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アナザーエデンの5年前のログを引っ越して データドリブンで事業運営プロセスを 改善した話 株式会社WFS アナリスト 高塚 麻耶 株式会社WFS マネージャー・シニアデータエンジニア 郡司 匡弘

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アジェンダ 1. 本日お話しする内容 2. WFSとアナザーエデンの説明 3. データ分析のDX化とデータ分析の問題点 4. DX化の方法 5. DX化のスケジュールと体制 6. 作業内容の詳細 7. DX化を推進した結果 8. 今後改善していきたいこと 9. まとめ〜データ分析のDX化について〜 2

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郡司 匡弘 自己紹介 ● 株式会社WFS / 開発本部 / Data Platform チーム ● 略歴 ○ 2015年グリー株式会社に入社 ○ スマートフォンゲームの共通基盤 (課金・認証)のエンジニアを担当 ○ AIチャットボットの開発を担当 ○ ファンコミュニティサービスの Fanbeatsの 開発責任者 ○ ゲームのログ分析基盤の開発責任者 ● 講演実績 ○ CEDEC2018で「モバイルゲームのお 問い合わせ対応にて AIチャットボットを導入してお問い合わ せ件数を約20%削減した話」 ○ CEDEC2023で「1日10億件のモバイ ルゲームのログをログ分析基盤で低コ ストで運用した話」 3 マネージャー・シニアデータエンジニア

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高塚 麻耶 自己紹介 ● 株式会社WFS / 第3スタジオ部 / Game Design 1 グループ ● 略歴 ○ 2020 年にグリー株式会社に新卒入社 ○ 入社後は株式会社 WFSのData PlatformチームとAnalysisチームに て各ゲーム運用タイトルのログ解析基盤 の導入と分析などを担当 ○ 現在は「アナザーエデン 時空を超える 猫」のアナリストを担当 ● 講演実績 ○ 2022年gree tech「データエンジニアと アナリシスを兼務した話」 4 アナリスト

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1.本日お話しする内容 5 対象の受講者の方 得られる知見 長期運営のゲーム・サービスに関わっており、 ● データ分析の仕方に悩んでいる方 ● データドリブンでの運営ができていない方 ● 高額なデータ費用に苦労している方 ● データ分析のDX化を行うことで、運営フローがどの様に変わったか ● データ費用の削減方法について

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1.本日お話しする内容 6 本セッションの内容 ● 昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されていますが、 データ分析の観点においてもDX化が必要な場合があります。 ● 例えば、モバイルゲームのような変化の激しい業界では、 データを基にした事業運営ができるとPDCAを回しやすくなりますが、 ゲームタイトルによってはクリエイティブ思考で あまりデータ分析ができていない場合もあると思います

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1.本日お話しする内容 7 本セッションの内容 ● 本セッションでは、リリースから5年が経った 「アナザーエデン 時空を超える猫」のゲームタイトルについて、 過去5年間のログを別のクラウドサービスに引っ越すことで、 データドリブンで事業改善に繋がった事例をご紹介します! ● 分析体制や文化まで変えることができました! 苦労したことや得られた知見を共有いたします!

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2.WFSとアナザーエデンの説明 8 ● 主にモバイルゲームの開発・運営をしている会社 ● 「ヘブンバーンズレッド」、「アナザーエデン 時空を超える猫」などの タイトルを展開しています 株式会社WFSの説明

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2.WFSとアナザーエデンの説明 9 ● シングルプレイ専用RPG ● 国内/海外運営、モバイル配信、PC配信 ● 2023/4/12で6周年 ● アナザーエデンのPC配信については、GREE Tech Conference 2021で登壇いたしました ○ 「アナザーエデンPC版リリースへの道のり  〜WFSにおけるマルチプラットフォーム対応の取り組み〜 」 ○ https://techcon.gree.jp/2021/session/Session-7 「アナザーエデン 時空を超える猫」の説明

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2.WFSとアナザーエデンの説明 ● 2021年〜2022年にかけて、「ヘブンバーンズレッド」をはじめ、 新規タイトルのリリースが予定されていたため、 ログ分析基盤を強化する必要性が高まった ● 昔からデータに関する組織は存在していたが、 分析組織を拡大することを決め、 WFSでデータ組織を作った ● 「アナザーエデン」や「ヘブンバーンズレッド」などの事業運営が良くなる様に データを分析しつつ改善提案を実施しています!! 10 WFSの分析組織の変遷について

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3.データ分析のDX化とデータ活用の問題点 11 6年前のデータは現在の ユーザデータと特性が異 なるため、あまり参考にな らない   長期運営しているアナザーエデンの悩み 6年前からデータが 溜まってサーバ費用が高額 データ分析よりも クリエイティブ思考の事業運 営であった 昔のシステムなので、 SQLを実行しても遅くて 分析するのも大変 データ分析のDX化を 検討しました! ゲームだけではなく 長期運営している一般的 なWebサービスにも 当てはまると思います

