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2022/11/02 Aki Iinuma プロダクトマネジメント組織立ち上げの 課題と落とし穴と楽しみ

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このセッションの話題 プロダクトマネジメント組織(=プロダクトマネージャーが集まりプロダクトマネジメントを 専門とする部署)について話します。 ● 今日は主に私が経験した失敗談や落とし穴の紹介をしていきます ● そしてその経験から導き出される結論はいろいろなところで語り尽くされているもの と大差ないと思いますが、失敗談による追体験をお楽しみください ● サンプルが少なく統計的な意味はありませんが、あくまで「こんなケースもある」とい うひとつの例としてお楽しみください

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飯沼亜紀 キャディ株式会社 プロダクトマネージャー ● キャディのManufacturing事業で社内向けプロダ クトを担当 ● pmconf登壇は3回目 ○ 前2回は別の会社に所属していました ● 副業を含め5社でプロダクトマネジメント組織の立 ち上げを経験 ○ キャディでは今のところやっていない   @LoveIdahoBurger 自己紹介

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● プロダクトマネージャーという職種への注目度が高まるにつれ、プロダクトマネジメ ント組織立ち上げのニーズも増えていると感じる ○ 相談されることが増えてきた ○ それに伴い、うまくいっていないという話もよく聞くようになってきた ● 組織はプロダクトと同じだと思う ○ 立ち上げて終わりではない ○ でも立ち上げ時点で失敗する運命が決まるケースもある ■ 落とし穴にはまるのは落とし穴にはまる呪いがかけられているから ■ 組織づくりは呪いを解いてから 今日この話をする背景

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組織立ち上げ前に確認すること 組織をつくる ことの正当性  組織の 外部環境 組織の内部環境

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言いかえれば:組織立ち上げに必要な3要素 組織としての ミッション・   ビジョン  組織が 成功できる 環境 組織の構成要員 ● この組織で成し遂げたいことは明確 になっているか ● 今必要とされているのはプロダクト マネジメント組織なのか ● メンバーはプロダクトマネー ジャーとして独り立ちできるか ● 組織内でプロダクトマネー ジャーが成長できるか ● 会社の文化として組織の独立 が外部からの遮断につながら ないか ● トップは組織の成功のために コミットしてくれるか

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組織立ち上げは困難の連続 組織が立ち上がらない 当事者が腹落ちしない まま組織が立ち上がる 何者でもない人達の 組織に… 中の人のモチベーション 下がりっぱなし 組織の外の人達が ついて来ない やっぱり組織不要なん じゃないかという圧力

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そもそもプロダクトマネジメント組織は必要なのか ● 組織の性質的に必要性を正当化するのは難しくなりがち ○ プロダクトマネジメント組織がなくてもプロダクトマネージャーは存在できる ○ そもそもプロダクトマネージャーがいなくてもプロダクトは開発できる ● プロダクトマネージャーが 3人以上集まったら組織を作るべき …みたいな決まりは無い ● 組織をつくるのは組織があったほうが効率的だから ○ プロダクトマネージャーが固まっていたほうが効率的な場合もあれば各所に散らばっていたほうが効率的な場合もある 場合による

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組織があったほうが効率的かどうかの判断は主にこの2つの観点で行うのがよさそう そしてこれらにはその組織のプロダクトのあり方が大きく影響する 効率的とは? 意思決定・情報流通 プロセスの設計 評価・育成プロセスの設計

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組織立ち上げの落とし穴 1 正 当 性 の 落 と し 穴 2 内 部 環 境 の 落 と し 穴 3 外 部 環 境 の 落 と し 穴

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● トップダウン型 ○ 偉い人が組織をつくる意思決定をする ■ ビジネス上の課題だったり ■ 組織上の理由だったり ■ 流行に乗ってみたくなったり ■ 顧客から要望が来るというレアケースもある ● ボトムアップ型 ○ プロダクトマネージャー(またはそのステークホルダー)からプロダクトマネジメント組織をつくるべき であるという声が上がる 立ち上げの機運はどこからやってくるのか

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● 立ち上げのきっかけがボトムアップであったとしても、プロダクトマネジメント組織が 必要という認識がトップになければそれは実現しない ○ つまりボトムアップ型にとっての最大の失敗要因は「トップの理解が得られない」 ○ しかも…本質的には理解を得るだけでは不足でトップの強力な支持が必要 全ての組織立ち上げは究極的にはトップダウン トップダウン型 ボトムアップ型 トップの意向 ボトムの意向 組織は… できる できる できる できない ● 現状の課題と組織のミッション・ビジョンをストーリーにして伝えましょう

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● トップダウンで現場腹落ち無しに組織を立ち上げることは 可能 ○ 時にそれは十分な正当性がないままに行われる ● プロダクトマネジメント組織をつくることは時として大きな デメリットを伴う ○ 例えばプロジェクトマネージャーとセットで動いたほうがいいケース でこれをやると危険 その組織に正当性はあるのか 意思決定・情報流通 プロセスの設計 評価・育成プロセスの設計 ● 立ち上げ前に組織のミッション・ビジョンを考えましょう ● 立ち上げ後に組織がミッション・ビジョン達成に向けて動ける環境を整え ましょう

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組織立ち上げの落とし穴 1 正 当 性 の 落 と し 穴 2 内 部 環 境 の 落 と し 穴 3 外 部 環 境 の 落 と し 穴

