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マネジメント 3.0 モデル入門 2023/3/20 M3&T Lab. 藤井 拓

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自己紹介 6年ほど電機メーカーで研究開発し、その後ソフトウェアの世界に転職し、 30年。その間、モデリングや開発手法の研究開発や適用支援等に従事し、 何回か管理職を経験。定年後再雇用3年間を経て、2022年4月から個人事 業主の立場でアジャイルアドバイザー、トレーナー、翻訳、研究に従事。 • 興味を持っている分野 ➢ アジャイルなマネジメント ➢ アジャイル要求 ➢ アジャイルパラダイムのスケーリング ➢ 組織の転換 2 藤井のブログ/web:https://m3tlab.wordpress.com/ Twitter: @TakuFujii

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本プレゼンのゴール ⚫マネジメント3.0と従来のマネジメントの違い、自己組織化との関係を 説明する ➢線形 vs 非線形 → 複雑系の科学 → 複雑適応系 (CAS) ➢情報-イノベーションシステム ➢自己組織化 ⚫マネジメント3.0モデルの6つの視点を紹介する 書籍『Management 3.0 — Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders』の構成にだいたい沿って説 明します。以降、書籍名を『Management 3.0』と略して表記します。 3 • 人々を元気づける • チームに委任するのか • 制約を揃える • コンピテンスを育む • 構造を成長させる • すべてを改善する

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4 マネジメント3.0モデルのポスター Management 3.0モデルのポスター:https://speakerdeck.com/takufujii/management-3-dot-0moderufalseetusensuposuta

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なぜ、マネジメント3.0 なのか? ⚫現在、周囲の速い変化にすばやく適応する組 織作りが求められており、その鍵を握るのが マネジメントだから。 ➢自己組織化 ➢サーバントリーダーシップ ⚫Jurgen Appeloが書籍『Management 3.0 — Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders』でその1つの回答となるマネジメント 3.0モデルを理論と実践の両面から説明した 邦訳:Jurgen Appelo, マネジメント 3.0 :適応力の高いチームを育むための6つの視点, 丸善出版, 2022 5

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マネジメント 3.0の全体像 6

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マネジメントの責務とマネジメント3.0 マネジメントの責務は主として以下のようなものだと思うが、マネジメント3.0モデル はこれらを従来と異なる視点で考え直すことで、組織の適応性を高める道筋を切 り開くことを助けるという意義を持つ ➢ビジョン(方向性)を考える ➢リソースを確保する ➢様々な判断をする ➢分担(実行方法)を考える ➢育成する、または成長を支援する ➢組織を作る ➢現状を把握する ➢現状や今後の見通しを説明する ➢成果(結果)に対する責任を負う 7 チーム/グループ マネジメント ここでのマネジメントは、主としてチームのマネジャーを指すが、同時にラインマネジメント階層も指す。 マネジメント3.0 モデルは、従来のやり方を再考し、組織の適応性を高めるための視点を提供する

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線形な考え方 対 非線形な考え方 自分たちを取り巻く世界(システム)の捉え方は、2通りある ➢線形な考え方 ◆世界が将来どのように振舞うかは、因果関係によって決まる。因果関係を理解すれば、 将来の振る舞いを予測できる。 ➢非線形な考え方 ◆世界の振る舞いを左右する因果関係は複雑で理解するのは困難である。世界の将来 の振る舞いを予測することは困難である。  複雑性とは、将来の振る舞いの予測が困難なことを意味する 「線形な考え方」でマネジメントする場合、「因果関係を理解した」人に みんな(部下)が従えばよいというようになることが多い。 8 システム(系)とは、複数の相互作用する要素から構成されるものを意味する:太陽系、人間の集団、等々

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第3章「複雑系の科学」 :システムの分類 因果関係を容易に理解できないシステムは、複雑系である ➢構造の複雑さのレベル:構造が単純、構造がややこしい ◆例:三輪車、自動車 ➢振る舞いの複雑さのレベル:秩序がある、複雑な、カオス(無秩序)的 ◆例:投げたボール、新型コロナウイルスの流行、2重振り子、株式市場 以降のスライドでは、 「振る舞いの複雑さ」を「複雑性」と呼ぶ ややこし い 構造 振る舞い 単純 秩序がある 複雑な カオス的 9

