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銀河英雄伝説に学ぶ、 スクラムチームに必要な リーダーシップ

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銀河英雄伝説とは 『アルスラーン戦記』『創竜伝』の 田中芳樹の処女作。 遠い未来の宇宙で人類の生存圏を二分する 2つの勢力の間の政治対立と戦争を描いた 大河SF小説。正伝10巻、外伝4巻。 銀河帝国の若き貴族ラインハルトと、 自由惑星同盟の制服軍人ヤン・ウェンリー を中心に多くの登場人物の群像劇を描く。

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初版は 徳間ノベルズから 創元SF文庫版 電書は らいとすたっふ文庫

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2回アニメ化されてます。 石黒版 劇場公開アニメ3作、 OVA本伝110話、 外伝52話 圧倒的なボリュームで 全エピソードを映像化。 ラインハルトの声はベジータ(堀川亮)、 ヤンの声は故・富山敬。 ヤッターマンの「説明しよう!」の人 Die Neue These 原作4巻まで進行中。 美しい映像。 2024年1月~ 日テレで全話放送中(らしい)

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第一巻 黎明編 銀河英雄伝説はもともと10巻の予定で 刊行されたわけではなく、この一巻の 反響が大きかったので続巻が決まったという 経緯を持つ。なので1巻だけ文字が小さく、 文量が多い。ほぼこれだけで完結している といっても過言ではないと思う。 ※今回のトークではこの一巻に限っての ネタバレを含みます。

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第一巻 黎明編のおもな展開 0.これまでの歴史 (プロローグ) 1. アスターテ会戦 2. 帝国と同盟それぞれの事情 3. イゼルローン奪取作戦 4. 同盟国内の政治的思惑 5. 帝国領侵攻作戦 6. アムリッツァ会戦

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第一巻 黎明編のおもな展開 0.これまでの歴史 (プロローグ) 1. アスターテ会戦 2. 帝国と同盟それぞれの事情 3. イゼルローン奪取作戦 4. 同盟国内の政治的思惑 5. 帝国領侵攻作戦 6. アムリッツァ会戦

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第一巻 黎明編のおもな展開 0.これまでの歴史 (プロローグ) この歴史がだいぶ長くて、固有名詞が多い。 人類は外宇宙に進出して、地球以外の星に遷都。 さらに複数の星系に進出して銀河連邦を樹立。 一方で地球は没落していく。 宇宙海賊の討伐で名を上げたルドルフ・フォン・ ゴールデンバウムは政界に転身して執政官になり、 その後、皇帝になることを宣言、専制君主となる。

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第一巻 黎明編のおもな展開 0.これまでの歴史 (プロローグ) その約150年後、共和主義者ハイネセンらは、 辺境の流刑惑星を脱出し、苦難の上に 新しい星系を発見し自由惑星同盟が成立する。 さらに100年後、自由惑星同盟と銀河帝国は 初めて接敵し、宇宙を二分する大勢力は 戦争の時代に入る。 そして現代、腐敗した帝国と、建国の理想を忘れた 同盟は断続的に軍事衝突を繰り返している。

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第一巻 黎明編のおもな展開 0.これまでの歴史 (プロローグ) ラインハルト・フォン・ミューゼルは帝国首都星 オーディン生まれの下級貴族。姉のアンネローゼが 皇帝の後宮に入ったことにより、士官学校に進学、 戦闘で実力を示しつつ、急速に昇進していく。 宇宙歴796年、帝国歴487年。ラインハルトは 2万隻の艦隊で同盟領に向かう。対する同盟軍は 合計4万隻。その幕僚にヤン・ウェンリーがいた。

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我々は銀英伝から何を学べるか

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我々は銀英伝から何を学べるか だいたい全部

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第一巻 黎明編のおもな展開 0.これまでの歴史 (プロローグ) 1. アスターテ会戦 2. 帝国と同盟それぞれの事情 3. イゼルローン奪取作戦 4. 同盟国内の政治的思惑 5. 帝国領侵攻作戦 6. アムリッツァ会戦

