STORES 決済の内部構造をそれとなくお伝え 開発時の注力ポイントをそれとなくお伝え 9

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STORES 決済における電子マネー

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そもそも電子マネーって? 日本銀行(のWebサイト)曰く、 11 「電子マネー」とは、一般に、利用する前にチャージを行う プリペイド方式の電子的な決済手段を指します。 利用者は、電子的なデータのやり取りを通じて、 現金(貨幣や紙幣)と同じように、モノを買ったり サービスを受けたりすることができます。 https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/money/c26.htm

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そもそも電子マネーって?(続き) しかしSTORES 決済 では、ポストペイもあるiDやQUICPayも電子マネーと定義 12 https://www.st.inc/news/2024-06-10-payments-id

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ペイメントカード業界のあの図(再掲) 13 国際ブランド イシュアー カード会員 アクワイアラー 加盟店 決済サービスプロバイダ(PSP)である STORES 決済

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電子マネーにおいても、同様の構造 14 電子マネー ブランド イシュアー カード会員 アクワイアラー 加盟店 決済サービスプロバイダ(PSP)である STORES 決済

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小話: 鉄道会社とアクワイアラー ある日京成鉄道に乗っていたら、車内広告でPASMO加盟店募集の広告を見る 「京成 PASMO 加盟店」のクエリでGoogle検索すると、確かに情報がある! 15 https://www.keisei.co.jp/keisei/tetudou/accessj/assets/pdf/pasmo.pdf 他の鉄道事業者も 同様に募集している

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電子マネーにおいても、同様の構造 16 電子マネー ブランド イシュアー カード会員 アクワイアラー 加盟店 STORES 決済から見える範囲の詳細を紹介

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クレジットカード決済の電文の流れ(概略図) 17 アクワイアラー 加盟店 決済端末 スマホ BFF 決済 モジュール 次の説明のために かなり抽象化している

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電子マネー決済の電文の流れ(概略図) 18 アクワイアラー 加盟店 決済端末 スマホ 純粋な決済のための通信は、モバイルで完結

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電子マネー決済の全体的な通信の流れ(概略図) 19 アクワイアラー 加盟店 業務のために、スマホとBFFとの通信が決済の前後にある 決済端末 スマホ BFF 電子マネー モジュール ①決済開始 ②決済電文 ③成功可否記録 ④レシート送信

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証明書 について 決済の通信においては、加盟店のスマホからの通信が直にアクワイアラーに向く 決済通信のために、決済端末ごとに事前に証明書を発行しており、 証明書の管理はSTORES 決済(バックエンド)側の責務 20 アクワイアラー 加盟店 決済端末 スマホ BFF 電子マネー モジュール 証明書取得

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ここまでの整理 STORES 決済について知ることができた 電子マネーについて知ることができた 電子マネーの登場人物について知ることができた STORES 決済の電子マネーの電文やり取りについて、軽く知ることができた 21

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決済手段の追加

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STORES 決済 は今年の6月に電子マネー「iD」に対応しました 23 https://www.st.inc/news/2024-06-10-payments-id

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iD決済機能の追加 ■バックエンド側が取り扱うものにおいては、決済手段ごとにそこまで差はない QUICPay提供時(2023年11月)時に仕込んでいたものもあった ブランドのルールとして、売上票に記載する項目が異なる e.g. カード番号の形式が異なるので、何文字まで表示させる、とか ■加盟店管理の機能実装のコストが高かった 利用可能になるタイミングは、(内部的には)決済手段ごとに異なる というか、つまり...... 24

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利用可能になるタイミングは、内部的には決済手段ごとに異なる とは? クレカ二次審査(VISAとMastercard以外の審査のこと)を通過していることが、 QUICPayの利用条件(それはそう) 25 「STORES 決済 サービスガイド - Q 利用できる電子マネーはなに ?」より

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再度あの図 26 電子マネー ブランド イシュアー カード会員 アクワイアラー 加盟店 ここまでシンプルに1つのアクワイアラーであるように話していましたが......