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マネジメント 1.0, 2.0 対 3.0 階層型組織+線形思考 対 非線形思考 10 マネジメント1.0 マネジメント2.0 マネジメント3.0 マネジメント1.0 は、上位マネジメントが正しい指示を出し、統制するというモデル マネジメント3.0 は、組織自身を外界に適応する複雑系(複雑適応系)にすることを目指す

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「線形、非線形と複雑系」のまとめ(ポスターの裏面) ⚫一連の出来事を捉えて、対応する上で、線形的な立場と非線形的 な立場がある ⚫様々な現象は各々システムにより生じると考えられるが、それらの システムは構造的な複雑さと振る舞いの複雑性の2軸で分類できる ⚫企業や組織を取り巻く世界を複雑系として捉えるならば、それにより よく対応するためには複雑適応系 (CAS) ではあるべきではないか 11 ウイルスを含む生物は、複雑適応系(CAS)の1つの例である。また、国等の人間の集団も複雑適応系であ るが、国ごとの新型コロナへの対応の違いは複雑適応系としての違いを反映しているかもしれない。

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「線形、非線形な立場と複雑系」に関する議論 ⚫まず、グループ内で自己紹介をしてください。 ➢一人1分以内 ➢マネジメント3.0に関して知っていることや実践経験 ⚫次に、「線形、非線形な立場と複雑系」について、以下のことを議論 しよう ➢納得できたこと ➢この話題に関係する自分自身の経験 ➢もやもやしていることや質問 12 10分

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マネジメント3.0のモデルは、6つの視点で構成される。 マネジメント3.0モデル(マーティー) 13 チームに委任する 人々を元気づける 制約を揃える コンピテンス を育む 構造を 成長させる すべてを 改善する 書籍 『Management 3.0』の図を基に作成

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自己組織化とマネジメント 自己組織化は、境界があるシステムではありふれた現象である。自己 組織化だけでは、その活動の善悪や善し悪しは定まらない。 14 自己組織化した チーム/グループ マネジメント 自己組織化だけでは 良し悪しは決まらない! マネジメント 3.0は、自己組織化したチーム/グループとマネジメントのよりよい連携を目指す。

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情報-イノベーションシステム 今日、組織が生き残り、繁栄するために、そのイノベーションを生み出 す能力が問われている。マネジメント3.0では、それを5つの歯車で機 能する情報-イノベーションシステムと捉える。 15 自己組織化した チーム/グループ マネジメント 情報-イノベーションシステム 書籍 『Management 3.0』の図を基に作成

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視点#1:人々を元気づける 「人々を元気づける」とは、情報-イノベーションシステムの5 つ歯車が元気よく動くようにすることである 16 情報-イノベーションシステム 自己組織化した チーム/グループ マネジメント 内発的モチベーション、 (DIY) 価値の共有、… 書籍 『Management 3.0』の図を基に作成

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第5章「どのように人々を元気づけるか」 :個性 ⚫メンバーと自分の個性を評価し、理解する ➢書籍では、16PFなど利用できるパーソナリティー診断方法を紹介している ➢まず、自分(マネージャー)の個性の評価結果をチームに共有する ⚫自前(DIY)のチームの価値を定める ➢チームの価値を決める ◆50個の美徳(アジャイルの価値を含む)のリストを用いて5ステップで決める ➢そして、マネジメントは自分の個人的な価値を定める ◆聖人君主であったり、万能であったりする必要はない 17

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50個の美徳の大きなテーブル 正確さ 創造性 正直さ 粘り強さ シンプルさ 自己主張 好奇心 ユーモア 現実主義 スキル 美学 潔さ 勤勉 明確な目的を持つ 管理 バランス 決断力 率先 合理性 如才なさ 慎重 忍耐力 誠実 信頼性 徹底 清潔 熱意 楽しさ 回復力 寛容 真剣さ 卓越 知識 敬意 信頼 自信 柔軟性 注意深さ 責任 頼り甲斐 協力 焦点 率直さ 自己訓練 結束 勇気 有益さ 整頓 奉仕 ビジョン 18 書籍 『Management 3.0』の表を翻訳

