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Takaaki Umada / 馬田隆明 東京大学 FoundX(インセプションプログラム) https://foundx.jp/ Deep Tech スタートアップ入門 (3) スタートアップの アイデア選定ガイド💡

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2 あまりスタートアップのことを 知らない方向けのスライドです

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3 スタートアップは急成長する 急成長するためには いくつか考えるべきことがある

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スタートアップのアイデアの 3 つのガイド スタートアップとして急成長するためには、アイデアとして 以下の 3 つの基準を満たす必要があることが多い。 スタートアップのアイデア、プロダクト、チーム、実行力 パート1 /スタートアップ = 成長 4 リスクの高い アイデア 人が欲し がるもの スケール するもの

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① リスクの高いアイデアに挑む スタートアップは、大企業が手を出さないような不確実性の高 い領域に挑むことで、急成長するための機会を掴む。 5 リスクの高い アイデア 人が欲し がるもの スケール するもの

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ビジネスには主に技術リスクと市場リスクがある 様々な事業が異なるリスクを取っている。 6 技術リスク 市場リスク 🩺医療系 💊創薬 🤖ロボット系 📱アプリ 🌎Web/SaaS 📕規制系 🧰新ハードウェア 👨‍💼コンサル 📰メディア 🍆八百屋 💻半導体 ⚡エネルギー スモールビジネス の領域

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7 明らかなビジネス機会なら 資源の豊富な大企業が強い スタートアップは 他の人が恐れてしまうぐらいの リスクの高いアイデアに挑む

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「悪く見えるけれど、実は良いアイデア」を狙う スタートアップのアイデア、プロダクト、チーム、実行力 パート1 8 悪く見える アイデア 良い アイデア 「悪く見えるけれど実は良いアイデア」 「リスクと不確実性が高すぎるアイデア」 をあえて狙うのがスタートアップ

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急激な変化と不確実性によって生まれる機会を活かす 以下のような変化の兆しがあれば、スタートアップとして挑戦 すやすい時期が来ている可能性がある。 9 ⬆️ 性能の向上 一部の技術の性能が向上す ることで、できなかったこ とができるようになる。 例)CPU、通信帯域 🔃 社会情勢 社会情勢が急に変わること で、ニーズや価値のものさ しが変わる。 例)経済安保、COVID-19 ⬇️ コストの低下 費用や学習コストが大幅に 低下することで、これまで と違う使い方が可能に。 例)太陽光発電、機械学習 ↔️ 政策転換 政策や規制が変わって可能 なことが増えたり、お金が 流れ込んだりする。 例)規制、脱炭素 ⤴️ 普及 デバイス等が短期間で急激 に普及することで人々の生 活や行動が変わる。 例)スマートフォン ↗️文化の変化 社会規範や文化が変わって 過去はやりづらかったこと が普通になる。 例)シェアリング

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技術の変化だけではなく、社会の変化にも目を向ける 科学であれば技術の変化が新しい機会をもたらすが、ビジネス の場合は技術と社会の両方から機会を得ることもできる。 10 ⬆️ 性能の向上 一部の技術の性能が向上す ることで、できなかったこ とができるようになる。 例)CPU、通信帯域 🔃 社会情勢 社会情勢が急に変わること で、ニーズや価値のものさ しが変わる。 例)経済安保、COVID-19 ⬇️ コストの低下 費用や学習コストが大幅に 低下することで、これまで と違う使い方が可能に。 例)太陽光発電、機械学習 ↔️ 政策転換 政策や規制が変わって可能 なことが増えたり、お金が 流れ込んだりする。 例)規制、脱炭素 ⤴️ 普及 デバイス等が短期間で急激 に普及することで人々の生 活や行動が変わる。 例)スマートフォン ↗️文化の変化 社会規範や文化が変わって 過去はやりづらかったこと が普通になる。 例)シェアリング 技 術 の 変 化 社 会 の 変 化

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11 リスクの高い挑戦をするからこそ ベンチャーキャピタルからの 資金調達もできる

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12 詳しくは以下のスライドで https://speakerdeck.com/tumada/sutatoatupute-you-falsekao-efang-aidea-shi-chang-zi-jin-diao-da-hazimetefalsesutatoatupu-2

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② 人が欲しがるものを作る ビジネスを行う上では、人が欲しがるものを作り、それを提供 することで対価を得る必要がある。 スタートアップ = 成長 13 リスクの高い アイデア 人が欲し がるもの スケール するもの

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14 製品やビジネスの多くは 顧客の課題を解決することで 対価を得る (Deep Tech は B2B が多いので特にその傾向が強い)

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課題を解決することで、価値を生み、対価を得る 15 価 値 課題 解決策 「課題」を「解決」することで「価値」を生むことができる。 両者のフィットが大きいほど、生まれる価値は大きくなる。

