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Takaaki Umada / 馬田隆明 2024 年 2 月 9 日 多様化する イノベーション政策

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意識合わせ 2

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3 研究開発・ イノベーション 小委員会 2015 年 ~ 2023 年

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4 研究開発・ イノベーション 小委員会 イノベーション 小委員会 2015 年 ~ 2023 年 2024 年 ~

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5 何度も既に言われていると思いますが… 研究開発 ≠ イノベーション

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イノベーションの定義 経済的な価値を生みだす新しいモノゴト (清水洋『野生化するイノベーション』より。ただし「簡単に言えば」という注記付き) 新しい又は改善されたプロダクト又はプロセス(又はそれの組 合せ)であって、当該単位の以前のプロダクト又はプロセスと かなり異なり、かつ潜在的利用者に対して利用可能とされてい るもの(プロダクト)又は当該単位により利用に付されている もの(プロセス) (Oslo Manual 2018。翻訳は伊地知寛博『Oslo Manual 2018:イノベーションに関するデータの収集、報告及 び利用のための指針』より) 伊地知寛博. (2019). 『Oslo Manual 2018:イノベーションに関するデータの収集、報告及び利用のための指針』-更新された国際標準についての紹介-. STI Horison, 5(1), 41–47. doi: 10.15108/stih.00168 6

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ポイント 技術を発明して特許を取っても、新しい科学的な発見であって も、経済的な価値が生み出されなければ「イノベーション」と は呼べない。 7 新規性 (発明 / インベン ションを含む) 経済的 価値 イノベーション

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考えるべき事項の整理 8

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イノベーション政策の対象 イノベーション政策を考えるときに考える要素として、いくつ かの要素がある。 9

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(1) 目的を考える 10 • 何のため にするの か? (産業、安全 保障、etc) 目的 例)イノベーション政策としての補助金政策を考えるとき

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(2) 資源(予算等)を獲得してくる 補助金の場合、どこから資源や予算を獲得してくるかが課題と なる。 11 • 何のため にするの か? (産業、安全 保障、etc) • どの程度 の予算 か? • どの財源 を使う か? 目的 資源獲得 例)イノベーション政策としての補助金政策を考えるとき

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(3) 資源を適切に配分する 獲得した資源をどこにどのように配分するかを決める。 12 • 何のため にするの か? (産業、安全 保障、etc) • どの程度 の予算 か? • どの財源 を使う か? • どの領域 に? • 誰に? • どれぐら い? 目的 資源獲得 資源配分 例)イノベーション政策としての補助金政策を考えるとき

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(4) 政策、施策、事業を設計する それぞれの施策や事業などを設計する 13 • 何のため にするの か? (産業、安全 保障、etc) • どの程度 の予算 か? • どの財源 を使う か? • どの領域 に? • 誰に? • どれぐら い? • どう設計 するか? 目的 資源獲得 資源配分 設計 例)イノベーション政策としての補助金政策を考えるとき

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(5) 選定する 補助金の場合は、補助先を選定する。 14 • 何のため にするの か? (産業、安全 保障、etc) • どの程度 の予算 か? • どの財源 を使う か? • どの領域 に? • 誰に? • どれぐら い? • どう設計 するか? • どの評価 軸で審査 するか? • 誰を審査 員にする か? 目的 資源獲得 資源配分 設計 選定 例)イノベーション政策としての補助金政策を考えるとき

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(6) 事業等を適切に運用する 補助金の場合は、不正がないかの監視や不正時の罰則、成果を 上げるための支援なども行う。 15 • 何のため にするの か? (産業、安全 保障、etc) • どの程度 の予算 か? • どの財源 を使う か? • どの領域 に? • 誰に? • どれぐら い? • どう設計 するか? • どの評価 軸で審査 するか? • 誰を審査 員にする か? • どう監視 するか? • どう • どう罰則 を与える か? 目的 資源獲得 資源配分 設計 選定 運用 例)イノベーション政策としての補助金政策を考えるとき

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(7) 政策を評価する 政策を成果や執行で評価して、次に活かす。 16 • 何のため にするの か? (産業、安全 保障、etc) • どの程度 の予算 か? • どの財源 を使う か? • どの領域 に? • 誰に? • どれぐら い? • どう設計 するか? • どの評価 軸で審査 するか? • 誰を審査 員にする か? • どう監視 するか? • どう • どう罰則 を与える か? • 成果をど う評価す るか? 目的 資源獲得 資源配分 設計 選定 運用 評価 例)イノベーション政策としての補助金政策を考えるとき

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イノベーション政策の対象 それぞれの要素で考えるべきことも数多いため、細かな議論を してしまうことが多い。 17 • 何のため にするの か? (産業、安全 保障、etc) • どの程度 の予算 か? • どの財源 を使う か? • どの領域 に? • 誰に? • どれぐら い? • どう設計 するか? • どの評価 軸で審査 するか? • 誰を審査 員にする か? • どう監視 するか? • どう • どう罰則 を与える か? • 成果をど う評価す るか? 目的 資源獲得 資源配分 設計 選定 運用 評価 例)イノベーション政策としての補助金政策を考えるとき