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3.データ分析のDX化とデータ活用の問題点 12   DX化とは(ChatGPTに質問してみました) ● 「DX化」とは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略。 企業や組織がデジタル技術を導入し、その経営や業務プロセスを変革する取り組み ○ テクノロジーの導入: 最新のテクノロジーを利用して、組織の効率を向上させる。 ○ ビジネスモデルの変革: デジタル技術を活用して、新しいビジネスモデルやサービスを創 出する。 ○ 組織文化の変革: 組織全体でデジタルマインドセットを育むことで変革を進める DX化とは、 テクノロジーを導入して、ビジ ネスモデルや組織を 変えていくことです データ分析においても、 システムを変えて事業運営プ ロセスや組織が変われば DX化になります

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3.データ分析のDX化とデータ活用の問題点 13 アナザーエデンのデータ活用の問題点 ゲームの面白さ・定性的なデータの活用を重視した分析は行っていた リリース時からデータを取得していたので、定量分析に活用できるデータは大量にある  定量データが活用しにくい環境  ①クエリ実行が重く、結果を出すまでに時間がかかる  ②過去のデータの設計内容が分析向きではない  また、サーバー費用も長期の運営により高くなっていた しかし

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データ分析をDX化することで下記を目指しました! ● データドリブンでの事業運営ができること!      ● ログ分析基盤のコストを削減!     3.データ分析のDX化とデータ活用の問題点 14 アナザーエデンのデータ分析をDX化することにしました! WFS ● 会社全体で分析する文化をより構築して いきたい ● データを活用してより事業の改善に繋げ たい アナザーエデン運営 ● 定量データを活用し、ゲームをより良 くしていきたい ● ログ基盤のコスト削減を行いたい

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4.DX化の方法 15 フェーズ1 フェーズ2 フェーズ3 AWS GCP ログ分析基盤を移行 KPIツール刷新 アドホック分析改善  DX化する際のフェーズを3段階に分けました! 15 ヘブンバーンズレッドが GCPのログ分析基盤だっ たので、今回もGCPに移 行しました

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5.スケジュールと体制 ● ログの引っ越し ○ スケジュール ■ 8ヶ月 ○ 移行体制 約10名 ■ データエンジニア ■ サーバエンジニア ■ インフラエンジニア 16 8ヶ月 4ヶ月 16 ● 分析準備 ○ スケジュール ■ 4ヶ月 ○ 準備体制 数名 ■ データアナリスト

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6.フェーズ1 ログ分析基盤を移行 全部で350TB→3つの基準で選定し、250TB(-100TB)に対象を絞る ● ①GCS移行 & 全期間分BigQueryにもデータを取り込み ○ 課金系、アクセスログ ● ②GCS移行 & 1年分のみBigQueryにもデータを取り込み ○ バトル、アイテム所持ログ ● ③移行しないで削除 ○ 過去に分析用に作成したもの   経験したことのない膨大な量を別のクラウドに転送する データ選定 優先度高から 転送用にデータ変換 転送イメージ GCSに転送し BigQueryへ取り込み 作成者や目的が不明になっていたものが 多かったので移行しないことに 17

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6.フェーズ1 ログ分析基盤を移行 重要なKPIは定義を他タイトルに揃え、それ以外は最適化 ● 新規タイトルに比べてbotアカウントがかなり少ない → bot用の処理を最小限に ● 海外と日本でリリース内容が異なる → 環境を全て分けて作成 ● PC版もリリースしているのでデバイスはios,androidだけでなくPC版も追加           どちらも両立できるようにした タイトル同士の横比較ができる       タイトル特有の運用に合わせる   分析用に設計されていないログが多い 18

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6.フェーズ2 KPIツール刷新 見たい数値に触れやすい環境作り   = 条件を変えて見れるダッシュボード& 日々投稿されるslack bot ● 直感的に日付・地域・デバイスなど条件を変更して見れるダッシュボードを作成 ● slackのbotで専用チャンネルに毎日サマリー投稿 ● 新しいガチャのリリース当日には毎時で売上グラフをslackに投稿   KPIを日々確認するのが大変、面倒 19

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6.フェーズ2 KPIツール刷新 ダッシュボードイメージ 20   KPIを日々確認するのが大変、面倒 日本版、海外版、基本的な KPIやインストール、商材の 売上など 項目別に数ページから選択

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6.フェーズ2 KPIツール刷新   KPIを日々確認するのが大変、面倒 slack KPI通知 21 スプレッドシート 数値・グラフをbot で投稿 運用方針 ・毎日見る重要なKPI        → ダッシュボード ・急に見たいもの         → スプレッドシート ・速報的に手軽に確認したいもの  → slack

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6.フェーズ3 アドホック分析改善 分析チームがより運営と密に連携するように体制や分析内容を改善 ● ①アナリストも運用チームに入り、運営の意識をもって分析するように ● ②定期的に運用チーム・マーケティングチーム・分析チームで、 今の課題や今後の施策について分析内容を相談するように ● ③分析のスピードを上げて、素早く事業運営に反映するようにした   分析チームと運用チームの連携をより深める必要があった 22