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Deep Tech は解決策があって、課題を探すことが多い 16 課題 解決策 解決策のコアとなる技術がすでにあり、その技術に合う課題を 探すことが多い。 どの課題に取り組む かが決まって いないことが多い 解決策のコアとなる 技術はすでにある

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Deep Tech が課題解決のときに注意するべきこと ディープテック・スタートアップは解決策が決まっていて、 課題を選ぶ場合が多い。その際に注意するべきことは以下。 17 ① 顧客の具体的な課題を選ぶ メディア等で指摘される社会課題や、抽象 的な市場の課題ではなく、お金を払ってく れる「顧客の課題」を選ぶこと。 論文だと「●●という社会課題を解決でき るかもしれない」などでも構わないが、ビ ジネスの場合は、顧客の具体的かつ直近の 課題でなければ対価を貰えない。 ② ベストな解決策になる 自社の技術や製品が課題解決できたとして も、「その他のたくさんの解決策の中で、 これがベスト」と評価されなければ選ばれ ない。 「確かにその技術で課題は解決できるけれ ど、他の技術のほうがより安く、より多く 解決できる」のであれば、顧客は別の技術 を使う(そしてそういうことは Deep Tech ではとても多い)

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18 SISP はとても大変 課題を探している解決策 (Solution in Search of a Problem) Deep Tech スタートアップは 課題を探している解決策になりがち。でも……

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19 Deep Tech スタートアップは “今の技術で楽に解けそうな 課題や応用先” を探して右往左往した結果、結局 “難しいし時間はかかるけれど ストレートで大きな課題” に戻ってくることも多い

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20 詳しくは以下のスライドで https://speakerdeck.com/tumada/liang-ike-ti-woxuan-bu-jia-zhi-hake-ti-dejue-maru

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③ スケールするものを作る スケールさせることができ、かつ大規模になる必要がある。 21 リスクの高い アイデア 人が欲し がるもの スケール するもの

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「スケールする」ための条件 スケールするためには、「スケールのしやすさ」と「スケール したときに十分に大きくなるか」を考える必要がある。 22 ① スケール自体の容易さ ソフトウェアの場合、複製にコストがほと んどかからないため、技術面では比較的楽 (もちろん難しいことも多い)。 Deep Tech の場合は、スケールするために 様々な要素(戦略や技術コスト等)を勘案 しなければならなくなり、スケールそのも のが難しく、そのための時間もかかる。 ② スケール後の最大値 スタートアップは、当たる可能性が小さく ても、当たったときの最大値が大きい必要 がある。 市場規模や売上の推定を事前に行っておく ことで、スタートアップとなれるかがある 程度検算できる。

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特にスケールしたときの最大値には気を付ける 23 ① スケール自体の容易さ ソフトウェアの場合、複製にコストがほと んどかからないため、技術面では比較的楽 (もちろん難しいことも多い)。 Deep Tech の場合は、スケールするために 様々な要素(戦略や技術コスト等)を勘案 しなければならなくなり、スケールそのも のが難しく、そのための時間もかかる。 ② スケール後の最大値 スタートアップは、当たる可能性が小さく ても、当たったときの最大値が大きい必要 がある。 市場規模や売上の推定を事前に行っておく ことで、スタートアップとなれるかがある 程度検算できる。 最大値を初期から 意識しておく

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24 スタートアップを目指すなら まずは最初の 10 年で 100 億円以上 の売上になるかを 初期から考えておく

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100 億円達成のために必要な顧客単価と顧客数 年間売上 100 億円を目指すなら、どの程度の顧客単価と顧客数 が必要かを計算してみる。 The Angel VC: Five years later: Five ways to build a $100 million SaaS business (christophjanz.blogspot.com) 25 顧客単価(年) 必要な顧客数 スタートアップの例 顧客層 100 億円 1 社 SpaceX 政府、エンタープライズ 10 億円 10 社 Palantir 政府、エンタープライズ 1 億円 100 社 Workday エンタープライズ 1000 万円 1000 社 Snowflake 中~大企業 100 万円 10,000 社 Slack 小~中企業 10 万円 100,000 社 Mailchimp 個人~小規模企業 1 万円 1,000,000 人 Spotify 個人 1000 円 10,000,000人 デバイスあたりのライセンス 個人、デバイス 100 円 100,000,000 個 デバイスあたりのライセンス デバイス 10 円 1,000,000,000 個 デバイスあたりのライセンス デバイス