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● これは組織の有無にかかわらず出てくる話ではあるが、プロダクトマネージャー達を 独立させる以上、組織内外からの期待は高まりがち ○ 結果として問題も大きくなりがち ● 組織への期待にはメンバーの専門性の伸長も含まれる ○ ジュニアメンバーしかおらず教育・評価ができないという問題は組織立ち上げありきで進めた場合に 特にありがち ■ それを補うために組織がキメラ化するケースも プロダクトマネージャーの教育や評価 ● 組織内で評価・育成ができる体制を整えて立ち上げましょう

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中の人のスキル問題:スキル不足が招く悪循環  PM  つらい…  情熱を失う         周囲の     期待も  何でも屋に     価値を   出すべく    何でも屋に          スキル不足 ● スキル不足は単なる経験の不足であることが 多い ○ 悪循環に陥る前に正しくガイドしながら経験を積ませ られる環境が必要 ● ただしこれが悪循環を招きスキルを身につける モチベーションを奪ってしまうことがあるので注 意 ● 未経験者だけで組織を立ち上げるのは要注意 ○ プロダクトマネージャーとして自立できる環境をつく りましょう ● 必要に応じて外部リソースを活用しましょう

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プロダクトマネージャーとして成長できるのは… プロダクトマネジメントに対する情熱があり プロダクトマネジメントのスキルがあり プロダクトの成功のためならプロダクトマネジメント以外のこともやる気概  がある 人 スキルがあればいいのか問題 情熱・気概 もとから備わっているか、 本人が主体的に身につけ るしかない スキル 環境を整備することにより 身に付けさせることができ る 本人の意向は確認するべき スキルはある程度どうにかなるが、情熱や気概 について周囲ができることは限られている

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組織立ち上げの落とし穴 1 正 当 性 の 落 と し 穴 2 内 部 環 境 の 落 と し 穴 3 外 部 環 境 の 落 と し 穴

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組織文化や既存組織構造との相性はある 開発 CS プロダクトマネジメント … 事業 A 事業 B 事業 C ● 新しく組織をつくる場合は既存の他部署の構造と矛盾 を生まないよう注意が必要 ● 必要とされているのはプロダクトマネジメント組織なの かという話は外部環境からも考えたほうがいい ○ 特に組織間の連携がうまくいっていない組織では逆に情報が 流れなくなってしまう可能性も ■ 会社全体の情報流通設計として部署を重視しすぎている 組織があるため

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● プロダクトマネジメント組織が独立していると業 務の解像度が上がりにくい疑惑 ○ 業務を深く理解している人と別組織になりがち ● 実際には理解していても印象として解像度が高 くないと思われがち ● 解像度は高いほうがいい ○ でもそれはPMが誰よりも高い解像度を持つべきと いうことを意味しない ■ だから解像度に関するツッコミが入った時に は要注意 業務解像度問題 「○○さんは業務 解像度が低い から…」 「サポートし ます」 「○○できな い」 ● プロダクトは皆でつくるものという認識を組織内外で共有で きるようにしましょう

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● そもそもトップのマインドセットとして組織をつくって終わりになっていないか ○ プロダクトマネジメント組織はいろいろな風にさらされやすい ○ その時に組織を守ってくれるのか、それとも早々に組織を潰す決断をするのか ● 組織以前にプロダクトマネージャーが活躍できる環境が用意されているかどうかも要チェック ○ 過去に経験した組織ではトップダウンでスコープとスケジュールが決まることもあった ■ そういう組織ではプロダクトマネジメントよりもプロジェクトマネジメントとリスクマネジメントと期待値コントロール が全て ● 「サイロ化している」「あいつら何やってるかわからない」と言われないように常に積極的に情報発信 しましょう ○ でも気にしすぎ注意 ■ なぜなら「あいつら何やってるかわからない」を翻訳すると「俺のあの機能がいつまで経っても実現しない」でし かないことがあるから その他外部環境にまつわる諸々

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● プロダクトマネージャーとして組織をつくるのが純粋に楽しい ○ ビルドトラップ注意 ● 組織に悩む時間がなくなったらプロダクトに向き合える時間が増える気がする ○ 組織がうまくいったからプロダクトがうまくいくという状態がプロダクトマネージャーとして純粋に嬉し い ○ 組織づくりはプロダクトの成功のために必要なことのひとつであって組織立ち上げを単独のものとは あまり考えていない で、楽しみって何?(超個人的意見)

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まとめ:組織立ち上げにはこの全てが必要 組織をつくる ことの正当性  組織の 外部環境 組織の内部環境

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つまりこれ。無いならまず作ろう!組織はその後! 組織としての ミッション・   ビジョン  組織が 成功できる 環境 組織の構成要員 ● この組織で成し遂げたいことは明確 になっているか ● 今必要とされているのはプロダクト マネジメント組織なのか ● メンバーはプロダクトマネー ジャーとして独り立ちできるか ● 組織内でプロダクトマネー ジャーが成長できるか ● 会社の文化として組織の独立 が外部からの遮断につながら ないか ● トップは組織の成功のために コミットしてくれるか …または、組織をつくらないという選択も

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どんな形の組織に所属することになっても、 プロダクトマネージャーの活動は組織の枠組みの中だけでは絶対に完結しない 越境する力を身に着けよう 最後に言いたいこと

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Thank You!

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Some of the icons and diagrams used for this deck are by SlidesCarnival Credit