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メディウムの再発明 2021/03/02 天重誠二(@tenjuu99)

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品書 ● Motivation ● メディウム ● 芸術文脈に るメディウム ● メタメディウム ● メディウムの再発明

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Motivation

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自己紹介を兼ねて ● 美術大学の油絵科で「なぜいまさら絵を描いているの ?500年も前に発明 された技術に何の必然性 ?」ともやもやする(2009年 らい) ● その ろ友人とアニメを作り始め(結局未完に わる)、はじめてパソコンを 買ってmpegを生成して「自分 描いた絵 動 」 とに感動すると同時に、 れだ 安価にアニメーション制作 可能な とに衝撃を受 、コンピュー タ ら謎の万能感を得る(2010年 らい) ● 30歳で油絵科卒無職(やばい)「IT系なら当分食いっぱ れないに違いない」 という邪な気持ち らプログラミングを頑張った ● アラン・ケイ関連の資料を漁っているとメディウム概念への言及 大量に あって、「あれ、 れ10年 らい前に美術文脈で考えていた とと繋 って いない?」と感じる

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最近の開発 ● 弁護士む の業務システムを作っていました ● 開発に際してい つ のソフトウェア/サー ビスを分析して「付箋をメタファーとして採 用する」事を考えた(実際には採用しな った のです ) ● 付箋はそれ自体「何でも表現で る」ような メタシステムだ ど、「付箋ツール」は れ をコンピュータ上で「再発明する」 とにな る ● のと 頭の中に「メディウムの再発明」と いう言葉 浮 んで、「あれ、 れって何 だっ 」と もって検索したら数年前に読ん だ美術の論文のタイトルだった

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問い ● 「ソフトウェアの制作」とはなにをやる となの ● それ 、「あるメディウムを再発明する と」だとして、その意味は?

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メディウム

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メディア(media)とは、情報の記録、伝 達、保管などに用いられる物や装置の と である。媒体(ばいたい)などと訳される ともある。記録・保管のための媒体とコ ミュニケーションのための媒体とに大別す る と で る 、両者には重なり あ る。 Wikipedia: メディア (媒体) パピルス

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Medium = 情報を「伝達」「記録」 する際の「容れ物」

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「われわれの文化は統制の手段としてあらゆる ものを分割し区分する とに長ら 慣らされて いる。だ ら、操作上及び実用上の事実として 「メディアはメッセージである」などと言われ るのは、と にちょっとしたショックになる。 の とは、ただ う言っているに過 ない。 いかなるメディア(すなわち、われわれ自身の拡 張したもののこと)の場合でも、それが個人およ び社会に及ぼす結果というものは、われわれ自 身の個々の拡張(つまり、新しい技術のこと)に よってわれわれの世界に導入される新しい尺度 に起因する、という とだ」 『メディア論』マーシャル・マクルーハン

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芸術文脈における メディウム

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メディウムの固有性(medium specificity) ● 表現はその媒体の特性(medium specificity)を利用する ● レッシングは、絵画や彫刻を「空間芸術」、文学や音楽を「時間芸術」とし て分類した ○ 例: 小説や漫画表現に る「伏線」は表現媒体の継起性を利用している ● 芸術家は、自ら 扱う媒体の形式的特性を操作するはずだ 、芸術の評価の 際の混乱は「ある媒体 別な媒体の効果を模倣する」 とに起因する ○ 例: 絵画 「物語」を表現するのは「文学」の模倣である

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● 手前のトルソと右上の「描 れたトルソ」 ○ トルソの背中には画布 あり、まるで「画 面 ら飛び出した」ような効果 強調され る ● 手前のテーブル上の玉ね と左の画布上の「描 れた玉ね 」 ○ 玉ね の芽はわざわざテーブル らはみ出 て立体物であると明示 ○ 布も描 れた布と実際の布の境界を曖昧化 ● 「描 れたX」は「絵画は平面である」という観 念に対応する 、それを裏切るような立体的錯 視の効果を前景化している ● 他方で、最終的にはすべて 「描 れたX」でし ありえない ● セザンヌは「絵画は平面である」という媒体の 特性と戯れている

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「西洋文明は、自己自身の基盤を顧みて問い直し た最初のものではない 、そうする とを最も突 詰めていった文明である。(...)提示され明らかに されねばならないことは、芸術一般においてのみ ならず各々の個別な芸術において、何が独自のも のであり削減しえないものか、であった」 「絵画芸術 モダニズムの下で自らを批判し限定 づ てい 過程で、最も基本的なものとして残っ たのは、支持体に不可避の平面性を強調する と であった。平面性だ 、その芸術にとって独自 のものであり独占的なものだったのである。」 『モダニズムの絵画』クレメント・グリーンバーグ

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メタメディウム

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「なじみのメディアを作成し編集で る、操作の簡 単なGUIソフトウェアを開発する とで、ケイと仲 間たちはコンピュータを「古いメディア」のシミュ レーション・マシンに変貌させた。」 『カルチュラル・ソフトウェアの発明』レフ・マノヴィッチ

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「メディアの本質は、メッセージの収め方、 変形方法、見方に大 左右される。デジタ ル・コンピュータは本来、算術計算を目的と して設計された 、記述可能なモデルなら、 どんなものでも精密にシミュレートする能力 をもっているので、メッセージの見方と収め 方さえ満足なものなら、メディアとしてのコ ンピュータは、他のい なるメディアにもな りうる。」 『パーソナル・ダイナミック・メディア』 アラン・ケイ,アデル・ゴールドバーグ

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メタメディウム vs メディウムの固有性?

