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YOJOプロダクト開発の道のり 株式会社YOJO Technologies 上野彰大

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上野彰大 1992年大阪府堺市生まれ・育ち 東京大学大学院農学生命科学研究科卒 YOJO Technologies取締役・エンジニア ● 自営業の家庭で将来自分も商売をするのかも?と思って育つ ● 中高は奈良県の進学校で過ごす ● 大学入学後はテニスばかりして過ごす ● サークルを引退して、研究室に入ってからは研究(・プログラミング)とビジネスの勉 強に打ち込む・VCでインターン ● 新卒で経営コンサルティング会社のIGPI(経営共創基盤)に入社 ● 8ヶ月で退社してYOJOを共同創業 自己紹介

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事業プレゼン(10分)

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これまでのYOJOのあゆみ ● 2018年12月創業 ● 2019年5月頃に漢方事業の構想と初期検証を開始・元ガリバー取締役吉田さんと 元FiNC取締役岡野さんから少額の出資を受ける ● 2019年6〜8月頃に漢方のサブスク事業を本格開始 ● 2020年2月、エンジェル投資家から約1200万円の資金調達を実施 ● 2020年3〜4月、初期の社員メンバー3人が入社 ● 2020年6月ANRIから1億円の資金調達 ● 2021年7月GCP・ANRIから2.5億円の資金調達

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これまでのYOJOのあゆみ ● 2018年12月創業 ● 2019年5月頃に漢方事業の構想と初期検証を開始・元ガリバー取締役吉田さんと 元FiNC取締役岡野さんから少額の出資を受ける ● 2019年6〜8月頃に漢方のサブスク事業を本格開始 ● 2020年2月、エンジェル投資家から約1200万円の資金調達を実施 ● 2020年3〜4月、初期の社員メンバー3人が入社 ● 2020年6月ANRIから1億円の資金調達 ● 2021年7月GCP・ANRIから2.5億円の資金調達

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創業初期

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医療体験を滑らかに・身近なものにしたかった

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創業初期のアイディアはクリニックのフランチャイズ展開 辻がずっとやりたいと思っていた IT実 装したクリニックモデル 奥さんにはその日に辞めることを伝え て、次の日に大学病院に退職の意向 を伝えたらしい

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その1週間後、、、 おれクリニックの アイディアで起業 するわ

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その1週間後、、、 ほんならおれも やるで

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その1週間後、、、 じゃあ来月会社 やめてきて

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その1週間後、、、 おっけー

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創業初期のアイディアはクリニックのフランチャイズ展開

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クリニックのフランチャイズ展開のビジネスモデル1 ● 既存のクリニック経営の問題は ITリテラシーの低さにあった ○ 業務のアナログさ:web問診などの基本的な効率化システムも入れておらず ○ webマーケティングの下手さ:SEOやGoogleでの評価などのweb上の評価を上げる気す らない・広告も打たないというクリニックがほとんど

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クリニックのフランチャイズ展開のビジネスモデル2 ● 株式会社によるクリニックの「支配」は禁止されているので、クリニックのプロデュースする代わ りに金銭をいただくというイメージが近い ○ 医院長からしてみれば、自分のクリニックが儲かればいい ○ クリニックの開業時にコンサル的に資金をもらう + ITシステム使用料やwebマーケ費用、 ブランド使用料、継続的な経営コンサル費用などでお金をもらうイメージ 実質的な支配者 Y O J O ク リ ニ ッ ク ITシステム 経営コンサル マーケティング支援 売上の〇〇%

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クリニックのフランチャイズ展開のビジネスモデル3 ● 例えば、コロナが流行り始めたときにPCR検査をやろうみたいな迅速なオペレー ションの構築ができる ○ 実際リンクウェル(クリニックフォア田町、四谷 etc…)はうまくいっているみたいです

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クリニックフランチャイズ事業のドライバーを検証①土地 ● 事業の検証を進めていく中で、事業のドライバーになるのは、①土地集めと②院長 となる医師集めであると気がついた

