Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

マネジメント3.0モデル入門(120分版)

 マネジメント3.0モデル入門(120分版)

ヨーガン・アペロが提案したマネジメント 3.0 のモデルをアペロの著書 "Management 3.0 : Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders" に沿って概説しています。本プレゼンでは、マネジメント3.0 のモデルの土台を成す複雑系の科学を簡単に紹介し、マネジメント 3.0 のモデルの6つのビューである、どのように人々を元気づけるか、どのようにチームに委任するか、どのように制約をそろえるか、コンピテンスを育む、構造を成長させる、すべてを改善するの概要を紹介します。議論を含めた所要時間は120分弱です。 

Taku Fujii

March 21, 2023
Tweet

More Decks by Taku Fujii

Other Decks in Technology

Transcript

  1. 本プレゼンのゴール ⚫マネジメント3.0と従来のマネジメントの違い、自己組織化との関係を 説明する ➢線形 vs 非線形 → 複雑系の科学 → 複雑適応系

    (CAS) ➢情報-イノベーションシステム ➢自己組織化 ⚫マネジメント3.0モデルの6つの視点を紹介する 書籍『Management 3.0 — Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders』の構成にだいたい沿って説 明します。以降、書籍名を『Management 3.0』と略して表記します。 3 • 人々を元気づける • チームに委任するのか • 制約を揃える • コンピテンスを育む • 構造を成長させる • すべてを改善する
  2. なぜ、マネジメント3.0 なのか? ⚫現在、周囲の速い変化にすばやく適応する組 織作りが求められており、その鍵を握るのが マネジメントだから。 ➢自己組織化 ➢サーバントリーダーシップ ⚫Jurgen Appeloが書籍『Management 3.0

    — Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders』でその1つの回答となるマネジメント 3.0モデルを理論と実践の両面から説明した 邦訳:Jurgen Appelo, マネジメント 3.0 :適応力の高いチームを育むための6つの視点, 丸善出版, 2022 5
  3. マネジメントの責務とマネジメント3.0 マネジメントの責務は主として以下のようなものだと思うが、マネジメント3.0モデル はこれらを従来と異なる視点で考え直すことで、組織の適応性を高める道筋を切 り開くことを助けるという意義を持つ ➢ビジョン(方向性)を考える ➢リソースを確保する ➢様々な判断をする ➢分担(実行方法)を考える ➢育成する、または成長を支援する ➢組織を作る

    ➢現状を把握する ➢現状や今後の見通しを説明する ➢成果(結果)に対する責任を負う 7 チーム/グループ マネジメント ここでのマネジメントは、主としてチームのマネジャーを指すが、同時にラインマネジメント階層も指す。 マネジメント3.0 モデルは、従来のやり方を再考し、組織の適応性を高めるための視点を提供する
  4. 線形な考え方 対 非線形な考え方 自分たちを取り巻く世界(システム)の捉え方は、2通りある ➢線形な考え方 ◆世界が将来どのように振舞うかは、因果関係によって決まる。因果関係を理解すれば、 将来の振る舞いを予測できる。 ➢非線形な考え方 ◆世界の振る舞いを左右する因果関係は複雑で理解するのは困難である。世界の将来 の振る舞いを予測することは困難である。

     複雑性とは、将来の振る舞いの予測が困難なことを意味する 「線形な考え方」でマネジメントする場合、「因果関係を理解した」人に みんな(部下)が従えばよいというようになることが多い。 8 システム(系)とは、複数の相互作用する要素から構成されるものを意味する:太陽系、人間の集団、等々
  5. マネジメント 1.0, 2.0 対 3.0 階層型組織+線形思考 対 非線形思考 10 マネジメント1.0

    マネジメント2.0 マネジメント3.0 マネジメント1.0 は、上位マネジメントが正しい指示を出し、統制するというモデル マネジメント3.0 は、組織自身を外界に適応する複雑系(複雑適応系)にすることを目指す
  6. 50個の美徳の大きなテーブル 正確さ 創造性 正直さ 粘り強さ シンプルさ 自己主張 好奇心 ユーモア 現実主義

    スキル 美学 潔さ 勤勉 明確な目的を持つ 管理 バランス 決断力 率先 合理性 如才なさ 慎重 忍耐力 誠実 信頼性 徹底 清潔 熱意 楽しさ 回復力 寛容 真剣さ 卓越 知識 敬意 信頼 自信 柔軟性 注意深さ 責任 頼り甲斐 協力 焦点 率直さ 自己訓練 結束 勇気 有益さ 整頓 奉仕 ビジョン 18 書籍 『Management 3.0』の表を翻訳
  7. 第7章「チームにどのように委任するのか」 :委任対委譲 ⚫委任 対 委譲 ➢委譲: ◆何らかの責任を誰か他の人に任せる行為(出典『Management 3.0』を独自に翻訳) ➢委任: ◆委譲以上のものであり、以下のことをサポートする

