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コードの考古学 〜労務システムから発掘した成長の糧〜 2025.05.29 Thu. 若手エンジニアが語るリアルな実例 「技術負債」との戦い方・「技術資産の活かし方」 @株式会社プレイドオフィス 関根 健太 SmartHR プロダクトエンジニア

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関根 健太(@Kenta) 株式会社 SmartHR プロダクトエンジニア 新卒で入社した SIer企業では、サーバーサイド・フロントエンド・ インフラなど幅広い領域を経験。 2024年に株式会社 SmartHRへ入社。現 在は労務プロダクトの開発に携わっている。趣味はバイク。

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SmartHRの紹介

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今日話すこと 1. 労務プロダクトで出会った複雑データモデルの謎 2. 実際に直面した 3つの技術的課題 3. 歴史的遺産から得た若手エンジニアの気づき 4. 困難な状況を成長機会に変える実践方法

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1. 労務プロダクトで出会った 複雑データモデルの謎

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開発に参画してから “バイテン” というワードをよく耳にするようになりました。

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「バイテン …?」「売店 …?」

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BiTemporal Data Model 有効時間 (データが現実世界で有効である期間) システム時間 (データがデータベースに格納された時間)

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ID 役職 開始 終了 追加 削除 1 - 03/01 ∞ 03/01 04/01 1 - 03/01 04/01 04/01 ∞ 1 部長 04/01 ∞ 04/01 ∞ id bitemporal_id position valid_from valid_to transaction_from transaction_to 1 1 - 03/01 ∞ 03/01 04/01 2 1 - 03/01 04/01 04/01 ∞ 3 1 部長 04/01 ∞ 04/01 ∞ 例)03/01に登録された従業員が、 04/01に「部長」になった場合

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むずい…🤯

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なぜこんな複雑な構造なんだ …? 本当に必要 …?

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履歴を管理するためには必要! 理解するしかない!

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2. 実際に直面した 3つの 技術的課題

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2-1. 複雑な履歴管理システム ● BiTemporal Data Model ● 複雑性が増し、上記を使っていない開発よりも時間 がかかる

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2-2. コードの意図を読み解く考古学的作業 ● 複雑な条件分岐が存在するも、その意図は表面か らは読み取れない ● 過去のドキュメントを掘り起こすことで、当時の意思 決定の背景が明らかに

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2-3. フロントエンドの技術スタック混在 ● FIXME/TODOコメントが示す「一時的」なはずの解 決策が恒久的実装となる現象 ● jQuery/haml(過去)と React(現在)という異なる時 代の技術が共存する状態

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3. 歴史的遺産から得た 若手エンジニアの気づき

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3-1. 「悪いコード」ではなく「進化の証」 ● 複雑なコードは最適だった過去の判断の結晶 ● 制約に見える部分もプロダクト成功の証拠 ● 批判より理解と尊重が次の進化を生む

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3-2. 小さな改善の積み重ね ● 1度の完璧な作り直しは幻想、現実的でない ● 小さな範囲の確実な改善が着実な前進を生む ● 「今できる最善のこと」の積み重ねが持続可能な改 善への道

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3-3. ドキュメント化と知識共有の重要性 ● 解読した複雑コードの知識を独占せず共有 ● 実装背景の記録が将来の疑問解消に貢献 ● 知識共有でチーム全体の対応力が向上

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3-4. 拡張性を意識した設計 ● 「一時的対応」が定着する現実を直視 ● 短期実装も「 5年後の視点」で設計 ● 将来への理解しやすさが持続可能な設計の鍵

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4. 困難な状況を成長機会に変 える実践方法

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4-1. 歴史的コードを批判せず「考古学者」のよ うに分析する ● 実装の背景を様々な角度から発掘 ● 技術とビジネス両面の文脈を理解 ● 探求する姿勢が意思決定力を鍛える

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4-2. 発見した知識を積極的に共有・文書化す る ● 複雑な実装の背景をすぐにドキュメント化 ● PRには「なぜこの実装か」の背景を明記 ● 知識格差を減らし将来のエンジニアを助ける

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4-3. 小さな改善を継続的に行う習慣をつける ● ファイル編集時に「ついでの改善」を実践 ● レビュー時も建設的な改善提案を積極的に ● 頻繁に触れるコードから品質向上の好循環へ

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最後に伝えたいこと ● 古いコードの修正ではなく、プロダクトの歴史と未来 を理解する貴重な学びの場

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最後に伝えたいこと ● 過去の意思決定を理解することで、より良い判断が できるエンジニアに成長できる

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最後に伝えたいこと ● 未来の自分や仲間に感謝されるコードを目指し、 日々の小さな実践を積み重ねよう

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共に未来のプロダクトを 築いていきましょう!