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コードの考古学 〜労務システムから発掘した成長の糧〜
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Kenta SEKINE
May 30, 2025
Technology
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コードの考古学 〜労務システムから発掘した成長の糧〜
Kenta SEKINE
May 30, 2025
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Transcript
コードの考古学 〜労務システムから発掘した成長の糧〜 2025.05.29 Thu. 若手エンジニアが語るリアルな実例 「技術負債」との戦い方・「技術資産の活かし方」 @株式会社プレイドオフィス 関根 健太 SmartHR
プロダクトエンジニア
関根 健太(@Kenta) 株式会社 SmartHR プロダクトエンジニア 新卒で入社した SIer企業では、サーバーサイド・フロントエンド・ インフラなど幅広い領域を経験。 2024年に株式会社 SmartHRへ入社。現
在は労務プロダクトの開発に携わっている。趣味はバイク。
SmartHRの紹介
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今日話すこと 1. 労務プロダクトで出会った複雑データモデルの謎 2. 実際に直面した 3つの技術的課題 3. 歴史的遺産から得た若手エンジニアの気づき 4. 困難な状況を成長機会に変える実践方法
1. 労務プロダクトで出会った 複雑データモデルの謎
開発に参画してから “バイテン” というワードをよく耳にするようになりました。
「バイテン …?」「売店 …?」
BiTemporal Data Model 有効時間 (データが現実世界で有効である期間) システム時間 (データがデータベースに格納された時間)
ID 役職 開始 終了 追加 削除 1 - 03/01 ∞
03/01 04/01 1 - 03/01 04/01 04/01 ∞ 1 部長 04/01 ∞ 04/01 ∞ id bitemporal_id position valid_from valid_to transaction_from transaction_to 1 1 - 03/01 ∞ 03/01 04/01 2 1 - 03/01 04/01 04/01 ∞ 3 1 部長 04/01 ∞ 04/01 ∞ 例)03/01に登録された従業員が、 04/01に「部長」になった場合
むずい…🤯
なぜこんな複雑な構造なんだ …? 本当に必要 …?
履歴を管理するためには必要! 理解するしかない!
2. 実際に直面した 3つの 技術的課題
2-1. 複雑な履歴管理システム • BiTemporal Data Model • 複雑性が増し、上記を使っていない開発よりも時間 がかかる
2-2. コードの意図を読み解く考古学的作業 • 複雑な条件分岐が存在するも、その意図は表面か らは読み取れない • 過去のドキュメントを掘り起こすことで、当時の意思 決定の背景が明らかに
2-3. フロントエンドの技術スタック混在 • FIXME/TODOコメントが示す「一時的」なはずの解 決策が恒久的実装となる現象 • jQuery/haml(過去)と React(現在)という異なる時 代の技術が共存する状態
3. 歴史的遺産から得た 若手エンジニアの気づき
3-1. 「悪いコード」ではなく「進化の証」 • 複雑なコードは最適だった過去の判断の結晶 • 制約に見える部分もプロダクト成功の証拠 • 批判より理解と尊重が次の進化を生む
3-2. 小さな改善の積み重ね • 1度の完璧な作り直しは幻想、現実的でない • 小さな範囲の確実な改善が着実な前進を生む • 「今できる最善のこと」の積み重ねが持続可能な改 善への道
3-3. ドキュメント化と知識共有の重要性 • 解読した複雑コードの知識を独占せず共有 • 実装背景の記録が将来の疑問解消に貢献 • 知識共有でチーム全体の対応力が向上
3-4. 拡張性を意識した設計 • 「一時的対応」が定着する現実を直視 • 短期実装も「 5年後の視点」で設計 • 将来への理解しやすさが持続可能な設計の鍵
4. 困難な状況を成長機会に変 える実践方法
4-1. 歴史的コードを批判せず「考古学者」のよ うに分析する • 実装の背景を様々な角度から発掘 • 技術とビジネス両面の文脈を理解 • 探求する姿勢が意思決定力を鍛える
4-2. 発見した知識を積極的に共有・文書化す る • 複雑な実装の背景をすぐにドキュメント化 • PRには「なぜこの実装か」の背景を明記 • 知識格差を減らし将来のエンジニアを助ける
4-3. 小さな改善を継続的に行う習慣をつける • ファイル編集時に「ついでの改善」を実践 • レビュー時も建設的な改善提案を積極的に • 頻繁に触れるコードから品質向上の好循環へ
最後に伝えたいこと • 古いコードの修正ではなく、プロダクトの歴史と未来 を理解する貴重な学びの場
最後に伝えたいこと • 過去の意思決定を理解することで、より良い判断が できるエンジニアに成長できる
最後に伝えたいこと • 未来の自分や仲間に感謝されるコードを目指し、 日々の小さな実践を積み重ねよう
共に未来のプロダクトを 築いていきましょう!