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OSTという文化を 組織に根付かせてみた 技術本部 Sansan Engineering Unit Data Hub グループ 光川 瑠香 スクラムフェス三河2024

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光川 瑠香 Sansan株式会社 技術本部 Sansan Engineering Unit Data Hub グループ - 2019年にSansan社に入社しました - 普段は関西で働いています - 犬が好きです X: @mitsuriver

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今日お話しすること - 「交流」を目的としたOSTを社内開催することになった経緯 - どんな風にOSTをやってみたかを紹介 - OSTを繰り返し行う中で起こった変化 ※本来のOSTは行動への起点づくりのための仕掛けですが、 今回お話しするOSTは交流を目的として自己流にアレンジしたものです

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OSTとは - Open Space Technologyの略 - 用意されたアジェンダはなく、参加者が主体となって対話を進める手法 - 参加者が話したいテーマを持ち寄り、自由にグループを形成して議論を進める - これにより参加者の自発性を喚起、主体的な対話とOST後の行動を促す オープニング テーマ出し マーケットプレイス セッション OSTの説明(原則、 進め方など) 話したいテーマを 提案する セッションを計画する 議論に参加する (複数回行う)

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OSTのセッションは並列&複数回行う セッションの場所 セッションの 開始時間 参加者は興味のあるセッションを選択し、議論に参加できる

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時は2023年・・・

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良い体験だったOST - RSGT2023で初めて100名を超える大規模オフラインOSTに参加 > 空間の熱量がとても高かったことが印象的だった > テーマが設定されているため、同じ興味・関心を持った人が自然に集まる - 知り合いががほとんどいなかった自分でも、議論を通じて人と会話することができた > 登壇者も著名人も一般参加者も関係なく、フラットに話す場になっていた - 自分にはない考え方・知見を得ることができた こんな熱量の高い空間を いつか社内のエンジニアと 共有してみたいな

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その当時に会社が抱えていた課題 - チームや部門を超えた横の繋がりがつくれていない > 社員の増加、マルチプロダクト化、リモートワークの普及などにより、 組織間の断絶が加速し、横のつながりが希薄になりつつあった

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その当時に会社が抱えていた課題 - チームや部門を超えた横の繋がりがつくれていない > 社員の増加、マルチプロダクト化、リモートワークの普及などにより、 組織間の断絶が加速し、横のつながりが希薄になりつつあった 数か月後にエンジニア交流のための オフラインイベントを開催することが決まった

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社内イベントのコンテンツへ提案 エンジニア交流イベントをすることになったけど、 コンテンツどうしよう... OSTとかどうですか?? OSTが何か知らないけど、やってみて! (え、私がやるの?)

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エンジニアイベントの 懇親会パートの1コンテンツとして OSTをすることになった

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OSTの準備 2か月前から準備を始めた - 目的の設定 - OSTの認知度調査&有識者の巻き込み - プレOSTの実施 - 備品の手配

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目的の設定 - OSTの実施目的を「普段一緒に仕事をしていない人との繋がりを作る こと」と定義した > 本来は行動への起点づくりのための仕掛けだが、今回は「交流」を目的として、 次の行動(next action)に繋げるという文脈は忘れることにした

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OSTの認知度調査&有識者の巻き込み - OSTの認知度調査のため、運営&当日手伝いメンバーにアンケートを投げた - 半数以上の人がOSTに参加したことがない / 知らないということが分かった - OST運営経験者を数名見つけた > 仲間になってもらった

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プレOSTの実施 - おそらく本番の参加者もOSTを知らない人が多い - OSTの流れを知っているメンバーを増やしておきたい - OSTを体験し、知らない人をリードする存在になってほしいという期待を伝えた

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備品の手配 - OSTの実施事例をブログ等で調べながら、必要そうな備品を購入&手配した - 机、付箋、ペン、イーゼルパッド - ホワイトボード - 紙(テーマ起票用) - マグネット(テーマをホワイトボードに貼るため) - テーブルの場所を表す札