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あの図の右側の詳細 27 電子マネー ブランドB アクワイアラー B 加盟店 当然、このような図になっていてもおかしくはない 電子マネー ブランドA アクワイアラー A 電子マネー ブランドC アクワイアラー C ※契約相手がある話なので 明言はしませんが...... 一般論としてブランド・ ACQごとに、連携する情報は異なる

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ブランドごとに許可されている業種・業態が異なる例 28 「STORES 決済 サービスガイド - Q 取扱いブランドと対象外業種」より 先月からタクシーが利用可能に なった

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加盟店申込後にどのようなことが行われているか 29 加盟店側の初回申込時の申告情報で分岐を作って、各決済手段ごとに情報連携 電子マネー ブランドB 加盟店 電子マネー ブランドA 電子マネー ブランドC A B C 情報連携に関する機能を 新規ブランドのために追加する 内部処理フローの整理や Web向けのAPIのスキーマも変更 (当初は電子マネーが1ブランド のみのため、それに特化)

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既存加盟店の取り扱いについて 30 加えて、既に利用してくださっている加盟店の開通も別途対応 電子マネー ブランドB 加盟店 電子マネー ブランドA 電子マネー ブランドC C 既存加盟店分は 利用可能状態に遷移させる ビジネス職種の方と協力が必須

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決済手段の追加、ここまでの整理 31 電子マネー「iD」に対応 加盟店の管理機能の実装部がなかなか複雑 新規申し込み対応だけでなく、 既存の加盟店の対応なども必要であるため、段取り力が試される エンジニアだけでなく、ビジネス側との連携がうまくできてないと破綻する その他にもQAチームにかなり助けられた

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まとめ: Welcome Fintech Communityによせて

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まとめと決済サービスの面白さ(私見) まとめ 電子マネー決済を事例に、STORES 決済の内部構造をそれとなくお伝え 開発時の注力ポイントをそれとなくお伝え 話せなかったこと「インボイス対応」「処理未了」 決済サービスの面白さ(私見) 自社サービスではあるが、巨大なシステムの一部である→バランス感覚 良いか悪いかは別にして、プロトコルがしっかりしているところ 他のWebアプリ開発を知らないため比較することはできないが、お固い部分はありそう 33

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Impress Watch『「クレカを止めても不正利用が止まらない」のメカニズム』 34 https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/suzukij/1612388.html 最近見たWebの記事が非常に読み物として面白かった

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Impress Watch『「クレカを止めても不正利用が止まらない」のメカニズム』 「何が書いてあるの?」 iPhoneの電子マネー決済ではオーソリを回避できる場合があり、 たとえクレジットカード側を利用停止しても、不正利用可能 感想: 1年前の私は、これを読んでも何が書いてあるかわかんなかったと思う 記事に書かれていることの多くのことは業務では使ってないが、 電子マネー決済に触れたことで、土地勘を得ることができた 35

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小話: 決済マニアと鉄道ファン 私はそこそこ鉄道が好きなんですが、 鉄道事業者の方は「鉄道ファンの人は採用しない」と明言される印象 世の中には決済マニアと呼ばれる方々もいて、 私の知らないような知識をインターネット上で開示されている STORES 決済の開発チームはがっつり決済マニアはいなくて、 素朴にWebアプリを開発している 「決済マニアの人は採用しない」と明言することはないだろうし、 ドメイン知識に助けられることは、結構あるな〜という体感がある 36

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決済の知識をどのように身につければいいだろう...(参考文献紹介) 37 一つは決済関連の業務に従事することですが。 以下の本は結構面白く読めて、しかもわかりやすいのでおすすめ (Kindleもある) 本田『図解クレジットカードビジネスの実務』(2017年) 宮居『決済サービスとキャッシュレス社会の本質』(2020年) 他にもおすすめ本があったら教えて下さい!

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まとめと決済サービスの面白さ(私見) まとめ 電子マネー決済を事例に、STORES 決済の内部構造をそれとなくお伝え 開発時の注力ポイントをそれとなくお伝え 話せなかったこと「インボイス対応」「処理未了」 決済サービスの面白さ(私見) 自社サービスではあるが、巨大なシステムの一部である→バランス感覚 良いか悪いかは別にして、プロトコルがしっかりしているところ 他のWebアプリ開発を知らないため比較することはできないが、お固い部分はありそう 38

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(おまけ)会場での対面でのQ&A ● Q. Impress Watch の記事って結局どういうこと...? ○ A. 書いてある内容をお伝えしました(うまく説明できた自信はない) ○ iPhoneの仕組み, 電子マネーの仕組み, クレジットカードの仕組みの合わせ技である ● (スライドにQAって書いてありましたけど)QAってどこが大変でしたか? ○ いわゆる状態遷移のテストがそれなりに膨大であるという認識 ○ 例: ■ 業種ごとに利用の可否があり、組み合わせがある ● また、利用可否だけでなく、特別な料率を利用できる業種などもある ■ 加えて、内部的には決済手段ごとに審査状態を持つ ● (決済手段Aは審査完了、Bは審査中とか) ○ QAチームがシステムの分析から、網羅的にテストを担当しています 39