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顧客単価ごとに異なる難しさがある The Angel VC: Five years later: Five ways to build a $100 million SaaS business (christophjanz.blogspot.com) 26 顧客単価(年) 必要な顧客数 スタートアップの例 顧客層 100 億円 1 社 SpaceX 政府、エンタープライズ 10 億円 10 社 Palantir 政府、エンタープライズ 1 億円 100 社 Workday エンタープライズ 1000 万円 1000 社 Snowflake 中~大企業 100 万円 10,000 社 Slack 小~中企業 10 万円 100,000 社 Mailchimp 個人~小規模企業 1 万円 1,000,000 人 Spotify 個人 1000 円 10,000,000人 デバイスあたりのライセンス 個人、デバイス 100 円 100,000,000 個 デバイスあたりのライセンス デバイス 10 円 1,000,000,000 個 デバイスあたりのライセンス デバイス 営業を雇えないが、顧客にとっては高価格で難しい価格帯 業務委託なら稼げてしまうが、スケールしづらい価格帯

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27 Deep Tech を扱う企業は 業務委託や実証実験で 十分に稼げてしまうことも多いので スケールのための製品開発が 中々進まない場合も…… そうなると「急成長する」スタートアップではなくなってしまいがち ※ 技術によっては受託等を続けてタイミングを待つ場合もある ※ 必ずしもスタートアップという道を選ばなくても良い

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※ 大学発企業は約 20% しか売上 1 億円を超えてない ほとんどの大学発ベンチャーは売上 1 億円を超えていない。 どういった企業になりたいか次第だが、スタートアップを狙う場合は注意する。 大学発ベンチャー(METI/経済産業省) 28 2021 年の売上 大学発ベンチャーで一番多いのは 1000 ~ 5000 万円未満の売上の企業。 売上の経年変化 しかも 1 億円以上の売上の企業の割合は 全体の中で年々減少傾向にある。 (※ 企業の報告数は 330 から 430 で毎年変わっている) 22% 21% 18% 18% 17% 0% 10% 20% 30% 2017 2018 2019 2020 2021 売上 1 億円以上の大学発ベンチャーの割合 (%) 79 21 32 15 109 38 57 1 0 20 40 60 80 100 120

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29 大きくて難しくてリスクの高い 課題と市場を選ばないと スタートアップ的な スケールもしづらい

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まとめ: アイデア選定の 3 つの条件 それぞれの問いに Yes と答えられれば、スタートアップになり うる。 スタートアップのアイデア、プロダクト、チーム、実行力 パート1 /スタートアップ = 成長 30 リスクの高い アイデア 人が欲し がるもの スケール するもの 他の人が恐れるぐらい 十分にリスクの 高いアイデアか? 最終的に スケールするか? 顧客の課題に対す る解決策であり、 ベストなものか?

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FoundX の紹介 31

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FoundX - 東京大学のスタートアップ支援プログラム 32 東京大学 FoundX は東京大学 産学協創推進本部の下部組 織です。東京大学 本郷キャンパスの近くに 3 つの施設を構 え、起業志望者向けのプログラムを複数提供しています。 投資は行いませんが、無償での個室貸与やプログラムの提 供、起業家コミュニティへの参加を支援します。 🔥 興味 情熱 Fellows (9 か月) Founders (9 か月) 👨‍👩 ‍👧 ‍👦 共同創業者 の説得 💰 有利な 資金調達 🤝 フル コミット 🏆 ビジネス 実績 📝 初契約 初売上 💻🤖 製品開発 と改善 💲 助成金や コンテス ト 賞金の獲 得 Deep Tech 起業ゼミ (9 か月) ➰ 試行 錯誤 🌱 アイデア の種 💡 検証された アイデア 📚 起業家の 基礎知識 &スキル 🔨 プロト タイプ 🙎 顧客イン タビュー

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プログラムの対応表 33 Deep Tech 起業ゼミ (毎月 10 日締切) Deep Tech 系で アイデアを探している 卒業生・研究者の個人 技術を持っていて 助成金を獲得したい 研究者の個人 Fellows Program (毎月 10 日締切) Deep Tech 系のみの支援 アイデアを持っていて 資金調達をしたい 卒業生のチーム Founders Program (3/1, 6/1, 9/1, 12/1 締切) アイデアは何でも OK (Deep Tech から B2C まで全てが対象)

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スライド著者 & FoundX 運営 馬田隆明 (東京大学 FoundX ディレクター) University of Toronto 卒業後、日本マイクロソフトでの Visual Studio のプロダクトマネージャーを経て、テクニカルエバンジェリス トとしてスタートアップ支援を行う。スタートアップ向けのスライド、 ブログなどの情報提供を行う。 サイト: https://takaumada.com/ 34 スタートアップの 方法論の基礎 Amazon (2017年3月) 起業環境の重要性と アクセラレーター の設計方法 Amazon (2019年4月) スタートアップの 公共や規制との 付き合い方 Amazon (2021年1月) スタートアップに ついてのスライド Slideshare SpeakerDeck

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35 https://foundx.jp/ ご応募お待ちしています 😊