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OST開催

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当日の雰囲気

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OST開催にあたり気を付けたこと、工夫点 - 議論へ参加しない自由を尊重した - 途中参加しやすいよう、議論の流れを公開する - テーマ起票のハードルを下げる 「またOSTに参加したい」って 言ってもらえる場にするぞ

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議論へ参加しない自由を尊重した - 背景 > その場にいる人はOSTのために集まったのではない - OSTはエンジニア交流イベントの中の懇親会パートの1コンテンツ > 懇親会といえど、誰もが「普段一緒に仕事をしていない人との繋がりを作りた い」と思っているわけではない - おそらくOSTには参加せずに、既知の知り合いと交流したい人もいるはず - 議論へ強制的に参加してもらうことは... > 自発的な議論を損なう恐れがある - OSTに参加したい人/したくない人双方のデメリットになる

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議論へ参加しない自由を尊重した - オープニングは必須参加、議論への参加は任意にした - 議論に参加しない自由を尊重した空間設計にした > 場所を広めに確保して、議論に参加しない人のためのフリースペースを用意した OSTのため の机 フリースペース (OSTを気にせず 交流を楽しんでOK) お互いに圧を感じない距離を取るために、会場を2部屋確保した

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途中参加しやすいよう、議論の流れを公開する - 場を観察していると - 各机に付箋とペンを用意していたが、活用度合い はグループによりまばらだった > 全体の約3割くらいしか活用していなかった - 付箋を活用しているグループで、通りがかりの人 が付箋をしばらく読んだ後に、議論に途中参加す る動きを見かけた

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途中参加しやすいよう、議論の流れを公開する - 場を観察していると - 各机に付箋とペンを用意していたが、活用度合い はグループによりまばらだった > 全体の約3割くらいしか活用していなかった - 付箋を活用しているグループで、通りがかりの人 が付箋をしばらく読んだ後に、議論に途中参加す る動きを見かけた どんな話をしているのかを 外から見える状態にすると 途中から参加しやすくなるのでは?

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途中参加しやすいよう、議論の流れを公開する - 以下の行動を試した - 率先して付箋にメモを取る - その場にいる人に付箋にメモを取ることを促す

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テーマ起票のハードルを下げる - OSTの説明の際に、テーマの具体例をいくつか提示した - 交流目的なので、業務に関わらない内容でもOKだと伝える - テーマを考えるときのコツを共有する

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テーマ起票のハードルを下げる - とはいえ当日スムーズに起票数が集まらなかったので > 机の数(並列度)を減らした > 周りの人に声をかけて起票を促した

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OST開催の結果 - 参加者からのフィードバックは好評でした > 例 - 他部門や普段接点のない人との交流ができた - 共通の話題を持つ人を見つけ、深い議論を通じて自身の考えをアップデートできた - 仕事で関わらない人と技術の話や、他のチームの文化の共有などができた - 業務の合間ではないので、時間を取ってしっかりと深い話ができた - 所感 > 当初の目的であった「普段一緒に仕事をしていない人との繋がりを作ること」 に一定寄与している手応えがあった

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OST開催のその後 - 横のつながりをつくる活動は継続して行う必要がある - アンケート結果もポジティブだった > OSTを継続して開催することになった

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実績 - 通算3回開催 - 3回目の参加者は約250名 ※イベントの現地数(OSTへ参加していない人も含む) 2023 夏 2023 冬 2024 夏

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試行錯誤しながらのOST継続 - パックマンルールを意識したサポート - 二人目に踊る人になる - 学びを当日ボランティアメンバーに共有

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パックマンルールを意識したサポート - パックマンルール > 新しい人が話の輪に入りやすくなるよう、入り口を開けておきましょう というもの 机 机

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パックマンルールを意識したサポート - 椅子の予備を会場壁際に積んでおいてもらった - セッションの開始後に各机の人の集まり具合を見て、椅子を足して回った 机 椅 子 椅 子 机 椅 子

