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JIRAとGASで半⾃動化! カンバンメトリクス XP祭り2021 @ Online @dnskimox

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Contents 2 カンバンと制約理論 スループット、サイクルタイム、プロセスサイクル効 率、累積フロー、Google Sheets メトリクスのグラフ化 方法論としてのカンバン、制約理論、WIP制限 ドラム・バッファ・ロープ、バリューストリームマッ プ、Google App Script さらに複雑な値を求める 1 2 3

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男爵 Tanga Kenichi @dnskimox 3 Scala Engineer Salesforce Engineer Engineering Manager クラウド販売管理・クラウド請求管理ソフト ● 2020/02 Object-Oriented Conference ● 2020/10 ScalaMatsuri 2020 ● 2021/03 PHPerKaigi 2021 近年登壇したカンファレンス

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1. カンバンと制約理論 方法論としてのカンバン、制約理 論、WIP制限

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お馴染みのカンバンボード

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方法論としてのカンバン ≠ ただのタスクボード 6

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“あらゆるシステムに同時に1つ(場合に よっては2つ)の制約が存在すると考える。 システム全体のスループットを改善するに は、最初に制約を見つけなければいけな い。次に、その制約が最大限に稼働してい ることを確認する。” 7 制約理論(TOC) ̶ 『エクストリームプログラミング』

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制約理論の提唱者 エリヤフ・ゴールドラット イスラエルの物理学者。「ザ・ゴール」「ク リティカルチェーン」などのビジネス小説を 発表。 8 https://en.wikipedia.org/wiki/Eliyahu_M._Goldratt

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ボトルネックを最⼤限活⽤する 9 制約理論の要点 その1 *詳しくは後ほど

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コストワールドから スループットワールドへ 10 制約理論の要点 その2

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製造業における2つのパラダイム 11 コストワールド 各工程での能率を最大限にまで引き 上げることを求める。ボトルネックの手 前には在庫が積み上がり続け、結果と して価値を生み出さない在庫の管理コ ストを支払う羽目になる。 スループットワールド 一定期間内に出荷される製造物の価 値を高めることを求める。各工程での 能率には大きな関心を持たない。ボト ルネックに着目した、選択と集中のプ ロセス。継続的なカイゼン。 部分最適 全体最適

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ソフトウェア開発に当てはめると 12 コストワールド 「いかにしてメンバーの稼働率を上げ るか」「どれだけ多くのタスクを消化さ せるか」という観点の詰め込み型のマ ネジメント。 例)ガントチャートを使って全員に隙間 なくタスクをアサインする スループットワールド 「チームが単位時間あたりに生み出すビ ジネス価値をいかにして増やすか」という 点に焦点を当てたマネジメント。むしろゆ とりが必要と考える。 例)タイムボックス毎のベロシティの推移 を見るスクラム コマンド&コントロール? 自己組織化?

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“過剰なマルチタスクを避けるためと、後続のプ ロセスに負荷をかけすぎないためだ。もし、テ スターたちが大量のやるべき作業を抱えてい たなら、開発者が新しい機能を開発し続けて、 テスターの仕事をさらに増やすのは避けたい はずだ。” 13 仕掛り(WIP)制限 ̶ 『リーン開発の現場』 *今回は概念の紹介に留めます

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JIRAのWIP制限機能

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2. メトリクスのグラフ化 スループット、サイクルタイム、プロセスサイクル 効率、累積フロー、Google Sheets

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“1ヶ月などある決まった時間内にデリバリーされ た項目数、あるいは何らかの価値指標でレポート が示されるべきである。(中略)カンバンシステム (チームや組織)がどのようなパフォーマンスを発 揮しているかの指標として、常時改善が行われて いるかを示すのに使用される。” 16 スループット ̶ 『カンバン ソフトウェア開発の変⾰』

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ソフトウェア開発におけるスループットとは? 17 ストーリー ポイント プランニングポーカーな どで求めた、「ストー リーの相対的な規模」を 表すポイント ファンクション ポイント データの入出力やデー タ項目数から機械的に 求めた、「機能の規 模」を表すポイント ユースケース数 ユーザー(アクター) とシステムの相互作用 を表すシナリオの数。

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前提となるJIRAプロジェクトの設定

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今回取り上げるワークフロー

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1. リリース済みの課題を検索する 2. 1の結果をGoogle Sheetsとしてエ クスポートする 3. 「解決日」を条件として、計測日 毎に累計解決数をCOUNTする 4. 前回からの累計解決数の差分をス ループットとする 5. 「複合」グラフを生成する 20

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1. リリース済みの課題を検索する 2. 1の結果をGoogle Sheetsとしてエ クスポートする 3. 「解決日」を条件として、計測日 毎に累計解決数をCOUNTする 4. 前回からの累計解決数の差分をス ループットとする 5. 「複合」グラフを生成する 21

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1. リリース済みの課題を検索する 2. 1の結果をGoogle Sheetsとしてエ クスポートする 3. 「解決日」を条件として、計測日 毎に累計解決数をCOUNTする 4. 前回からの累計解決数の差分をス ループットとする 5. 「複合」グラフを生成する 22

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“ある作業が完了するまでにかかった時間を意味 している。(中略)こういった情報を可視化し始め ると、ほとんどすべての会社で同じような恐怖を みんなが体験する。だいたいの場合、開発の経 過日数は、実際の作業日数より5倍から10倍長く なる。” 23 サイクルタイム ̶ 『リーン開発の現場』

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“「ねえ、機能Xの作業日数は2日だけだったの に、ボードを横切るのには20日もかかっている ぞ! これだとプロセスサイクル効率は10%で しかない」(中略)この数値を上昇させること は、無駄の発見や無駄を取り除くいい手段にな る。” 24 プロセスサイクル効率 ̶ 『リーン開発の現場』