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「資源配分」をどうするかという議論を中心に行う 「戦略」と資源配分に密接な関係があると考えると、配分の議 論を中心にすることで委員会の目的が達成されると考える。 20 目的 資源獲得 資源配分 設計 選定 運用 評価 • 何のため にするの か? (産業、安全 保障、etc) • どの程度 の予算 か? • どの財源 を使う か? • どの領域 に? • 誰に? • どれぐら い? • どう設計 するか? • どの評価 軸で審査 するか? • 誰を審査 員にする か? • どう監視 するか? • どう • どう罰則 を与える か? • 成果をど う評価す るか? 例)イノベーション政策としての補助金政策を考えるとき

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21 今回の主張 国のイノベーション活動の 「資源配分」をリバランスする

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「配分」における課題と解決策 22

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提案したい資源のリバランスの項目 1. RDD&D 2. 需要と供給 3. リスクの高低 4. 事業者規模 5. 技術と市場 6. 計画と執行 +付録(TRL と ARL、トップダウンとボトムアップ) 23

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24 (1) RDD&D での 配分の見直し

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25 その前に RDD&D の整理

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Research - 研究 26 研究 Research • 研究補助金 • 研究開発税制

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Development – 開発 27 研究 Research 開発 Development • 研究補助金 • 研究開発税制 • 開発補助金 • 研究開発税制

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Demonstration – 実証 28 研究 Research 開発 Development 実証 Demonstration • 研究補助金 • 研究開発税制 • 開発補助金 • 研究開発税制 • 実証事業補助金 • 税制 • 政府保証

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Deployment – 普及 29 研究 Research 開発 Development 実証 Demonstration 普及 Deployment • 研究補助金 • 研究開発税制 • 開発補助金 • 研究開発税制 • 実証事業補助金 • 税制 • 政府保証 • 生産補助金 • 税制 • 政府保証 • 政府融資 • 規制緩和 & 規制追加 • 標準化支援

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頭文字を取って「RDD&D」と呼ばれる 30 研究 Research 開発 Development 実証 Demonstration 普及 Deployment • 研究補助金 • 研究開発税制 • 開発補助金 • 研究開発税制 • 実証事業補助金 • 税制 • 政府保証 • 生産補助金 • 税制 • 政府保証 • 政府融資 • 規制緩和 & 規制追加 • 標準化支援 Research Development Demonstration Deployment

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米国 DOE の OTT による RDD&D の整理 https://www.energy.gov/technologytransitions/articles/ott-director-shares-ott-mission-and-success-stories-industry 32

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RDD&D に対応した政策支援 Colin Cunliff “Energy Innovation in the FY 2021 Budget: Congress Should Lead” http://dx.doi.org/10.13140/RG.2.2.24585.26725 33

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これまでは R&D の議論が「イノベーション」の中心 35 研究 Research 開発 Development 実証 Demonstration 普及 Deployment 従来の議論の中心

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需要までのフローを意識したイノベーション政策の増加 36 供給から需要までの一連のフローを支援 供給 (サプライ) 需要 (デマンド) 研究 Research 開発 Development 実証 Demonstration 普及 Deployment

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どのようなバランスが良いかを考える必要がある 37 研究 Research 開発 Development 実証 Demonstration 普及 Deployment どのプロセスに どう配分するかの議論も必要

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より需要側に近い実証や普及のための政策も必要 38 研究 Research 開発 Development 実証 Demonstration 普及 Deployment • 研究補助金 • 研究開発税制 • 開発補助金 • 研究開発税制 • 実証事業補助金 • 税制 • 政府保証 • 生産補助金 • 税制 • 政府保証 • 政府融資 • 規制緩和 & 規制追加 • 標準化支援

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(解決策例) RDD&D を意識した配分 Demonstration や Deployment の支援拡充(一部日本でも実施済み) • 生産補助金 • 生産比例税制 • 政府保証 • 政府融資 • 規制緩和 & 規制追加 • 標準化 & ルールメイキング支援 などなどの手法がある 39

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40 (2) 供給と需要への 資源配分の見直し

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需要は供給を生み、供給は需要を生む 41 供給 需要 イノベー ションの 好循環

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主に供給側 RDD&D は比較的供給側の視点 42 研究 Research 開発 Development 実証 Demonstration 普及 Deployment • 研究補助金 • 研究開発税制 • 開発補助金 • 研究開発税制 • 実証事業補助金 • 税制 • 政府保証 • 生産補助金 • 税制 • 政府保証 • 政府融資 • 規制緩和 & 規制追加

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需要に関する政策も必要 43 研究 Research 開発 Development 実証 Demonstration 普及 Deployment 需要 Demand

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イノベーション政策は本来全てをカバー 供給から需要までの一連が「イノベーション政策」 44 研究 Research 開発 Development 実証 Demonstration 普及 Deployment 供給 (サプライ) 需要 (デマンド) 需要 Demand