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パックマンルールを意識したサポート - 椅子の予備を会場壁際に積んでおいてもらった - セッションの開始後に各机の人の集まり具合を見て、椅子を足して回った 机 椅 子 椅 子 机 椅 子

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二人目に踊る人になる チームにノリをもたらした時にいた「二人目に踊る人」の共通点 / piyonakajima https://speakerdeck.com/piyonakajima/timuninoriwomotarasitashi-niita-er-ren-mu-niyong-ruren-nogong-tong-dian - 下記のセッションを聞いて、素晴らしい行いをしている孤独な人を見つ けたら、二人目に踊る人(=最初に勇気をもって参加する人)になろう と思っていた

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二人目に踊る人になる - 具体的には、一人で座っているテーブルを見つけたら、二人目として参加し 議論の着火までをサポートする動きをした > 「なぜこのテーマを選んだのか?」「どんなことを話したくて起票したのか?」を ヒアリングしつつ、付箋にメモした - メモが通りがかりの人の目についたらOK > 議論に火がついたなと思ったら離れても良い > 議論が始まらなかったら、解散をしてもいいことを伝える

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学びを当日ボランティアメンバーに共有 - やってみて気づいた学びを当日ボランティアメンバーに共有した > 例えば、付箋を活用すると途中参加しやすさが上がること - 当日ボランティアメンバーには、理想的なふるまいを率先して行ったり、 周りに促してもらうようにお願いをした

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運営の介入の是非 - 本来のOSTでは積極的にファシリテーターのコントロールを手放すこと が推奨されている - が、目的の達成のためにあえて介入をすることにした

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OSTを繰り返し行ったことによる変化

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組織課題の解決に寄与した - 継続的に横のつながりを作ることにOSTが貢献できた > 実施後アンケートでは、普段交流しない人との交流ができたことが多く報告された - 例 > OSTで新しい人と繋がれた > OSTでは、開発効率化やモブプロなどのtipsを他部署の方に聞くことができた > 全然知らなかった他部署のエンジニアと交流できる > OSTでは他部署の方とお話しする機会になった > 様々なエンジニアの取り組みを知れる機会で良かったです > 参加者が能動的に動くことで、コラボレーションの機会が創出できそうかなと思った > OSTでは自分の業務につながる議論できて良かった > 趣旨でもある普段仕事で関わらない人達と話すよい機会だと思う。懇親会的なものだと普段から 知っている人と固まりがちなので 自然と横のつながりを作れた

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参加者の変化 - 過去はあまりテーマが集まらなくて苦労したが、3回目は苦も無くテーマが 集まった > 事前にみんなと話したいテーマを考えてきてくれた > 今年もこのテーマを話しに来ました、という常連が現れた - 参加者自身が自発的に付箋を活用してくれるようになった > 積極的なサポートが不要になってきた - 運営を手伝ってくれるメンバーが増えた > 司会進行を後任に引き継げた サポートを薄くしても、自走するOSTになってきた

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OSTを継続して得られたもの - OSTが終わったあとの時間に変化を及ぼす動きがあった > 特定の話題を扱うSlackチャンネルが作られた > 継続的な勉強会コミュニティが立ち上がった > 部活動が発足した 狙ってはいなかった、本来のOSTの効果が得られた

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ふりかえってみると、この3つがどれも大切でした 1. 目指す姿をイメージする ● 手本になるものを体験する 2. まずは少人数でやってみる 3. 継続的に開催する ● フィードバックの収集をする ● 最初のうちは手厚く支援をする → ちょっとずつ支援を薄くする OSTを通じて学んだ文化の根付かせ方

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まとめ - エンジニア組織の「交流」を活性化させる手段としてOSTは効果的だった - 継続して開催することで参加者の意識や行動の変化を感じることができた - 文化醸成において、目指す姿をイメージすること、小さく始めること、継 続的な実施とフィードバック、適切なサポートを行うことは大事なことと 感じた