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クリニックフランチャイズ事業のドライバーを検証①土地 ● 事業の検証を進めていく中で、事業のドライバーになるのは、①土地集めと②院長 となる医師集めであると気がついた ○ 自分たちで、物件の選定のための診療圏調査をしたり、街の様子を観察(候補物件の周 辺はどのような人通りか、競合のクリニックにはどのような客層が多いか)をした ○ クリニックの売上なんてほとんどが立地(昼間人口 ×疾病率 / 競合数)であり、いい立地に 開業できるかが最も重要であると気がついた

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クリニックフランチャイズ事業のドライバーを検証②医者 ● 自社プロデュースクリニック第一弾として開業してくれる医師を見つけて、クリニック 開業費として200万円を稼いだのが一番最初に2人で作った売上 ○ クリニック開業のための融資の取り付けが完了し、不動産契約の一歩手前で、奥様の反 対に合い頓挫 ● クリニックを増やしていくためには院長となる医師を集めなければならないが、若い自分たちに 院長のマネジメントは難しいのではないかとも感じた ○ そもそも自分たちのような若者の話を医者は聞いてくれない ○ 仮に開業までこぎつけたとしても、開業後に経営がうまくいき始めてプロデュース契約を 打ち切ると言われたらどうしようもない

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初期株主の吉田さん・岡野さんと出会うも撃沈 ● 結局、ITシステムの寄与度は小さいのではないか?自分たちではスケールさせら れないような気がした クリニックみたいなリアル店舗モデルは 労働集約でスケールしないよ 別のアイデアで出直した方がいいんじゃない?

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ファウンダーマーケットフィットというものはあるらしい ● 若者でもスケールさせやすい、ITシステムを活用したビジネスが自分たちには向い ていると思った ● クリニックと違って薬局のように株式会社で運営できる方が簡単

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様々なアイディアを考えては検証して捨てを繰り返した

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医療業界全体を見渡し空いているところをひたすら探った ● うまくいっているビジネスの調査 ○ 例:m3、メディカルシステムネットワーク、メドレー ○ どういうところにニーズ・課題はありそうか ■ 医療業界全体を調べたり、医療業界の各プレイヤーの課題を抽出 ○ どういうところにお金は生まれるのか ■ ニーズがあるだけではなくお金は生まれる構造か? ● ある程度ニーズや勝てそうなビジネスの形が見えてきたら、課題を抱えているであ ろう人たちにヒアリングを繰り返す ○ 患者、病院経営者、薬局経営者、医師、看護師、薬剤師、理学療法士 etc……

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医薬品共同購入 医薬品発注業務効率化 ITで医療をよくできることを中心に探しまくった

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大事なのは大枠の向かうべき方向性があっていること 漢方事業はもしかしたら可能性あるかもね 2週間でまずプロトタイプ &中長期戦略を 作って持ってきて ● とりあえず思考停止して漢方事業を数ヶ月やってみる ○ 理想を

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医療体験を滑らかに・身近なものにしたかった

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オンラインでの「相談×漢方購入」にはニーズがあるかも? 辻の「総診(総合診療科)で研修医しているときに分かったんだけど、総診では西洋医学 がうまくいかない患者に漢方を処方するのに、総診以外の医者や薬剤師は漢方のこと を何も知らないんだよね。総診にまで行き着く患者は、自分で調べて漢方を求めてくる ケースも結構多いんだよ。」という言葉がきっかけ 漢方のように患者さんが求めているし、実際にいいものなのに、世の中に情報が広まっ ていない(Googleで調べても出てこない、詳しい医師・薬剤師も少ない)医薬品は実は 多いのではないか?

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サービスの初期検証

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● 創業期は50万円の資本金で始めたが、自己資金で検証を進めるために500万円 まで増資をした ○ 創業者2人で親や親戚などを回って借金をした ○ 漢方事業に行き着いた時点で創業から半年近くが経過、売上の 200万円をあわせても、 自分たちの月10数万円の役員報酬すらまともに払えないような状況だった ■ 当然、事業の検証に使えるお金なんてなかった ● 今の時代簡単に資金調達ができるようになった(バリュエーション5000万円で 500〜1000万円、1億円で1000〜2000万円など)が、事業の検証をしてからVCか らの調達はしたかった ○ 無駄なコミュニケーションを減らすため & バリュエーションを高めるため、できる限り VCか らの調達を遅らせたかった 検証のために自己資金で増資

