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DX・全社変革のドライバーとなる「OKR」 日本ディープラーニング協会 顧問 デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 森 正弥 2021 Mar https://note.mu/masayamori

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2 • 日本ディープラーニング協会 顧問 • 東北大学 特任教授 • デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 • メルカリ R4D 顧問 • APEC(アジア太平洋経済協力) Project DARE アドバイザー • 元 楽天 執行役員 / 楽天技術研究所 所長 森 正弥 https://note.mu/masayamori • 先端技術の動向の情報発信を行い、産業横断的な公職にも携わる • インターネット企業では、開発組織のグローバル化・研究開発の統括に従事、新サービスも創出

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3 「 (人間体験)に基づく 」 https://note.com/masayamori/n/n4353e43c019d • 禍により、世界各国で外出禁止、自 粛の要請、都市封鎖(ロックダウン)が行われ た。 • 様々な仕事がオンラインへの移行を試みつつも、 エッセンシャルワーカーは社会インフラと人々 の生活を支え続け、人々の社会観・仕事観・人 生観は大きく揺さぶられるとともに、人間とし ての体験の大切さに目覚めた。 • デジタルシフト、 が叫ばれているが、この 禍によって自覚された人間体験の大 切さに基づいて、 やロボティクスに代表され る技術も適用されなければいけない。

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4 DXは全社変革である

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5 「生存と繁栄の鍵を握る (デジタルトランスフォーメーション)」 https://note.com/masayamori/n/n78570b50003a • とは、変わりゆく顧客やマーケットからの要 請に答えるために、デジタル時代の技術や価値 観、そしてステークホルダーとの新しい関係の 在り方をビジネスのあらゆる側面に統合してい く全社改革といえる。 • ターゲットとしては主に、顧客とのリレーショ ンの効果とビジネスオペレーションの効率性を 高めることを狙うことになるが、そのためにも、 システム、プロセス、組織と文化をアップデー トし、新しい世代や変化を取り込んでいくこと が肝となる。

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6 は全社変革である 更 に そ の 先 DXとは? • デジタル時代の技術や価値観、そしてステークホルダーとの新しい関係の在り方を ビジネスのあらゆる側面に統合していく全社改革 背景・環境 単なる最新のIT環境を 整えることではない ジェネレーション の価値観 組織文化・業務理解 が必須 リスキルが大事 全社変革 消費者の 「個」客化 顧客接点のオム ニチャネル化 生み出される 新マーケット 企業システムの クラウド化 製造・販売の 統合 ライブコマース 等の新潮流 COVID-19の 不可逆的変化 変わりゆく顧客とマーケット、そしてシステムの要請

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7 は全社変革であり、様々なプロジェクトによって構成される。その実現には、プロジェ クトを統括する「プログラムマネジメント」が欠かせない 全体としての マネジメント • 個々のプロジェクトでなく、全体の「プログラム」を監督する • 個々のタスクや成果にフォーカスしすぎると、そもそものゴールに 貢献しないプロジェクトを容認してしまうこともある • 全社としてやるべきこと、解決すべき課題、チャレンジしたい目標 に、プログラムの全体像がずれていないか管理する 全体を進める ための アクション • プロジェクトの優先順位と配置を、プログラムを進めるために行う • ボトルネックとなるプロジェクトには入り込み、問題を除去する 全体の コミュニケー ション • 経営と事業、各プロジェクト間の橋渡し マネジメント手法 そのものより、 全社目標に対する 情熱とそれを解決 する胆力 DX(全社変革)をなすためのプログラムマネジメント プログラム マネジメント