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RDD&D から RDDD&D へ? 45 研究 Research 開発 Development 実証 Demonstration 普及 Deployment 需要 Demand • 公共調達 • 民間調達の誘引 • AMC 「イノベーションに寄与する需要」 を生み出すこと自体が イノベーション政策

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「優れた需要」が優れた供給を生み出す (a.k.a. 必要は発明の母) 46 供給 需要 イノベー ションの 好循環 例)シリコンバレーには先端的な ソフトウェアサービスや人材の需 要が高く、それがさらにスタート アップの供給を生み出している

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「イノベーション寄与」需要への政策例 (1) 公共調達の活性化 • 特にグリーン製品等を政府が調達し需要を作る AMC (Advance Market Commitment) • 企業や政府などが、まだ開発されていない新製品の将来的な 購入にコミットすることで、新製品開発とその量産を促す仕 組み (FIT に相似) • 補助金と違い、ゴール達成による報酬 (懸賞金に相似) • ワクチンのほか、Carbon Removal などでも実施 (Frontier 等) 一橋・横尾ゼミ&研究室(環境経済学)『AMCとは何か?』https://note.com/yokoo_lab_hit/n/n123fb62db8bc 47

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「イノベーション寄与」需要への政策例 (2) 民間企業の「イノベーション寄与調達」の推進 • 新製品への購買意思表明 (LOI: Letter of Intent) 等の購買プ ラクティスの普及 • リスクを取った需要者の社会的称賛 • 需要者によるエクイティ投資促進で追加リターンの提供 • First Movers Coalition のような座組の公的な推進 規制の追加 • 太陽光パネルの敷設義務化など 48

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49 (3) リスクの配分の見直し

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50 技術リスク と 市場リスク 事業を の 2 つで考える

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事業には主に「技術リスク」と「市場リスク」がある 51 技術リスク 主に「作れるかどうか分からない」リスク。 • 科学的にできるか • 品質を担保できるか • 大量生産できるか 市場リスク 主に「売れるかどうか分からない」リスク。 • ニーズや課題があるか • 市場は大きいか(急成長するか) • 規制がどうなるか

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それぞれを使って 2 軸で事業を整理する 52 技術リスク 主に「作れるかどうか分からない」リスク。 • 科学的にできるか • 品質を担保できるか • 大量生産できるか 市場リスク 主に「売れるかどうか分からない」リスク。 • ニーズや課題があるか • 市場は大きいか(急成長するか) • 規制がどうなるか 技術リスク 市場リスク 技術リスク 市場リスク

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リスクの 2 つの軸によるマッピング 「技術リスク」と「市場リスク」の二つの軸で整理する。 53 技術リスク 市場リスク

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既存企業のリスク許容度は低いことが多い 「イノベーションのジレンマ」や組織のインセンティブ設計の 関係上、既存企業や既存組織 (大学) はリスクを取りづらい。 54 技術リスク 市場リスク 既存組織が 挑みやすい 領域

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高いリスクの領域の担い手が薄くなりがち その結果、高いリスクのある領域で投資が薄くなりやすい。 55 技術リスク 市場リスク 既存企業が 挑みやすい 領域 規制がどうなる か分からない 消費者がついて くるか不明 技術が実現できる か分からない 手を出し づらい領域 (市場の失敗)

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スタートアップ等であればリスクを取れる領域もある スタートアップや新興組織 (FRO など) はハイリスク・ハイリ ワード領域に挑みやすい。 56 技術リスク 市場リスク 既存企業が 挑みやすい 領域 スタートアップが 挑みやすい 領域

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両方へのポートフォリオ的な投資が必要 国として両方へ適切に投資するポートフォリオを組む 国全体として、どちらかではなく、両方に資源を適切に配分す る必要がある(たとえばバーベル戦略的な配分など) 57 技術リスク 市場リスク 既存企業が 挑みやすい 領域 スタートアップが 挑みやすい 領域

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58 ただし ”異なる種類の投資”を “同じ組織”が行うのは 組織の制度的に困難 (大企業、NEDO、etc…)

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(解決策案) ARPA 型の開発補助金と組織 より高いリスクの応用領域への投資資源配分+組織の独立 • ARPA 型 (DARPA, ARPA-E, ARPA-H, ARPA-I, AgARDA) のハイリスクハイリワード型補助を行う • それを ”組織を分けて” 実施する • 運用は他国の先例を勉強する(たとえばテーマ設定の仕方など) ※ FRO (Focused-Research Organization) などのトピック特化の研究開発組織なども昨 今取り組まれている ※ ただし米国では ARPA 型よりも、もっと普及 (diffusion) に力を入れるフェーズという 論もある (「No, We Don’t Need Another ARPA」 The Issues, 2023 Fall など) https://issues.org/arpa-catalyze-diffusion-paschkewitz-patt/ 59

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例) ARPA 型のハイリスクハイリワードへの助成 https://arpa-e.energy.gov/sites/default/files/Day1_Jen%20Shafer%20Leadership%20Address%20Slides_ForRelease.pdf 60 ARPA-E は 他投資家の前の 段階へ支援 公的研究機関や 大学、スタート アップが参画

