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(公社)日本滑空協会 理事 TEAM MARU パイロット 丸山 毅

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自己紹介 丸山 毅(まるやま たけし) 54歳 総飛行時間 4,100 時間 クロスカントリー距離 17万km サラリーマンパイロットとしてグライダー競技へ挑戦 グライダー世界選手権 1999年、2008年、2014年、2018年、2022年(最高成績27位) 2012年以降継続してヨーロッパでのグライダー競技会(ハンガリー、チェコ、ポーランド、ドイツ) TEAM MARU パイロット ブログ http://maru-wgc.blogspot.jp/ Facebook https://www.facebook.com/teammaru 家族 妻 外資系IT企業 エンジニア (公社)日本グライダークラブ(板倉滑空場) 理事・チーフインストラクター (公社)日本滑空協会 理事 2

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今日お話ししたいこと • グライダーと私 • グライダー競技の世界 • 皆さんがやっておくと良いことは? • Q&A 3

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グライダーと私 4

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グライダーとの出会い 6

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学生時代 1年生春 早稲田大学入学・航空部入部 2年生春 1stソロ 同期ではかなり遅い方 2年生夏 2ndソロ 同期ではかなり遅い方 早い同期は銅賞 3年生夏 自家用操縦士取得 4年生冬 関東大会 予選落ち(写真失敗) 挫折 全国大会 団体優勝 仲間に感謝 8

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上手い人では無かった 誰にでも可能性があります! 9

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グライダーの楽しみとは? 空を飛べること! 10

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グライダーフライトの面白さとは? 2025/6/30 11 空を飛べること(第1段階の楽しさ) 自分で操縦が出来るようになること (第2段階の楽しさ) 第3段階の楽しさ 早くこの楽しさに触れよう! グライダー 競技フライト クロスカントリー フライト アクロバット 飛行 今日の話 11

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クロスカントリーフライトとは • 目に見えない上昇気流を使って高度を獲得 (ソアリング)、さらに遠くへ行く! • 必要とされる能力 • 操縦能力 • 気象観察・判断力 • 意思決定力 • 体力 • レベルが上がる→上昇気流の予測が当たる→ 様々な気象条件でのクロスカントリーフライトが 可能になる! • さらに遠くを目指したくなる! 出典:https://www.ssa.org/lift-sources/ 12

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学生の頃考えていたこと クロスカントリーフライトをしてみたい 山を飛んでみたい 現実には部員数が多く、機体が少なく、クロスカントリーフライトできず 卒業したらクロスカントリーフライトをしよう! →社会人クラブでグライダーを継続(関宿→板倉) 13

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妻沼滑空場 170km 板倉滑空場 南アルプス、北アルプス 14

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宮城県 蔵王山へ 妻沼滑空場 板倉滑空場 200km 鬼怒川滑空場 角田 滑空場 蔵王山 15

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ナミビアでのフライト 16

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グライダー競技の世界 17

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グライダーの競技フライトとは? • 競技内容 • 決められたコース(タスク)を上昇気流を使って飛行する速度を競う(速度競技) • 複数日の競技を実施、その累積スコアを競う • コース設定は気象条件に応じて毎日異なるコース 18

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グライダー世界選手権とは? • 1937年~ 隔年開催(2018年~クラス毎隔年で毎年開催)、2025年は第39回大会 • 開催国 • ポーランド x 6、ドイツ x 6、アメリカ x 5、フランスx 5、オーストラリア x 5、リトアニア x 3、イタリア x 3、 ハンガリー x 3、スエーデン x 3、アルゼンチン x 2、フィンランド x 2、イギリス x 2、スペイン x 2、スロバキア x 2 • 世界チャンピオン輩出国 • ドイツ x 26、フランス x 25、ポーランド x 23 、イギリス x 15、アメリカ x 7、オーストラリア x 5、イタリア x 5、オランダ x 5、他 • 直近10年 ドイツ x 7、ポーランド x 6、フランス x 4、イギリス x 2、オランダ x 2、 他 • 参加国数 • 25ヶ国~30ヶ国 • 参加選手数・機体数 • 各国2名/クラス、各クラス最大 50名程度 • 3クラストータル 120機程度(各クラス40機前後) • 日本からの参加者 • 1956 年~参加、延べ 52人、34大会、最高成績 2位 出典:https://www.wgc2025.cz/ 19

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グライダー世界選手権とは? • クラス • 機体の翼長等で6クラスにカテゴリー • クラス毎に隔年開催 • 奇数年:スタンダードクラス、クラブクラス、 15mクラス • 偶数年:18mクラス、 20mクラス、オープンクラス • タスク • 250km - 700km 平均速度 70 km/h – 140km/h 3時間-6時間 • 試合期間 • 13日間 20

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出典:https://www.wgc2025.cz/ 21

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世界選手権 400kmタスク例 ポーランドエリア ベルリン空港の制限空域を避けながら飛行 ポーランド・ドイツ国境 大会開催地 27

