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AI事業者ガイドラインから読み解く、 企業が意識すべきAI活⽤のポイント 2024/7/11 情報システムグループ 危機管理室 江⼝佳記

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Xへの投稿の際は、 ハッシュタグ #cm_odyssey でお願いいたします。 2 お願い

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アジェンダ ● AI事業者ガイドラインの概要 ● AIサービスの企業での活⽤ ● クラスメソッドでの取り組み 3

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自己紹介 江口 佳記 クラスメソッド株式会社 危機管理室 室長 CISO 4

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昨年、社内向けAIガイドラインを策定 ● 社内においてAIサービスを利⽤ する際のガイドライン ● 2023年3⽉策定 ● ブログでも共有 (右下QRコードからアクセス可能) 5

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社内ガイドラインは策定したが ● 社内のAI利⽤ガイドラインを策定しても、 「こうした使い⽅はOKか」という相談は尽 きない ● 顧客へのAIサービス⾃体の提供、⾃社サー ビスでのAI活⽤、社内での業務利⽤など、AI 活⽤の想定シーンも増えてきている 6

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7 よりAIの活⽤を進めたいが、何を許容し 何を懸念するべきか、取り組みについて のリファレンスがほしい

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8 DL⽤ページへのリンク: ということで

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AI事業者ガイドラインの概要 9

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AI事業者ガイドラインとは ● 2024年4⽉に総務省‧経産省が第1.0版を公開 ● 既存のガイドラインを統合‧アップデート ● 企業での利⽤を「開発者」「提供者」「利⽤ 者」の3ケースで考え、それぞれの考慮事項‧ 共通で取り組むべき事項を整理 10

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参考:各主体とその役割 11 主体 役割 AI開発者 (AI Developer) AIシステムを開発する事業者 ・AIモデル・アルゴリズムの開発 ・データ収集、前処理 ・AIシステムの構築 AI提供者 (AI Provider) AIシステムを組み込んだサービスを提供する事業者 ・AIシステムの検証、他システムとの連携の実装 ・AIシステム・サービスの提供・運用 AI利用者 (AI Business User) 事業活動においてAIシステム/AIサービスを利用する事業者 ・AI提供者が意図する適正な利用 ・AIシステムの運用 ・業務外利用者に対する影響の考慮 ※同じ企業が複数の主体を兼ねる場合もある (提供者かつ利⽤者など)

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このガイドラインを読むことの意味 ● 国が事業者へどのようにAIを活⽤してほし いのか、の期待がわかる ● 原則の考え⽅がわかる ● 開発‧提供‧利⽤の各ケースで何を考慮す べきかが網羅的にわかる 12

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注意点 ● AIサービスの具体的な活⽤⽅法にフォーカ スした資料ではありません ● AIサービスの利⽤をどう統制するか、とい うガバナンスの視点が中⼼の資料です 13

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NEW!! 7/5に経産省から「コンテンツ制作のためのAI利活⽤ガイ ドブック」がリリースされました ● 「コンテンツ制作」にフォーカスしていますが、AI利活⽤の具体例が紹介されたガイドブックです ● 同時にリリースされた「 コンテンツ産業における先端的技術活⽤に関する調査 事業報告書」も有⽤な 情報が詰め込まれていてオススメです! ● AI利活⽤の事例を知りたい⽅はぜひ確認してみてください 14

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原則の話 15

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⼈間中⼼のAI社会原則 16 ● 2019年3⽉に国が策定した原則 ● AIを活⽤する社会の在り⽅の原則を提⽰し たもの ● 次スライドで紹介する3つの価値を理念と して尊重する

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基本理念の3つの価値 ● ⼈間の尊厳が尊重される社会(Dignity) ● 多様な背景を持つ⼈々が多様な幸せを追求 できる社会(Diversity and Inclusion) ● 持続可能な社会(Sustainability) 17

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噛み砕いて⾔うと ● ⼈間の尊厳が尊重される ➢ ⼈間 > AI、あくまでAIは道具 ● 多様な背景を持つ⼈々が多様な幸せを追求できる ➢ AIが多様な価値観を妨げない、むしろ発展させ ていくべき ● 持続可能 ➢ 環境問題へ配慮する、AIをそのために活⽤する 18