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「シミュレートされた絵画」は絵画か? https://japanese.engadget.com/jp-2020-04-17-qr.html

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「シミュレートされた絵画」は「絵画」ではな 「シ ミュレートされた絵画」である ● 写真は絵画をシミュレートしようとした (pictorialism) ● 絵画は?→自然(眼)をシミュレートしようとした ● 写真 発明されたば りのと は「写真 もたらす 尺度」 遅れている ら、いままで培って た尺度 で評価しようとしてしまう ● 新しいメディウムを評価する手段は常に存在しない 「どんなメディアでもその「内容」はつねに 別のメディアである」マクルーハン By George Seeley - Camera Work, No 20 1907, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5319102

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メディウムの再発明

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● 画面上部のピンによって、 の画面全体 「描 れた絵画を壁にピン留めしたもの」と 再宣言しな す ● のピンによって、キュビスム的に描 れた 絵全体 括弧に られ、抽象的なレイヤー 出来上 る ● の操作は「絵画の再帰」といっていいと もう 、「絵画とはなに 」という問い自体 を当の絵画に折りたたまれる とになる ● のピン 宣言するのは「シミュレートされ た絵画」

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Georges Braque Still Life with Tenora, 1913 ● 「描 れたのではない平面」と「描 れた平面」の共存/相克 ● 「描 れたのではない平面」を取り 込む とで、「描 」という との 意味は変化する ● 「描 」 とはすでに「なに を再 現する」 とではな 、描 行為に よって地と図を分離するために利用 される ● 「描 」という行為の意味そのもの リデザインされる とで「絵画と はなに 」という問い自体 藪蛇に なる

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ポストメディウム 条件(ロザリンド・クラウス) “一九六〇年代後半に芸術と写真が華々しく合流したこと 、 写真「そ も 」 市場が前触れなく爆発的に拡大したことと 同時代的な現象である。だが皮肉にも、美術館、収集家、歴史 家、批評家といった芸術 制度を担うも たち 、写真が理論 的な対象として、すなわち芸術的な実践を脱構築するため 道具としてそこに加わったまさにそ 瞬間に、固有な存在とし て 写真的メディウムへと注意を転じた である。という も、 写真が芸術と合流することになった 、〔芸術における〕ある 根本的な変容を規定し、それを記録する手段としてであったか らだ。そしてこ 変容において 、それぞれ メディウム 固 有性が放棄され、〈芸術一般〉とでも呼 れるべきも に照準 を合わせた実践、すなわち固有にして伝統的な支持体に左右 されること ない、芸術 一般的性格がそ 場を占めることに なる。”

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メディウムの再発明(ロザリンド・クラウス) ● メディウムの再発明(?) ○ ポストメディウムの条件下に いて、既存のメディウム のもつ物理的特性は直接的には意味をなさな なる ○ 既存のメディウムに内在する「約束事」を掘り出し、別 の支持体に いてそのメディウムを作り出す “メディウムを発明しようとする衝動のな で、支持体 ら それに固有の約束事を掘り出そうとするコールマンの決意 は、新たに採用された支持体そのものの救済の可能性を宣言 するための一つの道なのである。”

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ソフトウェアに る「メディウム」 ● コンピュータは「どんなメディウムにもなる」ようなメタ・メディウムであ る ● 「ソフトウェアを作成する」という とは、メタメディウムの自由さに制約 を加え、固有のメディウムとして作り上 てい とに他ならない ● ソフトウェアデザインは、固有の約束事=一連の制約のセットを発明する と

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https://miro.com/workshops/ 「付箋」と「付箋ツール」 ● miroは「付箋のシミュレーション」だ 、Pictorialism 写真に いて「絵画のシミュレーション」をしようとしたの とは異なっている ● 「ボード」と「付箋」という抽象を通じてソフトウェアを構 築して り、それらは明確に関連付 られている ● Pictorialismは絵画の表層をシミュレートしようとしている 、miroはいわば「付箋の成り立ち」や「付箋の有用性(の 一部)」をシミュレートしている(ように見える) ● 「ボード」や「付箋」という抽象は、「付箋とはなに 」と いう問い ら、付箋システムを成り立たせるための抽象に他 ならない ● 付箋は「貼る と で る/剥 す と で る/書 と で る/色わ で る」ようなものであり、 れは付箋シ ステムの約束事のセットである ● miroというシステム 行っているのは、 ういった実在の システムの抽象を通じて、「付箋の再定義」を行っている

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い なるメディア(すなわち、われわれ自身の拡張したものの と)の 場合でも、それ 個人 よび社会に及ぼす結果というものは、われわ れ自身の個々の拡張(つまり、新しい技術の と)によってわれわれの 世界に導入される新しい尺度に起因する