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Railsで4GBのデカ動画ファイルの アップロードと配信、どう実現する? 2024.11.08 Fri. Kaigi on Rails2024事後勉強会@SmartHR 瀬尾 智彦 SmartHR プロダクトエンジニア

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瀬尾智彦(theo)です。 2023年6月にSmartHR入社 スキル管理・学習管理というプロ ダクトの開発を担当しています。 Rails歴は12年くらい。 今日はプロポーザルを供養しにきました。

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スキル管理・学習管理

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https://smarthr.jp/function/skill/

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https://smarthr.jp/function/learning/

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「スキル管理」に学習の管理ができるフィーチャーを開 発することに。開発期間はおおよそ3ヶ月。 自前でスライドや動画の登録や配信ができる仕組みで 動画は1ファイル最大4GBまで扱えるようにしたい。 ※実際はもっと丁寧なコミュニケーションがありました

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スキル管理に学習管理ができるフィーチャーを開発す ることに。開発期間はおおよそ3ヶ月。 自前でスライドや動画の登録や配信ができる仕組みで 動画は1ファイル最大4GBまで扱えるようにしたい。 ※実際はもっと丁寧なコミュニケーションがありました

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最大4GB

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落ち着いて状況を整理しましょう ● スキル管理というプロダクトに新たなフィーチャーとして学習管理機能を作る ● ユーザーが従業員の学習用にスライドや動画を登録・配信できるシステム ● 動画の登録や配信はYouTubeなど外部サービスは利用せずに自前で作る ● 開発期間はおおよそ3ヶ月 ● 動画は1ファイルで最大4GBまで

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動画は1ファイルで最大4GB

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SmartHRって技術スタックが統一されているんですよね。 バックエンドはほぼすべてのプロダクトがRailsです。 動画を扱ったプロダクトが他にもあるかもしれない。

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SmartHRって技術スタックが統一されているんですよね。 バックエンドはほぼすべてのプロダクトがRailsです。 動画を扱ったプロダクトが他にもあるかもしれない。 なかった😭

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実現方法を考える

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スキル管理には資格の証明書の写し(PDF or 画像) を保存する仕組みがあり、これを流用できないか?

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スキル管理には資格の証明書の写し(PDF or 画像) を保存する仕組みがあり、これを流用できないか? Cloud Runにはhttp/1では最大リクエスト容量が32MBまでしか 受けられない制限が存在します。 https://cloud.google.com/run/quotas?hl=ja#request_limits

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スキル管理には資格の証明書の写し(PDF or 画像) を保存する仕組みがあり、これを流用できないか? スキル管理ではサーバーにpumaを利用していて、http/2が利用 できません。nginxを前段に立てるなどすればhttp/2が利用でき ますが、なるべく既存のサーバー構成は変えたくない……。 ※後から気づいたのですがthrusterを利用するという手もあったかもしれません。

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社内の有識者やGoogleのサポートエンジニアに相談

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社内の有識者やGoogleのサポートエンジニアに相談 署名付きURL/Cookieを利用して、Cloud CDN経由でブラウザ からCloud Storageに直接アップロード&配信をする方式を採用 することにしました。

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署名付きURL 署名付き URL は、リクエスト時における制限付きの権限と有効期限が設定された URL です。署 名付き URL のクエリ文字列には認証情報が含まれているので、認証情報を持たないユーザーで もリソースに対して特定の操作を実行できます。 https://cloud.google.com/cdn/docs/using-signed-urls?hl=ja 署名付きCookie 署名付き Cookie は、署名付き URL の代わりとなる手段です。アプリケーションでユーザーご とに数十、数百の URL に個別に署名するのが不可能な場合は、署名付き Cookie によってアク セスを保護できます。 https://cloud.google.com/cdn/docs/using-signed-cookies?hl=ja

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ファイルアップロードをシーケンス図で書くと こんな感じです。 1. Rails(アプリケーションサーバー)で動 画ファイル管理用のデータを事前に作 成 2. Railsで署名付きURLを発行 3. ユーザー(管理者)がブラウザから直接 ファイルをアップロード 他にもなりすましを防ぐための仕組みを入 れたりしています。