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あくまで⼈間が中⼼ AIは⼈間を⽀えるもの 19

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取り組みの指針 20

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共通指針 ● AI開発者、AI提供者、AI利⽤者それぞれが共通 で取り組むべき指針 ● 以下のカテゴリで構成されている 21 ⼈間中⼼ 安全性 公平性 プライバシー 保護 セキュリティ確 保 透明性 アカウンタビリ ティ 教育‧ リテラシー 公正競争確保 イノベーション ■:各主体が連携し、バリューチェーン全体で取り組むべき事項 ■:社会と連携して取り組むことが期待される事項

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⼈間中⼼‧安全性‧公平性 ⼈間中⼼の原則に基づいて、AIが⼈間の尊厳を尊重し、危 害を加えたり不公正な出⼒をしないよう配慮する ● 個⼈の⾃律を尊重し、AIに⼈間の意思決定や感情を不当 に操作させない(⼈間中⼼) ● 権利侵害が発⽣しないようコントロールする(安全性) ● AIに単独で判断させず、適切なタイミングで⼈間の判断 を介在させる(公平性) 22

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透明性‧アカウンタビリティ システムの透明性を確保し、ステークホル ダーに対して合理的な範囲で情報を提供する ● ログの記録‧保存など、検証可能性の確保(透明性) ● 「共通の指針」の対応状況の説明(アカウンタビリティ) 23

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教育‧リテラシー 主体内の AI に関わる⼈員に対して、AI の知識‧リテ ラシー‧倫理感など必要な教育を⾏う。社外のステー クホルダーに対しても教育を⾏うことが期待される ● AIリテラシーの確保 ● 教育‧リスキリング ● ステークホルダーへのフォローアップ 24

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その他の項⽬ 25 カテゴリ 概要 具体的な項目(抜粋) プライバシー保護 ステークホルダーのプライバシーが尊重・保護され るよう対応を取る ・個人情報保護法にもとづいた対応の 確保 ・国際的な個人データ保護の原則およ び基準の参照 セキュリティ確保 不正操作によって AI の振る舞いに意図せぬ変更 又は停止が生じることのないように、セキュリティを 確保する ・AIシステム・サービスに影響するセ キュリティ対策 ・最新動向への留意 公正競争確保 AI をめぐる公正な競争環境の維持に努める - イノベーション 社会全体のイノベーションの促進に貢献する ・オープンイノベーション等の推進 ・相互接続性・運用製への留意 ・適切な情報提供

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共通指針のざっくりまとめ ● AIの出⼒が不正確‧不公正な出⼒ではないか、適切に⼈ 間が介在して対処する ● セキュリティ確保やプライバシー保護に加え、AIシステ ム全体での透明性‧アカウンタビリティを確保する ● 各ステークホルダーへAIリテラシーを向上する教育を⾏ う ● AIにより社会やイノベーションに貢献する 26

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AI開発者向けの指針 ● データ前処理‧学習時 ○ 適切なデータ利⽤、データに含まれるバイアスへの配慮 ● AI開発時 ○ ⼈間の⽣命‧⾝体‧財産、精神および環境に配慮した開発 ○ リスクを抑えるガードレールの設置 ○ 開発時からのセキュリティ対策(セキュリティ‧バイ‧デザイン) etc ● AI開発後 ○ 攻撃⼿法等の最新動向への留意 ○ ステークホルダーへの情報提供 ○ 開発関連状況の⽂章化 etc 27

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AI提供者向けの指針 ● システム実装時 ○ 適正利⽤に資する提供 ○ プライバシー保護、セキュリティ対策の仕組みの導⼊ ○ システムアーキテクチャの⽂書化 ● システム‧サービス提供後 ○ 適正利⽤の検証、プライバシー侵害への対策 ○ 脆弱性への対応 ○ ステークホルダーへの情報提供 ○ サービス規約等の⽂書化 etc 28