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小さくニーズ検証していくことの重要性 ● まずはwebで簡単なモックサイトを作り、事前登録者を募った ○ 2日ぐらいでサクッと作って公開できるwebアプリケーション

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ニーズがあるのかヒアリング ● 仮説があっているのか、他にどのようなニーズがあるのかについて、いろんな年代 の女性に計10名〜20名ほどヒアリング ○ そもそも漢方飲んだことあるか ○ 漢方をはじめる上での障壁となっていることはなにか ○ コンセプト資料を見せて興味あるか ○ ……

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競合サービスの調査 ● 世の中にある有名所の漢方薬局はとりあえずいって問診を受けてみる ● わたし漢方という類似サービスも徹底調査

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課題感が深掘れてきたしニーズもありそうなので軽く実装 ● 問診アルゴリズムを作成し、LPはペライチで作ってLINE友だち登録を募ってみた ら、10人目ぐらいで買ってくれそうなお客さんが現れた ○ 簡単なアルゴリズムに答えてもらった後に、会話を行って営業トーク ○ はじめは決済機能すら用意しなかったので、まずは銀行振込で対応、本当に振り込んでく れた! ○ 本当にお金を払ってくれるぐらい強烈なニーズがありそうだと分かった

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マーケティングの検証 ● お金がなく広告費かけられないので、できる限り少ない広告費で、広告文言やLP の修正などを行っていた

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医薬品(漢方)EC事業が法律的に難しかった点① ● 医薬品のサブスクなんて他にあまりない ○ 保健所的には、解約しない限り売買契約が締結されていて、顧客の了解を得ているという ことになるので、問題ないとの見解

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医薬品(漢方)EC事業が法律的に難しかった点② ● 医薬品は薬局から届ける必要ありだが、薬局を作るほどの資金はなかった ○ 最初は知り合いの薬局を販売主体にして、 YOJOはEC販売の実運用を委託されていると いうようなスキームにして、最低限の検証ができるように ■ 漢方の売上は薬局に入る ■ YOJOに一部マーケティング支援やITシステムをつかって、実際の業務を薬局の代 わりに行っているとして、お金をいただく ■ 法的には問題ないことを、弁護士に確認、保健所にも確認 YOJO EC販売業務の委託 売上の〇〇% 薬局

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医薬品(漢方)EC事業が法律的に難しかった点③ ● 相談に乗った後にAmazonで買われてしまうので、オリジナリティを出す必要があっ た ○ YOJOができるのはあくまで「加味逍遥散」と「桂枝茯苓丸」を選び分けるだけ、独自漢方処方を作 ることは一般用医薬品の販売においてはできない ○ 例えば、市販のツムラの漢方を買ってきて、包装を破って中の漢方を取り出してつめ直して u売った りすることは、医薬品製造にあたるので承認が必要 ○ 分割販売というスキームであれば、顧客の求めがあれば、バルクで購入し、オリジナルの分包紙に 入れて販売することが可能

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事業戦略を考えるためには法律の徹底的な理解が必要 ● 医療業界でうまくビジネスを立ち上げようとすれば、法律の徹底的な理解・解釈を 行うことが重要 ○ 見るからにホワイトなことは誰もが普通にやっていることで新しいものは生み出しにくいの も事実 ○ リモートワークのように、自社の強みになるような部分は、「法律や行政と徹底的にやりあ う」必要もあるかもしれない ■ 要件を決めて実装した加藤さんが保健所に「これなら法解釈として何の問題もない はずだ」というコミュニケーションを行った

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2020年2月エンジェル投資家からの資金調達 ● MVPができて売上が少し立ち始めたぐらいでエンジェル投資家から資金調達 ○ お金が欲しかったと言うよりもアドバイザーが欲しかったという感覚

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2020年6月ANRI(VC)からの資金調達 月の売上150〜200万円ぐらいのときに1億円の資金調達をした