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7.DX化を推進した結果 事業運営プロセスの改善 に繋がった 分析能力が上がった 費用が下がった データ管理を 行いやすくなった DX化により分析能力の向上、データ管理が行いやすくなり、 運営プロセスの改善に繋がった!また、サーバーの費用も下がった! 23

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7.DX化を推進した結果 費用 ● 移行時のコスト(サーバ費用・人件費) はかなりかかった ○ 8ヶ月間の人件費 ○ データ移行費用 ○ パイプライン開発費用 ■ GCSからBigQueryへのデータ取り込み ● サーバ費用は1ヶ月当たり数百万コストダウン ○ 理由:データの整理を行い、管理データを大幅に削減 ○   :サーバーの運用工数が、クラウドサービスに移行して削減 ○   :クエリ料金メインの課金体系に変わった が、    クエリも高速化したのでクエリ料金削減 長期的に見ればコストダウンになっています! 24

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7.DX化を推進した結果 分析能力の向上 ● 検索速度の向上 ○ 1回に5分かかっていたクエリが 10秒程度に ■ [前] 複雑なクエリ実行には 30分以上かかることも。諦めたり作業モチベが下がっていた ■ [今] 重たいものでも実行が 数分なので、毎時の集計なども行うようになった。 作業モチベも上がった! ● 汎用性 ○ Looker Studio・GCS・スプレッドシートなど Google系のアプリケーションとの連携 25 データ管理の改善 ● 移行時にKPIの再定義、データウェアハウス・データマートの再構築 ○ タイトル横断のクエリが使用できるようになり、工数削減に ○ 分析用、ゲームログ、CS対応用など用途別にデータセットを分けたため、 目的のテーブルを探しやすくなった

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7.DX化を推進した結果 事業運営プロセスの改善 定量データから施策の作成・改善する流れが定着 今までは定性的なデータを重視していたが、定量的なデータもさらに活用するように 分析能力の向上で、早く、少ない工数で分析が行えるように 分析を頼みやすくなった ユーザーの遊び方を知りたい    前回の施策の効果が見たい 次の施策用に材料のデータが欲しい DX化する前より定量データを扱う機会が増えた 26

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7.DX化を推進した結果 具体的に行った分析・ゲームの改善につながった例 ● スコアアタックのパーティ編成 ● メインストーリーの進捗状況 27 各種KPIや分析内容は公表でき ないものが多いです>< ほんの一部ですが、 ご紹介いたします!

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7.DX化を推進した結果 具体的に行った分析・ゲームの改善につながった例 ● スコアアタックのパーティ編成 ○ 今まで:編成ログはあったが、分析にかなり時間がかかる状態だった ○ 改善後:新施策の使用パーティを調査 ○ →運営の考える使用キャライメージと、実際が乖離していないかを確認でき る 28

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7.DX化を推進した結果 具体的に行った分析・ゲームの改善につながった例 ● メインストーリーの進捗状況 ○ 今まで:一定期間経った後に、クリア状況を確認 ○ 改善後:毎日クリア状況を確認できるように ○ →キャンペーンの効果を測定し、次回のキャンペーン内容決定の材料に ○ →クリアが停滞している場所が分かり、進めやすくする改善を検討 グラフイメージ 29

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7.DX化を推進した結果 大変だったこと ● データ移行、再集計にかかる時間や費用の見込みを立てるのが難しかった ● データ移行の際にも圧縮できないデータや取り込めないデータがあるため、解決す るのに苦労した ● 長期運営のため、消費税の切り替わりなど、当時の状況に応じたデータチェックを 200テーブルぐらい行うのに手間取った 運営チームからの反応 ● slackで数値・グラフを簡単に確認できるから便利!! ● どういった施策がいいか考える際に参考になる   DX化した感想・反応・大変だったこと 苦労しましたが、運営チーム からの喜びの声も多く、頑 張って良かったです!!

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8.今後改善していきたいこと 31 他タイトルの先駆け・展開できるような分析を行う ● タイトル同士の横比較・連携が可能になった ● 他の新規タイトルも長期運営化 ○ アナザーエデンと似たような課題にぶつかると想定される ● 5年分のデータを活用し、長期タイトルゆえの課題に取り組み、 他タイトルへの展開を行いたい 31

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9.まとめ〜データ分析のDX化について〜 32   定量分析に使えるデータが膨大にあるが、活用しにくい環境だった まず分析をしやすい環境に整える ● 分析性能に特化したクラウドサービスに、ログを引っ越し ● KPIツールを新たに作成 ● アドホック分析の改善 分析能力が上がった データ管理を行いやすくなった 費用が下がった  定量分析を行いやすい環境ができ、今まで以上に定量データを運用に    活用できるようになった!  32   6周年を向かえたアナザーエデンですが、今後もユーザの皆様に   より良いゲームをお届けできる様に頑張りたいと思います!!

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33 ご清聴ありがとうございました!