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AI利⽤者向けの指針 ● 安全を考慮した適正利⽤ ● ⼊⼒データ‧プロンプトに含まれるバイアスへの配慮 ● 個⼈情報の不適切⼊⼒、プライバシー侵害への対策 ● セキュリティ対策の実施 ● ステークホルダーへの情報提供 ● AI提供者からの⽂書の保管‧活⽤、サービス規約の遵守 29

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アプローチ検討⽤ツール ● AI事業者ガイドラインの別添資料として、「具体的なアプローチ検討のための ワークシート」が提供されている(Excel形式) ● ワークシートに記⼊することで、指針にどう取り組むかを検討できる ○ 記載事項がすべて必須なわけではなく、カスタマイズして活⽤することが 前提 30

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AIサービスの企業での活⽤ 31

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● AIサービスのメリット(便益)を理解する ● AIサービスのリスクも把握する ● リスクを分析したうえで、AIサービスをど う利⽤するか、ガイドラインの指針を参照 しつつ検討する ● AIガバナンスを構築していくことが理想 32

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企業活動におけるAIによる便益の例 「AI事業者ガイドライン(第1.0版)別添資料より抜粋(図7) 33

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AI利⽤のリスク ● 不正確な情報の出⼒ ● 機密情報の流出 ● 不適切な個⼈情報の取り扱い ● フェイクニュース等への悪⽤ etc 34

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“リスクを恐れるあまり、「リスクがゼロになるま でAIを活⽤しないこと」⼜は「完全なセーフガー ドを引く」ということを通じて各主体が動くこと ができなくなることも⼀種のリスクである” ※「AI事業者ガイドライン(第1.0版)別添資料より抜粋 35

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クラスメソッドでの取り組み 36

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AI倫理ポリシーの策定 ● 社内AI利⽤ガイドラインの上位⽂書として 策定 ● ガイドライン「共通の指針」の各項⽬を意 識し⽂⾯を考案 ● コーポレートサイトにて公開済み 37

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https://classmethod.jp/ai-policy/ 38

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(作成時の草案) 39

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リスク分析 利⽤するAIサービスについてリスクアセスメント項⽬を定 義、分析を実施 40

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ガイドラインの⾒直し ● 標準で利⽤を許容するAIサービスについてのガイドラインを新たに策定 ● ⼊⼒データ⾃体の制限より、「避けてほしいこと」を主に記述 ● 内容にはAI事業者ガイドラインで触れられている事項を反映 41

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アプローチ検討ワークシートの作成 ● 現在作業中 ● なかなか各項⽬について具体的なアプローチを記述するのは難しい ○ プライバシーとモニタリングのバランスなど、悩ましい部分もある ○ 記⼊し終えたら知⾒を共有したい 42

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AIガバナンスの構築 ● AI倫理ポリシー‧利⽤ガイドラインなど、パー ツは出来ている ● 前掲のワークシートが完成すると、AIガバナン スで⽬指すべきゴールが出来てくる想定 ● 運⽤しモニタリングするサイクルへの落とし込 みに今後取り組んでいく 43

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AI事業者ガイドラインを読んでの⾃分のなかでの変化 ● AI事業者ガイドラインに⽬を通すことで、どんなことを原 則として考えるべきか、何を優先して対応すべきかの「基 準」がはっきりした ● 社内でAIの運⽤について相談された場合でも、AI事業者ガ イドラインを意識することで判断がしやすくなった ○ 「AI事業者ガイドラインにはこう書いてある」というと 相⼿も納得しやすい 44

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まとめ 45

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● 政府による「AI事業者ガイドライン」により、企業がAI に取り組むべき国の期待‧指針が理解できる ● ガイドラインは、AIはあくまで⼈間に寄り添う存在であ り、⼈間が適切に介在し活⽤していくべきものであるこ とを⽰している ● 企業ではこの指針をもとにAI活⽤を検討し、AI利⽤のポ リシー‧ガバナンスを検討してみるのが良い 46

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ご清聴 ありがとうございました! 47

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