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「情報-イノベーションシステム」と 「人々を元気づける」のまとめ(ポスター裏面) ⚫企業や組織がビジネスの世界で生き残り、繁栄するためには、イノベーションを 生み出す複雑適応系 (CAS) であるべき ⚫イノベーションを生み出すためには、情報-イノベーションシステムの5つの歯車 が元気よく動くようにマネジメントしなければらない ⚫モチベーションについては、メンバーの内発的なニーズ(欲求)を理解し、それら にどのように対応できるかを考える必要がある ⚫個性については、メンバーと自身を理解し、さらにそこからチームとしての価値 を見つけ出していく必要がある 19

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視点#2:チームに委任する 委任(エンパワメント)することで、チームの成長を後押しする。また、 以下のような意思決定のオプションを理解し、使い分ける。 20 自己組織化した チーム/グループ マネジメント 責任を委ねる 告げ る 売り 込む 相談 する 合意 する アドバ イスす る 尋ね る 委譲 する 責任を抱え込 む 起こりがちなこと 自分の発想 に限定される 失敗を恐れる

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第7章「チームにどのように委任するのか」 :委任対委譲 ⚫委任 対 委譲 ➢委譲: ◆何らかの責任を誰か他の人に任せる行為(出典『Management 3.0』を独自に翻訳) ➢委任: ◆委譲以上のものであり、以下のことをサポートする  リスクを取る  個人の成長  文化の変革 ◆権限を認めることだけではなく、相手がどれほど力を持っているかを認める。(出典 『Management 3.0』を独自に翻訳) ◆それでも、マネージャーにとっては怖いことでもある 21

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第7章「どのようにチームに委任するのか」 :委任の成熟度と権限のレベル ⚫委任の成熟度 ➢低レベルの委任:会社に大きな影響を及ぼさないような責任 ➢中レベルの委任:採用の際のインタビュー、従業員の自己学習など ➢高レベルの委任:給料を一緒に決める、プロジェクトの選択など ⚫タスク毎 ➢権限のレベル ◆7段階の権限レベル → デリゲーション・ポーカー ➢関与する人々 ◆特定の個人、同じ権限レベルの人たち、チームが関与する人を選ぶ 22

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「チームに委任する」のまとめ(ポスター裏面) ⚫自己組織化は、中央の権威が計画を通じて課すことなく、システムにおい て構造やパターンが表れるプロセスである ➢それ自身は良いものにも、悪いものにもなりうる ⚫構造と振る舞いが複雑な世界を相手にする場合、1人の人がその世界を 把握し、適切な判断を下すのは困難である ⚫その代わりに、適切な情報を持つ人やチームに委任すべきである ⚫委任は、(組織の)成熟度という観点と、タスク毎の権限レベル、関与する 人々という観点で考え、改善していくべきである 23

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視点#3:制約を揃える チームの意見も聞きつつ、方向性を決める。また、最低限守ってほし いことを明示する。 24 自己組織化した チーム/グループ マネジメント マネジメント3.0 では、人をマネジメントするのではなく、システムをマネジメントすることを目指す。そのため に、直接的に人に指示を出すよりは、チームに対する目標、制約を設定する。

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第8章「目的に沿ってリードし、統治する」 :自己組織化するチームとマネージャー ⚫パラメーターを構成する ➢自己組織化するチームは、一定のパラメーターが決定的な範囲にある時にカオス の縁に取り組む(出典『Management 3.0』を独自に翻訳) ◆多様性、情報のフロー、チーム間のつながりなど ◆ゲームの細かいルールを作る必要はない ⚫システムを守る ➢マネージャーとして、私は働くのによく、安全な組織とするための基本的な管理を実 施し、そして人々や共有されたリソースが確実に公平に扱われることで、人々と共 有されたリソースを守る。(出典『Management 3.0』を独自に翻訳) ◆例えば、ハラスメントやイジメなどが起きないようにしたり、限られた予算や共有環境を管理 する 25