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ビッグピクチャーを描くことの重要性 ● 市場の大きさTAMも重要なので、その後の展開があるか?などが重要 ○ 漢方EC市場だけでは500億円の市場でしかない ● ビッグピクチャーを描けなければ、資金や人は集まらない ○ ビッグピクチャーを描けば成功するというものではないが、描けなければ、まず大きなス テージへの挑戦権は得られない

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ゲームチェンジャーになれるようなビジネスモデルを ● 相談を軸に医薬品を売るビジネスモデル ○ 相談を軸に儲かっている医療ITサービスはあまりない ● オンラインに特化した薬局運営 ○ オンラインに特化すればこそのオペレーションの効率化 ● エコノミクスやスケール性の観点で思考を突き詰めていった結果、医療者の新しい 働き方も変えていかなければならないと気がついた ○ リモート薬剤師という働き方がウケた結果、薬剤師の採用費はほぼ 0

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YOJOの今後

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共同創業者は同じぐらいのコミットメントが必要 ● だいたいうまく行かないパターンは、コミットメントが揃っていないとき ○ 中途半端な共同創業者がいると進まない ○ 周囲を見回しても空中崩壊するケースが多い ● お互い同程度リスクを取っていることも重要 ○ 辻は研修医中にやめているので、医師としてのバイトができない ○ 上野も収入源は他にない

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最初は自分たちで手を動かしていくことが重要 ● 労働力は自分たち自身 ○ お金が追加でかからない ○ 考えたことを即実行できる ● 今の時代プログラミングは簡単に学べる ○ 上野も本格的なweb開発はやったことがなかった ■ データ分析などは学生時代からやっていたので、完全な初心者ではなかったが ● 医療業界はIT分かりませんという人が多すぎるが、それで終わらせていては事業は作れな い ○ エンジニアじゃなくても基本的な ITの知識やプロダクト開発の知識は持っているべき ○ ちなみに辻のITリテラシー・プロダクト開発への知識は、世の中の IT企業で働いているPdMぐ らいはある

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はじめは友だちなどから集めていく行くことが重要 ● 最初のお手伝いエンジニアは、辻の友人の医学生・上野のクラスメイト ● はじめから外注なんかしていては、いくらお金があっても足りない ○ 友人関係ならお友だち価格でやってくれたりする ● 人間関係から作っている暇はない ○ コミュニケーションは滑らかな方がいい

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医療者が医療業界で起業するという意味 ● 医療業界の人は医療業界の人の話しか聞かない ○ 初期にヒアリングをできたり、働ける薬剤師を集められたのは辻が医師だったおかげ ● 医療業界は複雑なので、インサイトを得るにはインサイダーである方が望ましい ● ビジョンも描きやすい ○ メンバーにも示しやすい ○ 投資家も「ストーリー = なぜその人がその事業をやっているのか」を重んじる ● なにより本気になりやすい

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YOJOの今後

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Appendix

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そもそもなぜ資金調達をするのか ● 普通の企業であれば、スタートアップ的に跳ねるビジネスを作ろうと思ったら、自分 たちで稼いだお金で事業に投資しなければならない ○ 初期から手元にキャッシュが溜まっていく事業があることが望ましい ■ 例えば、営業代行、受託開発などのすぐお金が入ってくるビジネスで稼いで、収益 が不安定なビジネスに投資する ■ サイバーエージェントも、もともとはインターネット広告営業代行の会社で、「インター ネット」とは名ばかりの?営業の会社でしかなかった

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そもそもなぜ資金調達をするのか ● 投資を受ければ、本来は利益から生み出さなければ手にできないような額のない キャッシュをすぐに手にすることができる ○ 投資家は投資したときよりも企業の価値が上がっていればいい ■ 投資を受けるたびにあがっていく、 YOJOの企業価値は創業当初50万円→500万 円→10億円弱→10億円強 ● 今の時代簡単に資金調達ができるようになった(バリュエーション5000万円で 500〜1000万円、1億円で1000〜2000万円など)が、株を切り出すことは後に引き 返せない意思決定なので慎重に

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資金調達での考え方 ● YOJOの場合プレシリーズAまでの最も重要だったのは、エコノミクスが成立してい ること LTV / CACが成立しているか