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参考: ARPA-E は直轄組織で他部局から独立 • ARPA-E は DOE の 中でもかなり独立 • リスクが高すぎて 他プログラム部局 では扱えないイノ ベーションの支援 → 執行段階まで配慮 した組織 & 制度設計 になっている Founder’s Guide to the DOE (ctvc.co) 61 APRA-E は 組織内で 独立した 位置づけ

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参考: ARPA-E の実績 2009 年以来の ARPA-E の実績 (2023 年時点) • 累計 1,530 のプロジェクトに累計 5,500 億 円の支援 • 150 社が起業 & $11.8B (約 1.8 兆円) の民間 資金調達 • 27 社の Exit。Exit の時価総額累計は $21.9B (約 3.3 兆円) Our Impact | arpa-e.energy.gov / 左図は「ARPA-Eにみる米国エネルギー分野のイノベーション ―官民連携で探求するハ イリスク・ハイインパクトな成果― 」(三井物産戦略研究所 稲田雄二氏による資料、2023 年 6 月) 62

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(解決策案) 補助金の位置づけの明確化と執行への目配せ • すべての補助金に「補助先の 8 割の成功を期待」するのではなく 「当たれば大きいが 8 割は失敗する」といったリスクテイクができる 補助金設計をできるようにする (※ ここでの「失敗」とは不正ではなく、成果面での失敗のこと) (※ そもそも成功率が高いなら民間でやれば良いし、政府の補助金は市場の失敗を是正するもののはず) • 成果は「成功率」や「次回の資金調達率」だけではなく、「アップサイ ドの大きさ」で測る • 同じ領域で複数 PM を競わせるなどのインセンティブ設計も重要 例)米国 NSF の SBIR/STTR は 2015 年に「America’s Seed Fund」とリブランド。VC のように リスクを取る姿勢を明確化(Take Zero Equity と VC を意識したメッセージ) https://seedfund.nsf.gov/ 全ての補助金ではなく 63

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64 (4) 事業者規模を意識した 資源配分の見直し

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事業者規模別の現在の資源配分 既存企業とスタートアップへの現在の資源配分を見てみる。 65 技術リスク 市場リスク 既存企業が 挑みやすい 領域 スタートアップが 挑みやすい 領域

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日本と他国の研究開発費のうち政府負担は 15.5% NISTEP 『科学技術指標2023』 https://nistep.repo.nii.ac.jp/records/2000006 66

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他国と比べても日本の政府負担比率は低め NISTEP 『科学技術指標2023』 https://nistep.repo.nii.ac.jp/records/2000006 67

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政府の研究開発への直接的支援 (≒補助金) は少ない NISTEP 『科学技術指標2023』 https://nistep.repo.nii.ac.jp/records/2000006 68 政府負担の補助金は GDP 比で最も小さい

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日本の直接的支援は大企業へ向かっている NISTEP 『科学技術指標2023』 https://nistep.repo.nii.ac.jp/records/2000006 69 • 日本の直接的支援は 8 割が大企業へ 一方で… • 日本は 0.1 兆円のう ち 250人以下の企業 に約 150 億円の配分 • 韓国は 0.6 兆円のう ち 250 人以下の企業 に約 4,000 億円の直 接的支援

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間接的支援(税額控除)は小規模事業者に被益が少ない https://nistep.repo.nii.ac.jp/records/2000006 70 研究開発税額控 除に該当= スタートアップ はほぼ被益なし

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71 スタートアップによる 研究開発を期待しない 制度設計になっている

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(解決策案) スタートアップにも被益する制度の構築 米国では赤字のスタートアップでも被益する仕組みがある • PATH 法では、研究開発税額控除を法人税だけではなく Payroll Tax (日本での源泉徴収税相当) に適用可能 • IRA では、一定の要件を満たせば、税額控除の譲渡転売や 直接支払い(ダイレクトペイ)が可能なため、赤字のスター トアップでも即時的に恩恵に預かることが可能 • さらに税額控除に 2 層構造を設け、法人が賃金・見習い要件 を満たす場合、最大 5 倍の税額控除を提供する。このように 雇用政策と紐づけて、労働者側も取り込み、普及を促進。 • 税制措置は 10 年と長期間で予見性を確保(カナダも同様に10 年の税額控除) 間違っていたらご指摘ください… 72

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(解決策案) 独立した組織のイノベーションの優遇 たとえば以下のような新興組織に対する研究開発等のイノベーションへの 配分をより多くしていくことが一案ではないか。 • スタートアップ • 既存企業のカーブアウト(特にスピンアウト) そのためにたとえば以下のような策がある。 • スタートアップへの研究開発予算配分の増強 • 事業化を見据えた大企業への一部の補助金は、カーブアウトを条件に入 れる(事業化の成功と失敗も分かりやすくなる) ※ 新興組織にも向き不向きはあるため、すべてのイノベーションを振興組織任せにすると良いとは限らない。 ※ SBIR 等によるスタートアップの促進が、基礎的な研究開発を減らす効果も見られる (清水, 和久津『』) ため、 バランスは必要であると考える。 清水 & 和久津『SBIR, Startups, and Subsequent Technological Development: Laser diodes in the United States and Japan』 https://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/24010018.html 73

