Slide 1

Slide 1 text

個人事業主型開発 からの脱却 XP祭り 2024 Kei Ogane 2024/9/28

Slide 2

Slide 2 text

自己紹介 ばやし@bayashimura スタートアップでエンジニアやってま す。前はEMとか社内アジャイルコーチと か。 最近の趣味はYoutubeでエルデンリング の考察動画を見ることです

Slide 3

Slide 3 text

Linc’wellという会社で働いてます

Slide 4

Slide 4 text

今日の話 これまでいくつかのチームに関わってきて遭遇した 個人事業主型開発 の紹介をするとともに 直近でそこからの脱却するために - 自分がやったこと - 気を払ったこと をお伝えします 当時転職して半年くらい リーダーになりたての自分

Slide 5

Slide 5 text

目次 - 個人事業主型開発の概要 - 脱却するためにやったこと - その際に気を払ったこと

Slide 6

Slide 6 text

個人事業主型開発とは チームではあるがチームメンバー同士のコラボ レーションが存在せず、指示者とチームメン バーの一対一の関係のみがある開発スタイル 指示者は多くの場合 - PdM - リーダー - マネージャ など、別ポジション、別ロールの人が担う 指示者 メンバー メンバー

Slide 7

Slide 7 text

個人事業主型開発とは 個人事業主型開発の特徴として以下がある - タスクは指示者がメンバーにアサインする - 進捗管理は指示者とメンバーの間でのみ行われる - メンバーは自分のタスクを 遂行することのみ求められる タスクA タスクE タスクF タスクB タスクC タスクD これらのタスクをお 願いします。締切は ◯日です。

Slide 8

Slide 8 text

一見良さそう - 指示者がアサインすることで 重要なものに取り組んでもらえる - 指示者が管理することで 全体に管理が行き届く - 自分にアサインされたチケットのみに 取り組むことで効率アップ!

Slide 9

Slide 9 text

実際に起こること - タスクのアサイン組み換えパズルが発生して辛い - 指示者が全員を管理するの辛い - お互いのやってることに興味なくなってきて辛い

Slide 10

Slide 10 text

タスクの組み換えパズルが発生して辛い メンバーは個々人で優先順位付けされたタスクを 持っており、それぞれに締切が設定されている そのため、ひとつのタスクが遅れると 後続タスクもどんどん遅れていく タスクA タスクE タスクF タスクB タスクC タスクD え、タスクAが遅れてる? じゃあ後続のタスクEも間 に合わないの確定ですよね

Slide 11

Slide 11 text

タスクの組み換えパズルが発生して辛い タスクを誰かに譲ろうとしても、 みんな複数タスクを抱えているため、 都度優先順位の調整が行われ負荷が高い タスクA タスクE タスクF タスクB タスクC タスクD 後続のタスクEを緑服さん に渡したいけどタスクCも 今週リリース予定で...

Slide 12

Slide 12 text

指示者が全員を管理しないといけないから辛い 指示者とメンバーの1対1の関係があるのみなので 指示者が全員を管理する必要がある そのため指示者の管理負荷が非常に高い タスクA タスクE タスクF タスクB タスクC タスクD タスクAは どうです か? タスクBの 状況を教え て下さい

Slide 13

Slide 13 text

お互いのやってることに興味なくなってきて辛い 自分が取り組むタスクは決まっているため、 他の人が取り組むタスクに関して 理解をする必要がない スプリントの計画の場では、 指示者とアサインされた人以外 黙って聞く場になりがち アサインされてる◯◯につ いてですが 興味ないな... ふむふむ

Slide 14

Slide 14 text

実際に起こってたこと - 指示者が管理で多忙になる - タスクの組み換えパズルが多数発生し、 締切直前で未着手が発覚するなど混乱 - メンバー間のサポートが発生せず、 指示者任せに

Slide 15

Slide 15 text

なんかこんな感じにしたい - 管理は指示者の仕事ではなく チームのみんなでやっていきたい - 指示者が疲弊せず、 メンバーも楽しく働けるようにしたい - チームでひとつの優先順位を追いたい

Slide 16

Slide 16 text

脱却するためにやったこと - バックログをひとつにする - 事前アサインからサインアップへ - ビジネス価値に基づかない不要な締切をなくす

Slide 17

Slide 17 text

バックログがひとつじゃない 優先順位付けされた一つのバックログは存在し ていたが、エンジニア個々人は、フィルタ機能 を使って自分にアサインされたタスクのみを見 ていた バックログは論理的にはチームでひとつになっ ていなかった タスクA タスクE タスクF タスクB タスクC タスクD タスクA タスクE タスクF タスクB タスクC タスクD ひとつの優先順位付けされた バックログ アサインでフィルタされたバックログ