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before after

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神資料 https://cloud.google.com/blog/ja/products/gcp/uploading-images-directly-to-clou d-storage-by-using-signed-url?hl=ja

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これで4GBの動画ファイルでも無事にアップロードで きるようになりました。よかった。

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これで終わりじゃなかった

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ファイルは保存できるようになったが、Railsを経由 せずにストレージに保存するため、アップロードが終 わったかどうかを検知できない問題

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ファイルは保存できるようになったが、Railsを経由 せずにストレージに保存するため、アップロードが終 わったかどうかを検知できない問題 💡Cloud StorageのfinalizeイベントトリガーでCloud Functionsを起動することでアップロードの検知できるようになり 解決

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アップロード後処理をシーケンス図で書くとこ んな感じです。 1. Cloud Storage(GCS)からfinalize イベントをトリガーにCloud Functionsを起動 2. Cloud FunctionsからRailsに後処 理開始のリクエスト 3. Railsからステータス更新などの後処理 を実行 いきなり配信されないようにアップロード用と配信用 のバケットを分ける工夫をしています

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これで動画アップロードの完了も無事検知できるよう になった。よかった。

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これで終わりじゃな(ry

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これでアップロードは検知できるようになったが、 ユーザーの環境に合わせて安全に動画を配信しなけ ればならない問題

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突然ですが、動画の形式ってどのくらいあるかご存知 ですか?

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コンテナとコーデック ● 動画そのもの+音声+メタ情報をまとめたコンテナ(MP4とかWebMとか) ● 動画を圧縮してエンコード・デコードするコーデック(H.264とかVP9とか) ● 音声を圧縮してエンコード・デコードするコーデック(AACとか) MDN - ウェブ動画コーデックガイド https://developer.mozilla.org/ja/docs/Web/Media/Formats/Containers

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動画って200種類あんねん (CV:アンミカ)

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動画のコーデックの深淵を覗いてしまった。 現時点で対応しているコンテナはMP4とMOVのみ。 コーデックは変換しないことに。 (興味がある方がいたら後でお話しましょう)

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これでアップロードは検知できるようになったが、 ユーザーの環境に合わせて安全に動画を配信しなけ ればならない問題 配信そのものは署名付きCookieを利用して、CDN経由で CloudStorageから直接配信することで解決

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署名付きURL 署名付き URL は、リクエスト時における制限付きの権限と有効期限が設定された URL です。署 名付き URL のクエリ文字列には認証情報が含まれているので、認証情報を持たないユーザーで もリソースに対して特定の操作を実行できます。 https://cloud.google.com/cdn/docs/using-signed-urls?hl=ja 署名付きCookie 署名付き Cookie は、署名付き URL の代わりとなる手段です。アプリケーションでユーザーご とに数十、数百の URL に個別に署名するのが不可能な場合は、署名付き Cookie によってアク セスを保護できます。 https://cloud.google.com/cdn/docs/using-signed-cookies?hl=ja 思い出すシリーズ

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なぜ署名付きURLではなく、署名付きCookie? 署名付きURLだとつらいケースがあるからです。 HLSという動画配信の規格があり、雑に言うと動画ファイルを数秒単位で細かく分割し、順番に配 信していくことでネットワーク環境が悪い場合でも、快適に動画を視聴できること特徴です。 ファイルを分割して配信する関係で、ファイルごとに署名が必要になる署名付きURLとは相性が 悪く、将来的にHLSに対応することも考慮して、特定のパス配下のファイルは一括で署名してアク セス可能になる署名付きCookieを利用することにしました。

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これで動画アップロード、完了検知、配信も無事できる ようになった。よかったよかった。

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まとめ

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● 巨大ファイルのアップロードやダウンロード は署名付きURL/Cookieを使おう ● Railsは署名付きURL/Cookieの管理な ど適材適所で使おう

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ありがとうございました! 今日の話の詳細を同じチームのメンバーがSmartHRのテックブログで公開しています! 学習管理機能の開発において使った技術 https://tech.smarthr.jp/entry/2024/07/31/171330