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8 DX・全社変革の事例

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9 インターネット企業での 組織構築・マネジメント導入の事例を通し、 が において有 効であることを紹介します 背景・問題意識  経営レベルからも見通しのよい「新しい事業管理の指標・マネジメント」の模索  どこで何が行われ、どれぐらいの成果が出ているか不明という状況の解消  現場力はあるが不透明なボトムアップカルチャーからの脱却  様々な事業の成長、新規事業参入に対応したガバナンスへの変更 DX戦略・組織 ・マネジメント の構築  マネジメントフレームワーク導入とプロジェクトの整理  KGI とそれに紐づくKPIツリーへの統合とOKR導入  透明性を確保したガバナンス体系への移行  成果およびコストが見える化  熱意ある成長とダイナミックなオペレーションを実現 現在のデータ・AI・デジタルに関するケイパビリティを維持した上 で、透明性を確保し、ダイナミックな組織を実現する インターネット企業でのDX事例

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10 今後の事業展開を踏まえた際、現状の組織のあり方では限界を感じ、 インターネット企業にて実装した 推進組織 (データ& 組織) Data Lake Platform & Product Consultant & Analyst R&D (Core Science) • 部門がデータを集め、 部門が 等でソリューションを提供、 部門が、ビジネスと共に新領域への挑戦を行う。研究所は各部署に支援 • 各クライアント企業における 推進組織や 直轄組織へのリファレンスになりうる • というコンセプトで、いわゆる と をつないだ取組みとしてみることも可能 Data Business

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11 各プロジェクトの指示系統を整理、役員でのレビューでコントロールを実施。リスキルで 人員を育成することで の完成度を高める アプローチ  全社横断的にデータ&AI にまつわるProjectをマッピング  プロジェクトの指示系統を整理・統合。プロジェクト責任者を明確化  上位のレイヤーマネージャーと、全体のPMOを設置  データ&AI の開発は中央へ寄せ、データ活用は現場へ開放  各マネージャー、PMO による毎月の推進会議  推進にあたっての課題を識別し、議論し、取り除く  三か月に一回 グローバル全役員でレビュー  主要なプログラムは、主要な役員でのレビューを実施  DXの中でリスキルを遂行  他職種からPM・PMO。コンサルタントからデータサイエンティストへ  AI人材育成プログラムを構築。AIエンジニアを育成  熱意ある目標設定と管理  全体のKPI/KGI系統が整理されたことにより、各部門・部署・個人の OKR導入が容易に。リスキル・人材育成にもつながる 整理 選択と集中 推進 レビュー リスキル 育成 体制 オペレーション 人材

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12 OKRを概観

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13 目標設定と管理のマネジメント 広く世の中に普及 古くからの例 KPI MBO SMART BSC Peter Drucker が提唱 George Doran が提唱 バランススコアカード KaplanとNorton が提唱 OKR • 社の社長 によって実装されたのを起源 とし、比較的新しいマネジメントフレームワークとされて います。(初出は 年) • の他には、 、 、 、 、 等のグローバルリーディングカンパニーで活用され ていることで有名です。 • 従前のトップダウンのマネジメントシステムを覆したもの として評価されています。 Andy Grove

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14 は何が違うのか? KPI MBO OKR レビュー頻度 適宜 1年毎 四半期ごと もしくは毎月 目標達成度合いの位 置づけ ステータス計測 報酬の決定要素 熱意ある数値目標 目標の共有思想 (組織による) 管理単位 オープン 期待される 達成水準 100% 100% 60~70%

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15 企業は、 、 を通し、実現すべき究極のゴールを持つ。 は、組織と個々の メンバーがその企業全体のゴールに自律的・自主的に進ませることを可能にする X 企業 究極の 価値観 • : 何を目指すか • : 何をすべきか 究極の ゴール OKR Objectives (目標) Key Results (主たる結果) • 企業やチーム、個人の進捗をモニタリング • 組織とそのメンバーを皆同じ企業全体のゴールに向けて進ませる • 個々の自律性・自主性を尊重、後押ししていく 企業の究極のゴールとOKR

