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参考) 大学発のアイデアは生産性に寄与できていない?
公的科学による企業 R&D への影響 (Arora et.al., 2023)
• 大学から生まれるアイデアは公共物だが抽象的で使いづらいせい
か、企業の特許取得等にほぼ影響を与えていない(生命科学以外)
→ アイデアは特定の用途に合わせる必要があり、新規性だけではイノベーションにつ
ながらない
→ 従来の企業研究所モデルのほうがイノベーションには寄与する?
(実際、応用に近い AI や量子コンピュータ等の一部は先端研究では企業が研究を主導)
• ただし大学での博士号取得者は、企業内部の発明や研究によるペ
イオフを高める
→ 新しいアイデアの吸収能力を高める人材が企業側に必要
※ 大学に意味がない、というわけではない。企業側に受け手となる研究所があれば大学の研究に活用可能な可能性があるし、そのための博士人材輩出等の教育機関
としての価値が指摘されている。ただし、イノベーションという観点での予算措置を考えたときに、今後大学の研究(パブリックドメインの知識)に対してどれだ
け公的な研究費を投じるべきか、産業やイノベーションにおける大学の位置づけとは何か、などは別の問題として論じる必要がある。
※ 及川らによる研究でも「公的な基礎研究投資と、企業基礎研究への補助金とでは、後者の方が成長政策として有効性が高い」とされており、公的機関はより基礎
的な基礎研究に焦点を当てるべきという指摘がある。
Arora, A., Belenzon, S., Cioaca, L., Sheer, L., & Zhang, H. (n.d.). The Effect of Public Science on Corporate R&D. doi: 10.3386/w31899
The Economist, “Universities are failing to boost economic growth” / 及川ほか「企業の基礎研究による経済成長:サイエンス・リンケージ・アプローチ」
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