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AIエージェントの コモディティ化と 大学職員の生存戦略2030 九州大学 森木 銀河 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー

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プロフィール 森木銀河 九州大学 IR室 学術推進専門員 九州大学では「エビデンスに基づいた大学の 改革・改善を支援する」業務に従事 個人では生成AIサービスの利用・開発、 生成AI活用のための研修やワークショップを 企画・実施している gmoriki.com AIとヒトをつなぐ人

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今日のテーマ 5年後、AIエージェントが浸透したとき 私たち大学職員が考えるべきこと AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AI利用者(エンドユーザー)を想定

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生成AI概念の進展とAIエージェントへの帰結 01. 通常業務に浸るAIエージェント 02. AIエージェントを管理運用するための生存戦略 大学職員に求められる「AgentOps」 今日の流れ 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略

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後続するテキストを推論して言葉を「生 成」する大規模言語モデルを使用し、自然 な対話を実現 素朴なAIチャット LLMの限界であるハルシネーションや 「より新しい情報や異分野のデータへの 適応が困難」なことへの対処策 RAG/関数呼び出し AIチャット LLMを活用し、特定の目標を達成するために 設計された一連のタスクやプロセス ワークフロー型AIエージェント 「生成AI」というタームと実態の進展 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 自律エージェントへ...

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大規模言語モデル(LLM)を活用した 汎用的・対話型サービス 後続するテキストを推論して言葉を「生成」する大規模言語 モデルを使用し、自然な対話を実現 文章作成のほか翻訳やプログラムの作成、高度な推論やブレ インストーミング等の多様な用途に活用可能 LLMが事前に学習したデータに大きく依存する 私たちのニーズを全て解決する万能薬ではない 新しい情報の取得や得られた生成物の検証は原理的に 不可能 学内データにアクセスすることも困難 素朴なAIチャット 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 Hi, I’m LLM!

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LLMの限界を克服するために 検索とツール選択を実装した「拡張LLM」 LLMの限界であるハルシネーションや「より新しい情報や異 分野のデータへの適応が困難」なことへの対処策 Web検索、プログラムの実行・デバック、学内データへのア クセス等、「Pythonにできることなら大抵実現可能」になる チャットは、あくまでチャットである 私たちのニーズを全て解決する万能薬ではない チャットの成否・生成物の品質はユーザーの「指示」 (=プロンプト)に強く依存する Garbage In,Garbage Outの原則 RAG / 関数呼び出し AIチャット 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 Building effective agents,https://www.anthropic.com/research/building-effective-agents,2024

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AIエージェントが大きな話題を呼んでいる 2025年には、初めてAIエージェントが「労働力として加 わり」、企業の生産性を大きく変えることになるだろうと 私たちは考えています。 Sam Altman - “Reflections” チャットの反省と チャットの反省と エージェントへの期待 エージェントへの期待 https://blog.samaltman.com/reflections

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AIエージェントに画一的な定義はない 正論でありその通り しかしユーザーが置かれている 実態に沿った定義ではない 自律エージェントのみを AIエージェントとする立場 本講演ではこちらの立場を取ります =「自律性」「目標志向性」「高度 な推論」をある程度は持つサービス ワークフローを含めて AIエージェントとする立場 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 自律性 目標指向性 高度な推論

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LLMを活用し、複雑な業務プロセスを構造 化・自動化するシステム LLMを活用し、特定の目標を達成するために設計された一連 のタスクやプロセス 混沌とした現実世界の複雑性を秩序ある構造に変換すること に価値がある 事前に処理が定型化・固定化されているため 外部環境の変化に弱い ワークフローを柔軟に保守・運用できる体制づくりが 必要不可欠であり、さもなければ過去の遺物になりか ねない ワークフロー 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 In Out Building effective agents,https://www.anthropic.com/research/building-effective-agents,2024

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目標を達成するためのタスクを明確にし、 自律的に計画を策定するシステム 環境の中に位置し、環境の一部としてその環境を感知し、時 間とともに自らのアジェンダを追求し、将来的に感知するも のを実現するために行動するシステム 目標を達成するためのタスクを柔軟に計画することが可能 環境からのフィードバックに基づいてツールを使用 するLLMがループ内で動作しているだけ 設計段階で安全策やフェイルセーフ機能を十分に考慮 しなければ、開発者や運用者が制御不能となるリスク がある 自律エージェント 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 Environment In-Out on the PC on the Web in the outside Building effective agents,https://www.anthropic.com/research/building-effective-agents,2024

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アンケートを作成する AIエージェント AIエージェントは単なる技術的なトレンドではない ユーザーの真のニーズに応えるための必然的な帰結である Micosoft Forms(M365 Copilot) ユーザーのコマンドに従ってアンケート項目 の生成、修正、削除、追記をするサービス。 生成したFormsはWeb公開・データ収集も可 能。

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研究を支援する AIエージェント AIエージェントは単なる技術的なトレンドではない ユーザーの真のニーズに応えるための必然的な帰結である https://agentlaboratory.github.io/

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Computer Use Demo PC画面を操作する AIエージェント AIエージェントは単なる技術的なトレンドではない ユーザーの真のニーズに応えるための必然的な帰結である Anthropic Computer Use ユーザーのコマンドに従ってコンピュータの 画面上でカーソルを移動したり、関連する場 所をクリックしたり、仮想キーボードで情報 を入力したりすることができ、ユーザーが自 分のコンピュータを操作する方法をエミュレ ートする