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16 の留意点 戦略的かつ野心的なゴール 会社の究極的目標へ進むための戦略的方向性を体現 そして、週次の計画で日々のタスクやゴール達成のためにすべき週の取り組 みを定めるオペレーションを行う を書く前に、まず、何を達成したいのか、ゴールについて、十分に考えをめぐらし、理解を深める Objectives (目標)とは  年次や四半期等のサイクルで達成される目標   現実的なゴール NG 活動やプロジェクトを行うことではない NG Key Results (主たる結果)とは 会社を改善する、会社を変える、そんな情熱を掻き立てるようなゴール  Objective の達成の度合い、進捗を測る指標  タスクの言い換え NG

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17 を考えるにあたって  今期(四半期)、達成したいと思っている Objective  例えば、売上、マーケットシェア、顧客満足、新規事業創出等の内容で考えてみる ※ 何が Objective にはならないか、という逆のことも検討しておく  このObjectiveは会社のゴールを達成するのに役立つか?  このObjectiveはインスピレーションをもたらしてくれるか?  このObjectiveは会社を前に進めるか?  このObjectiveは期限が切られているか?  このObjectiveは年間の目標なのか、四半期の目標なのか? Objectives (目標)候補を考えてみる 考えるにあたってのチェックリスト

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18 足りうるかのレビュー 目安として、年間や四半期というサイクルにおいて最大 3分の2位が達成されることが期待される Objective は達成することが容易なものではない もし、Objective が期限の十分前に達成された場合は、 野心的な目標を考えなかったのかもしれない ストレッチがあること 四半期の成果が、 Objective の20%ぐらいしか達成しないよ うな状況なのだとしたら、もしかしたらその目標は、年間の Objectiveとして設定すべきだったのかもしれない Not Enough Too Much

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19 のいい例・悪い例 • Q3の売上は会社の過去の売上記録を更新する • 今年USマーケットの首位を獲得する • 年内に第4の収益源となる事業を確立 • 売上を上げ続ける • 今年も業界の四半期顧客満足度ランキングで 1位に輝く いい例 悪い例 会社の売上を上げる Objective を考えてみる  ある種の熱意を掻き立てる  会社を前に進める目標  期限が切られている  熱意あるゴールではない  過去にも達成している  継続的活動とみなせる これらを踏まえ、最終的に、3~5つの を定めていく

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20 の留意点 5000のフォロワーを獲得した時点で50%の達成度合いであることがわかる Objective 1つにつき、3~5つのKey Results を設定 (1億円の新規売上を達成する) • 具体的、定量的、数値でアップデートされるもの • 進捗が割合などで観測可能 • 困難であるが達成可能 (もっとフォロワーを獲得する) • 到達したか・到達してないかのような二分法 • タスクや計画の言い換え(トートロジー) • 「もっと」「さらに」等の上乗せしていくような表現 Good Bad 「もっとフォロワーを獲得する」は、「新規1万のフォロワーを獲得する」等の方がよい Q3の売上で売上記 録を更新する 四半期の顧客満足 度で1位に Objectives (目標) Key Results (主たる結果)

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21 の例 ※違うObjective でも同じKey Results が当てはまることもあります ※これらは具体的であり、定量的であり、チャレンジング Objectives (目標) Key Results (主たる結果) 顧客満足度ランキングで 1位に輝く • 1億円の新規売上を生み出す • 顧客の離脱率(Churn Rate)を10%から7%に減らす • 新規顧客を400名獲得する Q3の売上で売上記録を更 新する • 顧客からのフィードバック回収率を80%に高める • 顧客問い合わせの平均レスポンスタイムを1時間以内にする • 顧客の離脱率(Churn Rate)を10%から7%に減らす

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22 数値的な達成と創造性の誘発を同時に狙っていくことが の精神  これら総体としてもインスピレーションをもたらすかを問う  日々の創造的なチャレンジ、努力を自然に醸成していくものが望ましい Objectives (目標) Key Results (主たる結果) 取り組みの計画を設定していく スケジューリングされたタスクとして整理し、実行する ※単なる数字管理に堕してしまわないように気をつける スケジューリング、実行、そして管理