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参考) 大学発のアイデアは生産性に寄与できていない? 公的科学による企業 R&D への影響 (Arora et.al., 2023) • 大学から生まれるアイデアは公共物だが抽象的で使いづらいせい か、企業の特許取得等にほぼ影響を与えていない(生命科学以外) → アイデアは特定の用途に合わせる必要があり、新規性だけではイノベーションにつ ながらない → 従来の企業研究所モデルのほうがイノベーションには寄与する? (実際、応用に近い AI や量子コンピュータ等の一部は先端研究では企業が研究を主導) • ただし大学での博士号取得者は、企業内部の発明や研究によるペ イオフを高める → 新しいアイデアの吸収能力を高める人材が企業側に必要 ※ 大学に意味がない、というわけではない。企業側に受け手となる研究所があれば大学の研究に活用可能な可能性があるし、そのための博士人材輩出等の教育機関 としての価値が指摘されている。ただし、イノベーションという観点での予算措置を考えたときに、今後大学の研究(パブリックドメインの知識)に対してどれだ け公的な研究費を投じるべきか、産業やイノベーションにおける大学の位置づけとは何か、などは別の問題として論じる必要がある。 ※ 及川らによる研究でも「公的な基礎研究投資と、企業基礎研究への補助金とでは、後者の方が成長政策として有効性が高い」とされており、公的機関はより基礎 的な基礎研究に焦点を当てるべきという指摘がある。 Arora, A., Belenzon, S., Cioaca, L., Sheer, L., & Zhang, H. (n.d.). The Effect of Public Science on Corporate R&D. doi: 10.3386/w31899 The Economist, “Universities are failing to boost economic growth” / 及川ほか「企業の基礎研究による経済成長:サイエンス・リンケージ・アプローチ」 74

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75 (5) 技術起点と市場起点の 配分の見直し

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技術シーズありきの議論 イノベーションの議論の多くが「技術をどうやって社会実装す るか」の議論になっている。 76 技術 市場 この技術を どう使おう?

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漸進的な技術開発における商業化の考え方 従来の漸進的な技術開発の場合は、市場が求める技術やスペッ クが分かっているので機能する。 77 ①技術起点でギャップを埋める 市場や必要スペックが分かっていれ ば、基本的には「技術が良くなれば 買ってくれる」ので、技術に注力す れば良かった。ギャップファンドも 機能する傾向にある。 技術 市場 技術起点

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全く新しい技術の場合、適した市場を探索する 技術の応用が見えないときには、技術の応用先を探索すること が多い。 79 ①技術起点でギャップを埋める 「市場での優位性を持つか分からな い技術」は市場を探索する。その際 にギャップファンドなども使われ る。 技術 市場 技術起点で市場探索 市場 市場

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「課題を探す解決策」や「極小市場」になりやすい 技術起点だと、大きな市場が見つからないこともよくある。 80 ①技術起点でギャップを埋める この探索において技術を起点に市場 とのギャップを埋めていた。ただし その先の市場が小さい場合も多かっ た。(※ ただし探索自体は必要な行為) 技術 技術起点で市場探索 市 場 市 場 市 場

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事業に必要なのは市場起点でギャップを埋めること 大学発ベンチャーは技術起点で考えがち。創薬ならそれでも大 きな市場があるが、他は市場から考えて技術を選ぶべきでは。 81 ①技術起点でギャップを埋める 従来のギャップファンドは技術を起 点に市場とのギャップを埋めてい た。ただしその先の市場が小さい場 合も多かった。 ②市場起点でギャップを埋める スタートアップを狙うなら、市場起 点で技術を考え、技術開発により ギャップを埋めるほうが良いのでは ないか。 技術 市場 市場起点で技術開発 技術 技術 技術 市場 技術起点で市場探索 市場 市場

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技術起点になりがちな大学発ベンチャーは売上が少ない 技術起点の大学発ベンチャーの約 80% は売上 1 億円を超えて おらず、「ハイグロース」はしないところも多い 大学発ベンチャー(METI/経済産業省) 82 2021 年の売上 大学発ベンチャーで一番多いのは 1000 ~ 5000 万円未満の売上の企業。 売上の経年変化 1 億円以上の売上の企業の割合はほぼ 変わっていない。 (※ 企業の報告数は 330 から 430 で毎年変わっている) 22% 21% 18% 18% 17% 0% 10% 20% 30% 2017 2018 2019 2020 2021 売上 1 億円以上の大学発ベンチャーの割合 (%) 79 21 32 15 109 38 57 1 0 20 40 60 80 100 120

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大学発ベンチャーは時間をかけても大きくなりづらい 現状では時間をかけても大きくなっておらず、 「ディープテッ クは時間がかかる」のではなく、抜本的な考え方の変更が必要。 データで見る我が国の民間部門における研究開発投資状況 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/kenkyu_innovation/pdf/028_06_00.pdf 設立から 15 年を経っても 売上平均は 1 ~ 2 億円 83