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なぜ競技フライトを始めたか? • 人と争うのが好き? • 一番になりたい? •より空を読めるようになりたい(読めると楽しいから!) 1. 他のパイロットと「比較」することで「課題」を明確にできる 2. 「継続的に目標設定」できる 3. 新しい技術、新しいトレンドを吸収できる ←違います 競技会から得られたことを、 操縦教育のイノベーションへ! 28

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なぜ競技フライトを続けているか? • きっかけ • 人生計画 • 自分でコントロールできないことは発生する • 人生は長くない 自分のやれるうちに、自分のやりたいことをやろう! 29

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皆さんがやっておくと良いことは? 30

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「グライダーでやりたいこと・実現したいこと」 を考えてみよう! ⚫ソロフライト、自家用ライセンス、学生選手権 → これは「通過点」と考えてみよう 「グライダースポーツ」の醍醐味は4年間の先にある! ⚫ソアリング、クロスカントリーといった本来の面白さを「長期目標」に設定してみよう →「長期目標」を達成するために、「中期目標」、「短期目標」を設定してみよう 通過点は「中期目標」or「短期目標」にしよう ⚫長い目で「グライダーでやりたいこと」を考えてみよう!(最初は曖昧でok) 31

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グライダーでやりたいことをみつけるには? まずは視野を広く持とう!情報を集めよう! • 世界とつながる = 自分の世界が広がる = やりたいことが見えてくる • グライダー = 「世界とつながれる共通言語」を習得しよう! (中学レベルの英語でok!) • 世界のグライダー界で何がおきているか、に関心を持とう どこからはじめればよい?? 32

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グライダーYouTuber Stefan Langer https://www.youtube.com/@SteFly 出典:https://rankingdata.fai.org/displaypilotdets.php?pilotid=7203 33

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学生の内にしておくとよいと思うこと 1. 「グライダー能力」の強化 2. 良きメンター(指導者、理解者)を得る 3. 仲間をつくる 34

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1. 「グライダー能力」の強化 自分の考えを持つ、自分の人生をコントロールする意志を持つ • グライダーは意思決定のスポーツ • Why、What を考える習慣を持つ 一人でグライダーをハンドリングできる力 • 機体組立、点検、トレーラーハンドリング(本質的に個人スポーツ) • 気象知識、気象観察力→気象判断力 人生をグライダーに最適化して設計 • 安定した生活基盤(仕事/職業選択(休暇が取れる、稼げる、業界の将来性等)、家庭) • コミニケーション力、英語力、一般教養 35

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2. 良きメンターを得よう(私の場合) 19歳 21歳 24歳 37歳 38歳 43歳 28歳 グライダー 開始 滝川 サマトレ チームスチャレンジ 日本選手権 1999 世界選手権 2008 世界選手権 2014 世界選手権 トレーニング Soarist ユースキャンプ Yuji Higuchi Yoshiyuki Kawashima Mitsuru Marui Janus Centka 44歳 2015 ポーランド トレーニング Toru Ikeda 46歳 2017 ナミビア トレーニング 50歳 2021 ナミビア トレーニング Wolfgang Janowitch 36

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3. 仲間を作る ~「TEAM MARU」の歩み~ 37

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「TEAM MARU」とは グライダーパイロット 丸山 毅の 世界選手権出場をサポートすると共に 野望と目標に向かう 「グライダーチーム」です! 38

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「TEAM MARU」結成 2008年夏 世界選手権大会参加(ドイツ・リュッセ) 37歳 1999年夏 世界選手権大会 初参加(ドイツ・バイロイト)28歳 ・とりあえず勢いで出てみた大会 ・クルー日本から1名(彼女)現地在住NZ人クルー1名 ・大学OB会、勤務先からの支援 ・技量向上させたいと出た大会 ・クルー日本から3名(同期友人2名、妻) ・大学OB会からの支援 クルーやサポーターがいないと大会に出られない。仲間内だけでは限界が… 2013年春 TEAM MARU 結成(42歳) ・「個」から「公」へ ・世界選手権に継続参加可能な環境作り ・MARUに続くパイロットのための環境づくり 2014年夏 世界選手権(ポーランド・レシュノ)に向けTEAM MARU活動開始 2014年、2018年、2022年の世界選手権に参戦(2026年大会へ向けて準備中) 39

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TEAM MARU ビジョン・目標 40

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「グライダー」を もっと多くの人に知ってもらい 楽しんでもらいたい! 野望

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3つの目標 1 世界の トップ10 入り! 2 3 グライダー 認知アップ! 若手を 世界へ! 普及 勝利 育成 トリプルミッションモデル 42

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3つの目標 1 世界の トップ10 入り! 2 3 グライダー 認知アップ! 若手を 世界へ! 43

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TEAM MARU での発信 フェイスブックページ https://www.facebook.com/TeamMaru ブログ http://maru-wgc.blogspot.jp/ X https://x.com/TeamMARUgliding 49

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強い個の集合= TEAM MARU 50

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本日のまとめ 51

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私が伝えたいこと • グライダーを楽しもう! • グライダーを通じてやりたいことを長期的に考えてみよう! • 航空部・グライダー部や、グライダーの世界を通じて得られる友人は大切! 52

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Q&A 53

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空を飛ぶことが好きになったきっかけはなんですか • 純粋に楽しい 54