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エンタープライズアジャイル勉強会とは 日本の企業で「エンタープライズアジャイル」は以下の3つの形で実現される可能 性がある。これらの可能性を追求する際に直面する様々な課題とその解決策を 共有する ⚫第1の可能性 ➢業務の変化に対応し、基幹系やバックオフィス系のシステム(「エンタープライズシステム」) を効果的に開発するためにアジャイル開発を適用する ⚫第2の可能性 ➢競争力に資する製品やサービス、戦略的システムを開発するためにアジャイル開発や反復 開発を大規模に適用する ⚫第3の可能性 ➢変化により良く対応できる、活力のある組織を実現するために企業や事業部をアジャイル 化する 26

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「制約を揃えるか」のまとめ(ポスター裏面) ⚫自己組織化をより成果に結びつけるために、マネージャーは、パラメーターを設 定し、自己組織化している組織を守る、方向性を示す必要がある ⚫方向性を示すためには、マネージャー自身が目的を設定するだけではなく、メン バーの目的と折衷させる可能性も念頭に置いた方がよい ⚫重要な判断領域において、どのように誰が判断を行うのかを明示し、それを見 直す ⚫また、起こらないで欲しいことを明示する 27

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「人々を元気づける」、「チームに委任する」、「制 約を揃える」に関する議論 「人々を元気づける」、「チームに委任する」、「制約を揃える」について、 以下のことを議論しよう ⚫納得できたこと ⚫これらの話題に関係する自分自身の経験 ⚫もやもやしていることや質問 28 5分

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視点#4:コンピテンスを育む ルールを自ら作る能力、規律とスキルの重要性を認識し、育成手段を 選択してメンバーのコンピテンスの育成を後押しする 29 自己組織化した チーム/グループ マネジメント ルールを自ら作る能力 育成手段: 自己訓練 コーチング 認定 社会的圧力 適応可能なツール 監督者 マネージャー 規律とは、プロとしての心構えを意味する。

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第10章「ルール作りの技能」 ⚫アジャイルの死角 ➢私は、アジャイル宣言の不十分点が、すべてのプロジェクトで、人々が賢明で、訓練されて おり、注意深くある必要があることを(明示的に)認識していないことだと信じている。 ⚫大事なこと:クラフトマンシップ ➢…よりよい結果が欲しいマネージャーは、自分たちが自分たちの部下の態度や振る舞いを 積極的に変えなければならないことを認めなければならない。それらの人たちは、クラフトマ ンシップと規律を鼓舞しなければならない。 ⚫補完性原理 (Subsidiarity Principle) ➢補完性とは、最も小さく、一番下あるいは最も中央集権化していない有能な権限者によって (ルール作りのような)物事が取り扱われるべきだという組織の原則である。… 30 ソフトウェアクラフトマンシップ宣言(英語):https://manifesto.softwarecraftsmanship.org

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第11章「コンピテンスを育む方法」 ⚫コンピテンスの育成に対する7個のアプローチ ➢…我々が、…規律の概念をコンピテンスへと広げることで、我々は組織においてコンピテンス を育成するための7つのアプローチに至る。… ◆ 自己 ◆ コーチ ◆ テスト ◆ ツール ◆ 同僚 ◆ 監督者 ◆ マネージャー ➢…最後に、これらのいずれもが機能せず、そして監督者が利用できない(あるいは、そのうえ 無能である)時には、マネージャーこそが、いかなるビジネス上の損失に対する非難を(当 然)受けるべき人である。 31

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「コンピテンスを育む」のまとめ(ポスター裏面) ⚫エージェントに、自らルールを作り、管理できるというようなルール作りの 能力を育むことが望ましい ⚫アジャイル宣言において明示されていない規律とスキルを育むことがマネ ジメントとして重要である ⚫マネージャーとして、無意味なルールを取り除いたり、問題が小さなうちに 解決する必要がある ⚫コンピテンスを育む方法として、自己訓練、コーチング、認定、社会的圧 力、適応可能なツール、監督者、マネージャーがあり、これらを組み合わ せて実行することを考える必要がある 32

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視点#5:構造を成長させる 良質なコミュニケーションのためのネットワークづくり、チームの編成で スペシャリティー(専門性)とジェネラリティー(一般性)のどちらを重視 し、組織間の調整をどうするかなどを考える 33 ネットワーク 専門性か一般性か 組織間の調整 スケーリング 各人は、ネットワーク上で 様々な役割を担い、その つながりと役割を通じて 流れる情報が選択される