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先端技術 の商業化 「先端技術の商業化」や「大学発ベンチャー」 「先端技術の商業化」にはそれなりの意義があるけれど… 84

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先端技術の商業化自体は「スタートアップ」と少し違う (ハイグロース)スタートアップは、先端技術の商業化とは 別に議論したほうが良い。 85 先端技術 の商業化 スタート アップ

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先端技術 の商業化 ディープテックスタートアップは急成長してこそ 86 スタート アップ 「ディープテックスタートアップ」 と呼べるのは本来この AND の部分だけ

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技術起点と市場起点の考え方のポイント • 「急成長事業を作る」ことを目的にした場合、最先端技術を 必ず要するとは限らない • むしろ最先端技術に縛られるすぎると、市場が見つからない場合も多い • さらに最先端技術は量産などの要件を満たせないことも多い • 「ディープテック・スタートアップ」に類するスタートアップも、最初の技術を 捨てて代替技術を使うこともあるし、先端技術自体を事業のコアコンピタンスに はしないところもそれなりにある(生命科学系以外) • スタートアップなどの急成長を目指す事業において、最も大 きなリスクは通常「大きな市場があり、自社製品を買っても らえるかどうか」 87

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(解決策案) 市場起点型の研究開発補助金 • 研究室等に既にある技術の商業化ではなく、「急成長事業を 始める上で必要な技術的課題」から逆算して新たに研究開発 をするための研究開発資金の提供 • ただし数年で実用化する応用研究のみを扱うなどの制約は必要 • 例) Climate Tech は「最先端の技術」ではなく「枯れた技術」の再研究開発に より大きな市場を獲得できる場合もある。そうした研究は「最先端」ではないため、 研究費も付かなければ、最先端技術を前提とした「ディープテックスタートアップ補助 金」も付きづらい(例: CO2 圧縮蓄電など) • 市場起点の研究開発補助金は、新しい研究者やビジネスパー ソンを呼び込む機会にもなる (従来の技術シーズ前提の研究補助金だと外部領域やビジネス系の人が参入しづらい) 88

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創薬等は明確な市場があるので技術起点も OK 創薬などは技術起点でも大きな市場があるため、良い技術が良 いビジネスにつながりやすい。ただし、これも状況変化の兆候。 89 ①技術起点でギャップを埋める 「開発できれば間違いなく大きな市 場が待つ」ような技術は開発をすれ ばよい。技術や市場領域によって最 適解は異なるので注意。 技術 市場 技術起点

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90 (6) 計画と執行の 配分の見直し

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91 これまでも似たようなことは 言われ続けてきたのに 何故できなかったのか?

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92 (予算は十分ついたので…) 執行の重要性

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(課題) 良い政策を作ってもよく執行されないことも多い • 執行機関は「成果」ではなく「間違いなく計画を遂行する」 ことに重きを置いてしまうインセンティブが組織の性質上、 発生しやすい • さらに、政策意図が執行の末端まで行き届きづらい (出向者などの一時的な人員で構成される組織はなおさらそうなりやすい) → 行政府は「予算」「税制」「規制」という分かりやすい部分 を成果として考えるのではなく、その使いやすさや執行方法に もっと焦点を当てても良いのではないか → 政策意図が末端まで伝わり、執行されるような仕組みが必要 93

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(解決策案) 「執行へのインセンティブ設計」の見直し ハイリスク領域における「執行の再定義」 • 執行へのより多くの資源配分 • 執行しやすい組織体制 • 執行への裁量の増加と制約(リバランス) • 執行のためのガイドラインの明確化 • 執行の評価システムの変更 • ハイリスク事業であるほど「間違いなく執行できたか」ではなく「成果」で測る • 「成果」を上げた人や PM や審査員が昇進できるインセンティブ • 「どれだけ予算が取れたか」ではなく、「良い執行」自体が官僚機構でも評価さ れる評価システム • 執行の効率化と負担軽減 94 補助金等の審査&評価プロセス も改善の余地あり

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(解決策案) 「執行へのインセンティブ設計」の見直し ハイリスク領域における「執行の再定義」 • 執行へのより多くの資源配分 • 執行しやすい組織体制 • 執行への裁量の増加と制約(リバランス) • 執行のためのガイドラインの明確化 • 執行の評価システムの変更 • ハイリスク事業であるほど「間違いなく執行できたか」ではなく「成果」で測る • 「成果」を上げた人や PM や審査員が昇進できるインセンティブ • 「どれだけ予算が取れたか」ではなく、「良い執行」自体が官僚機構でも評価さ れる評価システム • 執行の効率化と負担軽減 95