     リスクを取る  個人の成長  文化の変革 ◆権限を認めることだけではなく、相手がどれほど力を持っているかを認める。(出典 『Management 3.0』を独自に翻訳) ◆それでも、マネージャーにとっては怖いことでもある 21
  8. 第11章「コンピテンスを育む方法」 ⚫コンピテンスの育成に対する7個のアプローチ ➢…我々が、…規律の概念をコンピテンスへと広げることで、我々は組織においてコンピテンス を育成するための7つのアプローチに至る。… ◆ 自己 ◆ コーチ ◆ テスト

    ◆ ツール ◆ 同僚 ◆ 監督者 ◆ マネージャー ➢…最後に、これらのいずれもが機能せず、そして監督者が利用できない(あるいは、そのうえ 無能である)時には、マネージャーこそが、いかなるビジネス上の損失に対する非難を(当 然)受けるべき人である。 31
  9. 第12章「構造の上でのコミュニケーション」 ⚫ミスコミュニケーションは、ありふれている ➢ 私の観察に基づけば、コミュニケーションを3つの現象の関数だと私は考えている。つまり、情報、 関係性、そしてフィードバックの3つである。 ◆コミュニケーション = 情報 * 関係性

    * フィードバック ⚫つながりをチューニングする ➢ 複雑系のエージェント間のコミュニケーションの平均量は、だいたい一定である。… …それでも、 マネージャーが行うことで理に適うことは、どの情報が利用可能で、人々の間にどのつながりが 形作られ、それらの人たちが自分たちの感覚のフィルターをどの程度訓練されているかという点 に影響を及ぼすことである。… ⚫グループと境界 ➢ Hackmanは、透過できる境界という用語を用いているが、これは我々がシステム理論(第3章「複 雑系の理論」を参照)で見つけた概念でもある。 34
  10. 視点#6:すべてを改善する 改善する(=様々なパラメーターを変える)ことで、適応度地形での位 置が変わるが、それを確認しながらより高い適応度を目指す。 36 適応度 パラメーターの組み合わせ 適応度地形 間違いを称えるとともに、以 下の3つの戦略を用いる •

    ノイズ(不完全さ)、 • 性(交差)、 • ブロードキャスト 書籍 『Management 3.0』の図を基に作成 適応度地形は、もともと遺伝子の組み合わせの違いの環境への適応度を図示するものである。 それをマネジメント3.0では組織のあり方(パラメーターの組み合わせ)の違いのビジネス環境へ の適応度を図示するために用いている。
  11. 全体のまとめ ⚫マネジメント3.0と従来のマネジメントの違い、自己組織化との関係を 説明した(ポスターの表面+一部裏面) ➢線形 vs 非線形 → 複雑系の科学 → 複雑適応系

    (CAS) ➢情報-イノベーションシステム ➢自己組織化 ⚫マネジメント3.0モデルの6つの視点を紹介した(ポスターの裏面) 41 • 人々を元気づける • チームに委任するのか • 制約を揃える • コンピテンスを育む • 構造を成長させる • すべてを改善する Management 3.0モデルのポスター:https://speakerdeck.com/takufujii/management-3-dot-0moderufalseetusensuposuta
  12. 参考文献 ⚫Jurgen Appelo、マネジメント 3.0 :適応力の高いチームを育むための6つの視点、 丸善出版、2022 ⚫ヨーガン・アペロ、マネージング・フォー・ハピネス――チームのやる気を引き出 すゲーム、ツール、プラクティス、 明石書店、2022 ➢マネジメント3.0に基づくゲーム、ツール、プラクティスを紹介する書籍

    ⚫書籍『マネジメント3.0:適応力の高いチームを育むための6つの視点』のご紹介: https://onl.la/NyqZSas ➢書籍紹介だが、本講演のサマリーにもなっている ⚫ゲイリー・ハメル、ビル・ブリーン、経営の未来、日本経済新聞社、2008 ➢マネジメント3.0と似た考え方で、大企業を変革した事例が紹介している 44
  13. 謝辞 『Management 3.0』 の邦訳に関わって下さった以下の方々にこの場を借りて感謝 します。 ⚫大阪Management 3.0読書会のメンバー:兒玉督司さん、中原慶さん、羽飼康さ ん、樋上直樹さん ⚫『Management 3.0』の邦訳に関するインタビューへの御協力:秋元利春さん

    ⚫『Management 3.0』の邦訳に前書きを寄稿:Jurgen Appeloさん、Stefan Nüsperingさん ⚫『Management 3.0』の邦訳のゲラ査読へのご協力:渡辺博司さん、藤満理恵さ ん、鹿島康由さん 45