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第12章「構造の上でのコミュニケーション」 ⚫ミスコミュニケーションは、ありふれている ➢ 私の観察に基づけば、コミュニケーションを3つの現象の関数だと私は考えている。つまり、情報、 関係性、そしてフィードバックの3つである。 ◆コミュニケーション = 情報 * 関係性 * フィードバック ⚫つながりをチューニングする ➢ 複雑系のエージェント間のコミュニケーションの平均量は、だいたい一定である。… …それでも、 マネージャーが行うことで理に適うことは、どの情報が利用可能で、人々の間にどのつながりが 形作られ、それらの人たちが自分たちの感覚のフィルターをどの程度訓練されているかという点 に影響を及ぼすことである。… ⚫グループと境界 ➢ Hackmanは、透過できる境界という用語を用いているが、これは我々がシステム理論(第3章「複 雑系の理論」を参照)で見つけた概念でもある。 34

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「構造を成長させる」のまとめ(ポスター裏面) ⚫本当のコミュニケーションは、1方向ではなく、フィードバックがあって成立する ⚫複雑系において、エージェント間のつながりが多ければ多いほどよいというものではな い。そのため、組織をスケールさせる場合、スケールアップよりもスケールアウトさせた 方がよい ⚫チームのメンバーは、まずスペシャリティー(専門性)を主にし、そこからジェネラリ ティーを加える。また、チームを価値ユニットという観点で考える ⚫複数のチームにおいて、チーム間の調整をどうするかという点と、チームのメンバー構 成(機能ごと、機能横断)の両面で発展の方向性を考える 35

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視点#6:すべてを改善する 改善する(=様々なパラメーターを変える)ことで、適応度地形での位 置が変わるが、それを確認しながらより高い適応度を目指す。 36 適応度 パラメーターの組み合わせ 適応度地形 間違いを称えるとともに、以 下の3つの戦略を用いる • ノイズ(不完全さ)、 • 性(交差)、 • ブロードキャスト 書籍 『Management 3.0』の図を基に作成 適応度地形は、もともと遺伝子の組み合わせの違いの環境への適応度を図示するものである。 それをマネジメント3.0では組織のあり方(パラメーターの組み合わせ)の違いのビジネス環境へ の適応度を図示するために用いている。

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適応度地形の進み方:ダブルループ学習 スプリントとリリースのダブルループで、適応、探索、予期を通じてプロ ダクトの適合性を確認しながらプロダクトを発展させる。 37 • 適応:フィードバック に基づいて軌道修 正する • 探索:様々な試みを 行う • 予期:ニーズを予期 する

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適応度地形でのジャンプ 生物の進化のメカニズムをまねして、適応度地形をジャンプする。 38 生物の進化のメカニズム ⚫ノイズ(不完全さ) ⚫性(交差) ⚫ブロードキャスト 適応度地形をジャンプする方法 ⚫完全さを追求せず、失敗を称 える ⚫異なるやり方のチームを混合 する ⚫新たな有効なやり方を宣伝な どにより広める

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「すべてを改善する」のまとめ(ポスター裏面) ⚫ビジネス環境において継続的に改善し、生き残るためには、適応、探索、予期を行う必 要がある ➢ 適応:アジャイル、探索、予期:ビジネス ⚫変化させる要素の様々な組み合わせ(位相空間)を1つの軸とし、適応度をもう1つの 軸として適応度地形を描くことができる ⚫適応度地形の中で、自分たちの位置を知り、自からも変化を生み出すことで、継続的な 変化に立ち向かう文化を作る ⚫間違いを称えるとともに、ノイズ(不完全さ)、性(交差)、ブロードキャストなどの戦略に より、局所最適を乗り越えて、継続的な改善を行う 39

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「コンピテンスを育む」、「構造を成長させる」、「す べてを改善する」に関する議論 「コンピテンスを育む」、「構造を成長させる」、「すべてを改善する」に ついて、以下のことを議論しよう ⚫納得できたこと ⚫これらの話題に関係する自分自身の経験 ⚫もやもやしていることや質問 40 5分