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AIのために設計されたツールを APIを介してAIが利用する 画面上に表示されたソフトウェアを AIが操作する 現在のAIエージェント これからのGUIエージェント LLMのために設計されたツール群を使うLLM 既存のツール群を操作するLLM 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 どちらも私たちの日常に浸透する

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AIエージェントのコモディティ化とは AIエージェントという製品・ サービスが標準化され、様々 なシーンに安価に組み込まれ る状態 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 多様なAIエージェントが、ユーザーの認識世界 に自然に溶け込み、協調的にタスクを遂行する ことで、特定の目的を達成するための手段が、 まるで空気のように意識されなくなる状態 全ての大学職員 AIエージェント 【評価振り返り】 AIエージェント 【企画書の執筆・添削】 AIエージェント 【文書決裁フロー】 ...etc. 職員の環世界(認識世界)上の「手段」 意識的 or 無意識的に 利用

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AIエージェントたちは 職員の認識世界で協働する AIエージェントのコモディティ化が提示する5年後 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 AIエージェント【企画書の執筆・添削】 AIエージェント【学内データ検索チャット】 AIエージェント【データ分析プラットフォーム】 Microsoft Excel Micosoft Word SaaS【音声データの文字起こし】 SaaS【データ可視化ツール】 全ての大学職員 1. あらゆる業務 職員の環世界(認識世界)上の「手段」 3. あらゆる成果 AIエージェント 【オペレーション】 2. API or GUIを通じた オペレーション ...etc.

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大学職員の生存戦略 AIを最大限に活用するには、継続的な学習計画が不可欠で す。AIは「設定したら後は放置」できるツールではありま せん。チームが成長し、適応し、改善していける旅路なの です。 Choi Chow 人を育てる 人を育てる チームを育てる チームを育てる AIを育てる AIを育てる https://www.salesforce.com/blog/ai-education-reskill-customer-experience/

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AIチャットサービスの活用有無により 労働生産性に格差が生じている 運用スキルやデータ活用の質の差が生産性ギャップを広 げる要因であり、成長戦略に影響を及ぼしている 01. 大学入学試験で8割くらい取れる 知性の価値は目減りしている 暗記した知識よりも問題解決力や創造性が求められ、 感性や柔軟な思考や発想が評価される局面が増加 02. 既に起きた変化 単なる情報集約ではなく、領域特有の文脈を深く理解 し、問題の本質を見抜く能力が今後も求められる 品質の高いドメイン知識の価値は 上がり続けている 03.

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AIの自律性への対処 職員が「AIの自律性による予測不能性」に対 応せざるを得ない 01. 02. AI利用者間の生産性格差の拡大 Excelめっちゃ使える人とかTOEICめっちゃ得 意な人がAIを使えないとマズイ 03. 成果の同質化による品質低下 AIに依存し思考を停止すると、利用者の間で 思考のバラつきが少なくなる これから訪れる変化と課題 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略

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大学職員に求められるAgentOps AIエージェントを導入・運 用・改善していくための実務 プロセスや組織体制 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 AIエージェントのコモディティ化は単なる技術 的な進歩ではない。ユーザーが主体的に関与 し、その恩恵を最大化するための運用が求めら れる。全てのユーザーは情シス兼人事になる。 AIエージェント・エコシステム 全ての大学職員 AIを導入・運用する どうしよう

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AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー まったく新しいAIリテラシー類型 SPADE ユーザーの真のニーズに応えるための 必然的な帰結であるAIエージェントのコモディティ化、 その先に待ち受けるAgentOps時代に 私たちが考えるべきAIリテラシー類型=戦略基盤と行動目標

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まったく新しいAIリテラシー類型 SPADE AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIに入力する情報を守る SECURITY & PRIVACY AIと適切かつ上手にコミュニケーションする PROMPTING & DIALOGUE AIの生成物に責任を持つ AUDIT & ACCOUNTABILITY 保有データの文脈を理解する・分析する DATA & ANALYTICS 環境と環境をつなぐ ENVIRONMENT BRIDGING

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所属組織 AIエージェント・エコシステム Security & Privacy SPADEの位置づけ 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 全ての大学職員 Audit & Accountablity 社会・外部環境 ステークホルダー Data & Analytics Prompting & Dialogue Environment Bridging

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さいごに 全員がAIを運用する責任をもつ 情シス兼人事になる 自分のチーム内のAIエージェントと いう人的資本を管理運用し、自らもそれ を使いこなし周囲と連携する“情シス兼人 事”の視座を持たざるを得ない状況が訪れ ている 過渡期の技術をなおざりにせず、AI社 会においてAIと関わる当事者として AIを育てる 私たちは「受け身の利用者」にとどまる のではなく、「AIをともに育てる当事 者」として積極的に意見を発し、ときに は実証実験を行いながらサービスのアッ プデートを促していくべき AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AI利用のお客様ではなく当事者たれ AIチャットへのプロンプトは過大評価されている

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Good Luck. AIエージェントとともに 大学の荒野を歩みましょう 2025年1月31日 大学ITマネジメントセミナー AIエージェントのコモディティ化と大学職員の生存戦略