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まずリーダーシップを学ぶ

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2人の主人公 ラインハルト・フォン・ ローエングラム ヤン・ウェンリー 「常勝の天才」 「不敗の魔術師」 20代の天才。 姉が皇帝の寵愛を受け、 戦争にも勝ち続け、 どんどん出世していく。 完璧超人で超孤独。 30代の天才。 歴史家を志していた はずが、軍略家として 生き残り続けて、 ワン&オンリーになる。

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ラインハルト “「もういい!このうえ、議論は不要だ。 皇帝陛下は私に叛乱軍征討司令官たれと仰せられた。 卿らは私の指揮にしたがうことを陛下への忠誠の 証明とせねばならぬはずだ。 それが帝国軍人の責務ではないか。 忘れるな、私が卿らの上位にあるということを」” 補足: この戦いには本来の幕僚である、ミッターマイヤーやロイエンタールを 同伴していません。彼らなしで実績をあげることを試されている状況です。

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ラインハルト “「奴らに何ができるものか。いやみひとつ言うにも、 ひとりではなく幾人かでつるんでしか来られない ような腰ぬけどもだ。皇帝の権威に逆らうような 勇気などはありはせぬ」”

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ラインハルト “「奴らに何ができるものか。いやみひとつ言うにも、 ひとりではなく幾人かでつるんでしか来られない ような腰ぬけどもだ。皇帝の権威に逆らうような 勇気などはありはせぬ」” 「よろしいのですか?」

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ラインハルト “「奴らに何ができるものか。いやみひとつ言うにも、 ひとりではなく幾人かでつるんでしか来られない ような腰ぬけどもだ。皇帝の権威に逆らうような 勇気などはありはせぬ」” 「今は不平たらたらでも、一日たてば 様相が変わる。シュターデンの低能に、 奴の好きな実績とやらを額縁付きで 見せてやるさ。」

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ヤン・ウェンリー “硬直した固定観念ほど危険なものはない。” “敵の心理を読む。傭兵のポイントはここにある。 そして戦場にあって完全に能力を発揮するには 補給が不可欠だ。極端なことを言えば、敵の本隊を 撃つ必要はなく、補給さえ断てばよい。戦わずして 敵は退かざるをえない。”

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ヤン・ウェンリー “「旗艦パトロクロスが被弾し、 パエッタ総司令官は重傷をおわれた。 総司令官の命令により、私が全艦隊の指揮をひきつぐ」 ここでひと呼吸おいて、 味方が驚愕から解放されるだけの余裕をあたえる。 「心配するな。私の命令にしたがえば助かる。生還したい ものはおちついて私の指示にしたがってほしい。 わが部隊は現在のところ負けてはいるが、要は最後の 瞬間に勝っていればいいのだ。」”

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ヤン・ウェンリー “現在のところ、敵の行動はヤンの予測を超えては いない。問題は味方の行動である。彼の作戦に したがってうごいてくれればよいが、一歩誤れば 収拾がつかなくなり、全軍潰走という事態になる であろう。そのときはどうする?”

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ヤン・ウェンリー “現在のところ、敵の行動はヤンの予測を超えては いない。問題は味方の行動である。彼の作戦に したがってうごいてくれればよいが、一歩誤れば 収拾がつかなくなり、全軍潰走という事態になる であろう。そのときはどうする?” 「頭をかいてごまかすさ」

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リーダーシップのスタイル ヤン・ウェンリー 「常勝の天才」 「不敗の魔術師」 優しい独裁者モデル 部下の意見を求めるが、 最終に決めるのは自分。 専制国家なので階級は絶対。 部下の信頼も厚い。 民主的なサーバントリーダー ただし、基本的に100通りは 作戦を考えているので、 部下に意見を求めるが、 答えはだいたい頭の中にある。 ラインハルト・フォン・ ローエングラム

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カリスマを支えるフォロワーがいる 「常勝の天才」 ラインハルト・フォン・ ローエングラム 「ハンサムな赤毛の のっぽさん」 ジークフリード・ キルヒアイス ラインハルトの姉 アンネローゼ