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グライダーを続けてこれた理由と モチベーションの保ち方を教えて下さい • 持続的な目標を持ち続けているので、一つ達成してもすぐ次の目標ができる、 これにより飽きない • フライト中に「ゾーン(フロー)」の状態に入れたときの 気持ちよさ • 「グライダーを続けられる環境」を維持し続けられたこと • 家庭の理解 • 仕事(休暇、勤務地)、勤務先の理解、お金 • 健康 • フライト仲間やサポーターの存在 55

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丸山さんにとってのグライダーの魅力はなんだと 思いますか。 • 大気のエネルギーを使って飛べること • 綺麗な景色 56

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グライダーの1番の魅力を教えていただきたいです。 • ゾーン(フロー)の 状態に入れたとき 57

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グライダーに搭乗している時に目を奪われるよう な光景に出会ったことはありますか • モンブランを超え、マッターホルンが見えた時のフライト 58

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大会で行った国のうち一番よかったところと 美味しかったもの • 大会じゃないですがフランス 南フランスの山飛びは綺麗で面白いです 食事が抜群に美味しい 59

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滑空中に意識していること • 空と地上の観察(雲、鳥、地面、植生、用水路、煙、トラクターなど) • 左右の煽られ方(放っておくと沈む空気の方に行く)Good airに寄せる • リラックス 60

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直線滑空のコツを教えてください。 • トリムセット • 握りしめない、指を添える程度 • リラックス(深呼吸、胸を張る)= 皮膚感覚で水平、G変化が理解できる • うまくいかなくなったら操縦桿を緩めて トリムで飛ぶ 61

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教官から上手いねの褒めていただくことがあるのですが、いまいち上 手いという感覚がよくわかっていません!丸山さんが思う上手い操 縦とはどのようなものなのか教えていただきたいです。 • 初期の上手い操縦= ハンドアイコーディネーションに優れる いわゆる「運動神経が良い」=感覚に優れる • 良い操縦 = G変化がスムーズ • 上達が早い = 飽きっぽい場合もあり • 努力を継続できることも才能 (後天的に身につけられると言われている) • 習慣化(良い癖づくり) 62

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毎回のフライトで意識していることはありますか。 私たち学生が航空部の練習などで意識すべきことや、やっ ておくべきことはありますか。 • 毎フライト目標設定して、フライト後に振り返る。 良かった点、うまくいかなかった点、何故か、次にどうするかを整理して、次のフライトで目標設定する • 自分の得手不得手の理解に繋がる(自分を知る) • 良いイメージを残す、悪いことは忘れる 63

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将来、全国大会で良い成績を残せるような確かな腕前を 持つ滑空機乗りになるために、初心者がまず突破すべき 関門はなにか、またいかにして突破すべきか。 • ある程度量を飛ぶのは必要 • 観察して、自分で考えて、決める力を養う • 良い成績を出したい = 結果目標(コントロールできないこと) • 結果目標に目が行くと良いフライトをすることは難しくなる(雑念にとらわれる) • 行動目標(コントロールできること)にフォーカス • 結果目標を達成するために必要と思われる要素に分割 • 楽しめるようになる、自分のパフォーマンスを出しきれるようになる 64

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丸山さんが安全に飛ぼうと思ったいちばん大きな出来事が あれば教えて欲しいです。 見た方がいいインターネットサイトはありますか。 • 最初のロールモデルのパイロットがオーストラリアでの練習の競技フライト中 に事故で亡くなったこと • 航空事故調査報告書 65

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グライダーをしてて良かったと思ったこと。 グライダーを通して学べること。 日本と世界のグライダーのレベルや規模感の違い。 • 良かったこと • 「ゾーン」の状態の時に気持ちよさ(人馬一体、空がよく読める(次に行くべき場所が自然に分かる) • 各国に友人が出来る • 学べること ・チャレンジする面白さ ・グローバルでの考え方 • レベル、規模感の違い • グライダーが「文化」になっていること(家族の遊び場) • グライダーファミリーの概念が形成されていること 66

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エアラインパイロットは目指していましたか? • 私は考えたことはありませんでした。。。 大学進学前は飛行機を作る方に興味がありました。 進学後はグライダーで飛ぶほうに興味が移り、 飛行機を作ることへの興味は無くなりました。 • モーターグライダーも乗りますが、 グライダーの方が楽しく感じます。 67

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航空部と学業(理系)の両立のコツとかあったら 教えて頂きたいです! • 優先順位付け • バランスを考える • メリハリをつける • 周りに理解してもらえるように なる 社会人になってからグライダーを 継続する上でも大事なことです。 68

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仲間とのやりとりで1番苦労したことはなんですか? • 私は人の気持ちを理解することが苦手 • 衝突したことも多々あり • お互いに相手の強み、弱み、長所、短所を理 解 →相手の良さ、得意なこと、苦手なことを理解 • グライダーの運航 = 安全がベース → 忖度はしていられないことがある • ぶれないこと、信頼を得られる行動を継続する こと→理解してもらえるようになる 69

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グライダースポーツの世界を 楽しみましょう! 70