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(例) 制裁制度を用いた運用の軽減と迅速化 例えば補助金運用を簡素化 & 迅速化しながら、実効性を持たせ るために、以下のような監視制度と制裁制度を組み合わせる等。 • 補助企業に明示的かつ統一された補助金ガイドを提供 • サンプル検品等で監視の簡素化、ただし違反時には大きな制 裁(罰金)を科すことでバランスを取る → 財務省/会計検査院との折衝が必要? • 自主的な報告のインセンティブ付けを行い、違反の隠ぺいを 回避(報告すれば懲罰金を軽くするなど) • それでも隠ぺいする場合のため、報奨金付き通報制度 (Bounty Regime) を設計し、通報者を完全に秘匿する • デジタル技術の活用 (領収書等) 深水弁護士による日米の制裁制度の比較論などを参照 96

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参考) 日本の制度運用の特徴 (深水弁護士によるものを援用) (あくまで企業制裁制度を例にしたもの) 過剰規制 & 過小執行 • 誠実な企業にとっては過剰な負 担になる • 不誠実な企業にとっては罰則が 少ない その結果…… • コストが高いが効果の薄い 規制の増加 & 隠ぺい体質に 背景(私見) • 結果、「制度の成果」ではなく 「間違えない」ことに注力して しまっているのではないか 図は深水弁護士の資料から http://www.aesj.or.jp/ethics/document/pdf/20230315_01.pdf 97

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(関連) 機能要件と非機能要件 ソフトウェア開発では機能要件に加えて非機能要件がある。 98 機能要件 非機能要件 ソフトウェア • 機能 • 可用性 • 性能・拡張性 • 運用・保守性 • UX、など

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(関連) イノベーション政策の「非機能要件」も大事 政策も非機能要件的な側面にも目を向けると、改善はもっとで きそうと感じている。 99 機能要件 非機能要件 ソフトウェア • 機能 • 可用性 • 性能・拡張性 • 運用・保守性 • UX、など 政策 (補助金の場合) • 金額 • 補助対象 • タイミング(年に何度か) • 審査速度や着金速度 • 運用しやすさ • 可変性 いわゆる利用者側からの 「政策の使いやすさ」にも相当

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まとめ 100

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101 今回の主張 国のイノベーション活動の 「資源配分」をリバランスする

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102 リスクが高い領域 & 需要や市場に近い領域 & 執行への 資源配分のリバランス (ハイリスクハイリワード領域や市場起点領域への資源の配分割合を上げて、適した執行体制を整える)

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105 ※ 以下は時間の制約上 盛り込めなかった内容

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106 (付録 1) イノベーション管理における 配分の見直し

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リスクの 2 つの軸によるマッピング 「技術リスク」と「市場リスク」の二つの軸で整理したとき… 107 技術リスク 市場リスク

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https://www.energy.gov/technologytransitions/adoption-readiness-levels-arl-complement-trl 108 TRL Technology Readiness Level

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https://www.energy.gov/technologytransitions/adoption-readiness-levels-arl-complement-trl 109 TRL ARL Technology Readiness Level Adoption Readiness Level

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リスクの 2 つの軸との対比 TRL と ARL は「技術リスク」と「市場リスク」の二つの軸に対 応する。 110 技術リスク 市場リスク ARL が低いと 市場リスク高い TRL が低いと 技術リスク高い

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Adoption Readiness Levels (ARL): A Complement to TRL | Department of Energy 111 TRL だけでの 管理から…

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Adoption Readiness Levels (ARL): A Complement to TRL | Department of Energy 112 ARL の 管理も 開始

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https://www.energy.gov/technologytransitions/adoption-readiness-levels-arl-complement-trl 113 TRL ARL Technology Readiness Level Adoption Readiness Level こちらが補助金の モニタリング等で抜けがち

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Adoption Readiness Levels (ARL): A Complement to TRL | Department of Energy 114

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Adoption Readiness Levels (ARL): A Complement to TRL | Department of Energy 115 ARL を 上げる には?

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ARL の 17 次元 (CARAT) https://www.energy.gov/technologytransitions/adoption-readiness-levels-arl- complement-trl 116 価値提案 1. 納入コスト 2. 機能的性能 3. 使いやすさ

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ARL の 17 次元 (CARAT) https://www.energy.gov/technologytransitions/adoption-readiness-levels-arl- complement-trl 117 価値提案 市場受容性 1. 納入コスト 2. 機能的性能 3. 使いやすさ 1. 需要の成熟 度・市場の 開放度 2. 市場規模 3. 川下のバ リュー チェーン

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ARL の 17 次元 (CARAT) https://www.energy.gov/technologytransitions/adoption-readiness-levels-arl- complement-trl 118 価値提案 市場受容性 リソースの 成熟度 1. 納入コスト 2. 機能的性能 3. 使いやすさ 1. 需要の成熟 度・市場の 開放度 2. 市場規模 3. 川下のバ リュー チェーン 1. 資本フロー 2. プロジェク トの開発・ 統合・管理 3. インフラ 4. 製造と供給 網 5. 資材調達 6. 労働力