Slide 18

Slide 18 text

バックログをひとつにする チームでひとつの優先順位を追い、 チームで大事なものから達成していきたいの で、バックログを統合 具体的には - アサインされた人ごとにフィルタする ビューを見るのを止めた - バックログの優先順位を厳密にした

Slide 19

Slide 19 text

とはいえ 事前アサインされると、 自分のアサインされるチケットのみに 着目しがちなのは変わらない タスクA タスクE タスクF

Slide 20

Slide 20 text

事前アサインからサインアップへ チケットが作成されたタイミングで指示者が担当者を アサインしていたが - 着手するタイミングで事前アサインした人が適任 かはわからない - 事前にアサインされることで自分がやるタスクの みに着目しがち - やらされ感がすごい などの理由からサインアップ方式に変更 タスクA タスクE タスクF タスクB タスクC タスクD タスクFは 青服さん タスクDは 緑服さん

Slide 21

Slide 21 text

サインアップとは 指示者がチケットをアサインするのではなく、 作業者が自分で実施するチケットを選択する方式

Slide 22

Slide 22 text

サインアップやりたいって言った時に言われたこと サインアップってエンジニアが自分 のやりたいタスクしかやらなくなり そうで嫌 大事なタスクが放置されそう

Slide 23

Slide 23 text

サインアップとは チームの状況を鑑みて、自分がやるべきタス クを自分で判断して取っていくやり方 決してメンバーがやりたいタスクを好き勝手 にやるやり方ではない

Slide 24

Slide 24 text

誰が着手するかを決めるか 誰がタスクの作業をすべきだろうか? 作業をすばやく正しくできる人が最適 なのは明白だ。それでは、その人が別 の重要なタスクを担当していたり、病 欠していたりして、手が空いてなかっ たらどうだろう? 誰がタスクの作業を するかについては、さまざまな要因が 影響する。これらの要因を考慮して意 思決定をするのは、チームメンバーの 共同責任である 。 エッセンシャルスクラム: アジャイル開発に関わるす べての人のための完全攻略ガイド Kenneth S.Rubin (著), 岡澤 裕二 (翻訳), 和智 右桂(翻訳), 髙木 正弘(翻訳), 角 征典(翻訳)

Slide 25

Slide 25 text

バックログひとつにしてサインアップにした結果 - タスクの優先順位をみんな認識するように なった - 事前にアサインされたタスクがなくなった ことで、サポートしやすくなった - (自分がやるかもしれないし)スプリントの 計画の場ではみんなが活発に発言するよう になった タスクA タスクE タスクF タスクB タスクC タスクD タスクA タスクE タスクF タスクB タスクC タスクD

Slide 26

Slide 26 text

ちょっとずつ良くなってきてるけど バックログをひとつにして、事前アサインからサイ ンアップにすることでチームでひとつのことに向き あえるようになってきた しかし、まだ大きな問題がひとつあった それは

Slide 27

Slide 27 text

たくさんの締切たち 今週リリースマス トです 僕も今週リリース マストです 僕は来週リリース マストです 締め切りA 締め切りB 締め切りC

Slide 28

Slide 28 text

たくさんの締切たち 今週リリースマス トです 僕も今週リリース マストです 僕は来週リリース マストです 締め切りA 締め切りB 締め切りC 全部最優先!

Slide 29

Slide 29 text

次に問題になったのは タスクに設定された無数の締切たち 多くのタスクに締切が設定されているた め、優先順位の組み替えが難しい事態に 陥った 今週リリースマス トです

Slide 30

Slide 30 text

日付を握ると 日付を握ると、どうしても最優先になる チームで最優先なものが複数生まれるとチー ムとしての優先順位は崩壊し、各々が各締切 を各個撃破するほかなくなる 個々人が異なる締切に追われる図

Slide 31

Slide 31 text

締切を紐解く なんでこんなたくさん締切あるんだろう? 締切を紐解くといろんなケースが出てくる - 特定の日付に出す ビジネス的必然性が存在する - 「締切を切らないと一生やらない」 と思われている - 「これくらいで出せそう」が いつの間にか約束になっちゃってる

Slide 32

Slide 32 text

ビジネス的必然性が存在する締切 すべての締切が不必要ではない - クリスマス向け機能 - 12/10までにリリースしないと誰も使わない - ◯◯月の法改正対応 - それを過ぎてしまうと法令違反状態になる 上記のようにビジネスの必然性に基づくタイム リミットも確かに存在する ただそれ以外はコミュニケーションと期待値の 問題なので、できるだけ減らしていく