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全体のまとめ ⚫マネジメント3.0と従来のマネジメントの違い、自己組織化との関係を 説明した(ポスターの表面+一部裏面) ➢線形 vs 非線形 → 複雑系の科学 → 複雑適応系 (CAS) ➢情報-イノベーションシステム ➢自己組織化 ⚫マネジメント3.0モデルの6つの視点を紹介した(ポスターの裏面) 41 • 人々を元気づける • チームに委任するのか • 制約を揃える • コンピテンスを育む • 構造を成長させる • すべてを改善する Management 3.0モデルのポスター:https://speakerdeck.com/takufujii/management-3-dot-0moderufalseetusensuposuta

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蛇足:私がマネジメント3.0に興味を持った理由 ⚫80年代に私が製造メーカーにいた時代、周囲で行われたり、自分も 参加した製品開発プロジェクトでマネジメントの善し悪しが成果を左 右することに興味を持ったのが原点 ⚫その後、アジャイル開発におけるマネジメント、リーダーシップを論じ た本を何冊読んだが、概念的なものだったり、イマイチぴんとこなっ たりした ⚫マネジメント3.0は、共感できる内容で、理論と実践の両方が示され ているという点で興味を持った 42

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蛇足:日本のマネジメントのアンチパターン 上から降りてきた仕事をひたすら「真面目に」がむしゃらに(長時間)取 り組むようなマネジメント ⚫私が若い頃、上から降りてきた仕事をひたすら「真面目に」がむしゃ らに(長時間)取り組むようなマネジメントは良くないと思いました。そ のようなマネジメントは、価値の高低に関わらず、時間をかけて自分 も仕事し、部下もそれに巻き込まれてしまうのではないかと思います。 ⚫このようなことは、日本で比較的よく見られるのではないでしょうか。 しかし、マネジメント1.0に「勤勉さ」が加わって生まれたと思われるこ のパターンは組織の適応性を低下させる一因ではないでしょうか。 43

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参考文献 ⚫Jurgen Appelo、マネジメント 3.0 :適応力の高いチームを育むための6つの視点、 丸善出版、2022 ⚫ヨーガン・アペロ、マネージング・フォー・ハピネス――チームのやる気を引き出 すゲーム、ツール、プラクティス、 明石書店、2022 ➢マネジメント3.0に基づくゲーム、ツール、プラクティスを紹介する書籍 ⚫書籍『マネジメント3.0:適応力の高いチームを育むための6つの視点』のご紹介: https://onl.la/NyqZSas ➢書籍紹介だが、本講演のサマリーにもなっている ⚫ゲイリー・ハメル、ビル・ブリーン、経営の未来、日本経済新聞社、2008 ➢マネジメント3.0と似た考え方で、大企業を変革した事例が紹介している 44

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謝辞 『Management 3.0』 の邦訳に関わって下さった以下の方々にこの場を借りて感謝 します。 ⚫大阪Management 3.0読書会のメンバー:兒玉督司さん、中原慶さん、羽飼康さ ん、樋上直樹さん ⚫『Management 3.0』の邦訳に関するインタビューへの御協力:秋元利春さん ⚫『Management 3.0』の邦訳に前書きを寄稿:Jurgen Appeloさん、Stefan Nüsperingさん ⚫『Management 3.0』の邦訳のゲラ査読へのご協力:渡辺博司さん、藤満理恵さ ん、鹿島康由さん 45

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「人々を元気づける」に関する議論 「人々を元気づける」について、以下のことを議論しよう ⚫納得できたこと ⚫もやもやしていることや質問 46 5分

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「チームに委任する」に関する議論 「チームに委任する」について、以下のことを議論しよう ⚫納得できたこと ⚫もやもやしていることや質問 47 5分

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「コンピテンスを育む」に関する議論 「コンピテンスを育む」について、以下のことを議論しよう ⚫納得できたこと ⚫もやもやしていることや質問 48 5分

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「構造を成長させる」に関する議論 「構造を成長させる」について、以下のことを議論しよう ⚫納得できたこと ⚫もやもやしていることや質問 49 5分