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ARL の 17 次元 (CARAT) https://www.energy.gov/technologytransitions/adoption-readiness-levels-arl- complement-trl 119 価値提案 市場受容性 リソースの 成熟度 License to Operate 1. 納入コスト 2. 機能的性能 3. 使いやすさ 1. 需要の成熟 度・市場の 開放度 2. 市場規模 3. 川下のバ リュー チェーン 1. 資本フロー 2. プロジェク トの開発・ 統合・管理 3. インフラ 4. 製造と供給 網 5. 資材調達 6. 労働力 1. 規制環境 2. 政策環境 3. 許可と立地 4. 環境と安全 5. 地域社会の 認識

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これらの現状を評価し、事業開発を通して上げていく https://www.energy.gov/technologytransitions/adoption-readiness-levels-arl- complement-trl 120 価値提案 市場受容性 リソースの 成熟度 License to Operate 1. 納入コスト 2. 機能的性能 3. 使いやすさ 1. 需要の成熟 度・市場の 開放度 2. 市場規模 3. 川下のバ リュー チェーン 1. 資本フロー 2. プロジェク トの開発・ 統合・管理 3. インフラ 4. 製造と供給 網 5. 資材調達 6. 労働力 1. 規制環境 2. 政策環境 3. 許可と立地 4. 環境と安全 5. 地域社会の 認識

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121 技術開発 事業開発 と の両方の『開発』を同時に管理することが イノベーションの管理上でも必要 TRL ARL

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例)とある事業の初期を考える 122 技術リスク 市場リスク 事業

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研究開発・技術開発をして技術リスクを下げる 実験してみたり作ってみることで、技術的なリスクは減ってい く(できないことが分かることもある) 123 技術リスク 市場リスク

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市場リスクを下げる取り組み(事業開発)を行う 124 技術リスク 市場リスク

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技術リスクも市場リスクも低くなると事業として成立 125 技術リスク 市場リスク

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ただし、「技術の後に市場」の流れが良いとは限らない 126 技術リスク 市場リスク

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両方のリスクを同時・並行に下げていく 両方のリスクを並行して下げるために『技術開発』と『事業開 発』をすることが重要だが、技術開発だけに目が向きがち。 127 技術リスク 市場リスク

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(解決策案) TRL と ARL の両方による進捗管理 社会実装寄りの補助金では TRL/ARL の両者を管理 • 最初の 1 ~ 2 年は、執行機関が慣れるための時間とフォー マット決めが必要 • ARL を高めるための支援なども必要 • 社会実装寄りの補助金の場合葉、審査等でも TRL と ARL や 市場性などを重視する • その後のモニタリングでも技術開発状況だけではなく、事業 開発状況を追跡する 128

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129 (付録 2) ボトムアップとトップダウン の配分の見直し

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トップダウンとボトムアップによるイノベーション 130 トップダウン ボトムアップ • イノベーションを起こすと きには、トップダウンとボ トムアップのアプローチが ある • 両方をうまく使い分けてい く必要がある 1 発 1 中 ラピダス等 1000 発 1 中 スタートアップ

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それぞれの課題 ただし、それぞれのアプローチには良い点や悪い点、適した領 域に違いもある。 131 良い点 悪い点 適した領域 トップダウン • 明確な目的を設定可能 • リスクが取りづらい • 初期投資が大きな領域 • 安全保障等の領域 ボトムアップ • 思考の外からのアイデ アが得られるときがあ る • ハイリスクな取り組み もできる • 方向性が定まらない • アイデアが小さいこと も多い • 初期投資が小さな領域 (IT 等) • 複数の技術の組み合わ せなどの領域

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ミドル領域のアプローチが手薄 132 1 発 1 中 ラピダス等 10 発 1 中 大企業新規事業? 1000 発 1 中 スタートアップ ただし、スタートアップ等のボト ムアップ頼りだと • バッテリーリサイクルやグリー ン鉄鋼等の国策に近い領域 • 初期投資が大きめの領域 は出てきづらい。一方、トップダ ウンでも取り組みづらい。 → ミドル領域のアプローチも必要 (※ 現在、スタートアップの議論がボトムアップ型 に適している IT 系の議論ばかりになっており、ミド ル領域は手薄な印象 & IT 系もやや初期投資が上が りつつある印象) 100 発 1 中 (?) ? ミドルからの アプローチは?

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(解決策案) カンパニークリエーションの支援 Vargas Holdings (VC) によるカンパニークリエーション • Northvolt や H2 Green Steel といったスタートアップを輩 出(2 社で合計 3.5 兆円超えのデットを含む資金調達) • 「EU に必要な事業」を市場から逆算して作り、H2GS は シリーズ A で 150 億円を超える資金調達 • 国や需要者とも協力しながら会社を作り上げていくモデル • 需要が明確な創薬や GX 領域で有効? • 特定領域でカンパニークリエーションを行う VC、既存企業、大学等と政府との連携&支援も一案 馬田のブログ記事: デカコーンやユニコーンを次々に作る「Vargas」によるカンパニークリエーション https://blog.takaumada.com/entry/vargas-company-creation 133

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134 認識の間違いや誤解があれば フォームからご連絡ください 連絡先: https://takaumada.com/