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ラインハルト “「奴らに何ができるものか。いやみひとつ言うにも、 ひとりではなく幾人かでつるんでしか来られない ような腰ぬけどもだ。皇帝の権威に逆らうような 勇気などはありはせぬ」” 「よろしいのですか?」

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第一巻 黎明編のおもな展開 0.これまでの歴史 (プロローグ) 1. アスターテ会戦 2. 帝国と同盟それぞれの事情 3. イゼルローン奪取作戦 4. 同盟国内の政治的思惑 5. 帝国領侵攻作戦 6. アムリッツァ会戦

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人類の三大勢力 ゴールデンバウム朝 銀河帝国 フリー・プラネッツ 自由惑星同盟 形式的には帝国の属領 フェザーン自治州

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人類の三大勢力 ゴールデンバウム朝 銀河帝国 フリー・プラネッツ 自由惑星同盟 形式的には帝国の属領 フェザーン自治州 貴族制度の疲弊 新興貴族と 平民出身者の台頭 実質的に経済を支配 二大国に情報網 死の商人 民主制の腐敗 選挙対策で戦争 扇動する政治家

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第一巻 黎明編のおもな展開 0.これまでの歴史 (プロローグ) 1. アスターテ会戦 2. 帝国と同盟それぞれの事情 3. イゼルローン奪取作戦 4. 同盟国内の政治的思惑 5. 帝国領侵攻作戦 6. アムリッツァ会戦

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負けたときこそ英雄が必要 ヤン・ウェンリー 「不敗の魔術師」 アスターテ会戦では 敗北したが、 ガス抜きのために 英雄に祭り上げられる。 敗残兵をまとめて 第13艦隊設立。 難攻不落の イゼルローン要塞を奪取する 無理ゲーミッション

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イゼルローン要塞 ゴールデンバウム朝 銀河帝国 フリー・プラネッツ 自由惑星同盟 イゼルローン要塞

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第一巻 黎明編のおもな展開 0.これまでの歴史 (プロローグ) 1. アスターテ会戦 2. 帝国と同盟それぞれの事情 3. イゼルローン奪取作戦 4. 同盟国内の政治的思惑 5. 帝国領侵攻作戦 6. アムリッツァ会戦

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魔術師がイゼルローンを奪取してしまう ヤン・ウェンリー 「不敗の魔術師」 イゼルローンを奪取し てしまったヤン・ウェ ンリー。 ここでしばらく攻め込まれな いので、守りに徹して平和な 時代が?????

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イゼルローン要塞 ゴールデンバウム朝 銀河帝国 フリー・プラネッツ 自由惑星同盟 イゼルローン要塞 攻め込まなければ 平和になるじゃん

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帝国領大侵攻作戦が同盟評議会で決まる。 大勝利すれば支持率低 下を避けられる。 私の作戦で! ヤン・ウェンリーなん かじゃなくて!

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第一巻 黎明編のおもな展開 0.これまでの歴史 (プロローグ) 1. アスターテ会戦 2. 帝国と同盟それぞれの事情 3. イゼルローン奪取作戦 4. 同盟国内の政治的思惑 5. 帝国領侵攻作戦 6. アムリッツァ会戦

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同盟の侵攻と、帝国の焦土作戦 専制政治からの解放じゃ! いいからご飯ください。

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補給路の圧迫、物資の枯渇 ご飯たんないよ

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孫子の兵法・クラウゼヴィッツの戦争論に学ぶ、スクラ ムチームの戦略的思考 1. 敵を知り己を知る: 市場とチームの理解の重要性 2. 戦況に応じた柔軟な戦略変更: 変化適応力とビジョンの必要性 3. 不確実性の中での意思決定: スクラムチームの情報戦 • 孫子に学ぶ情報収集の重要性と顧客理解 • クラウゼヴィッツの「戦場の霧」: 限られた情報での判 断の難しさ • ステークホルダーの意向を読み誤った戦略的失敗の教訓