Slide 33

Slide 33 text

Microsoftでもそうらしい このような積み上げスタイルの見積も りは、細かくなればなるほどブレが酷 くなるから役に立たなくなるんだよ。 それに納期は無理に合わせると、品質 も下がるし、エンジニアがバーンアウ トしたり、辞めたりするのでろくなこ とがないよ。 - クリス曰く 見積せえへんねやったらどうやって予算取りするねん という話 - 牛尾剛 https://note.com/simplearchitect/n/n1415073eb07a

Slide 34

Slide 34 text

大事なものにフォーカスするチーム できるだけ締切は作らない、作ってもスプリントに ひとつ というスタイルでチームとして大事なものには フォーカスする癖をつける ひとつの締切に向き合う図

Slide 35

Slide 35 text

個人事業主型開発からの脱却成功 - タスクのアサイン組み換えパズルが発生して 辛い - サインアップでリアクティブにその時最適な人が最 適なタスクを実施するようになった - 指示者が全員を管理するの辛い - 指示者が全部を把握しなくても、チームメンバ同士 で管理をするようになった - お互いのやってることに興味なくなってきて 辛い - チームとして大事なものがわかって興味津々

Slide 36

Slide 36 text

あとなんかいい感じですね - スプリントで何が大事かを認識しその達成の ために協力し実際に達成するチームになった - 指示者(うちの場合だとPdMとリーダー)が 疲弊しなくなった - あとみんな楽しそう

Slide 37

Slide 37 text

ただそんなすんなりやり方が変わったわけでもなく チームのやり方を変えるために いろんなことに気を払いました

Slide 38

Slide 38 text

気を払ったこと - アンオフィシャルな会話で温度感を掴む - チーム内の構造を変える時は外から見える振る舞いを変えない - まず自分から始める

Slide 39

Slide 39 text

アンオフィシャルな会話で温度感を掴む 自分は変えたいと思っている だけど - チームのみんな - マネージャー - その他チームを取り巻く人々 が変えたいと思っているかはわかってなかった

Slide 40

Slide 40 text

アンオフィシャルな会話で温度感を掴む 飲み会、雑談などで軽く頭出ししてみる 「今こんなこと考えてるんですけどどう思 います?」 誰がどの程度興味関心を持っていて、 どういう考え方をしているかを掴んどく

Slide 41

Slide 41 text

アンオフィシャルな会話で温度感を掴む みんなの課題感や温度感に応じて 変化のための一歩目を踏み出すか、 このまま今のやり方で続けて 布教していくかは判断する

Slide 42

Slide 42 text

チーム内の構造を変える時は振る舞いを変えない 変化したばかりの時は、 周囲も自分たちも不安で一杯 変化した時は一時的にパフォーマンスが落ち るってみんなわかっていても 「大丈夫?」って聞かれちゃうかも 自信を失わないようにできるだけ周囲からの 見え方(振る舞い)を変えないようにする

Slide 43

Slide 43 text

例えば こんな意思決定をしました - これまで通り握ってしまった締切は守る (ように頑張る)  - ステークホルダーの関心が高いタスクに関 しては優先順位を上げるなど ※締切は前述の通りそもそもどんどん握らなくてしていく、 優先順位もステークホルダーの関心で全部決めてると詰むの で、周囲が敏感になっている時だけにしておく

Slide 44

Slide 44 text

補足 この意思決定は どこにどれくらい信頼貯金がたまってるかを勘 案し 「このタイミングではステークホルダーからの 見え方をケアしたほうが変化が挫折する可能性 が低いな」 と判断して実行した いつだってこのやり方がベストなわけでは無い チームメンバ ステーク ホルダー

Slide 45

Slide 45 text

まず自分から始める やり方決めても誰も動き出さず そのまま決めたこと自体なくなることって よくありますよね そうならないように自分が率先して - 優先順位通りにタスクをサインアップ - 自分がやっているタスクを手放して 優先順位が上のタスクのサポートに行く とかやってました

Slide 46

Slide 46 text

振る舞い方が分かればみんな振る舞ってくれる - やり方がわかってない - やるのが恥ずかしい などの理由で初めの一歩が 遠くなってしまうことはよくある 気にせず自分が続けてると そのうち誰かが続いてくれる

Slide 47

Slide 47 text

自分が一番好きなパターン エバンジェリスト Evangelist 要約 あたらしいアイディアを組織に導入し はじめるなら、あなたの情熱を共有す るためにできるかぎりのことをしよう Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織 に広めるための48のパターン Mary Lynn Manns (著), Linda Rising (著), 川口 恭 伸 (監訳), 木村 卓央 (翻訳), 高江洲 睦 (翻訳), 高橋 一貴 (翻訳), 中込 大祐 (翻訳), 安井 力 (翻 訳), 山口 鉄平 (翻訳), 角 征典 (翻訳)

Slide 48

Slide 48 text

No content