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プロセスサイクル効率 = プロセスタイム ÷ サイクルタイム 25 実際の作業日数

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ワークフローにバッファステージを設ける 着手待ち、在庫

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https://marketplace.atlassian.com/apps/1211756/time-in-status

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28 1. Time In Statusでステージ毎の滞在 日数を表示する 2. 1の結果をCSV形式でエクスポート し、Google Sheetsに貼り付ける 3. 課題毎にサイクルタイム、プロセス タイム、プロセスサイクル効率を求 める 4. 「複合グラフ」を生成する

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29 1. Time In Statusでステージ毎の滞在 日数を表示する 2. 1の結果をCSV形式でエクスポート し、Google Sheetsに貼り付ける 3. 課題毎にサイクルタイム、プロセス タイム、プロセスサイクル効率を求 める 4. 「複合グラフ」を生成する

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30 1. Time In Statusでステージ毎の滞在 日数を表示する 2. 1の結果をCSV形式でエクスポート し、Google Sheetsに貼り付ける 3. 課題毎にサイクルタイム、プロセス タイム、プロセスサイクル効率を求 める 4. 「複合グラフ」を生成する

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“状態ごとの作業量を示す面グラフである。 (中略)線を垂直に結んだ高さが、その日に おける仕掛りの量を示している。(中略)水平 方向の距離が、ユーザー機能の開発から終 了までの平均リードタイムである。” 31 累積フロー ̶ 『カンバン ソフトウェア開発の変⾰』

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https://support.atlassian.com/ja/jira-software-cloud/docs/view-and-under stand-the-team-managed-cumulative-flow-diagram/

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順次増えていく組み込みのレポート機能

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3. さらに複雑な値を求める ドラム・バッファ・ロープ、バリューストリームマップ、 Google App Script

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ボトルネックを最⼤限活⽤する 35 制約理論の要点 その1

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“先頭の兵隊といちばん歩くのが遅い兵隊、 つまりボトルネックとをロープで結ぶんです。 (中略)必要な量の仕掛り在庫がボトルネッ クまで流れていって溜まるようにしてあげれ ばいいんです。” 36 ドラム・バッファ・ロープ ̶ 『クリティカルチェーン』

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http://www.lean-manufacturing-japan.jp/words/dbr.html

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ボトルネックの手前に適切な サイズのバッファを設ける 38

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“プロダクトの価値がお客様の手に渡 るまでの仕事の流れを見える化するた めのプラクティスだ。流れの中で、付 加価値が生まれ、プロダクトが滞りな く実現に向けて動いていけるのかを確 認する。” 39 ̶ 『カイゼンジャーニー』 バリューストリームマップ

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40 1. スループットのグラフに使った課題一 覧のシートを用意する 2. サイクルタイムのグラフに使ったス テージ毎の滞在日数のシートを用意す る 3. Google App Scriptを使って2つのシー トの情報を結合し、「解決日」が特定 の期間内である課題の各ステージの平 均滞在日数のを求める 4. バリューストリームマップを描く(手 動)

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41 1. スループットのグラフに使った課題一 覧のシートを用意する 2. サイクルタイムのグラフに使ったス テージ毎の滞在日数のシートを用意す る 3. Google App Scriptを使って2つのシー トの情報を結合し、「解決日」が特定 の期間内である課題の各ステージの平 均滞在日数のを求める 4. バリューストリームマップを描く(手 動)

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1. スループットのグラフに使った課題一 覧のシートを用意する 2. サイクルタイムのグラフに使ったス テージ毎の滞在日数のシートを用意す る 3. Google App Scriptを使って2つのシー トの情報を結合し、「解決日」が特定 の期間内である課題の各ステージの平 均滞在日数のを求める 4. バリューストリームマップを描く(手 動) 42

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43 1. スループットのグラフに使った課題一 覧のシートを用意する 2. サイクルタイムのグラフに使ったス テージ毎の滞在日数のシートを用意す る 3. Google App Scriptを使って2つのシー トの情報を結合し、「解決日」が特定 の期間内である課題の各ステージの平 均滞在日数のを求める 4. バリューストリームマップを描く(手 動)

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実装準備完了 実装中 QA準備完了 QA中 リリース準備完了 リリース済み

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想像できるメトリクスは大体取れる その他の計測すると良さそうなメトリクス ● 実際の仕掛りの課題数の推移 ● サイクルタイムのばらつき ● 課題タイプ毎のサイクルタイムの違い ● レビューやQAのステージからの手戻り率 ● etc…

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1. ワークフローにバッファステージを設ける 2. 各ステージの滞在時間を記録する 3. JIRAのフィルター機能で課題を抽出する 4. Google Sheetsでグラフを描く 5. 表計算しづらい値はGASを使って算出 カンバンメトリクス計測の基本的な流れ 定期作業は二週間に一回、 10分程度

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Does anyone have any questions? @dnskimox 男爵が書く 47 Thanks!

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参考文献 ● エクストリームプログラミング | ベック,ケント, アンドレス,シンシア, Beck,Kent, Andres,Cynthia, 征典, 角 ● カンバン ソフトウェア開発の変革 Improving Service Delivery in Technology Business ● リーン開発の現場 カンバンによる大規模プロジェクトの運営 ● クリティカルチェーン ―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか ? ● カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで ● Eliyahu M. Goldratt - Wikipedia ● チーム管理対象累積フロー図を理解する | Jira Software Cloud | Atlassian サポート ● DBR(ドラムバッファロープ )理論 48