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23 の運用において、イテイティブな管理とオープンさがポイント  基本は公開して共有し、透明性を確保する  他メンバー・他組織にも参照できるようにする  全社のOKRと自分個人のOKRがつながっていることを 意識することで自分自身の目標の意義を理解する  他部署のOKRを見て、役割分担を理解する  また別部署の野心的なOKRで刺激を受け、高め合う  定期的にモニタリングし、レビューする  例えば、週次・月次でモニタリングされつつ、四半 期等で定期的にレビューし、活動を常に軌道修正し ながらまた問題点を改善しながら前に進んでいく OKR レビュー頻度 四半期ごと もしくは毎月 目標達成度合いの位 置づけ 熱意ある数値目標 目標の共有思想 オープン 期待される 達成水準 60~70% OKRの運用 イテレイティブな管理 オープンさ

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24 を多すぎないようにすること  あらゆるレベルでOKRを設定し、全てモニタリングし参照し合うと、その量に圧倒され てしまい、フォーカスがぼやけてしまう  OKRのモニタリングに時間を要してしまうのであれば、OKRのモニタリング自体が達成 目標になるような本末転倒な状況を招く フォーカスが大事 を多すぎないようにする (個人でも組織全体でも) モニタリングや管理には時間がかかりすぎないように(大切なのは全社の変革) 戦略的かつ野心的なゴール 会社の究極的目標へ進むための戦略的方向性を体現 Objectives (目標)とは  年次や四半期等のサイクルで達成される目標   会社を改善する、会社を変える、そんな情熱を掻き立てるようなゴール  と関係ない活動に注がれて いる時間・リソースを見直し、 の達成に向けて集中 できるように調整していく

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25 アンバサダーを各部署でアサイン OKR PIC / アンバサダー • 各部署で、 のコンセプトの啓発、 フレー ムワークの組織への導入、モニタリング・レビュー とその活用の支援を行う  プログラム・マネージャーのような役割を担ってもらう場合も  彼らの支援を経て、組織にOKRの文化とマネジメントが根付いたら、 あとは日常的に活用し、波状的に成果を創出していく • OKRは、ボトムアップ的で、熱意重視であるため、今までの管理フレームワークと異 なる。OKRアンバサダーを各部署でアサインし、コンセプトの普及・定着が必要

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26 の目標は、全社の究極的な目標の達成。 その実現には、プロジェクトを統括する「プログラムマネジメント」が参考になる 全体としての マネジメント • 個々のプロジェクトでなく、全体の「プログラム」を監督する • 個々のタスクや成果にフォーカスしすぎると、そもそものゴールに 貢献しないプロジェクトを容認してしまうこともある • 全社としてやるべきこと、解決すべき課題、チャレンジしたい目標 に、プログラムの全体像がずれていないか管理する 全体を進める ための アクション • プロジェクトの優先順位と配置を、プログラムを進めるために行う • ボトルネックとなるプロジェクトには入り込み、問題を除去する 全体の コミュニケー ション • 経営と事業、各プロジェクト間の橋渡し マネジメント手法 そのものより、 全社目標に対する 情熱とそれを解決 する胆力 全社変革をなすためのプログラムマネジメント プログラム マネジメント

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27 を使いこなし、大きな成果を達成できる組織へと脱皮していくことは、今日の多くの企 業の喫緊課題でありながら長い旅にもなる のような全社変革においてはとても重要 X 企業 究極の 価値観 • : 何を目指すか • : 何をすべきか 究極の ゴール 企業の究極のゴール、DXとOKR 更 に そ の 先 単なる最新のIT環境を 整えることではない ジェネレーション の価値観 組織文化・業務理解 が必須 リスキルが大事 全社変革 DXとは  そうすることで企業だけでなく、個人も熱意をもって働き、また成長することができる

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28 Appendix

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DX・全社変革のドライバーとなる「OKR」 日本ディープラーニング協会 顧問 デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 森 正弥 2021 Mar https://note.mu/masayamori