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1 線形代数というものの見方 慶應義塾大学理工学部物理情報工学科 渡辺 2020/12/8

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2 先生方は線形代数が大事大事って連呼するけど、 何がそんなに大事なの?何を覚えれば良いの? 線形代数はもちろん大事な学問ですが、大事なのは 「線形代数」という「ものの見方」です

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3 線形空間における要素の間の代数的構造を調べる学問 線形空間Vとは 要素の線形和がまたその空間の要素になる Ԧ , Ԧ ∈ ⟹ a Ԧ + Ԧ ∈ 例:3次元ベクトル , () ∈ ⟹ a + ∈ 例:関数

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4 「構造」が同じなら、もとが何であったか気にしなくて良い 3次元ベクトル 関数 内積 ( Ԧ , Ԧ ) ≡ Ԧ ∙ Ԧ (, ) ≡ න ∗ 固有値 固有ベクトル Ԧ = λ Ԧ = λ = e 直交、基底、固有値、固有ベクトルといった考えが そのまま関数にも使える→フーリエ・ラプラス解析

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5 • 円を10等分し、0から9まで数字を書く • ある段の「一の位」を結んでいく • 1の段から9の段までやる • どんな図形がでてくるか? 例:3の段 0→3→6→9→2→5→8→1→4→7→0

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6 • 1と9、2と8など「足して10」になる数は同じ形 • 5は同じ形が存在しない なぜそんな性質を持っているのだろう?

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7 0から9までの目盛りがあるダイアル 時計回りにn目盛り回す操作: 演算が閉じている = + 結合則が成り立つ ( ) =( ) 単位元が存在する 0 逆元が存在する この操作とダイアルの状態は群を作る −1 = 10−

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8 反時計まわりに角度θだけ回す操作 ダイアルの状態をベクトル で表すと 1 0 = cos − sin sin cos n目盛り回す操作: = 2/10 の表現 ※回転方向が逆だけど許して

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9 = cos − sin sin cos 回転行列は直交行列 直交行列Mの性質 • 行・列ベクトルがそれぞれ正規直交基底をなす • 転置行列が逆行列になる = 1 = 0 = ∴ = −1

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10 = cos − sin sin cos = cos sin −sin cos = − 回転行列 回転行列の転置 右にn目盛り回す操作: 10− = − 10-n目盛り回すと逆元: −1 = 10− 転置とると逆元: = −1 = −

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11 10− = − 10−5 = 5 右に10-n目盛り回す=左にn目盛り回す 自己共役 共役 同じ形を持つ操作の表現はお互いに随伴行列(エルミート共役)の関係

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12 一次元調和振動子の運動方程式 ሶ = − ሶ = Ԧ () = () () とベクトル表示すると Ԧ = Ԧ = 0 −1 1 0

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13 Ԧ = Ԧ を形式的に解くと Ԧ = exp() Ԧ 0 exp = + + 2 2 2 + ⋯ + ! + ⋯ を計算する必要がある

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14 行列の対角化 = −1 対角行列 = ( −1) = −1−1−1 ⋯ −1 = −1 ∴ = −1 ※今回はこれ使わなくても計算できるけど

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15 = 0 −1 1 0 exp = cos −sin sin cos 一次元調和振動子の運動方程式 ሶ = − ሶ = 回転行列 は回転を表していた 回転行列の生成子 (微小回転)

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16 時間発展が「回転」なのだから「半径」が保存する(※) Ԧ = 半径の2乗 | Ԧ |2 = 2 + 2 = 2 • 運動方程式は微小回転を表している • 時間発展は時間を角度とした回転 • エネルギーは回転の保存量 ※より正確には、保存しているのは面積 エネルギーの2倍

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17 「群を作る操作」の表現として行列が出てくる 操作の性質は行列の性質として現れる • 回転行列は直交行列 • 直交行列は転置が逆行列 • 回転の逆行列は逆回転 運動方程式にも行列が現れる • 時間発展とは広義の回転である • 時間とは回転角度である • 行列の指数関数の計算に対角化が必要になる • 操作の保存量としてエネルギーが現れる (行列式が関係している)

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18 今日説明できなかったけど重要なこと • 微分や行列は「線形演算子」として同一視できる • フーリエ変換は基底の取り換えである • 時間発展演算子の最大固有値の状態が平衡状態 • etc. 要するに何がいいたかったの? 行列とは広い意味で回転を表すと思うと いろいろ見えてくるものがあるということ ※要するに様々なところに線形代数が現れる