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孫子の兵法 https://www.dpimagine.com/sonshi-all- japanese/#google_vignette およそ十万規模の軍隊を編成し、千里の彼 方に外征するとなれば、民衆の出費や政府 の支出は、日に千金の出費するほどになり、 政府の内も外もあわただしく動き回り、民 は道にへたり込み、通常の仕事に専念でき ない者たちは七十万戸にもなる。数年分の 費用を掛けて、たった一日の決戦で勝敗を 争うのである。

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孫子の兵法 https://www.dpimagine.com/sonshi-all- japanese/#google_vignette だから聡明な君主や知謀にすぐれた将軍は、 敵に勝ち、成功を収める為に、あらかじめ 敵情を察知するように努める。事前に情報 を知ることは、鬼や神から聞き出すもので もなく、天界の事象になぞらえてわかるも のでもなく、天道の理法とつきあわせてわ かるものでもない。人によってのみ情報を 知ることができるのである。

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クラウゼヴィッツの戦争論 しかし戦場において常に完全に状況が把握できる ほど情報が揃うことは歴史的に見れば極めて稀で あった。なぜなら地形や自軍・敵軍の状況、行動 を完全かつリアルタイムに指揮官が把握すること は技術的な観点から不可能であったからである。 特に敵情については非常に流動的であるため、常 に更新の必要性と情報の不完全性がつきまとい、 指揮官が充分な根拠と確信を以て意思決定するこ とを妨げてきた。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E 5%A0%B4%E3%81%AE%E9%9C%A7

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チームは十分に情報を取れているか? 「発注者が情報を くれないので作れません。」 自分でユーザーの ところに行って 分析しよう。

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https://speakerdeck.com/kawaguti/hagechabin

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https://confengine.com/conferences/regional-scrum-gathering-tokyo-2020/proposal/12219 はげちゃびんを乗りこなせ!

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流行りには乗らない。後に残る我々のための 地道な取り組みを繰り返す。 https://youtu.be/R612Rz1kQN4

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ヤン・ウェンリー (再掲) “硬直した固定観念ほど危険なものはない。” “敵の心理を読む。傭兵のポイントはここにある。 そして戦場にあって完全に能力を発揮するには 補給が不可欠だ。極端なことを言えば、敵の本隊を 撃つ必要はなく、補給さえ断てばよい。戦わずして 敵は退かざるをえない。”

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第一巻 黎明編のおもな展開 0.これまでの歴史 (プロローグ) 1. アスターテ会戦 2. 帝国と同盟それぞれの事情 3. イゼルローン奪取作戦 4. 同盟国内の政治的思惑 5. 帝国領侵攻作戦 6. アムリッツァ会戦

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補給路の圧迫、物資の枯渇 ご飯たんないよ 蹴散らせ! 逃げろ!

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主だった同盟軍の指揮官の損耗 蹴散らせ! 第13艦隊

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ヤン・ウェンリーのイゼルローン司令就任 逃げ込んだか。 ヤン艦隊

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スクラムが失敗するケースとその教訓 1.イゼルローン攻略とアムリッツァ侵攻の判断ミス 自分たちのベロシティを過信して、できもしない PBIをたくさん積んでいないか?実力が分かる前 に作った計画に振り回されていないか? 2.同盟国内世論の高まりによる戦略の誤り 「できたらいいな」で現実を無視した決定を していないか? 3.危機的状況でのチームの生存と再起 自分のチームだけでも生き残れないか? 後に残せるものはないか?

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1.衆愚に陥らないための個人の責任 全員が参加し、役職の上下なく話し合えている か?心理的安全性が確保されて、全員がちゃん と発言できる状態か? 2.多様な意見を尊重しつつ、決断すべき時の勇気 最後は責任者(PO)が決める(しかない)。適時で 判断できているか?責任はとれているか? 合議制の落とし穴と意思決定の在り方

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アジャイルにはだいたい書いてある。 銀英伝読めばだいたいわかる。